小学校名は適当に「古」が入るようにしただけなので、
問題があればすぐに変えます。
あと今回は三編になります。
ですが、
ある意味全体的に説明回みたいなものです。
それでは第十話前編をどうぞ。
古川小学校七不思議
段数の変わる階段
4階の屋上に続く東階段の段数が夜になると13段になるらしい。
走る二宮金次郎像
校庭にある二宮金次郎像が夜な夜な校庭を走り回るらしい。
ピアノを弾く音楽教師の霊
昔に事故で死んでしまったこの学校の音楽教師の霊が夜中にピアノを弾いているらしい。
体育館で跳ねるボール
深夜の体育館でボールが独りでに跳ねているらしい。
呪いのトイレ
夜に4階トイレの入り口から4番目の個室に入ると戸が開かなくなり閉じ込められてしまうらしい。
夜中に動き出す骨格模型
理科準備室にある骨格模型が夜中に動き出すらしい。
異世界に繋がる大鏡
中央階段の踊り場にある大鏡の前に4時44分に立つと大鏡から手が出てきて鏡の中の世界に引きずり込まれてしまうらしい。
平成24年8月1日17:35
肝試し3日前。大童と藤重はやる事も終わり、クーラーの効いた大童の部屋でダラダラしていた。
「暇だねー」
「そうねー……」
そんな二人を余所にパソコンで作業をしていた鏡が、パソコンを閉じる。
「そんな暇人共に仕事が来てる」
「まだ前回のから一週間も経ってないんじゃない?」
「仕事」という言葉に反応した二人がダラダラをやめる。
「まあ、こういう時もあるよ」
「それもそうね」
「しかも今回は七つも来ている。場所は古川小学校だ」
「あーもしかして」
「学校で七つ同時……?」
すぐに分かった大童に対し、藤重は少し考えてから。
「もしかして『七不思議』?」
顔を上げてそう言った。
「あぁ」
「でも七不思議だからって全部同時に来るものなの?」
「小学校内でしか広まっていないからな」
「人数が少なければ言霊の溜まりも遅いからね。全部が実現可能な範囲に来るのは珍しい事じゃないよ」
「そうなのね。それで、内容は?」
いつもなら既に紙を渡したりしているところだが、今回は何も渡していない。
「せっかく『七不思議』だしな。現地についてから一個ずつ話していこうかと思ってる。特にお前等の用意するものは無いし。あ、鏡は刀もってけよ」
「了解」
「日時は?」
「日にちはいつでもいい。時間は午前2時~午前5時くらいの予定だ。殆どが『夜』指定だからな」
と、その言葉に首を傾げる藤重。
「あれ……前に『時間指定がある場合は早めの方が良い』って言ってなかった? 『夜』の指定にしては遅いように思えるんだけど」
「んー……内容を聞いてないからこれは推測なんだけど、今までのとは違うんじゃないかな」
「違うって?」
んー、と考える大童を鏡が遮る。
「それも含めて現地で話す。少しネタバレになるからな」
「……そう」
やや不満げながらも了承する。
「で、いつ行く」
「せっかくだし明日行く?」
「せっかくって何よ……まあ、明日の部活は午後だから問題ないわ」
「なら明日の午前2時に古川小学校集合でいいな。近いし車はいらんだろ」
「そうね」
「了解」
「じゃあ2時集合だし今日はもう帰るわ」
「うん。また現地でねー」
「ええ。また現地でね」
「後でな」
そう言って自分のアパートに帰っていく藤重。
それから暫く大童たちは本を読んでいたが、鏡が本を閉じる。
「本も読み終えたしそろそろ帰る。用事もあるしな」
「用事って?」
「明々後日のことだ」
「あー、肝試しの準備?」
「正確には下準備だな」
「下準備って、準備とは違うの?」
「今年は友人のところに新人が来たみたいでな。そいつらに準備をさせる。つまりはその依頼をしてくるってことだ」
「そっか。じゃあまた現地で」
「ああ。現地でな」
鏡は立ち上がると部屋を出て言った。
残った大童は本を読み終えると、いつもより早めの夕食の支度にとりかかった。学食もあるが大童は自炊派だ。
平成24年8月2日1:30
「あいかわらず早いね」
大童が現地に着いた時にはすでに鏡は街灯に照らされた校門前にいた。
「お前も十分早いぞ」
「まあ、時間が時間だから特にやる事も無かったしね」
「そうか」
とは言え、早く来てもやることは無く二人は雑談をして時間を潰す。
20分後。
「こんばんは、二人とも。やっぱり早いわね」
「こんばんは。藤重さんも10分前だし十分早いよ」
携帯を開いて時間を確認する。
「予定より早いが、そろったし行くか」
「了解。あ、藤重さんは懐中電灯使う?」
「借りるわ」
藤重が懐中電灯を受け取って、三人は校門から校舎へ向かう。
その道中。あたりを見回しながら歩いていた藤重が気付く。
「ここってプール無いのね」
「数年前まではあったんだが、取り壊されたな」
「お金かかるんだっけ? 最近あるよねそう言う所」
「あぁ」
「プールって言うと、『泳いでると足を掴まれる』とか定番よね」
「そうだね」
「でも今回はプールがないってことはそれは無いのよね?」
「いや、場所によっては『無いはずの旧校舎が現れる』とかあるから、それのプール版があればプールが無くても有る」
「もしかしてー……プール、出るの?」
再び辺りを照らして見回す。
「今回は無いな」
「あ、そう」
「でもあったら見てみたいよね。プールとか旧校舎が出現するところ」
その状況をイメージする藤重。
「……そうね、ちょっと見てみたいわね」
そうこう話している間に目的地に到着した。
銅像の前で立ち止まる鏡。
「まずはここだな」
「これってもしかしなくても『二宮金次郎像』よね」
『二宮金次郎』は藤重に下から照らされているので不気味だ。
「しっかり『二宮金次郎像』って彫られてるね」
大童は台を調べている。
「何となく予想は付くけど、内容は?」
その問いに、鏡は何も見ることなく答える。
「『走る二宮金次郎像。校庭にある二宮金次郎像が夜な夜な校庭を走り回るらしい』だ」
「『動く』とか『歩く』じゃなくて『走る』なんだね」
「ちょっと変わってるわね」
「でも、これってことは憑依型だよね」
言いながら上の像を見上げる。
「そうだな」
「じゃあ前みたいに供養するの?」
「前は捨てられた人形だからしたのであって、これは現役だからな」
「勝手に供養するわけにはいかないよね」
「あれ、供養って魂? を成仏させるだけじゃないの?」
疑問を持った藤重が大童の方を向く。
「もちろん魂を成仏させるけど、それだけじゃなくて、二度と魂が宿らないように器自体も葬るんだよ」
「つまりは壊すってことだな」
「そうなのね……それなら確かに供養するわけにはいかないわね」
「あぁ」
「それならどうするの?」
「とりあえず魂を消す」
あっさりと鏡が言う。
「とりあえずって……どうやってよ」
「これだな」
と、鏡がバックから取り出したのは2枚の長方形の紙、もといお札。
「これを銅像を挟むように貼れ」
そう言って二人に1枚ずつ渡す。
「貼るだけじゃだめなの?」
「妖怪とか幽霊ならそれでも効果はあるけど、これは貼っても銅像だしね」
「それもそうね。で、挟んで貼ると?」
「2つの間に結界のようなものが発生し、その間にある魂が消えると考えておけばいい」
「え……それって私とかが間にはいったら危ない? しないけど」
「問題ない。霊力は魂の力だからな。その人間とかの意思で害をなすかどうかは選択可能だ。それに、今回のは魂がむき出しだから効くのであって、お前たちのように欠けてもいない人間には無害だ」
「それならいいんだけど、欠けてるって何が?」
「魂と言うのは基本、殻のようなもので覆われていて霊力や妖力から護られている。霊感が全く無い奴と言うのはこの殻が完璧な奴だな。だがこれは非常に少数だ。多くの人間などはその殻にヒビが入っていたり、少し欠けていたりしているんだが、そこから霊力が少し漏れることで時々霊が見えたりするわけだ。ただ、その程度のヒビや欠けでは殻の機能には何の影響もない」
「えっと……つまり私はその『多くの人間』ってことね」
口元に手を当てて少し難しい顔をしながら言う。
「あぁ。そして大きく欠けている奴だが、これが霊感のある奴だな。そういう奴らは気を付けた方が良い。一応少しは殻もあるし、そもそもそんな簡単に魂は消えはしないがダメージはでるだろうな」
「でも今回は消えるんでしょ」
「本来札みたいなのは霊力を込めることで、持続的に霊力を発生させるものだから大した威力は無い。だが今回はむき出しの上にでき始めだからな。この程度でも消えるというわけだ」
そう言われて、藤重は手元の札を見た。
「なるほどね。あまり分からないけど、何となくわかったわ」
「前も言ったけど僕たちは専門職じゃないし、あまり気にしなくていいと思うよ」
「それもそうね」
「それでいい。じゃ、とっとと貼れ」
「了解」
「わかったわ」
二人は互いに『二宮金次郎像』の前後に立つ。
「これって貼る高さは関係ないの?」
「この程度なら関係ない」
「じゃあ貼るねー」
大童が札を貼る。だが藤重は貼らずに悩むような表情で手元の札を見ている。
「どうしたの?」
「何て言うか……せっかく魂ができたのに成仏させるんじゃなくて消すって言うのは、少し……」
「ふむ。そうは言うが実際は大して変わらない。どちらにしても魂の核と言うか、データは俗に言う天国か地獄にいって転生するからな」
「そう……それなら良かったわ。じゃあ貼るわね」
安堵した顔で札を貼ろうとした藤重と、それを見守る大童だったが……。
「「……」」
ふと、固まって何かを考えている。見ると大童も鏡の方を見ている。
「「……ん?」」
二人は同時に疑問符をあげた。
「貼らないのか?」
「いえ……今何か天国と地獄があるように聞こえたんだけど……気のせいかしら?」
「いや、僕も聞こえた気がするんだけど……」
「……あるの?」
藤重も鏡の方を見た。鏡はその問いに自然に答える。
「天国と地獄って言うか、天界と魔界ならあるな」
「「……」」
二人は驚きのあまり声も出ない。ゆっくりと互いを見て。
「……その様子だと大童君も知らなかったのね」
「うん……初めて聞いたよ」
「……はぁ」
溜息をつく。それに対して鏡が軽く言う。
「別に死後の世界なんだから気にすることは無いだろ」
「驚きを通り越して呆れてるのよ」
「そうか。とにかくとっとと貼れよ」
「わかってるわよ」
(何かもう鏡君が全てを知っててもおかしくない気がしてきたわ……)
そんなことを思いながら札を貼った。
「魂は消えたみたいだ」
数秒の後に鏡がそう告げた。
「そう」
「じゃあ次のに行こうか」
「とりあえず玄関から中に入るぞ」
「了解」
3人は玄関から堂々と校舎内に侵入する。もう藤重は鍵については何も言わなかった。
一応学校の七不思議としては有名所を多く選んだつもりです。
内容は少し違うかもしれませんが。
こういうのを書いていると、
自分のいた小学校には七不思議どころか怪談すらなかったので羨ましくなります。
体育館の用具室に謎の扉はありましたが……。
次話は十三話を途中まで書いたら載せます。