最近残業とか休日出勤続きで気力が削られている気がします。
ピークが終わればもう少し余裕が持てるんですけどね。
ですけどね……あぁお盆が待ち遠しい。
今週は休日出勤が無いように祈りながら後編を投稿します。
平成25年4月18日20:43
藤重の部屋にいる三人は変わらず、ラジオらしきものからの盗聴を聞いている。
「この4日間の盗聴によると、およそ10時ごろに就寝してるな」
「そうなの?」
「あぁ。そして2時間後に一回起きて、その後は6時まで寝ているようだ」
「なら侵入するのは1時くらいが良いかな」
「寝つきも悪くないみたいだし、そんなもんでいいだろ」
「奥さんの方はどうなの? そっちも気を付けないとでしょ」
「問題ない」
「どうして?」
「どうやら同じ部屋で寝ているようだからな。盗聴によると就寝時間は一緒でその後は朝まで起きない。ただ起きるのが5時だが、さほど関係ないだろう」
「そこまで時間かけるつもりはないしね」
「でも、もし部屋が違ってたらどうしてたの?」
「そうなってたら寝室に盗聴器をつけてたな。もしくは亭主のほうからの情報で割り出すか」
「まあ……そうならなくて良かったわ」
その日は特に何もなかった。
平成25年4月19日20:14
『ん?』
藤重の部屋。盗聴器の音声を聞きながら自由なことをしていた三人の耳にそんな声が聞こえた。
『クレヨン?』
続けて聞こえてきたのは決定的証拠。
それを聞いた鏡と大童は、ノートパソコンと本を閉じる。藤重はそんな二人を見た。
「今日行くの?」
「と言うより、明日だね」
「つまり今夜だ」
二人は藤重の方を見て言う。
「そのくらいわかるわよ。それで何時出るの?」
「切り良くここに1時でいいだろ」
「了解」
「持ち物はなにかある?」
「無いな。必要なものはこっちで用意する。まぁ、持ち物ではないが服装は黒でな。前も言ったが」
「分かったわ」
「それじゃあ、とりあえず解散する?」
「そうだな」
「了解。じゃあまた後でね」
「後でな」
「ええ、また後で」
二人が部屋を出た後、藤重は動きやすい黒系の服を探し始めた。
……予め準備はしていなかったようだ。
平成25年4月20日1:00
一時になるのと同時に、藤重のアパート前に一台の車が止まる。
「今日はピッタリなのね」
(というか、ここまでピッタリに来れるものなのかしら……)
携帯で時間を見ていた藤重が、ドアを開けながら言う。
「今回は『切り良く』行こうと思っていたからな」
「そう」
言って、ドアを閉じる。そして車は走り出した。
平成25年4月20日1:10
丁度10分になったところで、車が現場に到着する。
「まず荷物を降ろすぞ。トランクだ」
「了解」
「分かったわ」
大童と藤重は車を降りた後、なるべく音がしないようにドアを閉める。鏡は音もなく閉めた。
車の後方に移動した三人。鏡がトランクを開ける。
「藤重はコレとコレ。康はコレを持って目的の部屋の下に移動しておけ。場所は分かるな?」
「問題ないわ」
「大丈夫だよ」
鏡は藤重に何かが入った袋と黒いロープ、大童に筒状に巻かれた大きいものを渡した。
「じゃ、車を置いてくる」
鏡はトランクを無音で閉め、運転席に乗り込むと、車を何処かに置きに行く。
「行こっか」
「そうね」
大童達は目的の所に移動を始めた。
「大童君の持ってるその筒はなんなの?」
移動しながら藤重が疑問を口にする。
「んー……まあ、部屋に付いたら説明があると思うよ」
「それもそうね」
平成25年4月20日1:13
数十秒後、鏡も合流する。
「それじゃぁ始めるぞ」
「ええ」
「了解」
三人は小声で作戦を開始する。
「まずは康が窓を開ける」
「うん」
「どうやって開けるの? っていうか窓あるのね。内容的に無い気がしてたわ」
「窓の無い部屋は珍しいだろ。しかも角部屋で」
「……確かにそうね」
「で、方法だが。康がロープを担ぎながらこのパイプを利用して上まで登り、熱放射器で窓の鍵を開ける。やり方は分かるな?」
「うん。大丈夫」
「ロープはこれよね。熱放射器はー……この袋かしら?」
「あぁ、その袋ごと渡せ」
「わかったわ。はい、大童君」
それらを渡された大童は、輪っか状になっているロープに腕を通して肩に担ぎ、袋は紐部分を首に掛ける。
「うん。じゃあ行ってくるね」
「あぁ」
「気を付けてね」
そうして大童はパイプを固定している金具部分も上手く使いながら、登っていく。
窓に到着。鍵は閉まっているようだ。種類は普通のクレセント錠。
「っと」
それを確認した大童は窓枠上部分に手を掛けて右手でぶら下がる状態になると、作業を開始する。
まずは首に掛けてある袋を開き、中から紐のついた吸盤を取り出す。それを鍵の少し横当たりの窓にくっ付け、手を離す。次に中から銃の形をした熱放射器を取り出すと、吸盤の紐を小指に引っかけて、吸盤とサッシを溶かさない範囲でなるべく小さめに熱放射気のトリガーを押して熱を出しつつ円を描くように一周させ、一周しきる手前でトリガーから指を離す。そして紐を引っかけた小指を手前に引いて円を抜き取った大童は、熱放射器を袋に落とし入れ、切り取られた窓のついた吸盤の紐をパイプを固定する金具に引っかける。最後に袋からL字の板を取り出して穴の中に差し込む。そうして、てこの原理でフックを降ろした。
鍵を開けた大童は窓を開くと、土足で音をたてないように部屋に入った。
平成25年4月20日1:22
大童が入ったその部屋は、それほど広くは無い部屋で何もない。ただ壁一面に『青いクレヨン』で内容通りのことが書かれていた。気味の悪いほどにびっしりと。
(2回目だけど相変わらずこの光景は良いものではないね……)
そんなことを思いながら大童は担いでいたロープをドアノブに縛ると、もう片方の端をゆっくりと降ろしていく。
ロープが下りてきたのを確認して、下からまずは藤重が先に上ってきた。
少しして、藤重が上まで来てサッシを乗り越える。
「土足でいいのかしら……」
「良いんじゃないかな。何だったら帰る時に床を拭いて行けばいいし」
「そう、ね」
そう言って、床に足を降ろした藤重は僅かな月光に照らされた部屋を見回す。
「……こうしてみると気味が悪いわね」
「だね」
「天井にはないみたいだな」
と、部屋を照らしていた月光が遮られたので、藤重が後ろを振り向く。するとそこには、筒状のものを肩に担いだ鏡がサッシに座っていた。
「実現もしているみたいだし、とっとと作業を始めるぞ」
「了解」
「わかったわ。でも何をするの?」
「ふむ……」
鏡は壁際に行くと、壁を手で触る。
「これだと剥がした時はかなり音がするな」
「壁紙を剥がすつもりだったの?」
「できればな。まぁ、だがこの感じならやめた方が良さそうだ」
鏡が二人の所に戻ってくる。
「仕方がないからこの壁紙の上に壁紙を貼るぞ」
「了解」
「……何で?」
理解している大童と、理解できていない藤重。鏡は大童を見て説明をさせる。
「つまり、『壁一面に青いクレヨンでびっしりと書かれつつ、夫婦が目にする壁には何も書かれていない』っていう状況を作り出すってことだね」
「あー、なるほどね」
ポンッ、と手を叩く。
「と言うわけで貼るぞ」
「まずは丁度いい大きさに切らないとね。切る物は?」
「ほらよ」
「危なっ!」
「ん、ありがとー」
むき身の状態で投げられた片刃のナイフを難なく受け取る大童。それを見て思わず大声をあげてしまった藤重を二人が見る。
「うるさいぞ」
「静かにしないと気づかれるよ」
「……」
(私がおかしいわけじゃないわよね……)
「で、作業だが。丁寧に張る必要もないし……壁の高さは2枚分ってところか。なら縦と横の角から角までの長さのをそれぞれ4枚ずつな」
「了解。藤重さん手伝ってくれる?」
「いいわよ」
「それじゃあ……」
大童は筒を持って部屋の角に倒して置く。
「角まで広げるから、こっちを押さえててくれる?」
「わかったわ」
藤重は言われて通りに大童の所まで行くと、端を押さえる。
「広げていい?」
「大丈夫よ」
確認が取れたので、大童は筒を端まで転がしていき、壁に着いたところでナイフで真っ直ぐに切る。
「これを後3回ね」
「分かったわ」
そうして二人はこの作業を計、4回行い、
「次は横をやるから」
「ええ」
向きを変えて、同じ作業をもう4回繰り返した。
その作業を終えた二人。
「終わったけど、次は貼ればいいのよね」
「あぁ、裏面にフィルムがあるからそれを剥がして貼るだけだ」
「思ってたより簡単なのね」
「ちゃんとやるならもっと細かくやるべきなんだが、そこまでやるつもりはないしな」
「その辺は適当にだね」
「そうね」
「じゃ、貼ろっか」
大童は短い方の壁紙のフィルムを角から剥がす。
「藤重さん、そっち持ってて」
「分かったわ」
藤重は大童と反対方向の角をつまんで、壁に平行に持ち上げる。大童もそれに合わせて持ち上げた。
「こっちから貼ってくから、暫く持っててね」
「ええ」
壁に壁紙が触れないように気を付けながら、下角をまずくっ付けてから上角をに向かって貼っていく。端を付け終えた大童はなるべく空気が入らないようにそれなりに慎重に貼っていく。
「あ、もう手離していいよ」
藤重のつまんでいた部分をつまむ。それを確認して、藤重は手を離した。そして再び端を目指して貼っていく。
貼り終えて。
「これを後7回だね」
「このペースならそこまで時間はかからなそうね」
大童の貼った壁紙は、やや空気が入っているものの、このやり方にしては綺麗な方だった。
「とりあえずは、『クレヨン』も浮き上がっていないし問題はなさそうだな」
「これで駄目だったどうしてたの?」
鏡の方を向く。
「壁をなくすとかな」
「……できるの?」
「他には二重壁にするとか、まぁいろいろだ」
その疑問はスルーして、そう言った。
「……」
「作業続けよ?」
「……そうね」
二人は先ほどと同じ作業を下半分にする。ちなみにドア部分はナイフで切った。
下半分を終えて。
「夕夜手伝ってくれる?」
「藤重じゃ上は届かないし、しょうがないな」
上半分は鏡に手伝ってもらって、下と同じ要領で終えた。
「終わったな」
「終わったね」
「そうね」
一面『青いクレヨン』だった部屋の壁は新品の壁に貼りかえられた。
「後は家の奴らが見つけるだけだし帰るぞ」
「了解」
「藤重、先に下りろ」
「分かったわ」
藤重はロープを持つとサッシを乗り越えて、音を立てないようにゆっくりと下りていく。
藤重が地面に着いた。
「ロープの回収と窓を直すから先に下りてろ。ついでに壁紙も持ってけ」
「了解」
大童は余った壁紙を片手に持つと、もう片手でロープを握って下に下りる。
平成25年4月20日2:08
下に到着。すると、ロープが巻きあげられていく。
「鏡君が最後なのね」
「そうだね」
二人は上を見る。
ロープが巻きあげられきると、鏡が出てくるのが見えた。鏡はサッシの上に右手でつかまると、窓を閉めて吸盤を回収し、一瞬窓に手をかざしてそのまま落ちてきた。
そして音もなく着地。地面には草が生えているのだが……。
「撤収するぞ」
「そうね」
「うん」
三人はその場を後にし、車で帰って行った。
平成25年4月27日12:37
壁紙を張り替えてから一週間後、いまだ盗聴している三人。ただし、
「ようやく『壁紙』を剥がしたな」
「だねー」
「ええ、そうね」
着実に都市伝説は終わりへと向かっていた。
盗聴器から聞こえてくるのは『壁紙』を剥がす音。その後に『釘打ちされたドア』に驚く声が聞こえて、暫く。盗聴器の向こう側の『夫婦』はようやく決意したのか、釘抜きを持って来て扉から釘を抜く音が聞こえる。そしてゆっくりと扉を開く音が聞こえ……
『……え?』
『……うん?』
その次に聞こえてきたのは素っ頓狂な声で、その後に聞こえてきたのは雑音。その音に『夫婦』は驚いていた。
それを聞いていた三人。
「無事に終わったみたいね」
「そうだね」
こんな軽い感じで今回の仕事は終わりを告げた。
第十八話『青いクレヨン』終了。
この話で20万文字超えましたかね。
卒業の季節まで書き終えることができるとして、
30万字は超えることができるだろうか。
……まぁ、
文字数なんて関係ないですよね。
量があっても中身がなくては。
いや別に自分のに中身があるとか言っているわけではないです。
むしろ有るか無いかで言われたら……。
……次回は二十一話を書き終えたら載せます。