湿度高くてムシムシします。
そろそろ扇風機の出番だろうか……。
実は前回の投稿の時点では十六話は全然書けていませんでした。
題材決まって都市伝説の内容を書いたくらいだったんです。
今は書き終えることができたので問題ないのですが、
こういうのはこれっきりにしたいですね。
ホントに書き終えられてよかった。
なので安心して後編を投稿です。
平成24年11月23日16:37
少し走って車内。
「これを着く前に覚えとけ」
運転しながら渡したのは紙。
「これはー、地図だね」
「工場の地図だ。逃げるにしてもこれがないとな」
「そうだね」
大童は受け取ると地図を覚え始めた。
平成24年11月23日16:57
目的地に到着し、藤重が起こされて向かったのは建物の入り口前。もちろん鍵は壊されている。
「暗いわね……」
僅かに開いている扉から見える中は真っ暗だ。外は月明かりがあるので今日は真っ暗ではない。
「ほら」
と、鏡が藤重に何かを手渡す。
「なにこれ」
藤重も、あたりが暗いので判別できない。
「前に使った暗視ゴーグルだ。ここまで真っ暗だと夜目も糞も無いからな」
「それもそうね……でも、大童君は見えるんでしょ?」
「うん。バッチリ見えるよ」
「ホント凄い夜目ね……ちょっとこれ持ってて」
言いながら弓をいったん大童に預けて、暗視ゴーグルをつける。そして弓を受け取る。
「ありがと」
「どういたしまして」
藤重は当たりは見まわす。
「うん、よく見えるわ。少し視界が狭いけど」
「ゴーグルだし仕方ないよ」
「転ばないようにな。特に階段と段差」
「気を付けるわ」
「それで、これが今回の矢だ」
今度は矢筒を渡す。それを受け取った藤重は首を傾げた。
「いつもより大きいけど、軽い?」
「長時間のことを考えて軽量にした。尚且つ、数もいつもより入るように容積を増やして、矢自体も少し小型だ」
「そうなの?」
中を覗くと何時もより多くの矢が入っているのが分かる。
「ただ、いつもより脆く、威力が低いからその辺は気を付けろ」
「わかったわ。上手く当てろってことね」
矢筒を背負う。
「じゃぁ実現させるから準備しろ」
「了解」
鏡はパソコンを取り出して作業を始める。
少しの後。
「実現した。電話を掛けろ」
「了解」
大童はポケットから電話を取り出して、内容通りの番号にかける。
少しの待ち時間の後、電話がどこかに繋がった。しかし、聞こえてくるのはノイズのような音だけ。
それを確認して、大童は電話を切った。
「後はかかってくるのを待つだけだね」
その直後、着信音が鳴り響く。同時に藤重はビクッとしていた。
「は、早いわね……」
「もう夜だしね」
大童は電話に出ると、耳元に持って行く。相変わらず聞こえるのはノイズだ。
「そろそろ来ると思うから、警戒しててね。今回は雑音はしないから」
「……分かったわ」
電話を切ってポケットにしまうと、大童も周りを警戒し始める。
数分後。藤重の目が門の所に現れた人影を捉える。それはこっちに少しずつ向かってきているようだ。
「門の所に何か来たわ。多分『お菊ちゃん』だと思うけど」
「どのくらいの速さ?」
「そんなに早くないと思うわ。歩きより少し早いくらい」
「そっか。じゃあとりあえず逃げよっか」
大童はドアを開けると、歩きながら中に入っていく。藤重もその後を追った。
平成24年11月23日17:09
工場の建物内を歩いている二人。
「これってどこに向かってるの? というか歩いてていいの?」
不安そうに小声で尋ねる藤重。
「とりあえず屋上かな。ここの屋上は地図を見た限り、行き方が複雑みたいだから。それに相手はそんなに早くないみたいだし、ほら、障害物も簡単にだけど置いてきたから」
これまでの道中、大童は机や棚などで簡易的ではあるが道を塞いできていた。簡易的なので簡単に乗り来られるのだが。
「そう……ならいいんだけど」
それでも辺り、特に後ろを気にしながら歩く藤重。正直、落ち着きがない。
「……」
それを横目に見ていた大童は何を思ったのか、後ろを向くと、いきなり藤重の空いている手を握って立ち止まった。
「なっ、ななななに!?」
突然のことについ大声を出してしまう。大童は握った手に、さらにもう片手をのせると、藤重の目(暗視ゴーグルは不透明なので本当に目かは不明)を見て、
「大丈夫。絶対に逃げ切るから」
力強く言った。
……でもやっぱりかっこ悪い気がする。
「……」
それに対して藤重は小さく頷くと、それからはキョロキョロせずについてきた。手はつないだままで。
(やっぱり藤重さんは手を握ると落ち着くのかな。昨日もそうだったし。そういえば、赤ちゃんにも指を握らせたりするけどー、関係あるのかな? うーん……今度調べてみようかな)
どこか的外れなことを思いつつ歩き続ける。
(それにしても……あったかいね……)
手から伝わる体温に懐かしさを覚えながら……。
平成24年11月23日17:27
屋上。
「少し寒いわね……」
11月なので元々気温は低いのだが、地上より風があるためさらに寒く感じる。それでもそれなりの服装の為「少し」で済んでいるのだ。
「とりあえずベンチで休もっか」
大童は手を離すとベンチの方に歩いていく。
「そうね」
藤重も後をついて行って、二人はベンチに座った。
「ふぅ……」
藤重は息を吐くと、暗視ゴーグルを取り外した。
「大丈夫?」
「まだまだ大丈夫よ。歩いただけだし」
「そっか。でも本当に疲れたら言ってね。無理は良くないから」
「分かったわ」
二人は街の方を見ながら会話をする。屋上への扉は閉めたので、開けば分かる状態だ。
「景色は良いんだけど……パイプみたいなのが少し邪魔ね」
「そうだねー。でも無くすわけにもいかないし」
「それはわかってるわよ」
「あ、コーヒー飲む? カフェオレでもいいよ」
缶を二つ取り出して見せる。見せても見えないのではあるが。
「カフェオレを貰うわ」
「ならこっちだね」
右手の缶を藤重に渡す。
「ありがと」
二人は缶を開けると飲み始めた。
「でもこんなにゆっくりしててもいいのかしら……?」
「んー、まだ来ないみたいだし、ゆっくりできる時にしておかないとね」
大童は携帯を取り出して開くと、また閉じてポケットにしまった。
「まだ一時間も経ってないし」
「……全然ね」
「だからこういう時に休んでおかないと」
「先は長いものね」
そうして二人は『お菊ちゃん』が来るまでゆっくりと休むことにした。
その30分後くらい。後ろで扉が開く音がした。
「!」
藤重はすぐに暗視ゴーグルをかけると、後ろを見る。
「来たわね……」
先ほどは遠すぎて詳細までは分からなかったが、今回は近いので『お菊ちゃん』がしっかりと見えた。
その服装はよくある時代劇の女性のようで、あまり足を動かしていないためスーッと動いているように感じる。
「じゃあ逃げよっか」
「わかったわ……って! 何処に逃げるのよ!?」
藤重は周りを見るがここは屋上。馬鹿と煙は高いところが好きらしいが、大童に限ってそんなことは無い。あるはずがなかった。
「ちょっとごめんね」
「へ」
大童は勝手に断りを入れると、無断で藤重をお姫様抱っこする。右手は矢筒と体の間に入れて。
「口は閉じてて、危ないから」
「へ、え……ちょっ」
外側に向かって駆ける。人ひとり抱えていても相変わらず速い。
「ちょっ、ちょっと!? 待っ――」
その制止の声を聞かずに、大童は空中に向かってジャンプした……!!
そしてここは空中。もちろん落下する。
「――! ――!!」
声にならない悲鳴。
「大丈夫だよ」
とは言うが、藤重からしたらたまったものではない。冷静でいるほうが無理だ。落下は続く。
そのまま大童達は地面……ではなく太いパイプの上に着地した。高さの割に大したことの無い衝撃が藤重を襲う。着地が上手かったのだろう。
「……」
「えっと……大丈夫?」
プルプルと震えている気がする藤重を心配する大童。だが、
「んなわけないでしょ!」
そう、そんなわけない。当たり前だ。
「いきなり飛ぶとか何考えてんのよ! おかしいでしょ!」
「いや、でもあそこから逃げるならあれが一番だし……」
「だとしてもっ! せめて一言言ってからにしなさよ!」
そう言う問題だろうか?
「え? 断りは入れたけど……」
「言ってないわよ!」
「言ったよ。ほら、『ちょっとごめん』って」
「……」
しばしの沈黙。
「そっちじゃないわよ!」
「ええ……」
「そっちじゃなくて……って、あ」
と、ここでようやく自分の状態を思い出す。
「……」
大人しくなった藤重を見て、大童が告げる。
「じゃあ下に降りよっか。このままだとアレもこっちに来るからね」
角度的に『お菊ちゃん』は見えないが、いるであろう屋上を見上げている。
「え、えぇ……」
こくん、と頷きかけて、
「……え?」
「行くよー」
一言言って、了承も得て、大童は再び跳び下りる。
「――!」
本日二度目の声にならない悲鳴。ただ、口を開いていたら夜の工場に悲鳴が響き渡っていたことだろう……。
平成24年11月23日18:12
「っと」
着地。
「大丈夫? 藤重さん」
抱えられている藤重はぐったりしていた。
「だ、大丈夫なわけ……ない、でしょ……」
息も切れ切れだ。
「じゃあ……んー」
大童はそんな様子の藤重を見て悩む。その時、
ゴシャッ!!
そんな感じの、何かが弾け飛ぶような音が少し後ろで聞こえた。
「……何? 今の音」
音の正体が気になるが、嫌な予感がするので自分では確認しない。
「『お菊ちゃん』が弾けとんだ音だね。基本的に人間よりも脆いし、骨も無いから」
「落ちて……?」
「うん。僕たちがここに居るから追いかけるために落ちてきたんだよ」
「階段はちゃんと上るのに、屋上からは跳び下りるのね……」
「そうだね。とりあえずー……逃げよっか」
そのまま大童は逃げようとするが、
「いゃ……そのー……お、降ろしてくれない?」
うつむき加減の藤重が遠慮がちな声で言う。
「でもさっきグッタリしてたし、僕なら藤重さんを抱えてても問題ないから無理しなくていいよ?」
本当に心配そうな大童が藤重の顔を覗く。
「だ、だだ大丈夫だから」
心配する大童に、焦ったように返事をする。
「……? ならいいんだけど」
「……ええ、大丈夫よ」
疑問に思いながらも、言うとおりに藤重を降ろす。降ろされた時に若干ふら付いたが、藤重は問題なく立った。
「じゃあ早く逃げよ。もうだいぶ直ってるし」
後ろを見ると、バラバラに飛び散った『お菊ちゃん』の上半身が完全に修復されていた。
「そうね」
二人は早歩きでその場を離脱する。
二人が去った後、修復を終えた『お菊ちゃん』は再び大童を追いかけ始めた。
平成24年11月23日18:30
また屋上。
「って、また跳び下りる気?」
藤重が身構える。
「駄目?」
「できれば嫌ね」
「うーん……」
口元に手を当てて考え込む大童。
そして閃いた。
「じゃあこうしよっか」
作戦内容を藤重に話す。その作戦に藤重は関係ないが。
その40分後ぐらい。『お菊ちゃん』が現れ、大童に向かっていく。
端に立つ大童はそれを確認すると、刀を取り出し構え、相手を待ち受ける。
互いの距離が後少しと言う所まで縮まる。
『お菊ちゃん』の手が大童に触れようとするかのように伸ばされた。
大童は冷静に伸ばされた手を切り落とし、触れられないようにする。
それでも前進してくる『お菊ちゃん』。
大童は右足を斜め前に出すと、その足を軸にして反時計回りに回転し相手が向こう側に落ちるように角度をつけて切断する。そして、足がこちらを向かないようにように足同士の繋がっている部分も切り離した。
落ちていく『お菊ちゃん』の大部分。
数秒後、地面に衝突した小さな音がした。
こちらに残った手足はすでに大部分の方へと合流を始めている。
「上手くいったね」
「いき過ぎなくらいよ」
そう言って、下を覗きこむ藤重。
下ではすでに『お菊ちゃん』が立ち上がり始めていた。
「また上ってくるまで休んでよっか」
「……それ以外にやる事も無いじゃない」
二人はベンチに座ってまた『お菊ちゃん』が来るのを待った。
その後も切って回転して切って落として休憩してを繰りかえりたり、時には壁につかまった手を射抜いて落としたり、ただひたすらに休憩と『お菊ちゃん』を落とす作業が続いた。
そんな中の一場面。
「……大丈夫? 眠そうだけど」
「大丈夫……よ」
時間は翌日になり数時間たったころ、さすがに眠いのか藤重がうとうとし始めている。声も眠そうだ。
(どう見ても大丈夫そうに見えないんだけど……どうしよ? 藤重さんは狙われてないからこのまま寝ちゃってもいいんだけどー……)
「んー……あ、そうだ」
何かを思いついて、ポケットを漁る。
(これを試して駄目だったら放っておこうかな)
「藤重さん口開けられる?」
「ん、んー……」
寝ぼけているのか、返答はないが素直に口を開ける藤重。
「はい」
そしてその口に取り出したものを放り入れる。
「……」
しばしの静寂の後。
藤重が目を押さえ、大童が包み紙を渡す。それを受け取って口の中のものを包んだ藤重は涙目で大童を睨んでいたが、おかげで目が覚めたようで、その後はうとうとすることはなかった。
6時をちょっと過ぎた頃、丁度『お菊ちゃん』が地面に落下したところで雑音が鳴り始める。距離があるので音は小さいが。
「終わったみたいだね」
「じゃあ下に戻りましょ。とにかく今は寝たいわ……ふぁ」
欠伸をする藤重。
「それなら跳び下りる?」
「普通に降りるわ」
大童の提案を即座に却下し、藤重は扉に向かう。その後を大童もついて行った。
平成24年11月24日6:33
「戻ったか」
大童たちが戻ると既に車が停まっていた。
「うん」
「ならとっとと帰るぞ」
「了解」
3人が車に乗り込むと、車は発進する。
藤重は疲れなどからすぐに車の中で寝てしまい、やはり起きたのは家に着いてからで、起こしたのは大童だった。
第十三話『チェーンメール』終了。
前回の投稿の後、
見直したらものすごく修正点がいっぱいあってですね。
もしかしたら暑さで少しおかしくなってしまっているのかもしれません。
早く涼しくならないだろうか……。
次回の投稿は十七話を途中まで書いたら載せます。
しっかり途中まで書いてから載せなければ。