UL   作:招代

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よく見たら祝十話なんですね。
だからって何もないのは決まりきったことです。

十話って言いますと、
漫画とかの打ち切りは十話が多いですね。
あれ?
そう考えると十話って別に「祝」ってほどでもない気がしてきました。

それは置いといて、
後編をどうぞ。


第十話 『学校の七不思議』 後編

平成24年8月2日2:48

 4階を中央に向かって移動すること少し、中央階段横のトイレの前で三人は立ち止った。

「『呪いのトイレ。夜に4階トイレの入り口から4番目の個室に入ると戸が開かなくなり閉じ込められてしまうらしい』」

「どっちのトイレ?」

「男子トイレだ」

「よかったー……」

 大童が胸をなでおろす。

「私は入るの?」

「別に入っても問題ないだろ。誰も入っているわけでもなければ、校舎内にも誰もいないわけだしな」

「まあいいんだけど」

 そして三人は男子トイレに入った。

 

 

平成24年8月2日2:49

 辺りには良くあるトイレの臭いが立ち込めているが、比較的きれいに掃除はされているようだ。個室の扉や壁は高く、上にも下にも人が通れる隙間は無い。

「個室には誰が入るの?」

「どっちでもいいが、藤重の方が都合が良いな」

「わかったわ」

 藤重は個室のドアノブを掴むと、回して中に入り扉を閉める。鍵はかけていない。

「とりあえず実現はさせてあるから、出れないとは思うが一回試してみろ」

 

 ガチャ。グッ。

 ドアノブを回して押してみるが開く気配はない。逆に引っ張ってみるがやっぱり開かない。

「開かないわね」

 

 扉を挟んで大童の声がする。

「じゃあ下がっててね」

 

「わかったわ」

 言われたとおりに、服が壁に当たらない程度に下がる。

「下がったわよ」

 

「よし、やれ」

 その指示と共に背中の包みから刀を取り出す。

「了解」

 そして構えると、扉に向かって4回切りつける。

 

 それと同時に扉の向こうから藤重の声が聞こえた。

「危なっ!」

 いきなり扉を切られて正直個室側からしたら、たまったものではない。

「ちょっ、危ないでしょ!」

 

「下がっている限り大丈夫だ」

 平然と言いのける鏡。大童は刀をしまうと、

「もう少し待っててね」

 と言って、扉の中央あたりを足で押し込む。すると、扉に四角形の線が入りそれが徐々に大きくなる。そして最終的には四角が抜け落ちて四角い穴が開いた。

「もうこっちに来て大丈夫だよ」

 中から藤重が出きた瞬間、雑音が響いて消えた。

 

「確かに出れたけど……」

 個室から脱出した藤重は後ろを振り返る。

「これどうするのよ……」

 そこには四角くくり抜かれた扉。

「とりあえずくっつける」

「どうやって」

「とりあえずくり抜いた扉を持ってこい」

「了解」

 大童が扉を開けて四角形の木版を持ってくる。

「はい」

 それを鏡に渡す。渡された鏡はバックから何かを取り出した。

「なに、それ?」

「接着剤だ」

 言いながら接着剤を扉の断面につけていく。

「どうみても市販品なんだけど」

「市販品だからな」

「まさかそれでくっつけるつもり?」

「それ以外に接着剤に何の用途があるんだ」

「えー……」

 呆れる藤重を気にせず、鏡は接着剤を付け終ると扉の裏側から木版をはめ込んだ。

 何故裏側からかと言うと、少し断面が斜めっているためだ。

 

「これでまずはくっ付いたな」

「確かにそうだけど……」

 扉を見る。

「はっきりと線が出てるわよ」

 扉には四角形の線がくっきりと浮かんでいた。

「このままにするわけないだろ」

 そして取り出したのはスプレー。それを大童に渡した。

「これを全体的に掛ける。色は扉と同じで色あせた白だから問題ない」

「了解。これで線を消せばいいんだね」

 そして金属部分に当たらないようにスプレーを裏表に掛けていく大童。

 

 掛け終えて。

「終わったよー」

 線は見事に消えていた。ちなみに少しはみ出た部分は拭き取った。

「まあ……これなら確かにばれないわね」

 どこか腑に落ちなそうではあるが、とりあえず納得するしかない藤重。

「じゃぁ出るぞ」

 三人は男子トイレを後にした。

 

 

平成24年8月2日3:00

 トイレ前廊下。

「で、七つ目だが『――」

「ちょっと待って!」

「ん?」

 鏡の言葉を遮ると、恐る恐る聞いてくる。

「七つ目を知ると良くないことが起こるんじゃなかった……?」

「確かに多いよね、そういうの」

「この学校にはないな」

「それなら安心ね」

 ホッとする藤重。

「でも、あっても大丈夫だよ」

「……どうして?」

「七つ全部が実現しているなら問題だけど、ほら、こうやって消してってるし」

「それに七不思議を決めるのはこの学校の奴らだしな。切り離されたものもその内七不思議じゃなくなることもある」

「そういうことなら問題ないわね」

 

「で、七つ目だが、『異世界に繋がる大鏡。中央階段の踊り場にある大鏡の前に4時44分に立つと鏡から手が出てきて鏡の中の世界に引き込まれてしまうらしい』だな」

「聞いたことはある気がするわね」

「『4時44分』じゃなくて『鏡に映った時計の7時16分が4時44分に見えるから』ってパターンもあるよね」

「でも、4時44分ってまだまだ時間あるわよ」

 携帯を確認する。

「でも他のが夜指定だったし、しょうがないよ」

「まぁそうだけど」

 携帯を閉じる。

「とりあえず実現させておけば44分少し前には『大鏡』が現れるはずだから実現はさせておく」

「『大鏡』が現れるの?」

 踊り場を照らすとそこには大鏡が既に在る。

「超常現象ではなく妖怪の類になるからな。実際にそういうのいるし。かと言って、そういった大鏡は無かった」

「ふーん……それで、どの踊り場に実現するとかはわかるの?」

「絶対ではないが2階と3階の間の踊り場が怪しいな」

「そうだね。あそこだけ大鏡が無かったし」

 その発言に首を傾げる。

「そんなところ通って無くない?」

「音楽室から理科室に行くときに見えたから」

「よく見てるのね」

「まあね。で、夕夜。これは僕が逃げればいいんだよね」

「あぁ。だからとりあえず予想した場所に移動するぞ」

「了解」

 三人は階段を降りはじめる。

 

 

平成24年8月2日3:08

 現場に到着。

「確かにここに『大鏡』は無いわね」

「とりあえず実現させたが、さすがにまだ出てないな」

 さきほど移動中に雑音がしていたので、その時に実現はしたのだろう。

「問題はどっちに出現するかだね」

 そう言って前後を見る。

「やっぱり下りの方が楽?」

「そうだね」

「時間までかなり余裕があるから下準備するぞ」

「何をするの?」

「藤重は康が逃げやすいように玄関を開けてこい。校舎内よりはグランドの方が逃げやすいからな」

「わかったわ」

 頷くと、藤重は1階に下りて行った。

「3階の窓は開けておくから、お前は2階の窓を開けてこい」

「了解」

 鏡は上、大童は下に窓を開けに行った。

 

 そして藤重が戻ってきたときには二人とも戻っていた。

「開けてきたわ」

「うん。お疲れ様」

「それじゃぁ後は出現するのを待つだけだな」

「それまでゆっくりしてよっか」

「そうね」

 3人は階段に座って休む。

 

「それで」

 少しして、休んでいた藤重が一番初めの疑問を聞いた。

「結局どうして今回は時間指定があったのに大丈夫だったの?」

 その質問に大童は人差し指を立てて説明を始める。

「『大鏡』はこれからだから問題ないとして、『二宮金次郎』と『骨格標本』についてはさすがに分かるよね」

「それはわかるわ。憑依型だものね」

「うん。それなら他の『トイレ』以外の3つのを考えて欲しいんだけど、何か気づかない?」

「『トイレ』以外って言うと、『音楽教師』と『階段』と『ボール』よね……」

 下を向いて目をつぶって考え始める藤重。

 

 そして暫くの思考の後に顔を上げる。

「3つとも実現してすぐに内容通りのことが起こった……とか?」

 自信なさ気に大童の方を見る。

「そうだね。これは七不思議とかにありがちなんだけど、内容が短いから言霊によって引き起こされる現象や行動が一つしかないんだよ。だから実現してすぐにその現象とかが起こるってわけだね」

「でもそれがどう関係するの?」

「今までの時間指定を思い出してほしいんだけど、『口裂け女』も『テケテケ』も『ごみこさん』も必ず『出現』と『行動』の間に猶予があるよね」

「そうね」

「それがあるから『行動』の部分をさせないことができて、それで消滅させられるっていうのは分かるよね」

「つまり……今回のはそれがないってこと?」

「うん。今回のは『出現』と『行動、現象』が一緒になっててそもそも、時間経過で消滅ができないんだよ。だから何をしようと時間が終われば消えて、また時間が来たら現れるわけだね」

「なるほどね……時間経過で消される心配がないから、その範囲内なら問題ないのね」

「そうだね。それで『トイレ』も結果的にはそうなんだけど、理由が少し違ってね」

「どういうこと?」

「『トイレ』はそもそも入って初めて閉じ込められるんだから、入らなかったら別にそれはそのままで、内容には全く関係ないんだ」

「まあ……確かに入らないと閉じ込めようがないものね」

「入って初めて『出現』と『現象』が起こるからね」

 説明が終わり、藤重は上に伸びをする。

 

「ん……これでようやくスッキリしたわ」

「よかったね」

 それからも雑談などで時間は過ぎていく。

 

 そして4時34分。明るくなってきたころ、鏡が立ち上がった。

「あと数分で出現するだろうから、念のためそれぞれの踊り場に分かれるぞ。康は一番可能性の高いここ。藤重はどっちでもいいから自分で決めろ」

「どっちでもいいけど下にするわ」

「なら上に行くか」

 3人は再びばらける。

 

 その5分後。大童の前に『大鏡』がスッと現れた。場所は上り側の壁だ。

「でたよー」

 二人に聞こえる程度の声で知らせると、上下から階段を下りる音と上る音がする。

 

 再び集合をする三人。

「他のと大して変わったところは無いわね」

 『大鏡』をまじまじと見ている藤重。

「よかったな。これなら下に逃げやすい」

「そうだね」

「ねぇ、これを壊すわけにはいかないの?」

 『大鏡』をノックしながら問いかける。

「破片から『手』が出てきてもいいならやるといい」

「……やめとくわ」

 そう言ってノックも止める。

「じゃ、捕まらないようにな。藤重、巻き込まれないように下に行くぞ」

「わかったわ。気を付けてね、大童君」

「気を付けるよ」

「時間が近くなったらカウントするから0で逃げろ」

「了解」

 そう言って、二人は2階西側の廊下の方に避けた。

(よし……!)

 心の中で気合を入れて『大鏡』の前に立ち、時間を待つ。ただし、前と言っても下る階段の方にいるので目の前ではない。距離は多少ある。

 

「10秒、9、8、7、6、5」

 

 鏡のカウントが始まり、大童は逃げの体勢をとる。

 

「4、3、2、1、0」

 

 それと同時に鏡の方を確認せずに階段の淵に足を掛けて一気に下まで跳び降りる。山なりではなく、ほぼ直線的だ。

 後ろでは『大鏡』からでてきた少し白く濁った感じに透けた『手』が複数、大童を追いかけていた。

 階段から跳び下りた大童は難なく着地し、膠着時間なしで走る。その方向は下へ向かう階段ではなく、先ほど開けた2階の廊下の窓。

 

「え」

 

 そんな声が聞こえた気がしたが、大童は気にせず走り、窓から少し離れ場所で跳んで枠を乗り越えて空中に身を投げる。通過した時にサッシを蹴って加速することを忘れない。そして勢いよく落ちていく大童。

 

「……は?」

 大童が飛び降りたのを見た藤重は少し呆然としたが、『手』が大童を追って外に出たのを見て、

「何やってんの!?」

 今起きたことを理解し、窓に駆け寄って外を確認する。

 そこには問題なく走って逃げる大童の姿があった。

「びっくりしたぁー……」

 窓の手すりにつかまって脱力する。するとその様子を面白そうに見ていた鏡が言った。

「あいつなら4階くらいの高さは余裕で着地できるぞ」

「だとしても心臓に悪いわよ……」

「まぁ、あの調子なら問題なく逃げれそうだ」

「……そうね、明らかに『手』より速いわ。でも前々から思ってたけど、あれ、どう見ても人間の速度じゃないんだけど。速度だけじゃなくて身体能力も」

 そう、大童を目で追いながら問いかける。

「その辺は気合と言うか、『気』による身体能力の強化だな」

「今度は『気』なのね……もう魔法もあるんじゃないかって思えてくるわよ……」

「そうだな。ちなみに康は身体能力だけじゃなくて、武器とかも強化可能だ。してないけど」

「ホントなんでもありよね。実は『気』を飛ばせるって言われても不思議じゃないわね」

「武器に気を乗せてもまだ放つことはできないな」

「ってことはその内できるようになるのね……」

「今後次第だな」

「もう……なんなのよ」

 溜息をつく。

 

「だが、Bランクになるには『気』とかによる身体能力の強化くらいはできないとな」

「ハードル高いわね」

「お前も入社したらすこしその辺はやってみればいい。『気』は誰にでも使えるからな。もちろん才能云々はあるが」

「そうしたら頑張るわよ。上のランクに行くには避けて通れないんだから」

「ま、無理しない程度になっと……そうこうしている内にそろっと時間だ」

「1分間だものね」

 

 そして、雑音と共に最後の『七不思議』が消滅していく。

 

「終わったし、玄関に行くぞ」

「そうね」

 二人は階段を下りて玄関に向かう。

 

 

平成24年8月2日4:45

「お疲れ様、大童君」

 玄関につくと、向こうから歩いてきた大童に労いの言葉を掛ける。

「ありがと、藤重さん」

「仕事も終わったし、とっとと学校を出るぞ。見つかると面倒だしな」

「了解」

「わ、わかったわ」

 三人は少し駆け気味で古川小学校を後にする。

 

 

平成24年8月2日4:46

 校門前。

「今回のは七つそれぞれで報酬が出るからそれなりの値段になるぞ」

「でも安そうなのが多そうだけど」

「最後のはBランクだしな。問題ない」

「普通の速度じゃ逃げられないしね」

「それもそうね」

 そして三人は途中までは同じなので一緒に帰ることになった。

 

 その中の一場面。

「あの小学校、『トイレの花子さん』が無かったわね」

「『花子さん』なら学園に居るぞ」

「……」

 顔が固まり、ゆっくりと鏡の方を見る。

「……どこの?」

「基本的には都学園の小等部校舎にいる」

「……」

「もしかしたら肝試しの時に会えるかもな」

「…………」

 その後、復活した藤重はよく喋っていたが、肝試しの話題には率先して触れなかった。

 

 

 肝試し当日。それなりの人数が幽霊を目撃したという証言が多数あった。

 その中で、藤重が『トイレの花子さん』にあってしまったことは想像に難くない。

 

 

 

第十話『学校の七不思議』終了。

 




ちなみに『トイレの花子さん』は妖怪扱いなので、
『花子さん』が姿を見せようと思えば誰にでも見えます。
……要するにそういうことです。

次回の投稿はPCが土日に使えないので、
金曜に投稿できなければ月曜になります。

正直二日で投稿は厳しいので月曜の確率が高いかもです。
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