今週は朝の4時起き。
なんということだろうか……大童より早い。
と言っても睡眠時間は変わらないから問題ないはずなんですけどね。
はずなんですが、
どうにも気分が微妙です。
この時間に起きなれていないからだろうか?
それじゃあ十六話前編を。
あるトイレに女性が入ってしばらくすると、
こんな声が聞こえてきた。
「赤い紙と青い紙、どっちが欲しい?」
このときに赤い紙と答えると全身を切り刻まれて血で真っ赤になり、
青い紙と答えても体中の血を抜かれ真っ青になって殺されてしまう。
助かるためには黄色い紙と答えるといいらしい。
平成25年2月22日18:41
学年末テストが終わって、テストも帰ってきた。そして今日は個人面談のあった日。進路調査自体は前々からあった。
その日の大童の部屋。
「今日の面談で就職するって言ったら驚かれたわ」
「あ、僕も先生に驚かれたよ」
「基本進学校の上に、お前等は成績も良いしな。驚くのも無理はない」
「でも就職先がULに決まってるっていたら、嬉しそうだったわ……というより言ってよかったのかしら?」
「僕もそんな感じだったけど、別にULに就職するってだけならいいと思うよ。いつまでも言わないわけにもいかないんだし」
「それもそうね。鏡君はどうだったの?」
「特に問題は無かったな」
本を読みながらそっけなく答える。
「そう」
「そう言えば、藤重さんは親にULに就職するって言ったの?」
その言葉に僅かにギクッ、とする。
「……まだしてないわね。どう説明していいかもわからなかったし」
(若干の後ろめたさもあるし……)
「んー……確かにどうやって説明するかは大事だよね。そのままを言うわけにもいかないし」
口元に手を当てて悩む様子の大童。
「とりあえずスカウトされたってことにするしかないよね」
「まあ……この時点で決まってるならそれしかないわね」
「あとは何処でスカウトされたとかも考えないと」
「そうね」
相談し、考える二人を余所に鏡はただ本を読んでいる。
「学校とかこの辺りっていうのはー……やめた方が良いかな。現実的じゃないし」
「そもそもスカウト自体が現実味のある話じゃないんだけど、そこは仕方ないわよねー……」
溜息をつく藤重。
「でもそうなるとどうしよ? 多少無理矢理にするしかないかな」
「そうねー。だったら学校とかでも良い気がするけど」
「さすがに学校は無理があり過ぎるんじゃない? 何でULの人が学校にいたのかとか、何で2年なのかとか、何であの生徒の数の中で藤重さんだったのかとか、スカウトされていたところを誰も見ていなかったのもあの人目の中ではおかしい気がするし。そもそも来客とかの記録はあるだろうから、学校側に確認されたら駄目だよね」
一気に喋りきった大童は、麦茶を飲んだ。
「……そうね」
「とにかく、スカウトされたからには何か特出したものを探さないと」
「特出って言ってもー……成績は悪く無いとは思うけど、上位ってほどじゃないしー……何かの役職についてたわけでもないしー……あ」
そこでようやく思いつく。
「ん?」
「弓道なら優勝してるわ」
「あ、それがあったね」
手をポン、と叩く。
「ならそれを軸にして考えようか」
「わかったわ」
「スカウトされた場所は大会のあった会場。日にちは優勝した日かな」
「確かに多くは無いけどスポンサーみたいな人たちも来てたし、いくらか話しかけられたりもしたから学校よりはいいと思うわ」
「じゃあ日と場所はそれで良いとして、スカウトされた理由もある程度決めておかないとね」
「理由って言うと、やっぱりスポンサーみたいな感じが良いのかしら」
「スポンサーって言うか、いや、うんそうだね。藤重さんに社員として働いてもらいつつ、弓道の活動をサポートするみたいな感じかな。ついでに今使ってる弓もUL製ってことにしよっか」
「いいの?」
藤重は鏡の方を見る。
「あぁ」
「ならそうするわ」
「後はいつ親に話すかなんだけど」
「早めがいいのかしら?」
「うーん……三年になってからの方が良い、かな。その方が色々と良さそう」
「そうなの?」
「ほら、こっちがスカウトした手前、ULの誰かが挨拶とか説明には来ないといけないと思うんだけど、僕や夕夜じゃ信憑性がないし。支部の方から誰かに来てもらった方が良いと思うから」
藤重は二人を見て。
「まあ、そうよね」
「それに藤重さんの全く知らない人が来るのもあれだから、3月の試験の時にあらかじめ顔合わせもしておきたいかなって」
「あれ、私3月の受けれるの?」
少しの驚きが混じった声で尋ねる。
「受けれるよ?」
「あ、そうなの」
「うん」
「それならその方が良いわね。いきなり知らない人が来ても話を合わせられないかもしれないし」
「そうだね。じゃあー……とりあえずこのくらいかな。もう学校には言っちゃったし、聞かれたらそんな感じで答えておいてね」
「わかったわ。でもゴメンね、迷惑かけて」
申し訳なさそうな藤重。それに対し、大童はいやいや、と手を振って答える。
「あまり気にしなくていいよ。結構ある事みたいだから」
「そうなの?」
「うん。やっぱりスカウトする場合は多いからね。だから支部の人もこういった対応には慣れてるはずだよ」
「そう……? でもやっぱり申し訳ないわよね。こっちまで来て頂くんだし」
「んー……そこまで深く考えなくていいと思うけど。そこまで遠いわけでもないし。でも、だったら就職したらしっかり仕事をすればいいんじゃないかな。それで良いと思うよ」
「それは当然だけどー……んー……あー……むー……」
考え込んでいる藤重。
そして一頻り考え終えて、
「んー……そうね。そこまで考えないことにするわ。もちろん感謝はするけれど」
そう結論付けた。
「そうだね。それが良いよ」
そうして話し合いを終えて、いつも通りの時間を過ごす。鏡はいつの間にか本を読んでおらず、パソコンを操作していた。
そして時間は経ち、帰る藤重を大童が送って戻ってきた。いまだに鏡はパソコンを操作している。
「戻ったよ」
「あぁ、藤重の親への説明は
視線は向けずに、声だけを掛ける。
「『椿』って……
座りながら聞いた。
「別にある程度誤魔化せるなら、誰でもよかったんだがあいつになった」
「でも、副支部長なら大丈夫だね」
「仮にも副支部長だからな」
「仮にもって」
大童は苦笑いしながら言う。
「ま、椿なら勝手に上手くやるだろ。心配はない」
「はは、そうだね」
今度は笑いながらそう言った。
その後も雑談は続き、それは鏡が帰るまで続いた。
平成25年2月27日20:56
藤重の部屋。
「仕事だ」
鏡はいつも通りに赤い紙と青い紙を二人に渡す……いつも通り?
「……もう内容が分かった気がするんだけど」
「でも詳細は見ないと」
「そうね」
大童は青い紙、藤重は赤い紙を受け取って読み始める。
紙の文字は赤が黒、青が黄色である。
読み終えた二人。
「……私ね」
少しだけ顔は強張っているが、それでも落ち着いた声で言う。
「そうだな。ちなみに派生形としては『赤いちゃんちゃんこ』や『赤いマント』などがあるが、これが一番有名かもな」
「確かにそうかも。他のに比べて多いし」
「それで……今回の場所は?」
「ここから10分ほど先の、そこまで広くない一般的な公園の公衆トイレだ」
「今回は学校じゃないんだね」
「まぁ、この方がやりやすくて良いだろ」
「そうだね」
「時間の指定は無いみたいだけど、やっぱり夜か早朝? 人気ない時の方が良いんでしょうし」
「んー、時間は夜かな」
「早朝は駄目なの?」
「駄目ってわけじゃないけど、夜の方が良いかなって」
「……?」
首を傾げる藤重。
「それも含めて、これから仕事の説明をする」
そう言って、二枚の紙を回収してバックにしまう。
「今回の問題はこの『トイレ』だ」
「『トイレ』が問題なの?」
「あぁ。この『トイレ』は公衆トイレ全体を差す場合と、個室だけを差す場合がある。どっちかって言うのは運だな」
「全体を差してれば楽なんだけどね」
「内容的に殺されずに出てこれればいいのよね。それなら確かにそっちの方が安全そうね」
「ただ、厄介なのが最初はこの個室を『トイレ』としたくせに、答えた後の『トイレ』が公衆トイレ全体になるケースだ。基本無いが、可能性がある以上はこのケースを想定していかないとな」
やれやれ、と言う風に溜息をつく。
「そうなるとー……個室で答えた後に、外まで逃げきらないといけないの?」
「普通にやるならそうなるね」
「……」
顔の青い藤重はの沈黙の後。
「……それって私には……」
「無理だな」
鏡が即答する。
「そんなことをDランクにさせるわけないだろ」
「それに、『普通にやるなら』だから」
「普通以外の方法があるの?」
「なければそんな言い方はしないな。で、その方法だがまず」
「まず?」
「壁にぶち壊す」
「……は?」
意味が分からないという感じの藤重の口から自然とそんな声が漏れた。
「だから、壁をぶち壊す」
「……」
無言のまま大童の方を向く。
「……ホントに?」
「ホントだよ」
「ホントのホントに?」
「ホントのホントだね」
「……何で?」
再度鏡の方を見る。
「何馬鹿な顔して馬鹿なこと言ってるんだ。そうすれば個室から外に直接出られるだろ」
「え、いや、うん。確かにそうだけどー……」
「それに、やろうとしていることは『七不思議』の『呪いのトイレ』とほぼ同じだ」
「いやそうなんだけどー……えー……」
困惑する藤重を放って、鏡は話しを続ける。
「で、話は戻るが。その壊した壁の修復を人知れずに行うために夜の方が良いということだ」
「流石に『呪いのトイレ』の時の扉みたいに接着剤で止めるわけにもいかないしね」
「木製ならなんとか行けたかもしれないけどな。今回はコンクリだ」
「一般的だしね。コンクリートは鉄筋?」
「いゃ、ただのコンクリートだ。だから直すのは鉄筋より容易ではあるな」
「そっか」
そこでようやく困惑から直った藤重。
「それって私たちが直すの?」
「ううん。専門の人たちだよ」
「そう。まあ、そうよね。前のとはワケが違うんだし」
言ってから麦茶を飲んで、一息。
「それでいつ行く」
「時間は夜なのよね」
「なんだったら今日でも良いぞ」
「でも明日学校よ?」
「大した時間もかからないし、遅くなることは無いと思うよ」
「あ、それもそうね。なら早めの方が良いのかしら」
「その辺はお前が決めろ」
「そうねー……」
考えた末に藤重は、
「今日にするわ」
そう決めた。
「やっぱり早い方が良いもの」
「なら今から行くか。と言いたいところだが、康が刀を持ってないしな。一旦戻ってから車で行くぞ」
「了解」
立ち上がる二人。
「別に急ぐ必要もないし、ここの前に15分後に来る」
「わかったわ」
「それと、今回は弓はいらないからな。個室から出る時に邪魔になるだけだ」
「そうね」
「じゃあ、また15分後に」
「ええ、15分後にね」
大童と鏡は玄関を出て必要なものを取りに行った。
平成25年2月27日21:35
藤重の部屋を出た後、歩いている二人。
道には雪がまだ残っている。
「支部の方にはもう連絡したの?」
「してある。今日中には来るだろ」
「そっか。でもこんな時間だし、少し申し訳ないね」
「そう思うならなるべく綺麗にやる事だな」
「そうだね。頑張るよ」
平成25年2月27日21:37
少し歩いて。
「校門前で待ってるからな」
「了解」
そう言って鏡は大童とは別の道に行った。
その後大童は刀を持って、校門で鏡の車に乗り込んだ。
ジメジメ暑い。
とうとう7月ですね。
この暑さのままなら意欲が落ちるのですが、
エアコンのおかげでそんなこともなさそうです。
エアコンをつけるまでもない中途半端が一番辛い。
次回は十九話を途中まで書き終えたら載せます。