UL   作:招代

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「招代」の三連休(2回)は二連休(2回)へと退化した。
退化……したんです……うぅ。

まぁなってしまったものは仕方がない。
切り替えていきます。

今回は肝試し。
少しオーバーな部分もある気がしますが、
こういうのは見てて楽しいですね。
書いてて恥ずかしいですが。

では前編行きます。



第二十二話 『紙くれ』 前編

夕方、

ある学校の女子トイレに女子生徒が入ったときのこと。

 

「かみくれーかみくれー」

前から二番目の個室からそんな声が聞こえてくる。

トイレットペーパーが切れたのだろうと思った女子生徒は、

他の個室からトイレットペーパーを持って来て下から滑り込ませた。

 

だが次の瞬間、

滑り込ませたところから手か伸びて女子生徒の髪を掴むと、

「この髪だよ!!」

怒声と共に女子生徒の髪の毛は無残にも引きちぎられてしまった。

 

 

 

平成25年7月28日13:21

「あぁ、そうだ。今年も肝試しがあるから出ておけよ」

「それは誰に言ってるの?」

「お前しかいないだろ」

「……分かってるわよ」

 ここは冷房の効いた大童の部屋。

「ちなみにー……拒否け――」

「ない」

「――ん、は無いわよねー……分かってたわよ、はぁ」

 溜息はつくが、テーブルには突っ伏さない。

「でも藤重さんも2回目だし、今まで色々とそういったものにはかかわってきたんだから、そろそろ大丈夫なんじゃないの?」

 その質問に藤重は、口元に手を当てて考えながら答える。

「んー……確かに仕事でなら大分慣れてきたと思うんだけど、肝試しってなるとやっぱり違うのよね……」

「そういうものなの?」

 大童は鏡の方を見て尋ね、

「色々と違いはあるだろ」

 訊ねられた鏡は読んでいた本から目を離して、大童を見て答えた。

「そうなんだー」

「そうよ。仕事は何が何処から出るか大体分かってるけど、肝試しは分からないじゃない」

「あー……なるほど」

 その後も三人は雑談したり、宿題(藤重だけ)したり、本読んだり、様々なことをして帰るまでの時間を過ごした。

 

 

平成25年8月3日22:38

 肝試し当日。

 肝試しのルールとしては基本二人一組で時間を空けて出発し行動するのだが、途中で合流することも多々あるのでその辺はグダグダ。学園敷地内の十八ヶ所にお札の貼られたポイントがあり、一ヶ所以上の場所のお札を持ってくることになっているが、棄権も可能。

 そして、一組ごとに懐中電灯とポイントの書かれた用紙が渡される。しかし用紙を見ずにポイントを探すのも一興かもしれない。ちなみにこの肝試しに人為的な仕掛けは一切仕掛けて無いので、何かが起きたとしたら……。

 

 して、現在。ここは高等部校舎内2階。大童は藤重と共に行動しており、懐中電灯は藤重が持っている。そもそも大童に懐中電灯は必要ない。

「ね、ねえ……何もいないわよね?」

「いや、僕も霊感は無いから」

 腰が引けている状態で辺りを照らす藤重の質問に、慣れた様子で返す。それもそのはず、こんな感じの問いかけは37回目である。

「でもほら、気配とか」

「妖怪ならある程度分かるけど、幽霊は霊感がないと全く分からないよ」

「なら妖怪は?」

「今のところ居なかったと思う」

「そ、そう。なら、い、い良いのよ」

 そう言ってもまだ腰が引けている。と言うか、ずっと引けている。

(全然よく見えないんだけど……)

 そう思いながら、少し心配そうに藤重を横目に見る。

 しかし、藤重がこうなのも仕方ないのかもしれない。なぜなら前回『トイレの花子さん』に出会ってしまっているから。そのせいでトイレのあたりを通る時はより悪化している。

 

 

平成25年8月3日22:59

 藤重がそんな状態でもポイント目指して進み、4階。を、少し進んでいると、

「……ッ!?」

「ん」

 急に藤重が立ち止ったので、大童も立ち止まって振り返り、後ろにいる藤重を見る。

「何かき、聞こえるわ……何? 何の音?」

「何かの演奏だね」

 耳を澄ますと聞こえるくらいのメロディーが、何処からか流れているようだ。

「演奏ってことは……お、おおおお音楽室? 音楽室ってて」

 面白いくらいに怯えながら大童を見る目は恐怖と言うより、絶望に満ちている。

「次のポイントだね」

 笑いそうになるのを悟られないように、あっさりと言った。

「別! 別の場所に行きましょ!?」

「いや、でも夕夜から全部回るように言われてるし」

「じゃあ! 大童君だけで行ってきてよ」

「それはいいけどー……」

 と、頬を人差し指で掻きながら、少し間をおいて。

 

「大丈夫なの?」

「……なにが」

「えっと、ここに一人で置いて行って」

「……」

 

「……ぇ」

「大丈夫なら行ってくるけど……」

 そう言うと、音楽室のある方を再び向いて歩こうとするが、

「待って!!」

「うわ!」

 出鼻を挫かれた。服を掴まれて。

「私も行くわ」

 やけに早口で言う。

「いや、でも」

「行くわ」

 そうは言っているが、服を掴んでいる手は震えているのが分かる。

(これはいったいどうすれば……)

「……」

「……」

(……とりあえず進むしかないよね)

「じゃあ進むよ?」

「ええ」

 大童が歩くと、その後ろを辺りをキョロキョロと見回しながら服を掴んで大童に隠れるようにして歩く。その移動速度は遅いが、大童はそれに合わせて歩く。

 

 歩くたびに音は近づきハッキリとして、それと比例して服を掴む力は強くなり、反比例して速度は遅くなる。

 

 しかし、その中で大童は違和感を感じ、その違和感はある確信へと繋がっていく事になった

 

 

平成25年8月3日23:30

 そうしてようやく音楽室前に到着。

「着いたよー」

「……」

 服を掴まれているので、首だけで振り返る。どうやら藤重は恐怖で目を瞑っており、まともに流れてくる音を聞いていない。

(どうしたものかな……気づかせさえすれば何とかなるんだけど)

「んー」

 暫く考えて。

 

「よし」

 とりあえず後ろ向きに右手で、服を掴んでいる手を離すことにした。ただし、一気に離すことはせずに、ゆっくりと開いて手を握るようにする。

「あ……」

 藤重の目が開く。大童は服から離れたところで体を反転させ藤重に向き合うと、服を掴んでいた手を両手で包み、優しく言葉を投げかけた。

「大丈夫だから。とにかく落ち着いて、そしたら流れてる曲をちゃんと聞いてみて」

 大童の言葉に、藤重は上目づかいで大童を見つめながら恐る恐る問いかける。

「の、呪われない……?」

「呪われないから」

「ホントに?」

「本当に」

 確認を取ると深呼吸を始めて、もう一度目を瞑って、流れている曲を聞こうと耳を澄ます。

 

 暫くして、

「……ん?」

 恐怖心は違和感へと変わり、

「……」

 違和感は疑惑へと変わり、

「……これって――」

 疑惑は確信となり――

 

「――アニソンじゃないの!!」

 ――怒りとなって爆発した。

 

「え!? 何? 私アニソン聞いて怖がってたの? うわ恥ずかしっ!!」

 顔を赤くした藤重は両手で顔を覆うとその場にしゃがみ込んだ。

 空気が急激に変化する。

「すっごい恥ずかしいんだけど! というかこの曲物凄く聞いたことあるし!」

「僕も聞いたことあるよ」

「これアレじゃない。『音楽教師の霊』が弾いてたやつでしょ!?」

「記憶が正しければそうだね」

「……」

「……」

 

「ホントに恥ずかしい……」

「ま、まあまあ。今はとにかくお札を取りにいこ?」

「……そうね」

 促されて立ち上がる。その顔は赤いままだが恐怖心は吹き飛んだようだ。

 

 二人は無事に音楽室のお札を取り、その後も順調とは言えないが今までよりは大分ましな感じで進んでいく。そして全てを回り終えて藤重は大童に送ってもらって帰った。一つの疑念を残して。

 

 

平成25年8月4日9:01

「ねえ、鏡君」

 翌日。大童の家について早々、藤重は本を読んでいる鏡に若干の怒りを含んだ声をかける。

「何だ?」

「昨日のアレ、鏡君でしょ」

「『アレ』って……何のことだ?」

 恍けたように言う鏡。

「『音楽教師の霊』のことよ!」

「いゃ、どう見たって『音楽教師の霊』には見えないだろ。ほら」

 本を閉じると藤重の目を見て、『音楽教師の霊』では無いことを証明するように手を広げて見せた。その態度に藤重は、眉間に手をやって目を瞑り、心なしかぷるぷると震えているようだ。

「……」

 ちなみにこの光景をさっきまで立って見ていた大童は、今は本を読むふりをして聞き耳を立て、バレない様に笑っている。

 

「お前はいったい何を言っているんだ? とうとう目が悪くなったのか。いゃ、この場合は頭か」

 広げた手の肘を少し曲げ、やれやれと言う風に首を横に振る。

「……じゃなくて! 『音楽教師の霊』を呼んだのは鏡君でしょっ、て事よ!」

 眉間から手を離して勢いよく言い放つ。が、

「あぁ、そういうことならそうだな。ってか『アレ』じゃどれか分からんだろ……多すぎて」

 鏡は悪びれる様子も無い。

「……他にもやってたの?」

「『音楽教師の霊』もそうだが、せっかくだからな。ああいう奴らにとってはある意味一大イベントとも言えよう」

「私にとってはいい迷惑よ……」

 そう言って肩を落とすと、ようやく座った。

「まぁ、そう嫌ってやるな。人間のやるドッキリ企画とかと同じようなものだと思えばいいだろ。行うのが人間か、そうじゃないかだけの違いだ」

「その違いが大きいんじゃない」

「だが、どうせ人間が驚かしても驚くんだろ?」

「うっ、否定できないわ」

「だったら大した違いじゃないだろ。どっちにしろ驚くんだからな」

「それはーそうだけどー……」

 と言いながらもブツブツと何か言っているが、鏡はこれを無視。本を読み始める。

 

 藤重の意識は2分後に戻った。

 

 

平成25年8月22日14:28

「さて、仕事だ」

 相変わらずの大童の部屋。いつも通りの三人。

「だいたい一か月ぶりかな」

「そうね、前回が夏休みの始まる前だったから。それで、今回は何なの?」

「これだな」

 パソコンを操作している鏡が紙を2枚取り出して渡す。受け取った大童と藤重はそれを読み始めた。

 

「酷いことするわね」

 藤重が読み終えての第一声。それに大童は首を傾げる。

「? 今回は死んじゃったりはしてしないけど」

「『髪を引きちぎる』ってところよ。絶対やっちゃ駄目だわ」

「『髪は女の命』って言うからな」

「あー、うん。聞いたことある気がする」

「ま、最近じゃそこまで大事にされていない気もするが。個人差だな」

「染めてる人も多いからねー」

「それでも大事にしている人も多いはずよ」

 そこでふと、素朴な疑問を口にする。

「やっぱり藤重さんも大事にしてるの? 髪」

「私? 私はー……まあ、すごくではないけどそれなりには」

「そっか。髪、綺麗だもんね」

 そう、笑いかけた。

「へ!?」

 

 ……。

「……」

「……」

「……」

「……あ、あれ? 何か変なこと言った?」

 長い沈黙に、さすがの大童も不安を感じたようで、窺う様に聞いてくる。

「え! べ、別に変なことではないけど」

 先ほどから紅がさしている藤重は慌てて答えた。その答に、大童はホッとした様子で嬉しそうに、

「そっか」

 とだけ言う。

「そのー……ありがと、ね」

 そして、そう言ってそっぽを向いた。

「……」

「……」

「で、今回の場所だが」

「え、ええ」

「うん」

 藤重だけ何とも言えない雰囲気になりかけたが、先ほどまで面白がっていた鏡がようやく話を進める。

 

「場所は車で30分くらいのところにある車田(くるまだ)中学校。藤重は聞いたことあるんじゃないか?」

 尋ねられて、藤重はその名前を記憶から探し出す。

「んー……確か付近にそんな感じの名前の中学校があった気もするわね」

「へーそうなんだ」

「時間は6時くらいに着けばいいだろう」

「だね」

「日にちは?」

「夏休みとはいえ、日曜以外は何かしらの部活動で生徒がいる。だから次の日曜で良いか」

「分かったわ」

「了解」

「持ち物は特になし。侵入のための鍵はこちらで用意する」

「やっぱり今回も侵入するのよね」

「仕方ないよ」

「だがこの前も楽だったが、その時より先生もいないし、より楽なはずだ」

「そういう問題じゃないんだけど……」

 

 そしてだいたいの話が終わったところで、大童が鏡の方を向く。

「そう言えば今回、夕夜はどうするの?」

「ん、あぁ。別にどっちでもいいが……そうだな、行くか」

「ちなみにどうして?」

「夜の学校もいいが、夕方の学校も捨てがたい。だから仕事とは全く関係ない」

「確かに雰囲気は良いよね」

「えー……何か出そうで嫌じゃない」

 共感する大童とできない藤重。

「ま、そんなことはどうでもいい。それよりも、集合時間は5時半でいいとして、場所はどうする?」

 そんなことを藤重を見ながら問いかける。

「どうするって?」

 問いかけられた側は分かっていないようだ。

「お前の家か、ここか。要するに、お前の予定次第だな」

「あー……荷物はいらないわよね?」

「『トイレ』に入る以上、内履きは持っていく方が賢明だと思うが」

「……そういえばそうよね。なら部活もないし、急用がない限り来ると思うからここにしましょう」

「なら時間になったらここを出るってことでいいな」

「うん。了解」

「それでいいわ」

「なら質問が無ければ仕事の話はこんなもんで良いだろ」

「ないよー」

「一応確認するけど、『髪を掴まれ』なければ良いのよね?」

「あぁ。お前は『トイレットペーパー』を入れたら出ればいい。『手』のほうは大童がなんとかする。とは言え、なるべく隙間から顔は離しておけよ。近すぎれば対処もしづらいからな」

「分かったわ」

 

「ちなみに、もし『掴まれ』たら『髪がちぎれる』だけじゃすまないぞ」

「どうゆうこと?」

 鏡は人差し指でこめかみ辺りを二回叩きながら、

「考えてみろ」

 と言って、話し始める。

「『髪を掴まれて引きちぎられる』と言うことは、簡単に言えば引っ張られるってことだ。そして『手』は下の隙間からでている。ここまで言えば『引きちぎられる』際にどうなるか想像つかないか?」

 藤重はその場面を想像すると、恐る恐る口を開いた。

「……もしかしなくても顔が『トイレ』の床につくわね」

「顔だけじゃなくて、最低でも手と膝辺りもつくんじゃないかな」

「恐ろしいわね……というかこんなの想像させないでよ」

 藤重は気持ち悪そうだ。

「このくらい言った方が『絶対に掴まれたくない』って思えるだろ」

「……そうね。ますます『掴まれ』たくなくなったわ」

「と言ってもほとんど康次第なわけだが」

 鏡は大童を向く。

「頼むわよ、大童君」

 藤重は真剣、というか、絶対に嫌という必死さが伝わるような表情で大童を見る。

「大丈夫。そんなことにはさせないから」

 大童は藤重の言葉に、真剣な表情で宣言をした。

 

 想像のせいで以前気持ち悪そうな藤重が落ち着いた頃合いで、鏡が二人を見回す。

「他はあるか?」

「ないわ」

「なら仕事の話は終わりだ」

 鏡はパソコンを閉じてバックにしまう。

 

 その後は全員宿題も終わっているので、ゆったりとした時間を過ごした。

 




これからの話の予定もひと月を残して決まってますし、
前に言った通り卒業の季節でこの話は最終回なので、
何か終わりが見えてきたなーって感じです。
と言っても、
最終回の後の話で書きたい都市伝説もあるんですけどね。

ただそれはまぁ、
次回作とかをいっぱい書いてからにしたいところです。
いったい何年後になるやら……。
まぁ、
あまり先のことを言ってもどうなるか分からないんで気にしないでください。

では次回は二十四話を書き終えたら載せます。
ただ仕事関係で少し遅くなるかもです……すみません。
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