UL   作:招代

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さて……書き終えてないです。
最低でも3日後には後編を投稿したいんですが……。

一応最終話なんで前書きは手短にして、
最終話前編行きましょう。




第二十九話 『人面犬』 最終話 前編

人面犬とは

人間の顔をしていて人語をしゃべる犬である。

 

高速道路に現れ、

時速100キロメートルで車に追いすがるそうだ。

そして追い越されてしまうと事故を起こしてしまうらしい。

 

また、

ゴミ捨て場にも現れてゴミを漁っているそうだ。

通行人が声をかけると、

「放っておいてくれ……」

と言って立ち去るらしい。

 

 

 

平成26年3月2日13:06

 ここは大童の部屋。卒業式も近くなり、今まで以上に物がない。

「明々後日にはもう卒業なのね……」

「そーだねー」

「せっかくだからその前に仕事行っとくか」

「せっかくって何よ。まあいいけど」

「内容は?」

「『人面犬』だ。内容は目を通す必要はないだろ」

「そうね。場所は?」

「『ゴミ捨て場』でいいだろ。ここから30分ってところだ。高速道路は金がかかる」

「それなら時間は0時以降が良いね」

「街灯もあるしそれでいいだろ」

 鏡はパソコンを閉じる。

「じゃ、今日の夜11時半に藤重のアパートを出る。それ以降はいつも通りで」

「了解」

「分かったわ」

 そうして、三人は自由に時間を過ごしていく。

 

 

平成26年3月2日11:30

 アパート前。時刻ピッタリに車が停まると、弓を持った藤重が乗り込んで車は発進する。

 

 車内。

「それにしても、やっぱり多いわよね。『人面犬』とか『口裂け女』とか」

「メジャーな分、どうしてもね」

「ま、多いって言っても一年に2~4回あるくらいだが」

 今年は初だが、去年は合わせて5回あった。

「そうだけど、他に比べたら多いじゃない」

「まぁな。全国的に見ても多いし」

「でも難易度が低いから良いよね」

「あぁ、初心者には丁度良いな。なんとなくゲームのチュートリアルみたいな感じだし」

「そういえば私も最初の仕事は『口裂け女』だったわね……」

 最初の仕事のことを懐かしむ藤重。

「ULに入ることになったのは『人面犬』だったしね」

 続いて大童も懐かしそうに言う。

「そう考えるとホントにチュートリアルね」

「だね」

 そんな会話もしつつ、車は目的地へとたどり着いた。

 

 

平成26年3月3日0:00

 人通りの無い道路。『ゴミ捨て場』から離れたところに車を止めて、三人は車から降りる。その辺に車を止めてこないのはすぐ終わるからだ。

「それじゃ、とっとと実現させて終わらせて帰るか」

「そうね」

「だね」

 三人のいるここは工業団地。離れたところに家はあるようだが、あたりは工場ばかりで、中にはまだ光のついている場所も多い。街灯も等間隔で並んでおり、『ゴミ捨て場』も照らされているので離れた場所からでもその存在が良く見える。

「矢はこれな」

 そう言って取り出された矢は普通の矢とは違い、少し大きめで先端には円錐状の矢じりがついている。実用的とは思えないその風貌はまるで子供の書いた絵の矢のようだ。

「いつも通りね」

 それに違和感を持つことも無く自然に受け取る藤重。矢を渡した鏡はパソコンを取り出し、すぐに操作を開始する。

 

「後10秒。準備しとけ」

「分かったわ」

 藤重は弓を取りだして、まっすぐ飛ぶのかもわからないような矢を番える。その照準は今はまだいない『人面犬』を狙う。

「じゃ、僕も一応」

 大童も刀を取り出す。

「4、3、2、1、0」

 カウントダウンの終了と共に『ゴミ捨て場』の周囲に雑音が響く。そうして、街灯の範囲外、暗闇の中に次第に形作られていく『人面犬』。

 

 数秒後、雑音が収まり『人面犬』が『ゴミ捨て場』に向かって歩き始める。中型犬のようだ。

 藤重は一瞬で狙いを『人面犬』の面に定め直し、矢を放った。

 勢いよく放たれた矢は、見た目に反してその辺の矢よりも綺麗な軌道を描き、一直線に人面へと突き刺さる。

 ――次の瞬間、

 

 軽い爆発音とともに『人面犬』の頭が木端微塵に弾け飛んだ。

 

 そして雑音と共に標的は消え、そこには先端の無くなった矢だけが残っていた……。

 

 刀をしまって、先端の無い矢を回収した大童が戻ってくる。

「帰るか」

「そうだね」

「ええ」

 三人は車に乗り込み、車はアパートに向けて走り出した。

 

 車が走り去ったその場にはもう何も無い。

 

 

平成26年3月3日15:33

「藤重さんの家は雛人形飾ったりした?」

 大童の部屋で唐突に大童がそんなことを言う。最初は質問の意図が分からなかった藤重だが、今日の日付を思い出し納得する。

「そう言えば今日は雛祭りだったわね」

「うん。だから、ふと気になって」

「そうね、飾ったわ。今も飾ってるかは分からないけれど」

 藤重は家に飾られていた雛飾りを頭に思い浮かべる。

「ちゃんと片付けてた?」

「お嫁に行き遅れるってやつよね。私の所はその辺はしっかりしてたわね」

「そっか。なら安心だね」

「でもそれって迷信でしょ? 前の話だと左右されやすい人はいるのかもしれないけど」

 鏡の方を向く藤重。

 

「まぁな。仮にもしそうだったら現代はいき遅れてる奴ばかりだろうし」

 鏡は藤重の問いに本を読みながら答える。

「そうねー……片付けるのも結構面倒だし」

「最近じゃ飾ってるところじたい減ってそうだけどね」

「そもそも持っているかも怪しいところだ」

「今は無いところも多そうよね」

「だね。特にアパートとかだと場所とるし」

「少なくともうちに置く場所はないわね」

「その内、給食で菱形のゼリーを食べる日とか、ひなあられを食べる日になったりしてな」

「それはさすがに無いと思うけど……」

 呆れ顔の藤重に反して大童は納得した様子で、

「あー、節分が豆を食べる日とか恵方巻きを食べる日になる感じだね」

 と言った。

「最近は外には撒いても内には撒かない所も増えてるみたいだしな」

「やっぱり片付けるのが面倒なんでしょうね」

「大方そうだろ」

(やく)を追い出して、福を入れないってことは普通ってことだよね」

「普通と言うか平凡と言うか、まぁどちらにせよそんな感じだな」

 その発言に藤重は手を口元にやって、少しの間目を瞑る。

 

「……平凡ならそれでもいい気がするわね」

 そして目を開いてそう言った。

「実際にはならないけどな」

「そういう体質の人はいるんじゃないの?」

「個人の話じゃなくて家だからな。特異体質も糞もねぇよ」

「あ、それもそうね」

「仮になってたら、もっとちゃんとやるところも増えてたのかもしれないね」

「たらな」

 鏡は本を閉じた。

 

「ま、何にせよ、雛人形は飾らなくても手入れはしっかりしとけよ。付喪神になって祟られても知らないからな」

「え゛……不吉なこと言わないでよ」

 若干強張った顔で、嫌そうに言う。

「でも気を付けた方が良いよ? 確率は低いかもしれないけどあり得る事なんだし……」

 心配する大童。

「もう飾ったりしないなら供養する。まだ飾りたいなら手入れはしっかりしておけ。良い方向に魂が宿ればむしろプラスになる可能性もあるんだからな」

「そうね……今度帰ったら気にかけておくわ」

「それがいいよ」

 この会話はここで終わり、三人はそれぞれの時間を過ごす。

 

 数十分後、今度は藤重が口を開いた。

「さっきの話だけど、鬼ってたぶんいるのよね? 妖怪がいるなら」

「そうだな」

 肯定を受け取って、藤重はやけに慎重に、確かめるように問いかける。

「……鬼に豆って効くの? あと柊の葉とか鰯の頭も」

「効くわけないだろ」

 藤重の問いかけを、即答で馬鹿にして切り捨てる鏡。

「言っておくが、吸血鬼にニンニクだの銀だの水だの十字架だの日光だのも間違いだからな」

「まぁ……そうよね」

「でも嘘ってわけでも無いんだよね?」

 大童が鏡の方を向く。

「あぁ、正確に言うなら中にはそういうのが苦手な奴もいただろう。だが全部じゃない。前も言ったが妖怪って言うのは魂が妖魂に変質したもの、あるいは言霊により生まれたものだ。だから俗に言う吸血鬼や鬼とかが同じ弱点を持っているわけがない。もちろん力もな。まぁ、それらの子孫には引き継がれていくが」

「じゃあ偶々そういうのが苦手な吸血鬼とかに誰かが会って、広まったってこと?」

「そうなるな。ま、魂から妖魂になる際に影響を受ける場合はあるが」

「でも何ていうか……それを信じて立ち向かったりしたら大変なことになりそうね」

「だからそういうのは専門家に任せるのが一番だよ」

「そうね。それがいいわね」

 

 それからまた少し考えて。

「でも鬼がいるなら、まさか桃太郎っていたりしないわよね?」

 さすがに無いと思っているのか、冗談めかして言う。

「鬼の住み処はあるし、鬼退治を行った奴もいた、犬猿雉をつれた奴もいたのかもしれない。だからモデルになったのはいるかもな。ただ、桃から生まれたなんてのはいないな。あと普通の犬猿雉は喋らない」

「やっぱり流石にそれは無いわよねー」

「桃を食べて若返った老夫婦の子供が鬼退治に行ったりは?」

「『若返る桃』ってのはなぁ……無いことも無いが、老夫婦が食べてその子供が鬼退治は無いな」

「そっかー」

 ちょっと残念そうな大童。と、動きの止まる藤重。

 

「……あるの? 若返る桃」

 それからゆっくりと鏡の方を向いた藤重は、疑いと興味の混じった問いかけをする。

「無いことも無いな。まず手に入らないが」

「……」

 藤重は衝撃の事実に言葉も出ないようだ。なので藤重は置いておいて、大童が疑問を投げかける。

「でも何で桃?」

「その辺は桃太郎の話に合わせてだろ。実際には桃である必要性が無いから、『若返る桃は無いことも無い』って言ったんだ」

「あーそう言うことだったんだね」

 大童は納得したように手をポンっと叩いた。

 

「……はっ!」

 と、藤重の硬直がようやく解除される。

「……どうしたの?」

 いきなり声を上げた藤重を不思議そうに見る大童。その視線を受けた藤重は何やら慌てた様子で無駄な身振り手振りをしてから鏡を見た。

「え、あ、いや……え? ホントに、あるの?」

「無いことも無いな」

「……つまり?」

「無いことも無いな」

 ……。

 

「……つまり、あるってことよね」

 念を押すように聞いてくる。

「ま、お前じゃ手に入らないし、お前にとっては無いのと同じだけどな」

「まあ……そうよね」

 僅かに残念そうにそう言うと、視線を戻して頬杖をついて軽く息をはいた。

 

「そういうのって例えば生まれたばかりの赤ちゃんとかに使うとどうなるの?」

「ものにもよる。生まれた時を最低値とするか、魂が宿った瞬間を最低値とするか、最低値がそもそもないとか、はたまた○○歳になるとかな」

「そっかー……いろいろあるんだね」

 大童は感心している。

「でも桃太郎にモデルがあるなら、他のはどうなの?」

「他のって言ってもな。範囲が広すぎるだろ」

「それもそうね……」

 具体的なものを思い浮かべるために悩み始めた藤重は、思い付いた端から言葉にして並べていき、それに鏡が答えていく。

「それなら金太郎とか」

「いた。気を使えば熊と相撲も取れるからな」

「浦島太郎」

「何人か竜宮城には行ってるな。妖怪だが乙姫もいるし玉手箱もあるぞ」

「一寸法師」

「小人とかコロポックルだろ。打ち出の小槌もあるな」

「かぐや姫」

「いる。宇宙人だが今は地球で過ごしているな」

「鶴の――」

 

 ――恩返しと言いかけたところで、ふと止まる。

「……宇宙、人?」

「別に宇宙は広いんだから、地球と同じように生き物が住める場所があってもおかしくは無いだろ」

「UFOとかミステリーサークルとかの目撃談も多いしね。居ても不思議ではないと思うよ?」

「キャトルミューティレーションやアブダクションもな」

「いや……考えて見ればそうかもしれないけど……」

 頭を抱え込む藤重。

「もしかしてかぐや姫が宇宙人ってことは、他にも宇宙人が地球に来てたりするの……?」

「宇宙人だからってしわくちゃとかツルツルとか銀色とかメカニカルとかないからな」

「……はぁ」

 頭を抱えたまま大げさに溜息をつく。

「まぁ、宇宙人たちとは条約が結ばれてる。侵略の心配はないからあまり気にするな。むしろ友好的なのばかりだし」

「いや……もう何か別にいいわ」

 藤重は疲れた様子でそう呟いた。

 この話はここで終わり、数分後には藤重も通常状態に戻った。

 

 

平成26年3月3日20:37

「それにしても毎回毎回、鏡君には驚かされるというか何というか……」

 寮からの帰り道。呆れた声で雪のほとんどない道を歩く藤重と、

「まあ、僕も初めて知った時はそんな感じだったから」

 苦笑しながら隣を歩く大童。

「こう……色々なこと知っていく度に私の知ってた世界って随分と狭いものだったんだなーって、思えるわね。それが良いか悪いかは別として」

「そうだね……」

 大童は空を見上げる。

「確かに関わったことで大勢の人を殺めて大切にしようとしたはずの人も失って……まあ全部自業自得なんだけどさ」

「……」

 自嘲する大童の横顔を、藤重は黙って見つめている。

「それがあって夕夜や多くの人と出会って楽しい毎日を送れて……だからってあの時のことを良いとは思えないけど、それでもそのことは良かったって思えるから」

「……そうね」

「それに」

 空から目を離してこちらを見ている藤重の目を見ると、

 

「そのおかげで藤重さんとも仲良くなれたんだし、このことも良かったって思うよ?」

 そう微笑みかけた。

 

「――!? ぇ、その……ええっと……その」

「?」

「……そ、そう、ね」

 寒さとは別の理由で赤くなった顔を見られないように、そっぽを向いてそれだけを精一杯に答える藤重。対照的に大童は疑問符を浮かべている。

 

 そうして今日も平和に終わっていった。

 




書くことは後編にまとめて書こう。

次回は最終話を書き終えたら載せます。
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