四話目が案外スラスラ書けたなー、
と思ったら五話目の題材で詰まる始末……。
ですがせめて卒業の時期までは書きたいと思っています。
それが目標です。
卒業式を書くかはわからないんですけどね。
あるファストフード店でAさんがハンバーガーを食べていたときのこと。
ふと食べかけのハンバーガーに目を落とすと、
パティから赤い糸のようなものが出ていた。
良く見るとそれはミミズのように見える。
まさかと思いつつも店長を呼んでそのハンバーガーを見せると、
奥の事務所へと連れて行かれた。
「この話は絶対に誰にも言わないでください」
そう言って口止め料として数万円を渡される。
一連の店長の行動から、やはりミミズだったんだとAさんは確信した。
それ以来Aさんはハンバーガーを口にしていない。
平成23年12月11日12:00
「ハンバーガーを30個ください」
今日、大童は学園から少し離れたファストフード店でハンバーガーを大量に買っていた。一人で。周囲は驚き気味ではあるが大童は気にしていない。なぜならこれも仕事だから。
大童は54の番号を貰い、空いている席を探して座る。
(ハンバーガーを30個頼んだのはこれで三回目かな。さすがに二回も経験すれば慣れるよ。そういえば30個っていうと一クラスくらいはなるのかな。もしかしたらクラスへの差し入れとかに思われているのかな)
そんな余裕をもって周りを見回す。日曜の昼時なだけあってそれなりに人はいるようだが、それでも混んでいないのは回転が良いからか。
(この人たちのことを思うと気の毒だけど……まだ確定したわけじゃないから。今ここで騒ぎを起こすわけにもいかないしね)
沈んだ表情はすぐに戻し携帯をいじる振りをしながらハンバーガーを待とうと思った瞬間。
「54番でお待ちのお客様ー」
番号を呼ばれた。
携帯をポケットにしまいレジに向かう。
(30個にしては早い気がする。作り置き?)
そう思いながらもお金を払い、軽く頭を下げながらハンバーガーを受け取って外に出る。
外は晴れているが12月なので寒く、時折冷たい風が吹いてくる。
「あー……ハンバーガーが温かくていいね」
歩きながら袋を抱える。ここから目的地、もとい寮までは徒歩30分。途中で冷めることは明白だ。
(自転車で来ればよかったかな? でも自転車だと余計に風が冷たいし、耐えられないほどの寒さではないかな……)
「はぁ……温かい……」
そう言いながら顔をほころばせている。
日曜なので人もそこそこおり、すれ違う人の多くは大童の方を見る。それもそうだろう。想像してほしい、ハンバーガーの袋を抱えて顔をほころばせながら歩いている男を。はたから見たら変な人だ。しかし顔立ちが良いので奇異の視線は合っても嫌悪の視線は無い。いゃ、顔立ちが良いのも視線を集めている原因かもしれない。
そんなことは当然気づかず大童は歩き続ける。
「温かい……」
平成23年12月11日12:45
寮に到着した大童は部屋の扉を開ける。
「ただいまー」
すると中から声が二つ。
「おかえりー」
「おー」
廊下を進んでリビングに行くと鏡がソファで本を読み、藤重は床に座り、目の前のテーブルには仕事の書類が広げられていた。床と言ってもカーペットはひいてある。
ちなみにこの部屋、お金はかかるが全てが実費なので問題ない。
「お邪魔してるわ」
「ん、いらっしゃい」
椅子に上着を掛け、ハンバーガーの袋を置きながら答える。
「ちょっと待ってて。いま机の上片付けるから」
「うん。僕は飲み物持ってくるけど麦茶で良い?」
「いいわ」
「あぁ」
「りょうかーい」
人数分のコップを取りだし冷蔵庫の麦茶を淹れて、片付いたテーブルの上に置く。それから椅子に置いたハンバーガーの袋を取り、これもテーブルの上に置く。
「すこし時間がかかったようだが混んでたか?」
本を閉じた鏡が聞いてくる。
「人はいたけど混んではいなかったよ。時間がかかったのは袋を抱えながら歩いてたらいつもより歩くのが遅くなっちゃってさ」
そう言いながら鏡の向かい側に座る。
「それなら普通に持ってくればよかったじゃない」
「いゃー……温かくってさ」
頭を掻いて照れるしぐさをしている。
「あー今日は寒いものね」
「そんな状況で手元に温かいものがあったら抱えたくなるでしょ? 犬猫みたいな感覚で」
「……犬猫は分かるけどその感覚でハンバーガーの入った袋を抱くのはちょっと分からないかなーって」
「こいつは少しズレてるんだ。仕方ない」
目を逸らした藤重に、諦めたように鏡が言う。しかし発言した本人はむしろ分からないことに疑問を抱いているようだ。
「そんなことはないと思うんだけどなー……」
「まぁいい。別に食べるのが目的ではないのだから冷めても問題はない」
考えている大童を放っておいて30個のハンバーガーを袋から取り出す。
「えっと、パティ……パテだったけ? にミミズらしきものが入っていないか調べればいいのよね」
「うん。なるべく証拠があってからの方が動きやすいからね。それとパティでもパテでもどっちでもよかったと思うよ」
「証拠なしでやったら犯罪だしな。やってからまだミミズ入れていませんじゃ話にならない」
「犯罪って……そういえばこれでミミズが入っていたらどうするの?」
「拉致る」
「へー拉致るのねー……エ?」
納得しかけた顔が止まる。
「拉致る」
「……えぇ!! ちょっえっ、らら、らち拉致るの!?」
取り乱す藤重に麦茶を差し出しながら落ち着けようとするする。その様子を見ている鏡は楽しげだ。
「いゃいゃ確かに拉致るけど、その単語だけだと物騒なだけだよ。夕夜」
「やっぱり拉致るの!?」
言葉の選択をミスしたようだ。改めて正確に伝える。
「あー……いや、正確には一人きりになったところを秘密裏に攫って警察に引き渡すんだよ」
「あ、警察に引き渡すのね」
「うん」
警察と言う言葉に簡単に納得した藤重は渡された麦茶を飲んだ。
そして飲み終えて溜息をつく。
「はぁ……吃驚したー……それならそうと初めから言ってくれればいいのに」
「渡そうが結局は拉致るんだがな」
再度、事実を告げる。
「そうかもしれないけどっ、『拉致る』だけなのと『警察に渡す』っていうのがあるとないとではかなり印象が違うじゃない」
「確かにね」
「ま、ワザとだから気にするな」
「ワザとって……」
あっけらかんと言う鏡にたいしてまた溜息。
「まぁいいわ。それよりこれをまずはどうするの? いつの間にか山になってるし」
ハンバーガーを指さす。30個のハンバーガーズはいつの間にかピラミッドになっていた。
「とりあえず分解しようか」
「手袋があるから使うといい。手が汚れるからな」
大童は渡された手袋を装着し、頂点を取ってテーブルに置いてから包装紙を開ける。上部のバンを持ち上げてパティを取り出す。ただのハンバーガーなので余計な具材は無いが、ケチャップとみじん切り玉ねぎがパティにくっついている。ピクルスはすぐとれるので問題ない。
「あーナイフ持ってくる。あとそれぞれを置く場所も必要だね」
手袋を外すと立ち上がり、ナイフなどを取りに行った。
「バンズとかを置くお皿は分かるけど、なんでナイフ?」
「ケチャップがついたままだとやりづらいから取り除くためだ」
「なるほどね」
「はい。ナイフとお皿」
戻ってきてナイフとケチャップ用のお皿3人分を配り、それ以外をいれる大き目の皿をピラミッドの周りに置く。
「おう」
「ありがと」
そして黙々と分解、確認を続けること23個目。目的のものがついに――
「あった」
――見つかってしまった。
大童が切れないように周りをほぐす。そして都市伝説の内容と同じように短いが赤い糸の様なものが出てきた。それを見た藤重は少し気持ち悪そうにしている。
「ホントにミミズみたいね……」
「ミミズだろ。これで拉致確定だな」
「本当の本当にミミズなの?」
「顕微鏡で見るか?」
「……遠慮しとくわ」
「それで、いつ攫う? 僕はいつでも問題ないけど」
「被害を考えると今日が最良だが、藤重次第だな」
二人が藤重の方を向く。
「確かにこれを食べる人のことを考えると早めの方が良いわよね。私も今日は予定無いし、それでいいわ」
「じゃぁ今日拉致るぞ」
「了解」
「わかったわ」
もう「拉致る」は気にしないようにしたようだ。
「とりあえずこのハンバーガーの残骸をどうにかしないとね」
「このまま捨てるのは勿体ないものね」
「じゃあまず、藤重さんが使う分を分けてそれ以外をこっちで貰うよ」
「いいの?」
「うん」
「それじゃー……あ、その前に袋か何かもらっていい? 持ち帰るように」
「いいよー。バンズは袋でいいとして、ピクルスは容器の方が良いかな。ケチャップはどうする?」
キッキンへと向かっていた鏡が振り向く。それに対し藤重は少し考えて。
「何か器借りてもいい? それにラップすれば激しく動かさない限り大丈夫だと思うし」
「問題ないよ。じゃ、持ってくるね」
大童がキッチンで適当なものを探している間にふと、藤重が何かに気づいた。
「そういえばこの寮はキッチンがあるのね。友達の寮は火器厳禁だって聞いてたけど」
「寮と言うよりマンションだからな。それに防火対策もされている」
「スプリンクラーとか?」
「それもだが部屋自体が防火壁になってる」
「それなら安全ね」
話している間に大童が戻ってきた。
「はい。これではいると思うんだけど」
「十分よ。ありがと」
そう言ってまずは袋を広げてバンズを20組、タッパを広げてピクルスを15枚、器におよそ20個分のケチャップ&みじん切り玉ねぎを移す。
「これでいいわ」
「じゃぁ残りはこっちで貰うね」
「ミミズパティはその辺の動物にでもやるか」
言いながら袋に入れていく。
「まぁ、害はないだろうけど……」
「下手なところに捨てると近所迷惑になるわよ。野良とかカラスとかが集まって」
「人に見つかっても面倒な事になりそうだよね」
「人が近寄らず迷惑のかからない場所か。そうなるとあそこだな」
「あそこ?」
「廃工場。少し遠いが野良が住み着いている廃工場がある。そこにでも捨ててくる」
「まぁ、それなら迷惑にもならないわね」
「ただ捨てるよりは断然良いだろ。カラスとかが来れば雰囲気も良くなる」
「何の雰囲気よ……あ、いいわ。言わなくて」
「そうか。なら作戦会議だが、作戦を練るほどの事もないしな。集合時間は例の店に夜の11時で」
「閉店時間ね」
「了解。それからのからの事は現地でってことだね」
「あぁ。必要なものは持ってくからお前等は最低限のものだけ持ってくればいい」
「わかったわ。それじゃ、私は帰るからまた現地でね」
「うん。また現地でね」
立ち上がり玄関の方へ向かう。それを見送るために大童もついていく。
「お邪魔しました」
「また11時にー」
オートロックのドアを開けて帰る。ドアは勝手に締まると自動で鍵をかけた。
「夕夜はどうするの?」
鏡はいつの間にか後ろにいた。
「大した準備はないが用事があるからな。帰るわ」
「そっか。じゃあまた現地で?」
「あぁ。現地でな」
扉が閉まる。
「やることがない……」
(本はまだ新刊が出ないし、仕事は今週の分は終わってるしー……またトレーニングでもしてようかな。それで時間が余ったら授業の予習復習、イメトレもいいかもね)
やることが決まり、大童も外へ出かける。もちろんカードキーを持って行くことを忘れなかった。
前編終わり。
会話ばかりだと状況の描写があまりできなくて、
これで良いのか? と思ってしまいます。
まだまだ力が足りません。
次回は五話目を途中まで書いてから載せます。
少し時間がかかるかも……。