UL   作:招代

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朝、
仕事に行こうと自転車を見たら後ろのタイヤの空気がなくなってました。
とりあえず空気を入れて様子を見ること数日。

特に何もありませんでした。
パンクしていたわけではないのか……?

そんなよく分からない出来事は放っておいて、
後編を投稿します。



第十二話 『トンカラトン』 後編

平成24年10月14日15:26

 一台の車が止まり、藤重が中に乗り込んで車が発進する。

「今回は矢を二種類用意した」

「二種類?」

「威力重視と、切断重視だな」

「使い分ければいいのね」

「威力の方は自転車に、切断は腕や足に使えばいい」

「わかったわ」

 そこで鏡がバックミラー越しに藤重を見る。

「本当は威力重視でもお前次第では腕とかを吹き飛ばせるんだがな」

「そうなの?」

「あぁ。だが文字通り吹き飛ぶから、相手の刀も吹き飛んで危ない。最悪予想外の動きで康に当たらないとも限らないしな」

「わ、わかったわ」

「ただ、足なら狙ってみてもいいぞ」

「足、ね……わかったわ」

 そう呟くと、考え込み始めた藤重。鏡はバックミラーから目を離す。

 そんな会話を聞いていた大童は頭の中で、もしもの時のシュミレートをしていた。

 

 

平成24年10月14日15:58

 目的地に到着。そこは古さを感じさせる場所で、向こうまで木の塀が続いている。その気の塀も所々ぼろくなっているところがあり、それがまた古さを引き立てている。あたりは薄暗くなり始めていて、街灯がつき始めた。

 三人は前後の曲がり角からの距離がだいたい同じになる場所に立っている。

「実現させる前にこれだ」

 そう言って取り出したのは、何時ぞやのイヤホン。

「『テケテケ』の時のやつね」

 二人は受け取って耳につける。

 

「また指示は出すから、その通りに移動しろ」

「了解」

「それと」

 鏡は藤重を見てから辺りを見回して、

「この辺りの塀は木だからな。矢を外して射抜いたり粉砕するなよ」

 再び藤重を見て言った。

「……気を付けるわ」

「で、これが矢だ」

 4つの矢筒を渡す。そのうち二つの入れ物が赤っぽい色にザラザラした触り心地。もう二つは青っぽい色にツルツルした触り心地だ。

「何で4つ?」

 それを受けとった藤重が、矢筒を見ながら聞いてくる。

「赤でザラザラのが威力重視。青でツルツルのが切断重視。それと今回はそんなに移動しない予定だから、予備として二つずつだ。これで大童が拾う必要もなくなるだろう」

「そういうことね」

「だが、もしなくなったら返してやれ」

 大童を見る。

「うん。了解」

「それじゃぁ、実現させるから準備しておけ」

「ええ」

 鏡はパソコンを操作し始め、二人はそれぞれ刀と弓を持って準備万端にする。

 

「実現まで10秒、9、8」

 カウントダウンの開始に、大童と藤重があたりを警戒し始める。

「7、6、5、4、3、2、1、0」

 そしてあたりに雑音が……

 

「あれ」

 響かず、大童達の向いている方の曲がり角の方から僅かに音がした気がする程度だった。

「今回は内容的にそんなに近くに実現はしなかったね」

「とりあえず向こうに歩いていけばいいかしら」

「そうだね」

 頷いた大童を見て、歩き出す。

 

 そして歩きだして、あと数十mで曲がり角と言う所であの歌が聞こえてきた。

 

「トン、トン、トンカラ、トン」

 その歌に感情は無く、とても不気味に聞こえる。その声も、おおよそこの世のものとは思えないような、低く響く重い音だった。

 

「……これね」

 その気味悪さに藤重は表情を固くするが、そのまま歩いていく。

 

 そしてそれは現れた。『自転車』をこぎながら。その目と口と思われる場所はただただ真っ赤で、それがまた不気味さを際立てている。

「……」

 『トンカラトン』は藤重の横に来て止まると、背の『日本刀』に右手をかけて内容通りに問いかけてくる。

「トンカラトンと言え」

 対して藤重は言われたとおりに慎重に返す。

「トンカラトン」

 すると『トンカラトン』は『日本刀』から手を離し、無言で『自転車』をこいで横を通り過ぎていく。

 

「……はぁぁ」

 緊張の糸が切れたのか、膝に手をつきながら盛大に溜息をする。しかし、

「……よし!」

 すぐに体制を起こすと気合を入れると、『トンカラトン』に追いつかないように、大童のもとに向かった。

 

 その大童の所に『トンカラトン』がきて、『日本刀』に手を掛けながら問う。

「トンカラトンと言え」

「……」

 その問いかけを大童は無視すると、無言で『日本刀』を持つ側の脇から首にかけてを斜めに切りつけて、自転車を前方に蹴飛ばす。自転車があったため数mしか飛ばなかったが、結構うるさい。切られた上部分は軽い金属音を立てて地面に落ちた後、吹き飛ばされた方へと合流し始める。

 

 そして蹴り飛ばされた『トンカラトン』は修復を終えると、『自転車』には乗らずに、『日本刀』を持ち大童に向かって歩いてくる。

 その時。

 

 パァン! ガッ。

 足の付け根が吹き飛び、『トンカラトン』が倒れる。ついでに地面が少し傷ついた。

 

(これ地面壊れたりしないわよね……)

 それを見て藤重は少し冷や汗ものだったが、修復して立ち上がるのを見ると次を番えて放つ。今度は切断用だ。

 

 矢は相手の手首を切るが、手首なのでそのまま歩き続ける。

(……まぁ、とりあえず矢は試せたし)

 そんなことを思っている間にも腕はすぐに修復を終える。藤重は赤っぽい矢筒から矢を取り出して番えた。

 

 地面に転がっていた矢を横に避けて、今再び目の前で足を吹き飛ばされた『トンカラトン』を見る大童。

(今回は相手が走らなそうだし随分と簡単かも)

 『トンカラトン』の足を貫通して自分の足に飛んできた矢を、足をあげて避けながらそう思う。

 転んだ『トンカラトン』は修復をして起き上がると、目の前の大童に『日本刀』を斜めに振り下ろした。その速度はその辺の人が見れば速いだろう。が、

 大童はそれを少しだけ下がって避けると、相手が切り返す前に前進し右から左にに腕ごと両断する。そしてその勢いのまま半回転すると少し跳びながら、踵部分で相手の上半身を蹴り飛ばした。今回は藤重のところまで吹き飛び、相手の刀が腕ごと再び地面に落ちる。

 

「わっ! ……とと」

 大童に蹴り飛ばされてきた『トンカラトン』を見て、矢を番えていた藤重はすぐに弓を下ろすと慌てて大幅に下がった。全身包帯が飛んで来れば驚くのも無理はない。

(と、とにかく落ち着かないと)

 そうして落ち着こうとしている間に、『トンカラトン』は大童の方をベースに修復を肩部分まで終えていた。

 

 その為、頭無しの『トンカラトン』は腕がくっつくと同時に切り上げる。

(そう言えば基本的に「切る」だけで、「突き」はしてこないんだよね)

 切り上げられた『日本刀』の側面を下から弾いて軌道を逸らしてから切らずに後ろに下がる。

(力はあっちの方が上かな)

 

 パァン!

 

 今度は相手の腹に大穴があいた。ただ、キレイに真ん中だったために両端が繋がっているので、そのまま相手は動き続けている。どうやら藤重は体を吹き飛ばしてみようとしたらしい。

(これは……)

 矢を避けてその状態を確認した大童は、何を思ったのかすぐに相手の左手側に駆けると、相手の『日本刀』を姿勢を低くして避け、通り抜けざまに繋がっている片方を切断。

 『トンカラトン』は大童が後ろに行ったために振り向こうとしたが、片方しか繋がっていないために上半身がずり落ちそうになる。

 しかし、それより早くブレーキをかけて方向転換した大童が、落ちかけた上半身に回し蹴りをする。もちろん『日本刀』に当たらないようにだ。

 蹴られた『トンカラトン』の上半身は繋がっている部分を軸にして、勢いよく数回転の後、捻じり切れた。

(うん)

 満足げな大童。

 

 一方それを見ている藤重。

(また……何やってるのよ……)

 やっぱり呆れていた。

 

 それからまた『トンカラトン』を挟むような位置になって戦うこと約15分後、通信が入る。

『藤重側から人が来るから、大童側十字路を左、その次を右に行け』

「了解」

 大童は思いっきり後ろに下がると曲がり角に向かう。

 それを『トンカラトン』はわざわざ『自転車』に乗って追いかける。

 それを藤重が追いかける。この時に矢筒の移動も忘れない。

 

 曲がり角を左に曲がった大童は次の曲がり角付近で待つ。一応『トンカラトン』が自分を見失わないためにだ。そして『トンカラトン』が現れてある程度進んだところで、右の道に入っていく。

 その道はさっきよりやや狭い。

 大童は道を40mほど進むと、そこで相手を待ち受ける。

 

 ほどなくして『トンカラトン』が『自転車』に乗って現れ、近づいてくる。

 ある程度近づいてきたところで大童は、『自転車』をこいでいるために『日本刀』を背負っている『トンカラトン』に、こっちから近づいていく。そして、『日本刀』に手を掛ける前に『自転車』の前輪を軽く足で払ってバランスを崩させる。

 『トンカラトン』は倒れながらも『日本刀』を抜いて切りかかるが、それは簡単に弾かれて結局そのまま倒れる。自転車も倒れたためにそれなりの音がした。

 大童は『トンカラトン』が倒れた後もそのまま切りかかってきたので、それを軽くジャンプして避けて後ろに下がる。その目は『トンカラトン』ではなく、今来て矢を番えている藤重を見ていた。

 

 藤重は倒れた『トンカラトン』が立ち上がろうとする隙を見計らって、肩に威力重視の矢を放つ。

 放たれた矢によって『日本刀』を持つ肩が破裂した。少しぐらつくが片手で立ち上がる『トンカラトン』。破裂した時に手をついていたので腕は吹き飛びはしなかった。その辺は先程お試し済みだ。

 

 『トンカラトン』はすぐに修復を終えて立つ。

 

 その後も切ったり避けたり、3回ほど移動したり、そして時間が来た。

 

 あたりがすっかり暗くなった頃。

 『そろそろ消える』

 通信通りに雑音にあたりが包まれる。

 「了解」

 それを聞いて大童は、近くにあった『自転車』を掴むと『トンカラトン』に投げつける、と同時に、一気に近づいて『自転車』がぶつかるのと同時にそれごと相手を一刀両断する。

 消えていく『トンカラトン』。

 

 大童は消えたのを確認してから刀をしまう。前を見ると藤重がこっちに歩いてくるのが見えた。

「いや、何自転車ごと切ってるのよ……」

 近くにきた第一声がこれだった。

「気を纏わせれば問題なくできるよ……纏わせてないけど」

「……はぁ」

 と、車が近くに止まる。

「終わったし帰るぞ」

「了解」

「わかったわ」

 二人は車に乗り込んで現場を離れた。

 

 

平成24年10月28日20:32

 一気に日は過ぎて文化祭が終了し、また実行委員になっていた大童はキャンプファイヤー、もといゴミ(生ゴミ以外の燃えるゴミ)の焼却の見張りをしていた。

「よー」

「お疲れ、大童君」

「あ、二人とも。クラスの方は終わったの?」

「ああ、さっき誰かしらがゴミを燃やしに来ただろ」

「そうだね」

 そう言って近づいてくる二人。

 

「で、どうだ。今年も楽しめたか」

「そうだね。楽しかったよ。ね?」

 隣に来た藤重に問いかける。

「そうね。楽しかったわ」

 ちなみに最終日、大童と藤重は一緒に周っていた。

「そうか。ならいい」

「夕夜は今日、どこ周ってたの?」

「また調子に乗ったゲーマーがいてな」

「あー……またいたんだ」

 苦笑いする大童。

「『また』って、去年もいたの?」

「うん。あ、でも去年は『自称ゲーマー』だったね」

「そうだな。今年はなかなか上手い奴だった」

「……それで、その人がどうかしたの?」

 去年のことが分からないので、話は分からないが嫌な予感のする藤重。

「あまりにも調子に乗っていたから、片手で叩き潰してきた」

「なにやってるのよ……」

 溜息をつきながら呆れる。

「だがそういう奴がいると、楽しい雰囲気に水を差す感じになると思わないか?」

「確かに悪い意味で調子に乗ってたならそうなるかもしれないけど」

「ならいいだろ。それと、ゴミがきたぞ」

 大童が鏡の向いた方を見ると、生徒が廃材を持ってくるところだった。

「ホントだ、じゃあちょっと行ってくるね」

 大童は廃材へ歩いて行った。

 

 そんな感じで文化祭最終日は終わっていく。

 

 

 

第十二話『トンカラトン』終了。

 




UAが500を超えたみたいです。
正直UAについてはよく分からないので「区切りがいいなー」程度なんですが、
とりあえず500回くらい目次とかが開かれたってことですかね。

やっぱりよく分からないので気にせず行こうと思います。


次回の投稿は十六話を途中まで書いたら載せます。
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