実は昨日投稿しようと思っていたのですが、
週刊の漫画雑誌に僅かな娯楽時間を使われすぎました。
あれがなければ……って言っても自分が悪いんですが。
それでも4日で投稿できたのは個人的に大きいです。
前は3・4日ペースだった気がしますし。
それでは後編です。
平成25年7月6日10:10
体育祭2日目。色々と競技が終わって第一グラウンドで障害物競走が始まっている。第二グランドはドッジボールの最中だ。
障害物競走の内容は、バットまわり→平均台→トンネル→ハードル→網くぐり→跳び箱→キャタピラ→パン食い、である。一見普通の障害物競走だが、この最後のパン食い、ロシアンルーレットになっている。走者6人に対しパンは8個。その内一つがハズレで、中身は定番な山葵や辛子やハバネロなどから、ゴーヤや蜂の子やシュールストレミングなどなど幅広い。パンは袋に入っているが、ゴール前に袋を開けて一口食べなくてはいけない。なので中身によっては大変なことに……。
そんな中大童はと言うと、
「う……」
一着でゴールしたものの一度口を付けたものを捨てるわけにもいかず、何とか食べきり水道で口直しをしていた。
(胃の中が……)
大童の食べたパンは砂糖パン。砂糖がギッシリ詰まっていた。まぁ、大丈夫な人は大丈夫かもしれないが、大童には駄目だったようだ。この後すぐに競技があったら支障をきたしていたことだろう。
平成25年7月6日16:30
ビーチフラッグ(1位)と50m(2位)・200m(1位)自由形が終わってメドレーリレーがもう少しで始まる頃、競技を終えて着替えてきた藤重が鏡のいる観客席にきた。
「まだ始まってないわね」
「見れば分かるだろ」
「それはそうだけど……」
そう言って視線をプールに向けると、100mプールの方に大童が見える。
「あ、そろそろ始まるみたいね」
「つっても、康はアンカーだからもう少しあるけどな」
「そうなの?」
「あぁ」
言われてプールを見ると、確かに大童の前に人がいて、反対側の人が笛の後にプールに入ってスタート準備をしていた。
「と言うか、もう始まるわね」
「そうだな」
そうしてメドレーリレーが始まる。
結果を言うと、赤団の大童達のチームが終始優勢で一位を取った。そして大童達の競技はすべて終了。後は閉会式を待つのみだ。
平成25年7月6日17:06
ただ今プールでは水中騎馬戦が行われているが、ここはプールの外。曇り空の下、藤重と鏡は大童が着替え終わるのを待っている。
暫くして、
「ごめん、待った?」
水着などが入ったバックをもった大童がプールから出てきた。
「大丈夫よ」
「どうせこの後やる事があるわけでもないしな」
「そうなのよねー、これからどうする?」
「今はここで水中騎馬戦、第一グラウンドでサッカー、第二グラウンドで大縄跳びだね」
「観戦するなら騎馬戦かサッカーかしら」
「だね」
「そうだなぁ」
と、鏡は考えるそぶりを見せて、
「とりあえずバックを置いてきたらどうだ。康は寮だし問題ないだろ」
大童の手にあるバックを見て言った。
「んー……そうだね」
鏡の言葉に少し考えてから肯定した大童は、藤重を見る。
「藤重さんもそれでいい?」
「いいわ。ついでに私のも置いておいてもらっていい? 持ってても邪魔だし」
「うん、いいよー」
快く了承。そして三人は一旦寮へと向かう。
数分後、寮に荷物を置いてきた三人はとりあえず、まだ時間のかかりそうなサッカーを日陰で観戦することに決めた。
平成25年7月6日18:36
最後の競技が終わり、予定から若干遅れて閉会式が始まると、最終結果が発表される。それによると……
一位、緑団。二位、赤団。三位、青団。
となった。毎回団内のクラスは違うので関係ないが、緑団の優勝は5年ぶりだったようだ。
そして体育祭は終了。しかし、体育委員は後片付けが残っているのでまだ帰れないのだが……大童達は違うので関係なくそのまま帰った。
平成25年7月23日13:12
終業式後、大童の部屋。
「明日から夏休みねー」
「そーだねー」
「何を当たり前のことを……ん」
言いながらパソコンを操作していた鏡の止まった。と、思ったらすぐに動き出し、またすぐにパソコンを閉じて立ち上がった。
「どうしたの?」
そんな鏡を不思議そうに見る大童。
「ん、あぁ。仕事だ。緊急だから今から行くぞ。内容については車で話す」
「必要なものは無いの?」
「無いな。車を出してくるから、校門前に集合な」
そう言うと鏡は玄関から出ていった。
残された二人は、
「とりあえず行こっか」
「そうね」
特に準備するものも無いので、そのまま校門前に向かうことにした。
平成25年7月23日13:18
校門前にあった車に乗って、現在走行中の車内。
「で、内容だがこれだ」
運転席の鏡が紙を2枚大童に渡し、そのうち1枚を大童が藤重に渡す。
それを読み終えて。
「えっと、もしかして?」
バックミラー越しに鏡を見る。
「後25分くらいの所にある『小学校の地下倉庫に女子児童が閉じ込められた』そうだ」
「大変じゃない!」
予想していたことだが驚く藤重。
「だから緊急なわけだ」
「もう実現はしてあるの?」
「とっくにな」
「あれ? もう実現させたの?」
「今実現する前に助けられちゃうと下の内容を実現せざるを得なくなって、幽霊とか妖怪になるうえに、切り離さないといけなるなるからね。もし来年まで大丈夫だったとしても、こんな状況になることはないだろうし」
「正直、実現させてしまえば誰が助けようが問題ないんだが、実現させたことによって無意識に避けるから見つからない可能性が高い。ま、仮に無意識に避けなくても見つかるか分からない以上、結局行くしかないんだけどな」
面倒そうに溜息をつく。
「……とにかく、助ければいいのよね」
「だね」
「『助ける』って言っても、鍵を開けて速やかに立ち去るだけだ」
「速やかに立ち去るの?」
「学校に侵入してる以上、バレない方が良いからね」
「不法侵入だしな。それにいろいろ聞かれたりでもしたら面倒だろ」
「まあ、それは確かに。見つからないに越したことは無いわよね」
「うん。殆ど無いとは思うけど、どこかで会う可能性がないわけでもないし」
「念のため覆面でもつけるか?」
バックから2つの黒い覆面を取り出す。それを見て藤重は、
「私は遠慮するわ」
と言い、大童を見ると、
「僕もいらないよ」
大童は藤重の視線に気づいて、藤重の方を見ながら断った。
「見つかるつもりはないけど、学校だと見つかった時にそっちのほうが厄介なことになりそうだし」
「そりゃぁそうだ」
覆面を何処かにしまう。
そんな感じで話しながら、車は目的地へと向かっていく。
平成25年7月23日13:43
小学校校舎裏側の道路。そこに車が止まっている。
「小学生は見当たらないわね」
車内から校舎内を見ている藤重。
「終業式が終わってそれなりに経ってるしね」
「そうね。先生もいないのかしら?」
「いないってことは無いだろ。だから見つからないようにな」
「見つからないようにって言っても……」
「その辺は康がいれば問題ない。気配消せるような奴は見た感じいないしな」
「ならいいんだけど」
「で、これが校内地図だ」
地図を取り出して二人に渡す。
「侵入するのはここから見える畑の所にある裏口だ。『地下倉庫』は保健室横の階段にある」
「ほとんど反対側なのね」
地図を見ると赤と青の丸がそれぞれについている。
「鍵のかかっていない所があるなら、そこから入った方が良いだろ」
「僕達だと鍵を壊せても直せないし、正面からだと教務室から見えて危険だからね」
「確かにそうね。ちなみに靴をしまうものは無いの? まさか外に置いておくわけにもかないし、持って歩くと土が落ちちゃうかもしれないでしょ」
「そうだな。ならエコバックをやろう」
鏡はバックから折り畳まれた黒色のエコバックを一つ出して藤重に渡す。
「え、ビニール袋とかでいいわよ」
遠慮するように、受け取ったエコバックを返そうとする。
「馬鹿、ビニール袋だと音がするだろうが」
「あ、そういうことね」
言われて理解した藤重はエコバックを返そうとした手を引っ込めた。
「後、『地下倉庫』の鍵だがこれを使え」
「了解」
鏡は大童に鍵を渡す。
「……なんで緊急なのに鍵があるのよ」
その光景を訝しむ藤重は鏡をジトーっと見る。
「緊急とは言え、この都市伝説の言霊は前から『地下倉庫のある小学校』あたりを少し漂っていたしな。だから対象小学校の地下倉庫の鍵はすべて持っている」
鏡は鍵束を取り出して見せる。その数ざっと20以上。
「何ていうか、ホントに……もう」
それを見て藤重は頭を抱える。
「まあ、無ければ壊さないといけなかったんだし良いんじゃないかな」
「それはそうなんだけど……」
藤重は大童を見る。大童はやっぱり慣れているようで、このことに関して特に悩むことも無いようだ。
「……はぁ。そうよね、そうなのよね……分かってはいるのよ」
そう、ブツブツと呟いて、
「はぁ……まあいいわ。とにかくそれを使えばいいのよね」
「あぁ」
藤重はいつも通り自分を納得させ割り切った。単に悩むのが馬鹿らしかっただけかもしれないが。
「で、他に質問はあるか?」
二人を見渡して聞く。
「ないわ」
「ないよ」
「なら行ってこい」
「了解」
「行ってくるわ」
大童と藤重の二人がドアを開けようとしたところで、藤重がふと止まった。
「あれ、鏡君は行かないの?」
「車を放っておくわけにもいかないだろ。かと言って、どこかに車を置いてきたらこの場をすぐに離れられないしな。その辺に止めてから頃合を見計らって戻ってくる」
「あ、そう。じゃあ改めて行ってくるわ」
「あぁ」
二人は車を出て、小学校の敷地内にある畑の方に向かう。
車はどこかに走って行った。
平成25年7月23日13:49
「ここだね」
「本当に鍵かかってないのかしら……?」
二人は赤丸のされていた扉の前にたどり着いた。藤重は疑わしげに扉を見ている。
「夕夜が言ってるんだから大丈夫だよ」
対照的に大童は何の躊躇いもなく、ドアノブを掴んで回した。鍵はかかっていないようだ。
「ホントに開いたわね」
「それじゃ、なるべく早く行こっか」
「そうね。早く行きましょう」
靴を脱いでまとめてエコバックにいれると、校舎内に侵入をした。
平成25年7月23日13:51
玄関前階段。
「ちょっと止まって」
(教務室の外に気配……)
ここまで窓の外にも気を付けながら順調に進んでいたが、大童が小声で制止をかける。それに従い藤重は止まった。
「……うん。もう大丈夫」
数秒して、大童が安全を確認すると再び音を立てないように進み始めた。
平成25年7月23日13:53
保健室横に到着。
「それじゃ、僕が開けてくるから藤重さんはすぐに逃げられるように待ってて」
「わかったわ」
(……これ私居る意味ないわよね)
音を立てないように階段を下りていく大童を見送る藤重の頭を、そんな考えがよぎったが、
(いや……これも経験なのよね。経験)
それを振り払って、できる限りの警戒をしつつ大童の帰りを待った。
一方、階段を下りて扉の前にたどり着いた大童。
(気配はするけど音はしない……寝てたりしないよね?)
そう思いながら鍵穴に渡された鍵を差して、なるべく音がするように鍵を回した。
「……」
(反応が無い。どーしようかな……)
「とりあえず大きな音を出せば気づくかな」
そう呟いて半歩下がり、扉に向かって回し蹴りをくらわす。もちろん、扉が変形しない程度に。それでもかなりの音が響いた。
(よし! 逃げよう)
中で気配が動いたのを確認してから、くるりと回れ右をし、音を立てないよう階段を2段とばしで駆け上がる。
平成25年7月23日13:55
階段を見下ろす藤重の視界に大童が駆けあがってくるのが見えた。
「なんかすごい音がしたけど開けてきたの?」
そして駆け上がり終えた大童に尋ねる。
「うん。音には気づいたみたいだし」
「あれだけ大きな音出せばそりゃ気づくわよ」
「とにかく早く逃げよっか。ドアを開けた感じがする」
「! そうね。気づかれないように急ぎましょう」
二人は音を立てないように急いで入ってきた場所を目指す。
平成25年7月23日13:56
小学校を脱出した二人は、来た時と同じ場所に止めてあった鏡の車に乗り込んんだ。
「どうやら無事に脱出したみたいだな」
「ええ、気づかれずに済んだわ」
「いゃ、お前等じゃなくて『女子児童』が」
「そっち!?」
「決まってるだろ」
当たり前のことだという風に鏡は後ろを向いて言う。
「今回みたいなのは、対象の安全の方が優先だよ。こっちは命かかってないけど、あっちはかかってるわけだし」
「む……そうね。その通りだわ」
「それに、この程度のこと康がいるんだから心配する必要ないだろ」
その言葉に少し悩んでから答える。
「うーん……そうだね。生徒も残ってなかったし、先生たちがみんな教務室にいたから隠れたり、迂回する必要もなかったから」
「確かにスムーズに行けたわね」
「心配する必要性が全く見当たらないな」
「そうね」
「ってわけで、とっととずらからるか。何時までも路駐していて怪しまれるわけにはいかない」
そう言って、鏡は車を発進させてその場から逃走した。
後日、『女子児童が閉じ込められていた』ことが市民新聞で小さく取り上げられていた。
第二十一話『長い夏休み』終了。
体育祭終了。
と言ってもだいぶ省略しましたが。
そして次回は二十四話を途中まで書き終えたら載せます。
ちなみに内容は肝試し。
したことないけど憧れますよね。
……でも遠くに出るの面倒です。
家の近くに心霊スポットでもあれば良かったんですけど。