UL   作:招代

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鏡のことが少し分かる回。

今回は新しい登場人物が出ますが、
この話でしか出ません。
なので名前も比較的にすぐ決まりました。

一話しか出てこない人にそこまで時間はかけられないし。

それでは前編をどうぞ。


第十七話 『怪人アンサー』 前編

怪人アンサーを呼び出す方法です。

 

10人が円形に並んで同時に隣の人の携帯電話に電話を掛けます。

するとすべてが通話中になるはずの携帯がつながります。

それが怪人アンサーです。

この怪人アンサーは9人の質問にはどんなものでも答えてくれるのですが、

残りの1人だけには逆に質問をしてくるそうです。

この質問に答えられなかったり間違えてしまうと、

その携帯の液晶画面から手が出てきて体の一部を奪い去ってしまいます。

 

怪人アンサーは頭だけで生まれてきた奇形児で、

完全な人間になるために人から体のパーツを奪うそうです。

 

 

 

平成25年3月7日20:19

 藤重の部屋。

「前にも言った通り、明後日は支部で藤重の試験がある」

「ええ」

「で、その日の藤重の持ち物は弓と筆記用具、後は金は必須だ。日帰りだが着替えは持って行った方がいいかもな。服装は実技があるから動きやすい恰好でな。康は金だけでいい」

「了解」

「『弓』ってことは、矢も必要よね。支部の方で準備されるの?」

「そうだな」

「わかったわ。移動は電車?」

「電車だ。切符は買ってあるから当日に渡す。ちなみに指定席な」

「時間は?」

「日高駅を7時13分にでる」

「結構早いわね」

「試験以外にもやる事があるからな。だから遅れるなよ」

「大丈夫よ」

 

「なら他に質問はあるか?」

 鏡が二人を見渡して言う。

「帰りの時間はどのくらいになるの?」

「20時13分に日高駅に到着予定だ」

「その時も指定席?」

「あぁ」

「そう、わかったわ」

「他にはあるか?」

「ないわ」

「ないよー」

「そうか。なら後はそのつど教える」

 そう言って、鏡は本を取り出すと読み始めた。話が終わったので他の二人もそれぞれのやりたいこと、やるべきことを始めた。

 

 そしてその一時間後ぐらいに大童と鏡は帰った。

 

 

平成25年3月9日7:00

 日高駅に到着した藤重。既に二人は来ていた。

「おはよ、二人とも」

「あ、藤重さん。おはよー」

「はよ」

「時間はー……まだ大丈夫よね」

 念のために携帯で時間の確認をした藤重。

「まだ新幹線も来てないし、大丈夫だよ」

「ってか、大丈夫じゃなかったら置いて行ってる」

「……まあ、そうよね」

「でも、藤重さんの試験に行くのに置いて行ったら意味がないんじゃないの? それに顔合わせもする予定なんだし」

「顔合わせに関しては『ついで』だからしなくても、問題は大してない。試験に関しては半年後に受ければいいことだ」

「……確かに。今回やらないといけないわけでもなし、問題はないね」

「いやいや! だったら二人は何のために行くのよ?」

 口に手を当てて納得してしまった大童に、藤重が否定を入れる。

「んー……何だろ?」

「『何のため』って……決まってるだろ?」

 悩む大童とは裏腹に、鏡は呆れたように言葉返す。

 

「用事があるからだ」

「……」

 沈黙する藤重。

「あー用事があるなら行かないとだね」

 逆に大童は納得できたようだ。この辺は付き合いの差かもしれない。

「というわけで、これが切符な。場所は3番線だ」

 藤重は放置して鏡はバックから切符を三枚取り出すと、そのうち二つを二人に差し出す。二人がそれを受け取って三人は改札口を通過して3番線を目指した。

 

 

平成25年3月9日7:06

 3番線に新幹線が到着し、三人は乗り込むと指定席に座った。

 席は窓側に大童。その隣に藤重。大童の向かい側が鏡で、その隣は空いている。

 

「その隣も指定席なの?」

 大童が飲み物を買いに行っている時、藤重が鏡の隣の空席を見らがら問いかけた。

「あぁ、4枚買ったからな。誰も座らないぞ」

 そう言って切符を2枚取り出す鏡。

「……今は混んでないから良いけど、場合によってはかなり迷惑よね」

「混んでないんだから問題ないだろ。それに、誰も座らないのに買ってもらえてよかったじゃないか」

「確かにそうだけどー……普段からやってるの?」

「『普段』と言うほど新幹線には乗らないな」

「そうなの?」

「車もあるしな」

「そう言えばそうね。ならどうして今回は新幹線なの?」

「もしお前が一人で行かないといけない場合があった時の為にこの方が良いだろ。卒業したら社員になるんだしな。何があるのか分からん」

 その言葉に感心した様子の藤重。

「なるほど……何だかんだでちゃんと考えてるのね」

「後は行き帰りの運転が面倒だからだ」

 

「……それを言わなければ良い印象のまま終わったのに」

 冷めた目になる。

「別に印象を良くしようとは思ってないからな」

「まあ、鏡君はあまりそういう所は気にしなさそうよね」

「と言うかだ、自分を偽って好きになってもらっても意味がないからな。何時までも偽ってはいられないだろうし、そんなのは窮屈だろ。本当の自分自身を好きになってもらわないとな」

 冷めた目を止めて、その話を意外そうに聞いていた藤重は、興味を持ったように問いかける。

「でも好きになってもらいたい相手に、本当の自分が好きになってもらえなかったら?」

「だったら好きになってもらえるような自分に変われば良いだろ。偽るのは良くないが、変わるのは良いことだからな。基本」

「……何か意外ね」

 藤重は真面目な表情をしている。

「そうか」

「ええ」

 

 と、そこで大童が戻ってきたので真面目な表情を止める。

「おかえり」

「ただいま。2本買って来たけど藤重さんもどう?」

 その手には緑茶と紅茶があった。

「それなら紅茶を貰ってもいいかしら?」

「うん。いいよー」

 大童は紅茶を渡す。

「ありがと」

「どういたしまして」

 言いながら自分の席に座る。

 

 そして数分後に新幹線は発車した。

 

 

平成25年3月9日8:32

 新幹線が目的地の澄岡駅に到着したので、降りた三人は改札口を出て外にいる。

「支部はこの辺りにあるの?」

「徒歩10分ってところかな」

「それなら結構近いのね」

「そうだね」

「じゃぁ行くぞ」

「了解」

 

 

平成25年3月9日8:40

 それなりにビルなどの建物がある街を歩くこと数分。三人は目的地に到着した。

「ここがULの新潟県支部だよ」

「大きいわね……」

 藤重の視線の先には、ここに来るまでに見た建築物とは比べものにならない大きさと、土地の広さを持った支部があった。駐車場も広いが、まだ時間も早く、試験があっても休みの日のためにそこまで車は止まっていない。

「前にも言ったけど2番目だからね」

「そう言えばそんなことも言ってたわね」

「そんなところに突っ立ってないで入るぞ」

「了解」

「え、ええ」

 そして支部内に入っていく三人。鏡と大童は慣れている様子だったが、藤重はやや緊張した面持ちだ。

 

 

平成25年3月9日8:42

 支部内。

「今日は土曜だし、試験までもまだまだあるからな。このまま副支部長室に行くぞ」

「そう言えば試験って何時から?」

「筆記が10時半からかな。そこから昼食を挟んで実技って感じだと思う」

「そう……って言うか、何で副支部長室?」

「藤重さんの親に説明をするのが副支部長だからだよ」

「なるほどね」

 

 数歩歩いて、

「……え? どうしてそうなったの?」

 大童の方を向く藤重。

「本当は誰でもよかったんだけど、何かそうなったみたいだよ」

「そう。でもわざわざ副支部長さんに来てもらうなんて、何か恐縮ね」

「でも副支部長なら問題ないと思うから、安心していいと思うよ」

「……わかったわ」

 地位の高い人に会うためか、緊張気味に答えた藤重。

 

 そして少し移動すると、三人はエレベーターに乗って副支部長室のある6階を目指した。

 

 

平成25年3月9日8:49

 6階に到着した三人は副支部長室前に着いた。

「緊張するわね……」

 心臓のあたりに手を当てて、深呼吸をする藤重。

「そう?」

「入るぞー」

 に、構うことなく扉を開けて、中に入ろうとする二人。

「ちょっ! 心の準備が――」

「いらんだろ」

 藤重が何かを言ったが、それを無視して入っていく。

「……はぁ」

 仕方なく二人の後ろについて行く。

 

 

平成25年3月9日8:50

 副支部長室内。部屋は結構広く、応接間としても使用可能なようだ。全体的に落ち着いた色で統一されており、ゴミも見当たらない所を見ると掃除も行き届いている。

 

 その部屋のデスクで仕事をしていた男性は扉を開けて入ってきた三人に気づくと、椅子から立ち上がって近づいてきた。

「来たぞ」

「わざわざ有難う御座います、支部長。お出迎えも出来ずにすみません」

 本当に申し訳なさそうな顔をしている。

「気にするな。ついでだしな」

 そして三人の前に立つ男性。印象としては30~40代くらいで、優しそうな印象を受ける。

「お久しぶりです。副支部長」

 その男性に軽く頭を下げる大童。

「お久しぶりです、大童君。お元気そうで何よりです」

「副支部長もお元気そうで」

「今はそれほど仕事もありませんからね」

 そして副支部長は二人の後ろにいる藤重に目を向ける。

「あぁ、こいつが例の奴だ」

「藤重さんですね。初めまして、掛屋 椿です。副支部長をやらせていただいています」

 優しく笑みを浮かべる掛屋。

「あ、え、えーっと、は、初めまして! 藤重 羽月です。今回はご迷惑をおかけしてすいません!」

 緊張のせいか大きな声でつっかえながら、わたわたとする藤重。

「いえ、気にしないでいいですよ。これも仕事ですから。それと、そんなに畏まらなくてもいいですよ。もっと気楽にしてください」

「いえいえ! そういうわけには」

 両手を振ってNOを示す。

「こいつが良いって言ってるんだから良いんだよ」

「いや、そう言うわけにもいかないわよ……」

 と言ってから、

 

「と言うかさすがに『こいつ』は駄目でしょ」

 小声で鏡に注意をする。

「何も問題ないだろ」

「ありまくりよ」

「いえ、支部長の言うとおりですよ。ですので、藤重さんももっと楽にしてください」

「ですが……って、支部長?」

 引っ掛かりを覚えた藤重の動きが止まる。

「誰がですか?」

「ええっと、言っていなかったんですか?」

 掛屋は鏡の方を見ながら聞く。それに対して鏡はしれっと言う。

「その方が面白そうだったからな。まぁ、ここに来た時にバラすつもりだったから問題ない」

「それなら良かったです」

「……もしかして鏡君が支部長、さん?」

「ええ。こちらが、新潟県支部支部長の鏡 夕夜支部長です」

「……ホントに?」

 信じられずに大童の方を見る。

「うん。そうだよー」

「……」

 

「ええっ!!?」

 ワンテンポ遅れて驚く。

「いやいやいやいや!! おかしいでしょ!? 前からおかしな点はあったけど、流石におかしいでしょ!」

「なかなか失礼な奴だな」

「確かにただものじゃないと思ってたけど、流石にこれはないでしょ!」

「信じられない気持ちも分かるけど、紛れもない事実だから受け入れるしかないよ」

「いやでも……今何歳よ?」

「18だな」

「……低く言ってどうするのよ。少なくとも19でしょ?」

「そう言うことにしておくか」

「……」

 

 と、会話が切れた辺りを見計らって。

「立ち話もなんですから、ソファに座ってはどうですか? 今お茶も出しますよ」

「そうだな」

「だね」

「あ、ありがとうございます」

「気にしないでください」

 そう言って、掛屋はポットのあるところへと歩いていく。三人はソファに座った。

 

 お茶が来るまでの間。

「それにしても支部長ってことはー、えーっとー……鏡君はBランク以上? ってことよね」

「そうなるね」

「……ちなみに、ランクはいくつなの?」

「Sだね」

「Aじゃなくて?」

「Sだよ」

「……はぁ」

 溜息をついて片手で頭を押さえる藤重。

「頭痛くなってきたわ……いや、何となく大童君よりは上だとは思ってたけど」

 そう言ってまた溜息をつく。

(まさか同じ人間とは思えない人間がこんなに近くにいたなんて……と言うか、ホントに何歳よ)

 

「お茶が入りましたよ」

 お茶を入れ終えた掛屋がお茶の入った湯呑を三人の前に置く。

「あぁ」

「「ありがとうございます」」

「試験まではまだまだ時間もありますし、ゆっくりしていってください。では、私は仕事がありますので、何か御用がありましたらお声をかけて下さい」

「えっと、すみません。お仕事中なのに……」

「気にしないでください。私が好きでやったことですので。それに仕事と言いましても、試験関係で少しあるだけですから」

 申し訳なさそうにする藤重に、優しく言った。

「そう、なんですか?」

「はい」

「それならいいんですが……って、鏡君は仕事無いの? 支部長でしょ」

「もう終わってる」

 さっきまでそこにいた掛屋はデスクに向かうと椅子に座り、仕事を始めていた。

「そ。でも支部長なのにここにいなくていいの? そういえば」

「いなくても成り立ってるんだから問題ないんだろ」

「そう言う問題なのかしら……?」

 お茶を飲みながら考える。

「前にも言ったけどここは2番目に規模が大きいし、業績も2番目だからいいんじゃないかな」

「いいのかしら……」

「良いと思うよ」

「それに支部長の仕事なんてここにいなくてもできるんだしな」

「……まあ、問題がない以上何言っても無駄よね」

「そうだな」

「自分で言ってるし」

 その後も雑談が続き、途中で出た茶菓子を食べたりもしながら時間を潰した。

 

「そろそろ試験会場に行った方が良いかしら」

「んー、15分前なら良いと思うよ」

 二人が時計を見ながら言う。

「でも、あれ? 試験ってどこでやるの?」

 首を傾げる。

「会議室だね。案内するよ」

「そうね、お願いするわ」

「了解。それじゃ、藤重さんを案内してくるね」

「じゃ、また後で」

 二人はソファを立ちあがる。

「あぁ、行ってこい」

「頑張ってくださいね」

 鏡と掛屋がそれに返事をする。藤重はドアを開けて、

「失礼しました」

 礼をしてから部屋を出て、それに続いて大童も部屋を出た。

 

 部屋に残った鏡と掛屋。

「前にあった時よりも、少し変わりましたね。大童君は」

「そうだな」

「もしかしなくても、藤重さんのおかげですか?」

「あぁ、何だかんだで人間的に良い影響を与えてるな」

「それはよかったです」

 言葉通り、嬉しそうだ。

「良かったかどうかを判断するのはまだ早い気もするが、そうだといいな」

「ですね」

 この会話の十数分後、大童が戻ってきた。そして筆記試験が終わるまでの間、雑談や近状報告などで三人はそれまでの時間を過ごす。

 




次回の投稿は二十話を途中まで書いてから。

しかしこの二十話は鬼門なので、
時間がかかる可能性が高いです。
それでも比較的内容は決まっているほうなんで、
すぐに書き終えられる可能性もあるんですよね。

でも下手したら一週間しても書ききれないかも。
その時はストックを消費か。
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