UL   作:招代

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少し期間が空きました後編。

三話を書き終えたら、
ついつい四話を少し書いてしまいまして……。

ですが作者としては、
波に乗っているときに書き溜めたいもので。


第一話 『口裂け女』 後編

平成23年10月13日6:30

「おはよう」

「おはよ」

 いつも通りの朝。いつも通りパソコンをしているし、いつも通り向かいの席に座った。

「昨日はどうだった?」

「大体の説明もしたし、携帯の連絡先も教えておいたよ。夕夜の分も」

「そうか」

「あ、それでさ、藤重さんにも仕事を送ってほしいんだけど。少量でいいから」

「分かった。やる気はありそうだったか?」

 んー、と考えてから答える。

「あるんじゃないかな。とりあえず努力次第では卒業前にCになれるかもって言っておいたよ」

「確かにCならなれるかもな。とりあえず仕事は来週中には届くようにしておく。そう伝えておけ」

「わかったよ。部活終わってからの方が良いかな?」

「そうだな。見られると面倒だ」

「了解」

 

 そこで、思い出したように鏡に聞いた。

「そういえばさ、藤重さんって霊感ある? 昨日幽霊とかがいること話したらさ、青ざめてたからさ。あれは面白かったけど、慣れてもらわないとだしね」

 鏡は思い出すふりをして少し考える。

「その辺の一般人並にはあるな。まぁ、見える可能性があるだけましだな」

「確かにね。存在を知っているのに見えない方が怖いよね」

 内心、それでも面白かったかもしれないと大童は思った。

「魔除けでも渡しておく?」

「一般人並の霊感なら危害を加えられることはほぼ無いと思うけどな。こっちから何かをしない限り。それに慣れさせるなら持たせない方が良いだろ」

「それもそうだね。何か機会があればいいんだけどね。何かない?」

「幽霊系の都市伝説が来るかどうかは運だからな。今のところそういう噂もない。来年なら、夏に寮長主催の肝試しあるだろ」

「そういえばそうだったねー」

 背もたれによっかかって伸びる。

 

 しばらく話していると、教室にはちらほらと生徒が入ってきたので、仕事の話をやめ、違う話に変える。

「そういえば、文化祭が再来週だね。僕たちのクラスは喫茶だから準備はそんなに忙しくないけど、他のところは大変そうだねー」

「そうは言っても、料理担当やデザインの奴らは大変だがな。うちの文化祭はクオリティが高い。人間も大勢来る」

「そうだねぇ。僕はウェイターだから当日は忙しくなりそうだよ……別のやつの方がよかったんだけど」

「嫌だったら断れば良かっただろ」

「嫌ってほどでもないけどさ、あんなに頼まれたら断れないよ」

「まぁ、クラスの奴らからしたらお前をウェイターに使わない手はないしな。むしろ、お前がいるから喫茶だったんじゃないか?」

「そんなことはないと思うよ。他にも頼まれている人はいたし」

「まぁ、何にせよだ。引き受けたからには責任もってやれよ」

「もちろん。やるからには営業スマイルで行くよ」

 そう言って笑ってみせる。鏡はそれを見てあきれ顔だ。

「その宣言はどうかと思うが、営業スマイルは確かに大事だな」

「うん。夕夜は会計だっけ?」

「ああ。座っていられるしな」

「時間帯は?」

「お前と同じだ。その方がお前の仕事ぶりを見て楽しめるし」

「そっか。3日間だし楽しまなきゃ損だよね」

「そうだな。ま、大きな問題が起きなきゃいいけどな。そんな奴がいたら即退場だが」

「不良と呼ばれる方々も来るからねー。毎年いるし」

「それはそれで面白いんだけどな。強制退場させられる場面とかが」

 大童が思い出して笑う。

 

「あー、うちは強い人結構いるからね。普通の不良とかじゃ勝てないよね」

「刃物とかを持っていれば違うかもしれないが、それでも勝てないだろうな」

「人質を取っても無理かもね」

「お前がいたら無理だな」

「人質が無傷な自信はないけどね。少しは傷付けちゃうかもしれないよ」

「まぁ、それでも大した被害がなければ上出来だろ。それに、本当にヤバい時は手伝ってやるさ」

「それなら無傷も余裕だね」

「まぁ、出るほどのことは起こらないだろうけどな」

 大童はしばらく固まって想像する。

「そんなことが起こったら……日本もいよいよかな……」

 相当ヤバいことを想像したらしい。

「そうかもな」

「でもむしろその位の規模なら絶対大丈夫だから不思議な気分だね。そう考えると中途半端が一番怖いかな」

「まぁ、今は楽しむことだけを考えてろ。その時のことはその時考えりゃいい」

「そうだね。今から考えても仕方ないしね」

「あぁ」

 その後も雑談は続く。やがてHRになった。

 

 

平成23年10月13日21:50

(そろそろメールして大丈夫かな)

 ソファに座りながら考えた。時間的には家にいる可能性が高いはずだ。携帯を取り出して、メールを打つ。部活終了後すぐに打たなかったのは、昨日のことを考慮していたからだ。

 

 ここは学校の寮。その中でも一番高い部屋だ。もちろん一人部屋。藤重の部屋の5倍以上はあるかもしれない。リビング、ダイニング、キッチンは繋がっている。部屋が3つあり、1つはベットルーム。もう一つが書斎。もう一つは客室だろうか。あまり使われていないようだ。全体的に本を除いて物は少なく、余計に広さを感じる。色も少なく、書斎が一番カラフルかもしれない。

 

『仕事は来週中に

 届くそうです。』

 

「送信っと」

 メールを打ち終わって、携帯を閉じる。食事などはもう終わったようで、食器などを片付けた跡がある。服装もパジャマだ。やる事がないのか上を見てぼーっとしていた。

 

 藤重が家について少ししてからメールが届いた。句読点がしっかりついてるところを見て、まじめだな、と少し可笑しく思いながら、

 

『わかりました』

 

 と返信をする。

 

 メールが返ってきた。携帯を開いて確認をする。それを見て携帯を閉じてポケットにしまってから立ち上がる。そして書斎に向かい、2時間ほど読書をしてから眠りについた。

 

 

平成23年11月18日6:30

「おはよー」

「おはよ」

 何時の間にか文化祭が終わってほぼ3週間後。教室はいつも通りだ。

「仕事が来たぞ」

「今回はなんの都市伝説?」

 鏡は片手でパソコンを見て打ちながら、もう片手でバックに手を入れて紙を取り出して渡す。

「『口裂け女』見る必要もないとは思うが、一応内容見とけ」

「了解。一応見とくよ」

 それを受け取って見始める。

「ランクDか。基本的にはそうなんだけどね」

 見終わって紙を返す。それを受け取ってまた片手でしまう。

「いつ行くの?」

「藤重の空いている日だな。時間は15時半。連絡とって確認しとけ」

「了解」

 

 携帯を取り出してメールを打つ。メールをしても面倒なことにはならないようになったようだ。

 

『仕事が来たけど、

 空いている日って何時?

 集合時間は15:30で。』

 

「送信。あ、でもよく考えたら今朝練中かな?」

「そうだな。まぁメールだし別に良いだろ」

「だね」

 

 

平成23年11月18日7:36

 バイブが鳴る。大童は携帯を取り出してメールを見る。

 

『明後日ならあいてます 

 持ち物は何かある? 

 後、集合場所も』

 

「明後日だって。持ち物と集合場所聞かれたけど、持ち物はいらないよね。集合場所はどこ?」

「場所が遠いから自宅に迎えに行くと打っておけ」

「了解」

 

『持ち物は特になし。

 場所が遠いので、

 迎えが行きます。』

 

「迎え……?」

 メールを見た藤重は考えた。

(この前は3人だけって言ってたし、みんな未成年だから車はないわよね。タクシー? 家族ってこともあるかもしれないけど、可能性は少なそうよね。家族公認の仕事ではなさそうだし。そう考えるとタクシーってことよね。お金かかるから電車とかにすればよかったのに。でも、何か事情があるんだろうし、聞かないでおこうかな)

 そして、

 

『わかりました』

 

と打った。

(今度のが本当の意味での初仕事よね……緊張するなー)

 携帯を閉じて、バックにしまった。手を握って、開く。それを数回繰り返した後、最後に一回強く握ってゆっくりと開いた。

 

「返信来たよ。『わかりました』だって」

「そうか」

「いきなりやってもらうの?」

「いゃ、とどめをやってもらう。言うのと実際にやるのでは違うからな」

「そうだねー」

「もしもの時はフォローな。お前で充分だろ」

「了解。明後日が楽しみだね」

 大童は何となく窓から空を見上げながら言った。

 

 

平成23年11月20日15:25

(そろそろ時間よね。外に出ていた方が良いのかな)

 そんなことを考えながら家の中をうろうろしていたが、結局外に出て待つことにしたようだ。バックを持って、いつもより動きやすい靴を履いて外に出る。バックの中身は普段通り+麦茶だ。何もいらないと言われても、本当に何も持っていかないという事はしなかったようだ。

 

(あれかな?)

右から黒い車が一台来て、藤重の前に止まった。助手席の窓が開いて大童が言う。

「丁度時間5分前くらいかな。じゃあ、後ろに乗って」

 車の後部座席のドアに向かう。そして前に来て開けるときに気づいて、大童に聞いた。

「鏡君がいないけど、これから乗せていくの?」

「いゃ? もう乗ってるよ」

「いないけど……?」

「いるよ。運転席に」

「……」

 

 空気が固まる。暫くして大童を見る。そして、自分の記憶を確かめるように聞いた。

「私の記憶が正しければー……確かー……運転には免許が必要なはずよ……ね?」

「そうだね。でもあるから大丈夫だよ」

 何でもないというように言った。

「えーっと……車の免許は18歳からじゃなかった……? 私たち高校一年生よね……」

「少なくとも18歳は超えてるから大丈夫」

 その言葉に片手で頭を押さえ、考えながら答える。

「んー……っと、確かにそうね。高校一年だからって15歳とは限らないものね。でもうちの学園は最高でも高校1年なら18歳までのはずよ。もしそうだとしても、初心者マークはつけないといけないんじゃない? 1年間でしょ、たしか」

「そうだね。まぁ、細かいことは気にしないでおこうよ。とりあえず今は目的地に行かない? こうして話しているのもなんだし」

(大丈夫……よね)

 そんなことを思いつつもとりあえずは車に乗る藤重であった。

 

 

平成23年11月20日15:29

 車内。藤重は落ち着かない様子だ。それを見て大童は笑いながら言う。

「大丈夫だよ。絶対に事故はないから」

「何で言い切れるのよ」

「運転技術がすごいからかな。『片目のセリカ』ってあるでしょ。アレに勝ったから。」

「それって?」

 後ろを向きながら言う。

「簡単に言えば北海道のとある湖の国道に出る幽霊車かな。アレに勝つには相当な技術が必要だからね。越されないほどのスピード出したら普通事故になるだろうし」

「そんなに速いの?」

「そうだな-。アクセル全開じゃないかな。それに夜だよ」

「そっか、でも」

 と、言ってから、少し悩んで言う。

「その技術と普段の運転技術は違うんじゃないの……? 車のことはよく分からないけど」

「……」

「……」

「大丈夫。運転技術と言う意味では同じだし似たようなものだから。うん」

 そう言って前を向いた。

 

「ならいいんだけど……」

「まぁ、とにかく絶対に大丈夫。心配するだけ無駄だよ」

「そうね。それに都市伝説を信じられるなら、今更これくらいどうってことないわよね」

 そう自分に言い聞かせるように言っていた。

「そうだよ。いちいち驚いたりしてたらきりがないよ」

「それより、目的地を知らないんだけど。どこに向かってるの?」

「隣の松部(まつべ)市。詳しい場所は言っても分からないだろうから言わないけど、30分くらいかな」

「結構かかるわね。内容はなんなの?」

「あぁ、そういえばまだ教えてなかったね。この紙を見といて」

 そう言って一枚の紙を渡す。藤重はそれを受け取って暫く黙ったまま見る。

 

 そして読み終わって紙を返した。

「『口裂け女』って……凄く有名ね」

「やっぱりそういう方が実体化しやすいからね」

 そして人差し指を立てる。

「さて、問題です。この都市伝説の実現条件はなんでしょう? 2つ答えなさい」

 そう言って中指も立てた。

「そんなの簡単じゃない。『男の子』であること、『夕方』であることでしょ」

「正解。じゃあ、消す条件は?」

 もう片方の手でVサインを作る。

「2つ答えるってことよね。1つは『口裂け女』なんだから『口裂け』じゃなくせばいいのよね。どうやるか分からないけど。もう一つはー……」

 10秒ほど悩んでから解答をした。

「耳まで口を裂かれずに『夕方』が過ぎること。かな」

「正解。ついでに、今回は1つ目の方法を取るよ」

「どうやって?」

「まぁ、それはその時になってからのお楽しみってことで。あと藤重さんは今日は基本的に見学ね。どういう感じなのか見ててくれればいいよ。いきなり実践は大変だろうし」

「わかったわ」

(本当は3つ目もあるんだけどこれは言わなく良いよね)

 それ以降はこれと言った会話もなく、車は目的地に信号に引っかからずに向かった。

 

 

平成23年11月20日16:00

 目的地について二人をおろし、車を置いてきた鏡が戻ってきた。もちろん歩いて。

「関係はないが、良い感じに夕暮れだ」

「そうだね。雰囲気がぴったりだと思うよ」

「でも関係ないんでしょ」

「そうだね。でも、この時期だし暗いよりはいいでしょ?」

「それはそうね。暗いと見えないものね」

「まぁ、僕は夜目が利くから関係ないけどね」

「……」

「藤重さんも夜目は聞くようにしておいた方が良いよ。夜中の仕事も多いからね」

「努力するわ」

 あたりは塀などはなく両側にそこそこ家が建っている。少し奥にアパートなども見え、人は結構いそうな場所だ。街灯は時々点滅しているのもあるが50m間隔ぐらいだ。時期が時期なので少し寒いくらいだが、風がないのが幸いだ。

 

 鏡が少し離れたところでパソコンと増幅機を出して電柱に寄りかかりながら座って作業をする。その間他の二人は『口裂け女』について話ている。大童の足元には中に何かが入った大きめの黒いバックがある。

「今回のは100m3秒って書いてあるし結構速いよ。約119km/hぐらいだから高速道路の車より速いよ」

「それは大丈夫なものなの……?」

「よくあることだし大丈夫だよ。それに、逃げなければあんまり関係ないよ。遭遇するのは近距離だし」

「そう」

「まぁちゃんとしたのは初めてだし不安はあるかもしれないけど今回は見学なんだし、徐々に慣れていけばいいと思うよ」

(まぁ、本当は見学だけじゃなんだけど)

「そうね」

 そう言って藤重は鏡のいるほうに行った。

 

「あとどれくらいなの?」

「1分」

「案外早いのね。もっとかかるかと思ってたわ」

鏡の右後ろにしゃがんでパソコンを見る。

「元からそれなりに溜まっていたしな」

「あまり溜まっていないのだとどれくらいかかるの?」

「使う人間の腕にもよるが1時間かかる時もある」

「ふーん。今回のってDランクで4万だけどこれって高いの? 安いの?」

「Dならそんなもんだ」

「そう」

 そう言って立ち上がり、大童を見る。背中には長い包みを背負っている。

「あと10秒」

 鏡がそう言った。

 

「了解」

 そういうと背中の包みから日本刀の形をした黒いものを取り出す。

「どーやってとどめを刺しやすくしようかな……」

「5、4、3、2、1、0」

「刈るか」

 小さな雑音がする。一つ向こうの電柱の陰に人間の形が創られていく。そして次第に色がついていく。それはイメージ通りの『口裂け女』だ。

 

 大童はソレに向かって歩いていく。そして横に来た。内容通り『口裂け女』は話しかけてきた。

「ねぇ、私、キレイ?」

「そうですね」

 内容通りに言いつつ、黒いものを構える。『口裂け女』がマスクを取りながら言う。

「これでもキレイ?」

 そして内容通りその口は耳元まで裂けていた。コートから鎌を取り出そうとする。その瞬間。

「……」

 無言で首を右から切り落とした。しかし、胴体はそのまま動き鎌を取り出す。大童は黒いものを左下に下げる。そして刃だと思われる方を上に向けて右上に切り上げ、下に向けて切り下ろし左上に切り抜いた。つまり三角形を描くように『口裂け女』の両手足を切り取る。当然、足以外がすべて地面に落ちるが、その全てが蠢きながら既に修復を始めていた。大童は黒いものを手に持ったまま素早く頭を拾うと、大きめのバックのところまで投げ飛ばす。頭は丁度いいところで面を下にして止まる。正確には蠢いていたが。

 そして、間もなく頭以外の修復を終える『口裂け女』の方を向きながら藤重たちを呼んだ。

 

「行くぞ」

「分かってるわよ」

 そう言って頭のところに歩き出した。大童は首の無い『口裂け女』の鎌を避けては手足を切り、時には弾いてから手足を切っている。

「何で……呼ばれたの?」

 察しはつきながらも、足元の物を気にしないように努めながら聞いた。それに対し真面目に答える。

「コレに止めを刺せ」

 足元を指さす。そこにはアレがある。

「えっ……」

 多少は予想していたことだ。言葉を繋げる。

「ど、どうやって?」

「下のバックの中の特殊な熱放射器で溶かす。使い方は教えるから問題ない」

 藤重は黙っている。

 

「これは仕事を兼ねたテストだ。口でなら何とでも言える。だが、実際にできるかどうかは別だ。本当にできるのか、それを確かめるためのテスト。時には生身の人間を相手にすることだってあるんだ、できないとこの先やっていけない」

 黙っている。

 

「いつまでもそうしているわけにはいかないぞ? 夕方が過ぎたら消えるからな。そうしたら不合格、だ」

「……」

 鏡を見る。鏡の眼は試すかのようだ。そして『口裂け女』をひたすら切っている大童を見る。藤重は動かない。しかし、下のアレには変化が出始めていた。蠢いているのではなく細かく振動しているように見える。実は徐々に向こうに合わさり始めているのに藤重は気づかない。

「お前は何でこの仕事をしようとしたんだ」

「それは……」

 何でか。それを思い出す。だが、そもそも成り行きで入った。そこまでの固い意志なんてなかった。

 

 でも、

(あの話を聞いたときは確かに勢いも就職の事もあったかもしれない。でも! でも自分自身の意志で働くことを決めた。それは嘘じゃない……だから)

 もう一度鏡を見る。その眼は変わっていない。だが、藤重の眼は変わっていた。

「やるわ」

「お前にできるのか?」

「できるわ。あの時思ったことは本物だから。それを証明してみせる」

「そうか。じゃぁバックの中から熱放射器を出せ」

 そう言われてバックの中から熱放射器を出す。その見た目は黒い。

「そしたら持ち手の上の方に安全ピンがあるから、それを外せ」

 安全ピンを探して外す。

「あとは先をコレに向け、持ち手のボタンを押すだけだ」

 言われたとおりに下のソレに向けて、ボタンに手を添える。顔はもう顎のあたりまで合わさり始めていた。

「一応気を付けろよ? 熱に触れると人間なんか簡単に溶けるからな」

「えっ……!」

「地面は溶けないから安心しろ。それに気を付けて使えば何も問題ないんだからな」

「……そうね、気を付けるわ」

 

 手が緊張で震える。人間ではないとはいえ、人間そっくりなのだからそれも仕方がない。藤重は大きく息を吸った。

「やるわ」

 そう言ってボタンを押した。熱が放射される。そして、見る見るうちにソレは溶けていく。匂いはしない。しかし、その経過と言ったら結構グロテスク。藤重は吐き気がするのを耐える。

「はぁ……」

 すべてを溶かし切った。あの時と同じで周りで雑音がする。向こうで戦っていた胴体も消えていく。

「終わった……?」

「ギリギリだったが上出来だ」

 そう言って熱放射器を受け取り、安全ピンを付け直してバックにしまう。向こうから大童が歩いてきた。

 

「これで、合格よね……」

 吐き気を耐えた藤重は、戻ってきた大童を見ながら言う。

「そうだね。これからもよろしく」

 そう言って藤重の手を握る。藤重の顔には疲労が見られる。

「とりあえず帰ろうか。今車も来ると思うし。お金は振り込んでおくから」

 いつの間にか鏡はいなかった。そして向こうから車が来て前で止まり、二人は車に乗った。

 

 

平成23年11月20日17:00

「じゃあ、さようなら」

「うん。また明日」

 車を降りた藤重は一度礼をすると、部屋に戻っていった。藤重がドアを開けて中に入ったのを確認して、車は発進する。

「空気が重かったね。正直、助手席じゃなかったら耐えきれないでしゃべっていたかも」

「元々一般人だしな、最初はそんなもんだろ。むしろ一回でできたのは良い方だな」

「明日には立ち直れるかな?」

「明日とは言わないが、来週ぐらいには立ち直っていないならそれまでだろう」

「そうだね。あんな精神状態で続けられるものじゃないだろうし、割り切っていくしかないよね」

「あぁ。割り切ってもらわないとこの先使えん」

「そうだね。信じるしかないかな」

 そう言って窓の外を見る。外はもう暗くなっており、空には三日月がある。

 

「また明日、か」

 

 

平成23年11月21日6:29

「おはよ! 大童君」

 明るく挨拶をされる。振り向くと藤重がいた。その事実と声に大童は少し驚きながらも挨拶を返す。

「おはよう。どうしたの? こんな早くに」

「伝えておきたいことがあって」

 真剣な表情になった藤重を真っ直ぐ見る大童。そしてしっかりとした、力強い声で、

「私……覚悟はしたつもりだから」

 決意を示した。よく見るとその目には疲労が見て取れる。一晩中悩み、考え続けたのであろう。それを聞いた大童は一言答える。

「うん」

「それだけだから、じゃーね!」

 反対方向に走り去る藤重を大童は見えなくなるまで見送り続けた。

 

 

 

第一話『口裂け女』終了。

 




修正箇所多すぎ……。

まぁ長くなってしまいましたが、
漫画とかも一話目ってページ数多いじゃないですか。
そんな感じだと思ってください。
今後はこんな量はほとんどないと思うので。

次回は四話を書き終えてから載せます。
金曜までには……としか言えません。
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