二十三話……半分書けてないけど投稿。
ま、
まぁ三分の一くらいは書けましたし、
残りの構想も頭でそれなりにまとめてあるので土日を使えば大丈夫な……はず。
後編ですし今までの何か雰囲気があれですが、
基本的にあっさりと。
都市伝説の難易度と雰囲気は関係ないですからね。
それでは『Y君』後編を投稿します。
平成25年6月20日4:30
ホテルの一室。目覚めた大童はカーテンを開ける。
雨は降っていない。
それを確認した大童は着替えを終えると、走り込みに出かけた。
平成25年6月20日4:43
涼しい空気の中、一回も止まる事無く、最初のペースを保持したまま住宅街を走る大童。息は少しも上がっておらず、表情にも苦しさは見受けられない。時々、どちらに行くか迷う様子もあったが、それでもただひたすらに走り続けた。
そして、時々すれ違う人には挨拶を忘れない。そのあたりには好青年といった印象が持てる。
平成25年6月20日4:59
さらに走り続ける事十数分。大童は止まって、一軒の家を見上げていた。表札には「後藤」と彫ってある。どうやら人が住んでいるようだ。
ジッと見上げていた大童だが、数分すると視線を外して再び走り始める。心なしか、先ほどよりその足取りは軽かった。
平成25年6月20日5:24
走り出した大童は最初とは違い、たびたび止まったり、Uターンをしてきた道を戻ったりをしていた。それでも速度は落ちていないが、止まるたびに軽かった足取りは重くなる。表情は苦しいものになっていく。
そしてまた何もない道で止まった大童。しかし今までとは明らかに違った。
「――ァ……ハ――」
呼吸が荒く、表情は苦痛が満ちて、胸を手で押さえて塀に寄りかかる。鼓動は早い。
暫くの間そうしていた大童だが、落ち着いてきたのか深呼吸をすると、徐々に呼吸も鼓動も表情も平常時に戻ってくる。
「……ふぅ」
状態が戻りきると、最後に息をはいて胸から手を離す。そして右手を強く握りしめ、その場を走り去った。
平成25年6月20日11:42
ランニングを終えて部屋に戻ってきた大童は昨日届けられた刀で素振りだけ(さすがに刀を振って動き回れないため)をした後、風呂に入って汗を流し、天気予報を付けてから窓際の椅子に座って本を読んでいた。
前の机の上には右に数十冊、左に数冊の大小さまざまが詰まれた本の塔がある。量的に右がこれから読むもので、左が読み終えたもののようだ。
大童は夕方になって寝るまで本を読み続けた。
その日、雨が降ることは無かった。
次の日、窓から見える空は曇天。天気予報は雲りのち雨、大雨注意報を報せる。
それを確認した大童はどこかへと電話をすると、貸してもらったパソコンを取り出して起動。それから何かのプログラムを起動すると、この辺り一帯の地図が表示された。
地図には一つ赤丸があり、全体的に大きい範囲で歪んだ枠で囲われている。位置からして、この赤丸は現在位置だろう。
そのまま、大童はテレビとパソコンを付けっぱなしにして、着替えてから読書タイムに入った。
夜。雷が遠くに鳴り始めた頃、一本の電話が携帯に入る。その電話にでて通話を終えると、大童は刀と合羽とパソコンとイヤホンを持って部屋を出た。
平成25年6月21日21:47
ホテルを出た大童は合羽を着て耳にイヤホンを付けると、パソコンを開いて場所を確認し、走り出す。
向かう場所は電話のあった方向の枠の端。大童なら大したことの無い距離だ。
空から雨がぽつぽつと降り始めていた。
平成25年6月21日21:53
思いっきりブレーキを掛けると、擦れる音と共に地面の雨水が盛大に水飛沫となった。大童は急いだために乱れた息や濡れた靴などは気にせず、パソコンを再び開いて先程とは違うプログラムを起動。少しだけ操作して、パソコンを閉じた。
雨は本降りになってきていて、雷が頻繁に落ちている音がする。こんな天気だからか、人の気配も車も無い。家のカーテンの隙間からは明かりが漏れていた。
5分後。パソコンが実現の終了を告げる。しかし雨の量がまだ足りないのか、雑音も聞こえず『Y君』が出てくる様子も無い。
それでもすぐに動けるようにパソコンを地面に置くと、刀を取り出して持つ。
(……落ち着こう。とりあえず)
空いている左手を胸に当てて、乱れた息を戻すように深呼吸。それを何度か繰り返してやめて、刀を持ち直す。息の乱れは直った。
さらに約5分後、雨はさらに勢いを増す。それでもジッと待っていると数m前方に小さな人影が現れた――
「……!」
――瞬間。
人影は真っ二つに切られていた。その後方では、勢いを殺すための急ブレーキによる盛大な水飛沫が舞い上がる。
「ハァ……ハァ……」
一方。水飛沫の発生源は切った物体を睨みながら、肩で息をしていた。
「ハァ……ぁ」
(駄目だ……落ち着かないと……あれは僕じゃない。似ているけど、違う。名前は一緒でも僕じゃない以上敵討ちにすらならない。いや仮に僕だったとしても、あれは自業自得。それに目的は達成していた。恨むのは筋違い……恨むべきは……憎むべきは……「僕」ではなく「僕自身」)
この間にも修復を終えた『Y君』は『刃物』を持ってこちらに走ってくる。その距離はだいぶ近い。
(とにかく落ち着こう。落ち着けば……余裕な相手だ)
大童はリーチの差を生かして、『刃物』を持った手首を先に切り落とし安全を確保した後に、目の前にいる相手を真上に蹴り上げる。そしてすぐに半歩下がって一回転すると、腹のあたりを蹴り抜いた。
蹴り抜かれた『Y君』は『刃物』を持った手首を残してバウンドしながら吹き飛んでいく。
(第一、切り刻んだところで罪滅ぼしになるわけでもない。そもそも罪は消せるものじゃない。だから一生背負っていくと決めたはず……なら自分にできる事は罪を忘れずに背負い続ける事。今するべきことは目の前の仕事を確実に終わらせること。決して切り刻んだり憂さ晴らしすることじゃない……ちょっとスッキリしたのは事実だけど……)
手首の修復はあっという間に終わり、再度『Y君』は突っ込んでくる。
「……ふぅ」
(邪魔になる感情は持つべきじゃない。持つべきなのは余裕。焦らず確実に……)
ある程度まで近づいた『Y君』は踏み込むと、勢いそのままに跳んだ。手の『刃物』は一直線に大童の首を狙う。
大童はそれを横にズレるだけで簡単に躱すと、切り上げで上半身と下半身に切り分ける。そして相手の進行方向に少しだけ移動して、分離した下半身のみを蹴り飛ばした。
下半身は放物線を描くように飛んでいき……地面に激突。跳ねる。大童の後ろの上半身は腕だけで立ったが、両手がふさがって何もできないのか徐々に下半身と合流していく。
その様子を見ながら大童は、
(確実に「殺す」以上、急所を狙ってくるから避けるのは簡単なんだよね)
そんなことを思っていた。
それからも大童は相手の攻撃を避けては蹴り飛ばすを繰り返す。
およそ一時間後。雨の勢いが弱まってきた。同時に、雨音と共に雑音が聞こえる。『Y君』の体が消滅し始める。それでも大童に向かってくる。
大童は『Y君』を軽く蹴飛ばすと、それ以降は何もせず、ただジッと消滅を見ていた。
……そして『Y君』は消えた。
ULの社員に刀を渡した後も暫くの間立ち尽くしていた大童だが、動き出してパソコンを回収する。画面を開くと、さすが防水加工なだけあって何も問題はないようだ。むしろ問題なのは大童の方で、いくら合羽を着ているとはいえ、靴はグショグショで歩く感触が気持ち悪い。髪も、隙間から入った雨でシャツもビショビショで冷たい。だが大童はそっちは気にせず、パソコンを閉じると、来た道を戻った。
平成25年6月21日22:34
まず、ホテルに着いた大童は合羽を脱ぐと水を払ってから部屋に向かう。部屋に着くと、着ていた服を脱いで風呂にゆったりと浸かり、出た後に新しい服に着替えて、着ていたものをホテルのコインランドリーで洗濯、乾燥。洗えない靴には新聞紙を詰めておいた。
そこまで終えて終了待ちの大童。
(とりあえず報告かな……)
携帯を取り出して、電話を掛ける。
「もしもし? ……あ、うん。仕事は終わったから明日の朝に出るよ。昼ぐらいに着くと思う……うん、じゃあ明日」
通話を終え電源を切ると、そのままベットに倒れ込んだ。が、
(洗濯終るまで本読んでよ……)
すぐに起き上がると、積んである本の所に向かった。
その後、洗濯乾燥が終了し服を回収した大童は、パソコンで駅の時刻表を調べた後に眠りについた。
平成25年6月22日11:58
翌日。ホテルのチェックアウトを済ませた大童は、昨日調べたとおりに自力で帰ってきた。
そして現在、学園からそこまで離れていないここは墓地。周りはお墓だらけだ。
その敷地内で大童は一基のお墓の前に立っている。荷物が変わっているところを見ると、一旦学園に帰ったようだ。
暫く立っていた大童だが、墓石の前にしゃがむと両手を合わせて目を瞑る。数秒後、目を開けて、手を離して汲んできた水を柄杓で掛けて全体を掃除。その最中、誰かが砂利道をこちらに向かって歩いてくる音が聞こえた。
「……」
大童が音のした方を見るとそこには、
「その……こんにちは」
藤重が立っていた。
「どうしたの? こんなところで」
掃除しながら世間話をするかのように問いかける。
「お墓、ここって聞いたから」
「そっか」
それだけで大体のことを察した大童は、目を伏せながらそう言って、少しだけ藤重の方を見たが、特に何も言わずに掃除を続けた。
「掃除、手伝ってもいい?」
「ううん。もうほとんど終わったから……それならそこにある造花を切りそろえてもらえる? 鋏も置いてあるから」
「わかったわ。切りそろえればいいのね」
「うん。お願い」
そこから特に会話は無く、掃除を終えて造花を花立てにさす。大童は線香を数本取り出すと、火をつけて手であおいで火を消し、半分位を藤重に差し出す。
「いいの?」
「うん」
「じゃあ、貰うわね」
差し出された線香を受け取る。
線香を渡した大童は墓石の前にしゃがんで、香炉に線香を置くと目を閉じて合掌する。十数秒して立ち上がり、余っている水を一掛けする。その後藤重も同じようにして、最後に大童が桶の中の水を全部かけた。
「それじゃ、僕は帰るけど。藤重さんはどうする?」
出したものを片付けた大童が藤重の方を向く。
「私も帰るわ」
「そっか、なら送ってくよ」
「ええ、お願いするわ」
二人は一緒に墓地を後にした。
平成25年6月22日12:44
二人は終始無言で藤重のアパート前についた。
「……」
「……」
「じゃあ……またね」
何とも言えない雰囲気の中、大童が帰ろうとする。が、
「ちょっと待って!」
藤重が引き留める。
「何?」
「えっと、その……話、聞いたわ。大童君のこと」
言いづらそうに下を向きながら言う。それに対し大童は見守るように、一言。
「うん」
とだけ言った。
「それで、すごく衝撃的だったし、正直今でも信じきれない気持ちなんだけど……けどきっと本当のこと、なのよね?」
「……」
大童は答えない。藤重は続ける。
「でも、だからって私は今の大童君を嫌いになれない……から、だからその……ええっと……」
言い淀む藤重だったが、大童の目をしっかりと見て、
「これからもよろしくね」
右手を差し出した。
右手を差し出された大童は、目を見開いて、しかしすぐに優しい笑みを浮かべ、
「こちらこそ、よろしく」
同じように右手を差し出す。
二人は握手を交わした。
第二十話『Y君』終了。
ぐ……今週の仕事時間が変更したせいで、
生活リズムの中の娯楽時間に思いっきり食い込んでいて時間が少ない……です。
なるべく時間を効率的に使わないとあっという間になくなってしまいます。
次回は体育祭。
都市伝説要素は少なめになります。
そして次話は日曜日までに二十三話を書き終えて日曜に投稿します。