UL   作:招代

41 / 69
十九話は短めです。
まぁ二十話が三編ですから良いということにしましょう。

その上前編の区切りの関係で後編は非常に短そうです。
こういう時もあります。
前も言った通り一話書いてから区切ってますので。

それではどうぞ。


第十九話 『ベットの下の男』 前編

女子大生のA子さんはB子さんの家に泊まりで遊びに行きました。

A子とB子はとても仲がよく、

その日も夜遅くまでB子の家でたわいもない話をしていた。

 

夜も遅くなりB子さんが眠くなってきたころ、

「ねえ、一緒にコンビニにアイス買いに行こうよ」

A子が突然そんなことを言う。

「えー、今から?」

「急にアイスが食べたくなっちゃった!」

「それなら一人で行けばいいじゃん」

「いいから行こうよ」

 

嫌がるB子さんの腕を引っ張って、

A子さんは家を出ました。

 

家を出て、

アパートの階段を下りるとB子の手を掴んでいるA子が走り出した。

「早く、駅前の交番にいこう!」

「なんで、どうしたの?」

B子はA子さんが血相を変えていることに気が付きました。

 

「見ちゃったの! B子のベッドの下に包丁を持った男が隠れているのを!」

 

その後男は警察に逮捕されたそうだ。

 

 

 

平成25年5月4日9:12

 ピーンポーン。

 と、部屋のインターホンが鳴り、大童は本を閉じると玄関へと向かう。

 

「はーい」

 扉を開くと、そこには藤重がいた。

「おはよ、大童君」

「来たね。おはよー」

「おじゃまするわ」

「いいよー。遠慮なく上がって」

 藤重が靴を脱いでリビングに行くと、すでに鏡がいた。

 

「おはよ、鏡君」

「はよ」

 藤重が既に定位置となった場所に座る。鏡はそんな藤重に目を向けて。

「それにしても暇人だな。GWだと言うのに何処にも行かず毎日のようにここにきて。もしかして友達がいなくなったのか?」

「なってないわよ! と言うか鏡君も同じようなものじゃない」

「前にも言ったが、お前等と違ってよく出かけている」

「いや、ずっとこの部屋にいたでしょ」

 「ずっと」とは、つまり藤重が来てから帰るまでの間のことだ。

「GW前半も東京に行ってきたところだ」

「そう言えばそんなこと言ってたね」

 ここで麦茶を持ってきた大童が座る。

 

「行ってたの?」

「うん。『パパッと東京行って戻ってくる』って」

「パパッといけるものじゃないでしょ……」

(……でもSランクならいけるのかしら)

「そういえば何しに行ってたの? 本部に用事?」

(しゅう)が倒れたようだから、病院に行ってきた」

「へー……大丈夫だったの?」

「……」

 内容とは裏腹に非常にどうでいいことのように言った鏡と、知らない人のことでも心配そうにする藤重。

 

 に、対して大童は沈黙の後。

「え!?」

 驚いた大童を珍しそうな表情で藤重が見る。

「どうしたの? そんなに驚いて。もしかして知り合い、とか?」

「いやいや藤重さんも見たことあるはずだよ! ニュースとかで!」

「有名人なの?」

「ほら『秋』って言ったら木田(きだ)本部長だよ! ULの社長だよ!」

「本部、長……?」

 そう呟いて、頭の中でニュースに関する記憶を掘り起こす。

 

 ……。

「ああ! そう言えばそんな名前だった気がするわ」

 両手を叩いて合わせる。

「えっと、それで大丈夫だったの?」

 まだ驚きを隠せない大童が少し早口で鏡に聞いてくる。

「ん、あぁ。生死の境を彷徨ったというか一遍死にかけたらしいが、すぐに回復して今は問題なく仕事をしているな」

「そう……良かった」

 ホッとする大童。

「良かったわね」

「うん。良かったよ」

「それで、鏡君が行った時にはもう大丈夫な状態だったの?」

「いゃ? 危険な状態で面会謝絶とやらになってやがったから、鍵とか壊して見舞って帰ってきた」

 

「……今まで色々とおかしいことはあったけど……流石におかしいでしょ。というより非常識でしょ……」

 頭を抱える藤重。

「結果的に回復したんだし良いだろ」

「結果的にはそうかもしれないけど……」

「あまり気にしない方が良いよ?」

「それは分かってるんだけど……って、もしかして鍵壊したままなの!?」

「帰りに直した」

「なら良いんだけど……」

(あれ、良くないわよね? そもそも……)

 そう思った藤重だったが、

「そういえば木田本部長は、いくつになるんだっけ?」

「今年で73だな」

「まだ現役?」

「最近は控えてるらしいが、まだまだAランク程度には負けないな」

「そっかー」

「……」

(何かもういいや)

 考えるのをやめた。

 

 

平成25年5月6日11:29

 GW最終日。

「結局何処にも行かなかったわ」

「でもゆっくり過ごすのもいいと思うよー」

「そうねー」

 何処にも出かけていないので何もない。

 

 

平成25年5月9日21:55

「仕事だ」

 藤重の部屋。鏡が紙を渡す。

 

 藤重が読み終えて一言。

「変質者?」

「否定はできない」

「『ベットの下』に数時間だしね」

「まともじゃないわね」

「でも実際に『ベットの下』に隠れる人はいなそうだよね。そんなところに隠れたらすぐに身動きが取れないし、見つかる可能性も高そうだし」

「楽な体勢だからじゃない?」

「確かに。ジッとしている分には楽かも。物音も立てずに済みそうだし……でも衛生的にはかなり良くなさそうだよ」

「そうね、人によっては全然掃除をしていなそうだもの」

「つまり埃のいっぱい溜まってる床で呼吸をするわけだから、体には良くないよ」

「でもこんなことをするときに、そんなことは気にしないでしょ。たぶん」

「でも急いで隠れてから冷静になって思うことはあるかもよ?」

「それはありそうね」

「それと今思ったけど、ジッとしている分には確かに良いかもしれないけど、楽な体勢ではないよね。カーペット無かったら床に直接だし、夏だと汗で埃がくっついてさらに大変なことになりそうだよ」

 その状況を想像する。

 

「……そう考えると物凄く嫌な環境ね」

「そんなところに数時間も隠れていられるのは変質的だけど、凄いかもしれないね」

「凄いかもしれないけど、そこまで行くと気持ち悪いわね」

「だね。でも変質者だとしたらその時点で気持ち悪いんじゃないかな」

「あ、それもそうね。でも変質者以外の可能性なんてあるの? そこまでして」

「普通に殺人目的とか空き巣とかいろいろあると思うよ?」

「つまり不審者ね」

「そうなるね」

 

「で、話を進めていいか」

 「変質者」が「不審者」に変わったのを聞いて、鏡が問いかける。

「あ、うん。いいよー」

「大丈夫よ」

「そうか。なら仕事の話をするが」

 そう言うと、鞄に手を突っ込んで内容の紙とは別の紙を取り出す。

「その前にこれだ」

 そしてそれを二人に渡した。

 

「なにこれ?」

 二人が手渡された紙には、一人の男の顔写真がのっていた。

「見たことないか?」

「無いわね」

「同じく」

「まぁ、お前等は交番の前とか通らないしな。見てなくても不思議ではないか」

「交番の前? ってことは指名手配書?」

「あぁ。で、これが実物の手配書」

 再び紙を4枚取り出して、それぞれに2枚ずつ渡す。

「手配書って配られてるものなの?」

「ものだな」

「へー」

 二人は手配書を読み始める。

 

 その紙に載っていたのは、先ほどのと同じ顔写真と身長。事件当時の服装や名前、そして『巳春町(ししゅんまち)児童連続殺傷事件』の文字。

「……」

「結構前にテレビでやってたわね」

 藤重は紙から顔を上げて、それを思い出してしかめっ面をしている。対して、大童はいまだ紙を見たままだ。その表情は何を考えているのか分からない。

「5年前にあった事件だな。ニュースでも大きく取り上げられていた。今はもうないが」

「5年も経てばそうでしょ」

「まぁな。この指名手配犯、見ての通りガラ悪いしヤンキーで周りの評判は悪かったが、子供を殺すような人間ではなかったようだ。と言っても児童ばかりだったのは偶々だったわけだが」

「『ガラ悪くてヤンキー』な人全員が人を殺すような人だったら怖いわよ」

「ようするにただのヤンキーってことだ」

「そう。それで?」

「だが最初の事件が起こる数日前から様子がおかしかったらしい。それこそ人が変わったようにな」

「人が変わったように……」

 口元に手を当てて考える。

 

「何かあったの?」

「無いと言えば嘘になる。が、そこは別の管轄だ」

「何か気になるわね」

「まぁ簡単に言えば呪いだ」

「今度は『呪い』なのね」

 自分で聞いておきながらうんざりしている藤重。

「呪術とも言えるな。交霊術みたいに一種の確立された(すべ)だと思っておけばいい」

「そう。で?」

「そのヤンキーは呪われたわけだ。この町にかなり昔から根付いていた呪いに」

「それが変わった原因?」

「だな。と言っても、何もしなければ問題なかったわけで、つまりは自業自得と行きたいところなんだがなぁ」

 そう言ってため息。

「人的被害が出ている以上、自業自得で済ませられなかったのが迷惑な話だ」

「迷惑で済まされないわよ」

 やや怒気の混じった声だ。

「もちろん警察以外に専門な奴らも捕まえようとしたわけだが、取り逃がした」

「取り逃がさないでよ……それでそんな状態の人がいて大丈夫なの……?」

 不安と心配の混じった声で聞く。

「町からはだいぶ離れているし、呪いの効果も薄まってほぼ無いような状態だ。だからこそ、この5年間は何もなかったわけだ」

「そ……」

 安堵する。

「だが今回のコレのおかげで呪いによる殺人欲と女性の部屋に侵入するという変態的欲望を後押し、まぁ内容的にもこっちがメインだけどな」

「ようするに、今回のは憑依型でこの人が対象なわけね」

「そうなる」

 

「それで、今回はどうするの? 前みたいに麻酔矢を使う?」

 ここまで黙っていた大童が紙を置いて話に加わる。

「そうだな。『ミミズバーガー』同様に進行具合を見てからと言うか、現行犯で捕獲するまでもなく罪を犯しているし、捕まえても問題ないだろ」

「だね」

「ならすぐに捕まえるの?」

「それでもいいが、言霊に憑かれているおかげで見つけるのは簡単だったから発信機を付けてある」

 鏡がパソコンの画面を二人に向けると、二人はそれを見る。

 

 その画面には詳細な地図に赤い丸が表示されていた。

「この赤丸が対象だね」

「例によって直接つけてあるからそうなる」

「凄く簡単に見つかったわね……指名手配犯なのに」

「言霊に憑かれたのが運の尽きだね」

「ホントにそうね」

「で、これまでの行動を見る限り、ほとんど動いていない」

 その言葉に二人は考えて、

「……引きこもり?」

「ニートじゃない?」

 別々の答えを出した。

「どっちかって言うとニートだな。一応外に出てる」

「ほとんど出てないのね」

「コンビニとアパートの往復だな」

「お金はどうしてるのかな?」

「お金なんて下ろしたらバレるしな。恐らく現金をかなり持っているはずだ」

「5年間潜んでいたわけだしね」

「あぁ」

「でもどうしてそんなにお金があるの?」

 素朴な疑問を問いかける。

「恐らくここに来る前に空き巣とかいろいろやったんだろ」

 そして帰ってきた答えはさらなる犯罪。

「なら捕まったらそのあたりも余罪として出るね」

「その前に言霊を消して、呪いを消さないとな。呪いの方は専門の奴らだが」

「んー……」

 その言葉に少し考え込む藤重。

 

「でもこの場合ってどうなるの? 内容のことに関しては前回と同じ感じなんでしょうけど、殺人は呪いによるものなのよね。つまり正気じゃなかったんじゃないの?」

「正気ではないだろうな」

「たまにニュースで精神病の人が無罪になることがあるけど、今回もそうなるんじゃない?」

「難しいところだ。まさか呪い何て説明も出来ないしな」

「まあ、できないわよね」

「だが逃げる時にやったかもしれない空き巣などの行為は呪いとほぼ関係ないし、というかここまで逃げて、ちゃんと生きている時点で精神病とかには見られないだろう。説明できないし」

「つまり?」

「成人だし普通に捕まる」

「何か可哀想とは思わないけど……複雑ね」

 頬杖をつく。

「とは言え、ある程度裏でいろいろあって秘密裏に刑が軽くなったりはするな」

「そう」

 

「それで話を戻すが、とりあえず発信機もついてるし今日すぐにってわけじゃなくてもいい」

「憑かれてても指名手配犯なら行動も慎重だろうしね」

「でも早めに越したことは無いでしょ」

「それはそうだ」

「でもそこまで緊急を要するものでもないし、金曜くらいでいいと思うよ」

「だな。暗殺()るなら寝ている可能性の高い深夜の方が良い」

(また「やる」のイントネーションが違ったような)

「確かに深夜なら次の日が土曜な金曜の方が良いわね」

「まぁ、深夜に寝てるとも限らないんだがな」

「そういう人って夜に出歩いて、人の多い昼間は家にいるイメージだけど。どうなの?」

「さっきも言ったが、出歩くと言ってもコンビニだけだしな。それも2・3日に一回で、時間帯は朝昼夕とバラバラだ。ただ深夜は無い」

「どうして深夜がないの?」

 その疑問に大童が答える。

「恐らく深夜だと、かえって怪しまれやすいんじゃないかな。人が少ない分、顔も判別されやすいだろうし」

「なるほどね……」

「それに顔写真があっても、今もこの顔とは限らないしな。髪型だとか痩せたりして。変わっている自覚があるなら、人が多い時の方が危険は少ないはずだ」

「黒子とか傷みたいに分かりやすい特徴も無いしねー」

 大童は顔写真を手に取ってそう言った。続いて藤重も同じように手に取る。

「確かにそうね」

「むしろこの写真ガラ悪いから、真面目な感じにしたら分からないんじゃないかな」

「確かに……」

 

 藤重は頭の中で写真の中の人物を真面目な感じにしてみようとするが、想像できなかった。それほどまでに真面目とは程遠い写真だった。

「そうかもしれないわね」

「そういったわけで、寝ている可能性の高い深夜に行くわけだ」

「後、昼間だと人目もありそうだよね」

「そうね、分かったわ」

 と頷いてから。

「……でも、こういう時にこそ盗聴器を付けておくべきじゃなかったの?」

「その辺はスリルだ」

 藤重の問いにそんな返しをした鏡。

「何言ってんのよ……」

 その回答に呆れてしまう藤重。

 

「それで、明日でいいかな? 行くの」

「そもそもどのくらいの距離なの?」

「ここから車で25分。アパートの一室だな」

「じゃあどのくらいに出る?」

「そんなに不規則な生活は送ってなさそうだしな。明後日になるが0時ちょうどでいいだろ」

「了解」

「私はかまわないわ」

「なら質問が無ければ解散するか」

「あ、結局私が寝ているところを麻酔矢で射るの?」

「それでいいだろ。いっその事直接差してもいいぞ」

「……一応射るわ」

 何が一応なのか分からないが、一応弓を使うようだ。

「他にはあるか?」

「ないよー」

「ないわ」

「なら今日はそろっと解散でいいだろ」

「そうだね。時間も時間だし」

 大童と鏡が立ち上がる。

 

 玄関。

「じゃ、また明日ー」

「明日な」

「また明日ね」

 二人は帰って行った。




今から言っておきますが、
二十話はオリジナル回です。

ですので、
都市伝説の内容とか本文とか今まで以上に期待しないでください。
特に都市伝説の内容を。

次回は二十一話を書き終えたら載せます。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。