そうですか。
まぁいいですけど。
今回の話はもう少し早めにするべきだったんだろうか。
この先の事情でなんか展開が早急になってきている気がする。
気がするだけで良し悪しなんて自分には判断できないんですけどね。
十六話後編を投稿完了。
平成25年2月27日21:45
予定時間通りに車が到着。それに藤重が乗る。
「本当にピッタリ15分後ね」
「今回はそうなるようにしたからな」
言いながら車を発進させた。
車内。
「それにしても、この『赤い紙青い紙』の『紙』って内容と全く関係なくない?」
「今回の内容には無いけど、よくあるパターンとしては『用を足した後に紙がないことに気づいて……』って言うのがあるからね。そっちが元で、今回のはそれを大きく省いた感じじゃないかな」
「へー……」
(そっちじゃなくて良かったと言うか……そっちだったら一体どうしてたのかしら……?)
「……」
ジーっと二人を見て考えていた藤重だったが、視線を外して外を見る。
(……聞かないでおきましょう……何か嫌な予感しかしないし)
溜息をついた藤重を乗せた車は目的地を目指す。
平成25年2月27日21:55
どこかに車を置いてきた鏡が戻ってくる。
「とりあえず人もいないようだし、実現させておくか」
パソコンを開いて、操作を始める。
それを待っている二人。藤重は所々に街灯のある公園を見る。
「ここは結構遊具が残ってるわね」
「最近は撤去されてばかりだからねー」
二人の視線の先にある公園は、中央あたりに大き目の木があり、少し雪が積もってはいるが所々草と砂が見える。遊具もシーソーやブランコ、ジャングルジムに滑り台など基本的なものはそろっていそうだ。さすがに時期的に水はないがプールもある。そして問題のトイレはプールの更衣室と思われる場所に隣接していた。
「後5秒、4、3、2、1、0」
カウントダウンの終了とともにトイレの方で雑音がする。
「実現させたし、行くぞ」
「了解」
三人はトイレの方へと向かう。
平成24年2月27日22:08
トイレ前。
「やっぱりキレイではないわね……」
「公衆トイレだしね」
トイレは外から見える範囲でもキレイではないことがわかる。臭いも良いものではない。
「いきなり壁をぶち壊す必要もないし、まずは入り口付近に暫く立ってろ」
「分かったわ。でも、暫くってどのくらい立ってればいいの?」
「数分くらいじゃないかな」
「そう。なら数分間とりあえず、ただ立っていればいいのね」
「あぁ」
藤重は言われた通りにトイレの入り口付近に立つ。
「あ、上着預かる?」
その問いに少し考えて。
「そうね。預かってもらうわ」
上着を脱いで大童に渡す。それを受け取る。
「うん」
「……でもやっぱり、脱ぐと寒いわね」
藤重は体を抱えるようにして、ブルッと震えた。
2月の夜はまだまだ寒い。
「暫くの辛抱だから」
「そうだけどー……何か持ってない?」
「んー」
と言いながら、ポケットを探るが、
「ごめん、何もなかった」
ようだ。
「ううん、無いならいいのよ」
結局何もないので、寒さに震えながら暫く経って。
「起きなそうだね」
「だな。なら個室の方か」
「個室のほうに行けばいいの?」
「いゃ、一旦外に出ろ。まだ壁も破壊してないし、『暫く』を念のためリセットしておかないとな」
「それもそうね」
藤重は外に出る。
「はい。上着」
「ありがとね」
大童から上着を受け取り、再び羽織った。
「じゃぁ、壁を破壊するぞ。場所は……角だな」
そう言って、三人はトイレの個室がある方の角に移動し始める。
「でもどうやって?」
「『どうやって』って、決まってるだろ。『呪いのトイレ』と同じ要領だ」
「……切るの?」
「切るぞ」
「誰が?」
「康が」
「……」
藤重が大童の方を向く。
「え、ホントに? ってか切れるの?」
「うん、本当。このために刀を持ってきたんだし。それに、『気』で強化すればこのくらいなら切れるよ」
「えぇー……」
納得のいかない声をあげている藤重。
(そりゃあ、まあ……その位できても不思議ではないとは思うんだけどー……ねぇ?)
そんなことを考えている間、あっという間に角に着く。
「どのあたりを切る?」
「角だな。安定するだろうし」
「了解」
大童は刀を取り出して構えると、
「あ、どのくらい切れば良いかな?」
構えを解いて鏡の方を向く。
「背丈くらいに切ってい良いだろ。その方が楽だしな」
「了解」
再び構えると大童はゆっくり息を吐いて、
「……ハッ!」
コンクリート壁に4回切りつけた。
切りつけられたコンクリート壁には綺麗に線が入っているが、とりあえずは行きなり倒れたりする心配はなさそうだ。
切りつけ終えた大童は刀に付いたコンクリートの粉を拭いてからしまうと、二人の方を向く。
「上手くできたと思うんだけど」
「上出来だな」
「良かったー……」
安堵の表情を浮かべる大童。
「……私にはよく分からないのだけど」
切られたコンクリート壁を見ながら言う。と言っても明かりは少ししかなく、暗いためにどのあたりで切れているのかは藤重にはわからない。
「分からなくてもお前には問題は無い。じゃ、ズラせ」
「ズラすなら中からの方が良いよね」
「そうだな。こっちは倒れないように抑えててやるから中から押せ」
「了解」
(でも女子トイレなんだよなー……仕方ないけど)
大童はその場を離れて女子トイレ一番端の個室に行った。
少しして、
「押すよー」
と、切られた部分から大童の声が聞こえた。
「あぁ」
鏡は返事をすると、角辺りを片手で抑える。
「……そんなのでいいの?」
どう見ても軽く押さえている程度にしか見えない状況に、藤重は不安を隠せない。
「綺麗に切れてる上に一気に押すわけでもないしな。わざわざ角を選んだのも安定度を優先した結果だ」
「そう」
話している間にも、コンクリート壁は擦れる音を立てながら徐々に動き始めている。
(今さらだけどこのコンクリートの重さって……)
そう思っていた藤重だったが、
(……まあ言ったところで動いちゃってるんだし。どうせ「気」なんでしょうね)
そう思い、何も言わずにその光景を見ていた。
動かし終えて、中から大童が出てくる。
「さすがに少し重かったね」
(少し……?)
切り取られた方のコンクリート壁を見る。切断面は綺麗だ。
「そうか。じゃぁ開いたし中に入れ」
「……分かったわ。また上着預かってくれる?」
「うん。いいよー」
「お願いね」
上着を脱いで大童に渡すと、藤重は空いた部分から直接個室に入ろうと……
したところで、鏡が大童に話しかける。
「あぁ、康は藤重が答えた後に引っ張ってやれ」
「了解」
それを聞いて藤重は立ち止まり、ムッとした顔をする。
「別に引っ張ってもらわなくても、このくらいの距離ならすぐに出れるわよ」
不機嫌な声でそう言った。
実際、外に出るには一歩以下の距離しかない。
「もちろんお前もすぐに出ようとしろ。ただ、念のためだ。引っ張った方が早いしな」
「そう。ならいいわ」
「ちなみに、答えるなら『青い紙』にしとけ」
「どうして?」
「もしもの場合に『切り刻まれる』より、『血を吸われる』方が生存率も高いからな。避けやすいし」
「もしもって……嫌な話ね」
顔をしかめる。
「まぁ、康もいるし問題ないが、一応だ」
「そう」
言って、藤重は個室内に入る。
暫くして、天井の方から声がした。
「赤い紙と青い紙、どっちが欲しい?」
藤重に対して発せられたその声は、優しそうな声質だが何処か気持ち悪く、トイレの臭いと合わさって吐き気のするような声だった。
外にいる大童は藤重の上あたりを睨んでいる。
藤重は声のした方を見るが、そこには何も、誰もいない。ただただ天井があるだけだ。
「……」
視線を前に向け、落ち着くように深呼吸……は、臭い的に止めて、軽く息を吐いてから問いに答えた。
「『青い紙』」
そう答えた藤重が外に出ようとするのと、大童がその腕を引っ張るのは同時で。
ガッ! ガガッガガガガッガ!!
藤重が外に出るのと、後ろで何かが刺さった音がしたのはほぼ同時だった。
「……え?」
展開の早さに付いてこられず、いつの間にか大童に腕を掴まれている状況の藤重は音のした方をゆっくりと振り返る。
すると、そこには複数の管のようなものが地面や壁に突き刺さっていた。が、それは雑音と共にすぐ消えていってしまった。
「な……に、あれ」
「何って、アレで『血を抜く』つもりだったんだろ」
平然と言ってのける鏡に対し、藤重の顔は青い。
(もし、もし自力で出ようとしてたら……)
死んでいただろう。今までにない明確な「死」。それを考えると寒さとは別の震えがやってくる。
「……」
その様子を見て、大童はとりあえず預かっていた上着を藤重に掛けると、鏡の方を向く。
「ちょっと藤重さんを車で置いてきていいかな……?」
「あぁ、そうしてこい。鍵は開けてある」
「了解……それじゃ、車にいこ」
「……」
無言で大童に連れられていく藤重。震えは止まらなかった。
そして藤重を車に乗せて戻ってきた大童。
「大丈夫かな……」
車の方を見て心配そうにする。
「大丈夫、ではないだろうな。何だかんだ言っても、今まで『あいつ自身が狙われて、その上明確に死んでいた』何ていうのは無かったからな。『カオリさん』は死にはしないし、それ以外でも康と一緒にやったのはあったが、あくまでも標的は康だっただろ」
「……そうだね」
「まず、間違いなく今回のはお前が引っ張って無ければ管はあいつに刺さっていただろう。それでもお前がいたから死にはしなかっただろうが、重傷は確実だった」
「……」
「心配なのはわかったから、今は目の前の仕事、この壁を戻すのを終わらせてからにしろ」
「うん……だね」
言われて大童は、コンクリート壁に手を当てるとそれを押し始める。
だがコンクリート壁は微妙にしか進んでいかない。
「……はぁ。お前の人間的成長は嬉しいところではあるんだがな」
そんな様子の大童を見て鏡は溜息をつくと、問いかけるように喋り始める。
「前にあいつはお前に『覚悟はしたつもり』って言ったんだろ?」
大童は手をコンクリート壁から離して、喋り始めた鏡の方を見る。
「『つもり』だろうと『覚悟』はしていたんだ。そして『したつもりの覚悟』があったからこそ、あいつは人に向けて麻酔矢を打てたし、『カオリさん』の攻撃も防げた。それ以外にも様々なことをやってこられた。だけど所詮は『したつもり』。それじゃやっていけない。それを今回想像ではなく、実際に体験して『したつもりの覚悟』じゃ駄目だって、分かってしまったから、今あいつの『したつもりの覚悟』は揺らいでいるんだろう」
「……うん」
「だけどもし、あいつがそれを乗り越えられたなら、あいつの『したつもりの覚悟』は『覚悟』になる。そうしたらあいつは今より、精神的にも肉体的にも大きく成長できるはずだ。だから今回の出来事はあいつにとって成長できるチャンスであり、分かれ道でもある。どうなるかはあいつ次第だがな……別にあいつを信じろとは言わない。お前はただどうなったとしても、今まで通り見守っていればいい。まぁ、たまには手を貸しても良いが、最終的にはあいつがどうにかすることだしな」
「……うん。そうだよね。」
先ほどよりスッキリした表情になった大童はコンクートの壁の方を向く。
「じゃ、早く戻しちゃおうか。もしこんな状況を誰かが見たら騒ぎになるだろうしね」
「あぁ」
そう明るい声で言ってコンクリートの壁に手を掛けると、先ほどよりも順調に押し始めた。
そしてあっという間にコンクリートの壁はもとの位置に戻る。
「よしっ」
パンパンッと手を払う。
「ならとっとと車に戻るぞ。明日も学校だしな」
「そうだね」
二人はその場を後にして車に戻ると、車は公園を去って行った。
車の中で藤重は終始無言で、家に戻る時に挨拶はしたが元気は無かった。そして、翌日の学校でも元気はなく、集中できてい無いようで、土日も大童の部屋に来ることは無かった。
ただ、月曜日にはいつも通りのようで学校に来ており、大童達とも普通に話していた。
……乗り越えられたのかは、分からないが。
余談ではあるが、公衆トイレの壁については数日たっても問題になることは無く、綺麗に戻っていたそうだ。
第十六話『赤い紙青い紙』終了。
そういえば前回はパッと見、
修正するところが見つからなかったです。
いゃ探せばあるのかもしれないんですけど、
分かりやすいのがなかったというのだけで珍しい。
……まてよ?
案外大きな間違いほど気づかないこともある。
念のためもう一回見直してくるか……。
次回は十九話を書き終えたら載せます。