小説ID「7649」。
「7」と「6」を入れ替えると「6749」。
語呂合わせで「むなしく」になります。
意味はないけど何か惜しい。
「7649」じゃ何も思いつかない……。
それでは後編を投稿しました。
平成25年9月18日16:33
掃除終了。三人は大童の机の周りにいる。
「じゃ、車を持ってくるからそれぞれを持ってこい」
「了解」
「分かったわ」
大童は部屋に刀を取りに、藤重は弓道場に弓を取りに、鏡は何処かに車を取りにいった。
外は朝から『雨』が降っている。
平成25年9月18日16:45
大童と藤重が傘をさして校門前に行くと、すでに見慣れた車があったので乗り込む。
「安全運転でね」
冗談めかして言う藤重。
「そう言われると危険運転をしたくなるよな」
「……ホントに止めてよ?」
「分かってる分かってる」
真面目に言われた言葉に、適当に返事をする鏡。この時藤重は正直心の中で少し後悔していた。
結果的にはいつも通りで何もなかったわけだが。
平成25年9月18日17:00
時間通りに到着。外は相変わらずの『雨』だがそれほど強くなく、風はあまり無い。
「とりあえず合羽を着て外に出るぞ。これな」
鏡は藤重に合羽を渡す。それを受け取りながら尋ねる。
「大丈夫だと思うけど、この弓って濡れて平気なの?」
「問題ない」
「そう、ならいいのよ」
合羽を着始める藤重。その合羽は以前大童が来ていたものと同じだ。
「僕のは?」
「康にはこんなものも用意したんだが……」
そう言ってカバンから取り出したのはすっぽりと被れる仮面。何かのキャラクターのようだ。
「それは?」
それを見た藤重が動きを止める。
「知らないか? 今やってる特撮ヒーローの仮面だが」
「あー……何か見たことがある気がするわ。それで?」
「対象が夢見る少年なら最悪見られても怪しまれないかと」
「確かに合羽よりは怪しまれないかも……それに顔も隠せるし」
「えー……」
別段、嫌がるそぶりを見せないどころか納得している大童に、藤重は驚きと呆れの混じったような声を出している。
「体部分もあるし、着るなら着るといい」
鏡はそれ以外のブーツ部分なども出していく。
それらを、着終えた藤重はまじまじと見る。
「それにしても出来がすごいわね……本物を見たことないけど」
「むしろ本物より本物らしいよ」
「せっかくだから材質とかはその世界観でのおそらくの材質を使ってる。耐久性もバッチリだ。もちろん防水性も」
「だから少し重いんだね」
ブーツ部分を持っていた大童が上下させながら言う。
「と言っても、さすがにその格好でいたら大人とかに見られた時に怪しすぎるからな。合羽は直前まで着てもらうが」
「というか……そもそもそれ、ホント着るの?」
藤重は大童を見る。その視線に「んー」と少し考えて、
「せっかくだし着てみようかな」
結論を出した。
「あ、そう」
「藤重は先に出て周りを見るといい。少しかかるからな」
「そうさせてもらうわ」
藤重は車を下りるとき、大童を見てこう思った。
(絶対に一発で決めないと……!)
決意はより強くなった。
平成25年9月18日17:08
少しすると、大童が特撮ヒーローの恰好の上に合羽を着て出てきた。
「……フードも深いから遠目大丈夫だけど、近くで見ると物凄く怪しいわね」
「そう?」
若干くぐもった声が発せられる。
「まあいいけど。それ、通気性とかどうなの?」
「特に問題は無いよ。窮屈な感じも無いからスムーズに動けるし」
「ならいいんだけど」
そして鏡も合羽を着て戻ってきた。
「実現させたから後は来るのを待つだけだ。これ、矢な」
切断用の矢を一本渡す。
「射る場所はここからでいいの?」
現在、三人のいる場所は曲がり角付近に立っている電柱の陰。そしてあたりの家にはコンクリートブロックの塀がある。
「余り近づかずに行きたいからな。ただ、射られなければ別の場所考えるが」
「距離は問題ないわ。でも左側ならともかく右側を歩いてきたら難しいわね」
藤重にとっての、右・左である。そして藤重がいるのは右。つまり右に対象が来ると、『ひきこさん』と対象が直線になってしまう。
「その辺は対象が見えたら変えろ。お前の視力なら相手に気づかれる前にどっちかくらいわかるだろ」
「それに、傘とか差してれば前もあまり見えてないと思うよ」
「分かったわ。そうする」
「僕はどうする?」
「康は対象が来る方に待機しておけ。ベストとしては後方を気づかれないようにつけろ」
「了解」
「消滅させたら真後ろの曲がり角を曲がったとこに集合。康はもう配置に付け」
「了解。行ってくるね」
「気づかれないように気を付けてね?」
「うん。気を付けるよ」
本当に心配そうな藤重の言葉に返事をして、大童はブロック塀に飛び乗った。そしてそのまま一階の屋根に飛び移り、二階の屋根に飛び移る。
「は?」
藤重は顔に『雨』が当たるのも忘れて、上を見上げる。大童は極力屋根の上を足場にして走っていく。
「じゃ、あたりを警戒しておく。後は手筈通り、お前は向こうだけに集中してろ」
「……分かったわ」
鏡は何処かへ行った。
(まあ……大童君は気にしても仕方ないわね。今は言われた通り向こうにだけ集中しないと)
藤重は前方へ目を凝らす。今は人影は見えない。
数分後。
「来ないわね……」
そう呟きながらも前方への注意を続ける。その時、
「……!」
微かに聞こえた『雨』とは違う雑音と共に、気温とは関係ない寒気を藤重は感じた。それでも後ろは振り向かずに前だけを見続ける。
少しすると藤重の後ろから何かを『引きずる』音。それはだんだんと近づいてくる。
近くなるたびに緊張感は大きくなっていき、鼓動は速くなる。そしてジッと動かずに前を向いたままの藤重の視界の端、道路の左側に『白いボロボロの服を着た女性』が映った。
それはゆっくりと歩いているのが分かる。
(左を歩いてるってことは、『小学生』も左に来るのかしら……)
藤重はいまだ人影の見えない、遠くの曲がり角に向かって矢を番え弓を構えた。視界にはいまだにゆっくりと歩く『ひきこさん』が映っている。
そして数秒して、曲がり角に傘を差しているランドセルを背負った子供が見えた。『ひきこさん』との距離はまだまだ遠い。
『小学生』はどうやら傘を前に傾けているために『ひきこさん』には気づいていないようだ。そのまま左を歩いてくる。
同様に、『ひきこさん』も『もの凄いスピード』を出していない所を見ると、気づいていない。俯いている為か、髪のせいだろう。
「あれね……」
(少なくとも低学年には見えないわね……夢見る少年ではなさそう)
大童の姿を思い浮かべながら藤重は狙いを『小学生』の『足』の若干前方に定め、何時でも射れる状態で対象の移動と共にズラしていく。
そして両者の距離が25m位になったところで、ついにその時が来た。前方から『ひきこさん』の『叫び声』が聞こえたかと思うと、『もの凄いスピード』で『小学生』に迫るのが見える。藤重はすぐに射そうになるのを押さえ、一回きりの瞬間を待つ。
向こうではさすがに気づいたのか、『叫び声』を聞いて怪訝な顔をした『小学生』の顔が前を見てすぐに恐怖に染まり、後ろに引き返そうとするが……上手く足が動かないのかその場で転んだ。
その間にも『ひきこさん』は距離を詰め、体を曲げて『足』に手を伸ばす。その手が触れる直前で矢を放つ。
放たれた矢は『足を掴む』のと同時に『ひきこさん』の右肩に的確に命中。その右腕を切断した。そして足を掴んだまま地面に落ちる『ひきこさん』の右腕。ソレは本体と共に雑音を発して消えていく。
藤重はそれを確認すると、すぐ後ろに集合場所に向かう。
……その場には転んだままパニックになっている『小学生』だけが残った。
平成25年9月18日17:32
車内。
「あの子は放っておいてよかったのかしら……?」
髪をタオルで拭きながら、呟く。
「帰ってお風呂にしっかり浸かれば大丈夫じゃない?」
「いや確かに風邪も心配だけどそうじゃなくて」
「?」
「……いやそれでいいわ」
溜息をつく藤重を振り返って見ながら、髪を拭いて不思議そうな顔をしている大童。特撮ヒーローの姿はもうしていない。
「まぁお前が気にしても仕方がないだろ」
「それはそうだけどー」
依然、割り切れないというふうな藤重。
だが少しして。
「まあいいわ。そう言えば矢は射ったままだけど、大童君が回収したの?」
「僕はしてないよ?」
「……じゃあ鏡君?」
「そうだな」
矢を取り出して見せる。
「……そう。私が曲がり角を曲がったらすぐに車が来た気がするんだけど」
「気にしてもしょうがないんじゃないかな」
「そうね」
考えても仕方ないことは分かっているので、もっともな意見に同意する。そして思考を切り替え、窓から外を見る。
雨は大分弱まっていた。
第二十三話『ひきこさん』終了。
この土日、
寝落ちしたせいで目覚めが非常に悪かったです。
頭も痛いし……気を付けないととは思ってるんですけどね。
仕事の日は寝る時間を決めているので問題ないんですけど、
次の日が休みの日は決めていないので、
ゲームに夢中になりすぎてしまってどうにも駄目ですね。
次回は予定外に三編構成。
二十六話を途中まで書いたら載せます。