UL   作:招代

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中編という名の説明回。
ひたすらに、説明が長々と続きます。

書いておいてなんですが、
何か読まなくてもいい気がしてきてしまいました。
だって説明ばかりなんだもの。

もっと簡潔にできるだけの能力があれば……。



第一話 『口裂け女』 中編

平成23年10月12日21:35

「着いたわ。ここの一番右の部屋よ」

 そこは2階建てのそれなりに古そうなアパートだった。暗くて看板は見えない。部屋数は8部屋。1つは大家さんの部屋だろう。アパートの横には自転車置き場があるように見える。もちろん駐車場もある。

「一回の角部屋っていうのは良いね。下への騒音も気にしなくていいし、隣も1つ少ないしね」

「偶然あいていたのがそこだったのよ。でも確かに、私も運が良かったと思うわ。隣も夜勤だし。さ、中に入って。そしたらその辺に座ってて。何か飲み物用意するから」

 藤重は扉を開けて中に入った。続いて大童も入る。

「お邪魔しまーす」

 

 中はきれいに整理されていた。入ってすぐにキッチンがあってその奥にリビング。左には扉が3つほどある。リビングの中央には丸いテーブルがあり、壁際にはベット、棚が3つ、テレビ、イスと勉強机がある。その勉強机の上にはデスクトップ型のパソコンがあって学校の勉強はできなそうだったが。あとは、窓とクローゼットと思わしきものがあった。大童はとりあえず棚側に座る。

 藤重がコップ2つとポットを持ってきてテーブルの上に置いた。

「麦茶でいいわね。って言っても麦茶と水しかないんだけど」

「ん、問題ないよ」

 藤重は麦茶を大童のコップに注いでから自分のコップにも注ぐ。

「ありがと」

 二人は一口飲んでから、息をはき姿勢を整える。

 

「で、話してくれるのよね。昨日はあまり話聞かないで帰っちゃったから」

「うん、とりあえず質問してよ。答えるから」

「じゃぁ……仕事の頻度ってどんなものなの?」

「月に0~3回ぐらいかな」

「たったそれだけなの?」

 少し拍子抜けしたように言う。大童もそういう反応をするだろうことは分かっていたようで苦笑しながら答える。

「そうだね。言霊の力もそんなに急速にはたまらないってこと」

「そっか。1回の仕事でどのくらいの給料がもらえるの?」

「仕事内容によってだいぶ変わるけど1~70万くらいかな。これを人数で割った金額。この前の『人面犬』は1万と5千円だったから、2人で分けて1人当たり7千5百円だったよ」

「多そうに見えるけど、一か月に0~3回と考えると少ないよね?」

 数十分で7千5百円なら多いかも知れないが、1~3回だった場合は少ないという事になる。しかし、70万だった場合はかなり多いことになる。70万何てそうそうないのだろうが。

 

 大童が肯定して、提案をした。

「そうだね。でも社員は普通の業務もするから臨時収入的なものだと考えればいいと思うよ。藤重さんも他のバイトしながらするといいんじゃないかな」

 それに対して藤重は納得したようだ。

「確かにそうね。私はアルバイトはしていないけど、他のアルバイトをしてていいなら問題ないわね」

 アルバイトをしていたなら、その給料+αという事になるので良い。アルバイトをしていなくても、もともと収入がないなら少なかろうと問題ない。どちらにせよ問題がないという事だ。

「うん。その時だけ出れればお金は入るから、アルバイトをしていたとしても大丈夫だよ」

 

「わかったわ。で、人数で割るのよね。どのくらいの人数がいるの?」

「そうだねぇ。まず、ULが全都道府県にあることは分かるかな?」

「全都道府県にあることは知らなかったけど、多くあることは知っていたわ。あと本社が東京ってことも」

 ちなみに、全47都道府県です。

「そうだね。ここは新潟県だから僕たちは新潟県支部の管轄ってことになるんだけど、さらにそれぞれに担当地区があって、新潟県は3つの区に分類されてるんだよ。で、ここは3区。人数は3人。僕と夕夜と藤重さん。人数はかなり少ない方だね。で、基本的に担当区の人だけで行うんだけど、たまに例外があってそういう時は別のとこから人を呼ぶんだよ」

 3区は新潟県を3分割したときの下の方の事で、2区が真ん中、1区は上の方である。新潟県はそこそこの広さがあるので3分割されているが、多くは2分割もしくは、分割されていない所が多い。

「例外って?」

 「例外」と言う言葉に反応した藤重の質問に大童は、少し考えてから説明を始めた。

「んー……都市伝説がどうして実体化するかは昨日説明したよね?」

「言霊の力がたまると実体化できるんでしょ」

 昨日聞いたことを忘れるほど馬鹿ではなかった。それは大童も分かっていたようで気にせずに続ける。

「そうだね。それともう一つ重要なことがあるんだよ。それが、都市伝説の内容」

「内容?」

 疑問を浮かべる。大童も説明が足りないと思ったのか詳しく話し始める。

 

「あくまでも都市伝説は言霊によってできるものだから。その内容にあった時間、場所、場合じゃないと実現しないんだ。つまり、都市伝説に出てくるのが女性だったら女性がいないと都市伝説が実現しないんだよ。そういう内容だと今まで僕達は女性がいなかったから他から借りてくるしかなったんだよね」

 藤重は納得して、今のところで気になったところを質問する。

「そういう場合はその借りてきた人にも収入は入るの?」

「うん。しかもそれに加えて交通費も出さなくちゃいけないから、こっちの取り分がかなり減るんだよねー……」

 そう言って大童は軽くため息をついて、麦茶を飲む。

 

 藤重が控えめに聞く。

「一万円とかのだったらほとんど残らないこともあるんじゃないの……?」

 コップを置いて答える。

「まぁ……僕たちは近くから借りてくるだけだったからまだいい方だけどね。と、いってもそこそこしたけどさ」

「わざわざ遠くから借りる人がいるの?」

 その質問に対して大童は、どこから説明するかを少し考えて答えた。いきなり言われた側は唐突なので何を言っているのか最初は分からないだろうが言う。

「都市伝説にはさ、ランクがあるんだ」

「ランク?」

 案の定よく分からないといった顔をする。大童は分かるように付け加える。

「危険度や難易度みたいなものかな。S、A、B、C、D、Eの6段階あって、Sが一番危険でEは危険のないもの。で、そのランクにあった人が同行しないとそのランクの仕事はできないんだよね」

 と言ってから、

「あ、藤重さんは入ったばかりだからEだよ」

 と言った。入ったばかりの人間が一番下なのは当たり前だとは思うが、大童は一応付け加えた。

 

「ふーん……どうやったらランクは上がるの?」

「昇格試験は3月と9月の第2日曜日に行われて、内容は筆記。C以上のランクになるには実技と実績が必要になるよ。あぁ、実績っていうのは、例えば普段の勤務態度もそうだし、性格や地区長からの評価、こなした仕事の数とかその時の状況とかだね」

「でも、同行していればお金は均等に分けられるのよね。だったら担当地区にランクの高い人がいれば昇格する必要ないんじゃないの? 私は昇格したいけど」

「そうだね。中にはそういう人もいるよ。でもランクが高いことの利点もあって、少し長くなるけど例えばー……さっきも言ったけどランクにあった人がいないとそのランクの仕事ができないからB以上なら他地区や他県に行く可能性も出てくるよね。そうすると臨時収入も必然的に増えるし、社員の場合普段の業務もするんだけど、僕達みたいな人は普通の給料に+αがあるよ。その他には、C以上なら地区長、B以上なら支部長、A以上なら本部長になれる可能性があって、もちろん地位が高くなれば、負う責任は大きくなるけど給料は増えるし、むしろいいことの方が多いかも。それと、A以上は試験官もしなくちゃいけなくて、これは人が足りない場合は強制だけど、試験官はその分報酬があるしやる人は多いよ。まぁ、お金関係だとこのくらいかな。って言っても、ULだから普通の給料も悪くないけどね」

 言い切ってから麦茶で一息つく。

 

 藤重は不機嫌な顔で言う。

「何でお金関係なのよ」

 大童は失敗したな、と言う表情をしたが正直に答える。

「いゃ、一番興味が出るかと思って。それに、何だかんだ言ってもお金は大事でしょ? まぁ、そうだなぁ……お金以外の理由だと、地位とか名誉ってのもあるだろうし、できる限り仕事の幅を広げたい人も知るかもしれなし、そもそも人を守る仕事なわけだから、その為にランクを上げたいって言う人もいるよ」

 その答えに不機嫌ながらも納得したが、一部否定する。

「まぁ、そうね。何だかんだ言ってもお金は大事だものね。だけど、私はお金のためだけに昇格するつもりはないわ」

「じゃあ、何の為に昇格するの?」

 大童は興味が出たようで、理由を聞いてみた。藤重は隠すほどの事ではない、と思ったのかすぐに答える。

「さっきの中だと人を守るっていうのが一番近いかな。それに、やるからには上を目指したい、それが理由、かな」

 大童はそれを理解して、肯定する。

「上昇志向が強いのは良いことだと思うよ。それだけ頑張れるんだろうし。他に質問はない?」

 

「んー、それならどうしてあの時『人面犬』は消えたの?」

 大童は少し考えてから問いかける。

「そうだなぁ、どうして消えたと思う?」

「えー、うーん……切って潰したから?」

 それだけでは不正解らしく、さらに問いかける。

「じゃあ、『人面犬』ってどうして『人面犬』だと思う?」

「それは人面の犬だからでしょ」

 藤重は、当たり前のことを、と即答した。

「そうだね。そうしたらもう一回僕がしたことを思い出してみてよ」

 そう言われて思い出しながら、小声でぶつぶつと呟き始める。

 

「確かー……顔を切って、潰したんだったわよね。っていうことは、人面をつぶしたってことよね。もしかして、人面をつぶしたから人面じゃなくなって消えた、とか? そんなことないわよねぇ……」

 自身がなさそうに大童の方を見ながら言った。

「そうだよ。人面じゃなくなったから消えたんだよ」

 軽くいった大童に対し、

「えっ! そうなの!?」

 驚く。まさか正解だと思っていなかったようだ。大童は説明を加える。

「今回の『人面犬』は人面じゃなくなったから消えたんだよ。今回のは自立型って言うんだけど、要するに内容と矛盾させればいいんだよ」

「内容って、都市伝説のよね」

「正確には言霊だけどそうだね。例えば有名な話で『赤い紙青い紙』っていう都市伝説あるでしょ?」

 かなりメジャーな都市伝説だ。もちろん藤重も知っているので答える。

「あるわね」

「あの都市伝説って、赤い紙と青い紙どっちが欲しいか聞かれて赤い紙って答えると切り殺されて血まみれになって、青い紙って答えると血を吸い取られて青くなって死ぬっていう内容だよね。だからこの場合は、赤い紙か青い紙って答えて殺されなければいいんだよ」

 藤重が難しい顔をする。

「仕組みは簡単だけど、難しいわよねそれ」

「まぁ、命がけだし。でもやらなきゃ誰かが被害にあうんだよ。で、まぁ自立型の都市伝説は全部言霊でできてるから内容に忠実なんだよね。だから、矛盾させれば消えるっていうのは分かった?」

「わかったわ。自立型以外にもあるの?」

「あるよ。憑依型って呼んでるんだけど、それは字の通り人とかに憑依するんだよ。でも、これは矛盾させても消えないんだよね」

「じゃあ、どうするのよ?」

 

 大童は真面目な顔で答える。

「そもそも言霊に憑かれるのはそのことをすごく望んでいるからなんだ。言霊の内容のようなことをするのを。例えば『ベットの下の男』ってあるでしょ。あの都市伝説は最後に警察につかまる内容だとほぼ憑依型なんだけど、憑かれたという事はその人間は他人の部屋に侵入したいと思っていたり、他人を殺したいと思っているような人間なんだ。だから、簡単な話がその気を無くさせればいい。侵入や殺人なんかしたいと思わなくさせればいいんだよ」

 言い終わると大童は麦茶を飲み干して、自分で継ぎ足した。

 

「説得するってことよね。憑かれているのに意識はあるの?」

「憑かれているといっても、完璧に人を操るのは難しいから。言霊はその人の願いを都市伝説と言う形で後押しするだけだよ」

「でも、殺人とかをするような人を説得って難しくない?」

「そうだね。どうしても駄目な場合は特別な場所に強制収監になるかな」

「収監!?」

 藤重は驚いたが、それを気にしないで大童は続ける。

「そうは言っても、言霊が消えたら解放されるよ。それに放っておくわけにもいかないし」

「まぁ、そのままにしておいたら危険だものね……」

 何処か嫌な気分になりながらも納得する。藤重はとりあえず麦茶を飲んだ。

 

「実はもっと簡単な方法もあるんだけど、まぁいいや。他には?」

 何かを言おうとしたが、質問を促して話を逸らした。藤重は気にせずに質問を考える。

「他にー……ね。そうね、どうしてあの場所に実体化するってわかったの? 内容に合う場所なら他にもいっぱいあったはずでしょ」

「ULで言霊の監視を行っているから。それで場所と力の溜まり具合を見て、内容を分析してるんだよね。そして実現しない程度にたまったところができたら、その地区の担当に連絡をする。それを受けた地区長は、その都市伝説の内容にあった条件をそろえてその場所に行って、増幅機を使って言霊の力を高める。そして強制的に実現→消去ってこと」

 説明を聞いた藤重が感心したように言う。

「そんなのがあるのねー……でも、わざわざその増幅機? を使わなくても実現するほど溜まったところに行けばいいんじゃないの?」

「それじゃ駄目だよ。実現するギリギリだと実現しない可能性もでてくるし、確実に実現するくらい溜まると誰かが被害にあうかもしれないから。あぁ、でも例外はあるよ」

「また例外?」

そう言った藤重に大童は、なるべく明るい感じの声で説明を始める。

 

「言霊の力をどんどん溜めていくと、そのうち言霊と完全に切り離された別のものとして存在することになるんだよね。もうそれは言霊じゃないから矛盾とかさせても意味はないけど、そうしないと消すことのできない都市伝説もあるから。その辺は臨機応変にだね」

「言霊と切り離された別のものって何?」

「例えば、人間などの動物や幽霊、妖怪とか、もしくはどれにも分類されない全く新しいものとかね。まぁ、人間を新しく創るのは相当力が必要だから妖怪とか幽霊の方が多いけど。でも、憑依型は創るのとは違うから、それに比べると必要な力が少ないんだよね。だから、そうなったらもうどうしようもないよ。完璧に都市伝説に支配されたってことになるね」

 最初は明るく、後半はさすがに少し暗くなるがそれでも普段ぐらいの声を保って話した。

「その場合はどうするの……?」

 恐る恐る聞いた藤重だが、なんとなく予想はしていた。

 

 大童は暫く考えてから答えた。

「言いにくいけど……害のある都市伝説の場合は殺すしかないね。さっき言った楽な方法の一つはこのことだよ」

 予想はしていたが、さすがに衝撃だったようだ。部屋の空気が暗くなる。

「それは……どうしようもないの?」

 大童は、どうしようもないよ、と言う。

「そうなったらそうするしかないね。害になる以上、危険だからね」

 藤重が暗く答える。

「そう……」

 無言が続く。

 

 数分後。空気を換えるために大童から話す。

「話を変えよう。他に何かある?」

「……」

 そこで何かに気づいたように顔をあげる。その顔は少し青ざめている。

 

「幽霊?」

「うん、幽霊。僕はあまり詳しくないけど、いるよ。見たこともあるし」

 顔がさらに青ざめる。そしてなぜか立ち上がる。

「ホントに……? 幽霊ってあれよね、非現実で浮かんでて透明で足がなくて魂で青白くて恨めしくて呪われる奴よね! その上に妖怪!? 何なのよ!」

 幽霊に対する一般的な印象を語気を荒げて、早口で言った。しかし、このおかげで部屋の空気は一変した。大童は笑いを耐えながら、藤重をなだめる。

「いゃ、落ち着いてよ。深呼吸して。幽霊は確かにいるけど、霊感なければ見えないし、考えてるのとは少し違うから。それに、そっちはそっちの専門がいるから関わることはー……ほとんどないからさ」

 最後は耐えきれなかったのか、笑いが混じっていた。

「ほとんど!? ってことは少しはあるのよね!? 見えなくてもいるって分かったら怖いじゃない!」

 それでも落ち着かないので、大童は藤重のコップに麦茶を足す。

「とりあえず落ち着いてよ。ほら、深呼吸して水を飲んで。とにかくそのことは置いといて、今考えてもどうしようもないんだから」

 落ち着かせながら麦茶を渡す。藤重は座ってからそれを受け取って2口飲む。さらに飲み干して落ち着こうとする。

 

 すると少し落ち着いたようで、自分に言い聞かせるように言う。

「はぁ……まぁ、そうよね。今考えても仕方のないことだものね。そうよね。うん、そうよ」

「落ち着いた?」

 大童は静かに聞いた。

「えぇ、大丈夫よ。落ち着いたわ。確かに今は考えてもどうしようもないものね。それよりも質問してもいい?」

「いいよ」

「そうねぇ……えーっと……」

 話を変えようとして言ったことなので、自分から言っておきながら考えこむ。数秒してようやく極普通の質問をした。

「大童君のランクっていくつなの?」

 

 あまりにも普通なので大童は、ぽかんとした表情をした。それを見て藤重は。

「何も思いつかなかったのよ!」

 少しの恥ずかしさを隠すように言った。大童は少し笑ってから答える。

「9月の試験でBになったばかりだよ」

「へー、それって凄いの?」

 さっきの事のせいか嘲るような感じで言ってきた。大童はそれを気にしていない。

「どうだろうね。この年齢で社員として働いている人は少ないから、凄いというより珍しいかな」

「そういえば社員って言ってたわね。仕事もしているの?」

「定期的に送られてくる仕事をしてるよ。本社に行くのは遠いし、時間がかかるから」

 学校に行きながら本社に通うのはどう考えても無理がある。

 

「仕事ってどんなの?」

「ULは大きく分けて製造、研究、事務、情報の4つの部だね。製造は商品などの製造。研究は商品や言霊の研究。事務は書類仕事とか。情報は言霊の監視。僕は事務だよ。離れてると他のは厳しいからね」

「まぁ、離れてたら他のはできなそうね。でも、学校あるのに仕事できるの?」

「量はそんなに多くないんだ。学校のことを考慮して減らしてもらってるから。その分給料は減るけど。それでもその辺のバイトよりは多いし、臨時収入もあるから問題ないよ。藤重さんも卒業したら社員になるんだし、研修みたいな感じとして少し仕事回してもらう? アレだけだと実績が足りなくてC以上になれないしね」

 少し考えてから。

「そうね、将来のこと考えたらその方が良いわよね。でも、部活あるんだけどそれに合わせて減らしてもらう事ってできる?」

「できるよ。そうなると給料はだいぶ少ないけど問題ない?」

「大丈夫よ。もともとアルバイトとかしてなかったし」

「わかったよ。うまくいけば卒業前にCになることもできるかもね。まぁ、努力次第だけど」

「努力次第……試験って難しいの?」

 少し自信がなさそうに言った。

 

 大童は、難しくはないけど、と訂正してから、

「Cはちゃんと勉強したり、鍛錬を怠らなければ藤重さんなら実技と筆記は普通に合格点は行くかな。ただ、僕や藤重さんみたいに仕事の量が他より少ないと、実績が厳しいんだよね。実績がないと試験受けられないし。だから努力と言うか、どれくらい仕事をするかだね」

 と言った。藤重はそれを聞いて安心したようだ。

「ふーん……まぁそれはしょうがないわね。試験ってどんな感じなの?」

「実技は試験官との一対一だったり、飛んでくるボール避けたりいろいろ。判断力や単純に強さとかが試されるかな。筆記は都市伝説や言霊に関する問題だったり、計算もあるし、科学もあったかな? 同じ図形探したり、迷路を進めたりそういうの」

「何か変わってるわね」

 学校のテストではないのだから変わっているかどうかなんてわからないはずなのだが。

「そう? でもあの仕事をするのに現代文とか英語をしても意味無いでしょ」

 その言葉に納得する。

 

「それもそうね」

「でしょ」

 時計を見る。時間は11時15分手前くらいだった。大童はコップの麦茶を飲み干して言う。

「もう時間も遅くなってきたし、帰るよ。何かわからないところあったらまた聞いてね」

「分かったわ」

 大童は立ち上がって、玄関に向かう。そこでは思い出したかのようにズボンのポケットに手を入れて携帯を取り出した。

「連絡先、今交換しとこ。その方が便利だし」

「そうね。学校で交換するよりはいいわね」

 藤重も携帯を取りだして、赤外線通信を始める。そして終わり、携帯を閉じる。

「おっけー。じゃあ何かあったら連絡してね。あ、夕夜の連絡先も教えておくよ。ちょっと待ってて……」

 再び携帯を開いて、メールを打ち始める。連絡先を送るだけだったので、時間はかからずすぐに着信音が響いた。

「届いたね。じゃ、今度こそ帰るよ」

「うん」

「おじゃましましたー」

 そうして来た道を戻っていく。

 

 藤重は扉を閉め、コップを流し台において洗い始める。どうやら夕食や風呂は学校の方で済ませてきたようだ。

(今日はいろんな話が聞けて良かったー……正直不安もあったしね。不安になるようなこともあったけど……)

 

 洗い終わると、パジャマに着替えてから何をするでもなく、電気を消してベットに入る。

(そういえば、いつ仕事が届くのか聞き忘れたわ。まぁ、明日でいいや)

 そして数分後、眠りについた。

 

(だいぶ遅くなっちゃったなー……食堂はもうあいてないし、コンビニで何か買って帰ろうかな。料理するのも時間が遅いから面倒だし)

 そして、コンビニでサラダと梅、明太のおにぎりを買って1人寮に向かった。

(でも、やってくれるみたいだし良かった。幽霊のことを言ったときはつい笑っちゃったけど、まぁ、事実だし。こういうのは早めに言っておかないとね)

 そう思った大童の口は少し笑っていた。思い出し笑いで。

 




修正箇所多かった……。
もしかしたら読み返すとまだ出てくるかも。

次回は三話を書き終えて、
その三話を書いている途中で後編に大幅修正が必要になったので、
それを修正してから載せます。

あ、ちなみに文化祭は書きません。
三回も文化祭を書いていられないというのもありますが、
書くとそれだけで一話使ってしまいそうですから。

でも番外という形で一場面を書いたりはあるかもしれません。
確率はかなり低いですよ。
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