ついでに30万文字ですかね?
藤重の弓についてですが、
第六話の「とにかく壊れないようにできている」発言の通り壊れません。
どのくらいと言われると困りますが……地球破壊程度は問題ないと思います。
まぁ鏡なら壊せますが。
でも壊れないっていうのはいいですよね。
どんなに引き絞っても壊れる心配がありませんし、
「気」で強化する必要もないんですから。
「気」を節約できます。
……藤重はまだ使えないんですけどね。
これも話にはさほど関係ないんで気にしないでください。
それでは二十八話前編です。
真夜中に洗面所の鏡の前で、
「ブラッディ・マリー」と三回唱えると、
血まみれの服を着た彼女が現れる。
そして彼女を呼び出してしまうと、
顔を剥ぎ取られて殺されてしまうそうだ。
平成26年2月18日10:10
大童の部屋。三人は自由登校なので、平日の昼間から集まって仕事や読書をしている。
「そういえば」
一旦休憩していた藤重が、周りを見回して言う。
「大童君は卒業した後はどうするの? 住むところとか」
「住むところはもう決めてあるよ。ここからそう遠くない所に一軒家を買ったから」
藤重の動きが止まる。
それからゆっくりと大童の方を見て、
「……一軒家を?」
今しがた聞いたことを再確認した。
「うん。ローン無しの一括で」
「よく買えたわね……」
予想外のことに呆気にとられている。
「本以外に買うものも無かったからお金には余裕があったんだよ」
「学生の身で家一軒買える余裕って凄いわね」
「学生って言ってもULの勤続6年以上だし」
「そう言えばそうだったわね」
「それに藤重さんも、アルバイトだけどそれなりにお金に余裕はあるんじゃない?」
「まあ、そうね。何かを買うにしてもあのアパートじゃそんなに余計なものは置けないし」
そう言うと何か少し悩み始めた。
……悩み終えて。
「……お金が溜まったらもっと広いアパートとかマンションに引っ越すのも有りかもしれないわね」
「良いんじゃないかな」
「もう家を買ったって言ってたけど、引っ越しの準備はしてるの? 見たところあまり変わってないけど」
先ほどと同じように周りを見回す。
学園の寮生は引っ越し作業による混雑を避けるために、自由登校の期間で自宅や引っ越し先に寮内の荷物をある程度運んでおく人が多い。
「引っ越しの荷物の大半が本だから、それは少しずつ新居の方に移してるよ。家具家電は備え付けの物ばかりだからほとんど無いし」
「家電も備え付けなの? 家具は友達の部屋もそうだったけど」
「うん。主要なものはそうだよ」
「へー。でも、だったら一軒家に全部荷物を送って住むのは駄目なの?」
「んー……遠くないからそれでも問題は無いんだけど。せっかくだから卒業までは寮に住もうと思って」
「……それもそうね」
どことなくしんみり。
「……えっと、鏡君は引っ越し作業してるの?」
空気を変えるために藤重は、先ほどから本を読んでいる鏡に話しかける。
「……何を言っているんだ?」
鏡は間を開けて聞き返す。
「いや、だから……引っ越し作業してるの? と言うか、もう終わってそうなイメージだけど」
「勘違いしているみたいだが、寮には住んでないぞ。自宅通いだ」
「え、そうなの!?」
驚きの声を上げ、大童の方を向く。
「うん」
「ってか、どうしたら寮に住んでいるという考えになるんだ?」
目を細め、呆れた様子で藤重を見る。
「だって……いつも私が帰った後もここにいるみたいだったし、帰る時も大童君と一緒に寮のほうに行ってたし、クリスマス会も肝試しも参加してたし。それに、毎朝大童君より早く来てるんでしょ?」
「そうだな。だが一度も『寮に住んでいる』とは言ってない。寧ろ、支部長が家も持たずに寮に住むわけないだろ」
「それはほら、支部のある方に家を持ってるとか……?」
自分でもそれは無いと分かっているのか、疑問符をつけた。
「確かに持っているが、ここの地区長でもあるからな。それに家が無かったら車は何処から持って来てると思ってたんだ」
「……」
長考中。
そして帰ってきた答えは……
「……何処から、ともなく?」
何ともとんちんかんなものだった。
自分でもそれが分かっているのか、首を傾げている。
「……」
「……」
「とは思って、ない、けど……」
口調はしりすぼみになっていく。
「まぁいい。とにかく家はある」
「……大童君は知ってたみたいだけど、行ったことあるの?」
「もちろんあるよ。と言うより、都学園に入学するまでは夕夜の家に住んでたし」
「そうなの?」
「前に話しただろ。『いろいろ大変だった』と」
「えっとー……」
記憶を掘り起こす。
少しして、ようやく『Y君』の時の会話を思い出した。
「……あれってそう言う意味だったの?」
「そう言う意味だ」
「……ぇー」
(鏡くんって私たちより1・2歳上か同年代よね……? たぶん。と言うより、その時から支部長だったってこと? ……意味が分からない)
鏡を見て、疑いや呆れや困惑や疑惑などの混じった声を上げている。
「ま、そんなわけで引っ越しの必要はないな」
しかし、それを気にすることなく話を切り上げた。
それから休憩が終わり、再び仕事に移る藤重。
「……」
「……」
「……」
と、本を読む他二名。
「んー……」
そんな中、大童は読み終えたのか本を閉じて伸びると、本を置いて鏡の方を向いて尋ねる。
「最近何か良さそうな本あった? 夕夜」
「そうだなぁ……何冊かあったな。今度貸してやるから、読んでみてよかったら買うといい」
本を読みながら答える。
「ありがと、そうするよ」
「あぁ」
そのやり取りを聞いていた藤重。
「二人って本ばっかり読んでるわよね。やっぱり好きなの?」
手を止めて問いかける。それに対して大童が先に答えた。
「本って言うより、小説かな。本じゃなくてもネット小説とかも良いのがあるし」
「それならジャンルとかは?」
「世間的に非現実って言われてる要素が入ってる方が好きかな。オカルト要素とか」
「結構広いわね。でも、とりあえずノンフィクションはあまり好きじゃないってことね」
「そうだね」
次に藤重は鏡を見る。
「鏡君は?」
「主に小説だな。ジャンルは特に無いが、どちらかと言えばストーリー重視。それが面白ければ文章が多少下手でもラノベでもネットでも気にしない」
「ふーん……でも面白いかどうかって買わないと分からないわよね」
「そうだな。世間の評判とかも判断基準にはなるだろうが、結局は本人次第だからな」
「だったらどうやって判断してるの?」
「とりあえずネットのは見つけたら読んでみてるな。本は小説に限って片っ端から買ってる」
「え……それって金額が凄いことになるんじゃ……?」
「金額はそうかもな」
帰ってきた答えに唖然としながら、言葉を続ける。
「と言うか多分凄い量よね……保管場所とかも大変じゃないの?」
「まぁ保管場所は問題ないし、金も問題ない」
さらっと言う。
「……お金持ちなのは知ってたけど、やっぱり家も広いの?」
鏡を指さしながら大童に確認を取ると、やや悩みながらこう答えた。
「んー……広いと言えば、広いのかな?」
「何かハッキリしないわね」
「まあ、広いよ。うん」
目を逸らして頷く。
「……」
(あ、怪しい……あからさまに怪しい)
藤重が横目でチラッと鏡を見ると、いたって普通に本を読んでいる。
「でもそのうち藤重さんも行くことになると思うから、その時になればどんな感じか分かるんじゃないかな」
「そう? ……なら、いいけど」
釈然としないものを感じながらも、とりあえず納得しておくようだ。
「そんなことよりも手を動かせよ。さっきから止まってるぞ」
「うっ……そうね」
渋々といった様子で手を動かし、仕事を再開する。
そして時間は刻々と過ぎていき、外もすっかり暗くなっていたころ。
「ぁー……やっと……終わっ、た……わ」
力尽きて、テーブルに突っ伏す。
「お疲れ様」
「ようやくか」
二人がそれぞれの言葉をかけると、顔だけをあげる藤重。
「『ようやく』って、この量よ?」
テーブルに積まれた書類の山。
鏡はそれを一瞥して、藤重の方を向く。
「分かってると思うが、本格的に就職したらもっと増えるからな」
「分かってるわよー……」
いじけたように言う藤重を、大童が一応フォロー。
「まあ、今週分のを昨日今日で終わらせたんだから。それにまだ仕事も増え始めてるところで、慣れてないだろうし」
それに対して、「ふむ」と考えるそぶりを見せる。
「確かに慣れはまだまだ必要か。ただ、このままだと本格的になった時に鍛錬とか緊急の仕事が入った場合の時間が取りにくくなる。だから闇雲にやらんで、もう少し効率を考えて仕事をしろ」
「効率って……例えば?」
起きがる藤重。
「それは自分で考えろ。人によって方法は違ってくるからな」
「だね。でもとりあえずは、速度よりもストレスの少ない方法を探してみるといいんじゃないかな。ストレスがたまると集中力も下がっちゃうし」
「ストレスの少ない方法ね。少し考えて見るわ」
そう言って、藤重はその場で考え始めてしまう。
「あー……今日はもう遅いし、帰ってから考えた方が良いんじゃないかな? それとも夕飯食べてく?」
時計を見ると、すでに9時をまわっていた。
「そうねえ……」
と、藤重が言ったのと同時にお腹が鳴る。
「……」
「食べてくといいよ」
「……そうね。いただくわ」
それから夕飯をごちそうになり、少しゆっくりしていた藤重が口を開く。
「卒業したら私達って何処に集まればいいの?」
「別に集まると決めて集まってるわけではないが」
つまり、今まで大童の部屋に集まっていたのは藤重が自主的に来ていたということだ。
「それはそうだけど、集まらないといけない時はあるでしょ?」
「それ以前に、卒業したら仕事は一ヶ所に集まってやるけどな。一応仕事だし」
「そうなの?」
「一応な。別に仕事を自分の家でやっても構わない。ただ、平日は特別な用事がない限り一回は集まらないといけないことになってる。出社すると思えばいい」
「へー」
「で、集まるところだが」
鏡が台所の方を見ると、丁度洗い物を終えた大童が戻ってくる。
「康の家で良いだろ」
「うん、いいよー」
「卒業後は大童君の家に集まればいいのね。分かったわ。家の場所は分からないけど」
「それはまた今度で」
そう言ってから時計を見て。
「とりあえず今日はもう遅いし、帰る時になったら送るよ」
「そうね、なら今日はこれで帰るわ。寝る時間も無くなっちゃうし、お風呂も入らないと」
「そっか。それじゃ行こっか」
「ええ、お願いするわ」
二人は立ち上がって、外は寒いので上着などの防寒着をしっかりと装備し始める。
準備を終えて、
「じゃあ送ってくるね」
「また明日ね」
「送ってこい、またな」
大童と藤重は傘を持って外に出て行った。
平成26年2月18日22:55
寒空の下、雪の積もった夜の町を歩く二人。
「それにしても止んでよかったわね、雪」
藤重が空を見上げると、雲一つない。
「そうだね。星も月も綺麗に見えるし」
続いて大童も見上げる。
「そうねー……けど毎年のことながらまだまだ寒いわね」
両手で自身を抱きかかえるようにして、ブルッと一回震える。
「まだ2月だからね。アパートに帰ったら暖房をつけて、ゆっくりとお風呂で体を温めてから、暖房の効いたあったかい部屋で寝るといいよ。もちろん寝るときは暖房は消して」
「それだと朝起きるときに辛いのよね……もちろんそうするけど」
はぁ、と白い溜息をはく。
「今は自由登校なんだし、部屋をあっためてから起きればいいんじゃない?」
「自由登校になってからは毎日そうしてるわ」
「あ、そうなんだ」
「ええ」
大童は空を見上げるのを止めて、隣で歩く藤重を見る。
「自由登校だから、そうでもしないと何時までも布団に居ちゃいそうなのよね」
「うんうん。だよねー」
同意して頷く。
「その感じだと大童君もそうしてるの?」
「僕は起きる少し前にタイマーで暖房がつくようにしてあるよ」
「あーその方が良いわね。私の所は切るタイマーしかないからできないけど」
「お金に余裕があるなら買えば?」
「買いたいんだけどねー……そういうのはちゃんと就職してからにしようと思って」
上を向いて息をはき、少し低めの声で言う。
「じゃないと出所不明のお金として怪しまれそうだし。家族に」
その発言に大童は小さく笑って、
「はは、確かに」
とだけ言った。
それからも二人は夜の雪道を藤重のアパートに向かってゆっくりと歩いて行く。
ちなみに、ゆっくりなのは藤重で、大童はそれに合わせて歩いていたに過ぎない。
最近まったく活動報告とか書いてませんが、
何を書けばいいのか正直分からないです。
長期間投稿しない際に生存報告でもすればいいんでしょうか?
身の回りの出来事とかは前書きと後書きで事足りていますし、
投稿日に関しても報告するようなものでもないような気もします。
後書きである程度の目安は書いていますから。
まぁ自由に使えばいいとは思うんですが、
何でもいいっていうのは難しいですよね。
次回の投稿は次の木曜日に行います。
それまでには二十九話を書き終えたいんですが……終えたいんですが……。