UL   作:招代

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何て言いますか……おかしいな。
普通に説明はそこそこにしようとしたら、
長すぎるどころか寧ろ説明がメインに。

つまるところ、
今回のこれは前編後編通して説明回です。
なので読まなくても問題ないかなって。

あ、
主な内容は「気」です。
今後のことを考えると、
藤重の強化に気の説明は必要になってきますからね。

それでは前編です。



第三十話 『さとるくん』 After1 前編

さとるくんとは、

携帯電話と公衆電話と10円玉で呼び出すことができ、

どんな質問にでも答えてくれる存在です。

 

呼び出す方法は、

最初に公衆電話へ10円玉を入れて自分の携帯電話にかけます。

繋がったら公衆電話の受話器から携帯電話に向けて、

「さとるくん、さとるくん、おいでください」と唱え、

公衆電話をきってから携帯電話をきります。

 

それから1時間おきに携帯電話へかかってくるさとるくんからの電話に出ます。

するとさとるくんが今いる場所を知らせてくれます。

さとるくんの場所はかかってくる度に自分へと近づいてくるそうです。

 

そして24時間後、

「今、君の後ろにいるよ……」と、

電話がかかってきます。

 

この時、

さとるくんはどんな質問にも答えてくれますが、

後ろを振り返ったり、

何も質問をしないでいると、

さとるくんにあの世へと連れて行かれてしまうそうです。

 

 

 

平成26年4月18日14:22

 入社式から特に変わったことも無く2週間後の金曜日。

 大童・藤重・鏡の3人はたまり場兼仕事場の大童の家で、今週分の仕事をとうに終えてまったりしていた。その光景は全く以て、学生寮や藤重の家にいた以前までと変わっていない。変わったのは部屋の広さと家具くらいか。

「なんていうか……社会人としてこれで良いのかってくらい寛いでるわよね。私達」

「だねー。でも仕事もやる分はやったんだし良いんじゃない? それに、どちらかと言えばあっちの方が本職なんだしさ」

 お茶を飲んで一息つき、そう言った藤重の言葉に大童が返すと、

「それもそうねー……はぁ」

 と言ってまたお茶を飲んだ。

「ま、そういう事は手伝ってもらわなくてもこの程度の量の仕事が余裕で終わるようになってから言うんだな」

「うっ……そ、それはその通りだけど」

 ソファに座ってパソコンを弄っている鏡に事実を言われ、少し怯む。

 確かに藤重は水曜日に一週間分の仕事を終わらせた大童に仕事を手伝ってもらっていた。しかしこれは大童の慈善行為であり、藤重から頼んだわけではない。さらに、たとえ手伝ってもらわなくとも藤重の仕事ペースなら今日の午後には終わっていたので、そこに関しては何も問題は無いのであった。

 ……とは言え、手伝ってもらって、今こうして寛いでいるのは事実なので何も言い返すことはできない。

 

「だがまぁ、時間が余っているのも事実だしな。いい機会だ」

「何が?」

 パソコンを閉じてバッグにしまうと、藤重の方を見る。藤重と大童は話が分からず、そんな鏡を不思議そうに見ている。

「『気』についての説明をする。そろそろ使えるようになれ」

「あー……確かに。そういえば元々卒業後でいいやって話だったし、藤重さんもそろそろ使えるようになったほうがいいよね」

 鏡の言葉に納得のいった大童は手を叩いてそう言い、藤重の方を窺う。

「それは全然かまわないけど、結局『気』って何なの? 色々と強化したりできるみたいだけど」

「うーん……体に流れるエネルギー、みたいな感じで良いんじゃないかな。そんなに深く考えることも無いと思うよ?」

「どんなものかなんてどーでもいい。使えればそれでいいだろ」

「つまり考えるだけ無駄ってことね」

 質問に対し二人から帰ってきた答えを受けて、藤重はそう結論付けた。

 今までにも「考えるだけ無駄」なんてことは山ほどあったのでもう慣れたものである。

 

「でも前に誰でも使えるって言っていたような気がするけど……本当に誰でも使えるの?」

「馬鹿なのか。使えなかったら『使えるようになれ』なんて言うわけないだろ、馬鹿め」

 少し疑わしそうに問いかけた藤重を馬鹿にする鏡。その表情はまぎれもなく馬鹿を見下す顔であり、相変わらず楽しそうである。

「む……聞いてみただけでしょ。そんなに馬鹿馬鹿言わないでもいいじゃない」

「馬鹿め。その発言が既に馬鹿が馬鹿たる証拠なのだ、馬鹿が」

「だから――」

「まぁそんなことはどうでもいい。話を進めるぞ」

 馬鹿に馬鹿を重ねて楽しんだ挙句に、反論しようとしたところを遮り「どうでもいい」宣言。

 とは言え、話を進めた方が良いのも一理あるので藤重は口を閉じる。しかし、

「……」

 本気ではないものの顔は明らかに不機嫌で、不満があるのがありありと分かる。

 大童はそんな藤重を見て苦笑をすると、とりあえず宥めることにした。

「まぁまぁ。もちろん才能だったりもあるけど基本的には誰でも使えるし、使えるようになるのに日にちはかからないよ。難しいことも無いしね」

「……そうなの? てっきり凄く特殊な訓練とか必要なのかと思ってたけど」

 意外そうな顔をして大童を見る。とりあえず機嫌は直ったようだ。

「ううん、いらないよ」

「そうなの?」

「うん」

「その辺も踏まえて今から説明してやる」

 鏡はそういうと、説明を始めた。

 

「まず、気を使う上で一番大事なのは『気の存在を明確に知っている』ことだ」

「それはそうじゃないの? 知らないものを使おうなんて思わないでしょ」

「そういう事じゃない。第一、世の中には存在しない力をあると信じて何となく使えないか試す馬鹿もいるだろ。そういうのじゃ駄目だって事だ」

「つまり、大事なのは『明確に知っている』ってことだね」

「なるほどね……でも何が違うの?」

「んーっと、藤重さんは『超能力を使える人が昔はほとんどいなかった理由』を知ってる?」

 大童は少し悩み、右手人差し指を立てて問いかけた。

「知らないけど……単純に超能力者自体がが少なかったんじゃないの?」

「確かに超能力をしっかりと扱える人を超能力者とするならそうなんだけどね。そうじゃなくて、実は『超能力を持っていて、超能力って言葉を知っていても、本気であるなんて思っている人がほとんどいなかった』から使えなかったってことなんだよ」

「そうなの?」

 本当なんだろうと思いつつも、ついつい疑問形になってしまった藤重。その声は驚き半分疑い半分といった様子だ。

「あぁ。だが今は超能力が公になり研究も進んだ結果、超能力テストで有無が分かるようになったからな。自分の中に超能力があることを明確に知ることができるようになった」

「だから昔より超能力者が増えたってことね。でもどうして明確に知らないと使えないの?」

「結局、知らないって事は『存在しない』って言うのと同じようなものだしね。無いものを使うことはできないよ」

「霊力なんかと違って使おうとしなければ何も起きないしな……ま、何となくで使えてしまう奴も稀にいるが、お前は違うから気にする必要もない」

「分かったような分からないような……でも何となく分かったわ」

「それでいいんじゃないかな」

「そうよね」

 話がひと段落したので藤重はお茶を一口飲んで一息つき、再び鏡の方を向いた。

 

「……で、私はもう知っているからこれに関しては問題ないわね。次はどうするの?」

「次に大事なのは『自分の中に在る気の存在を感じ取る事』だ」

「それって何だか難しそうだけど……精神統一でもすればいいの? それなら得意なんだけど」

「まぁその方が最初は気を感じやすだろ。だがそれだけだとそれなりに時間がかかるかもしれんからな。今回はもっと簡単な方法も同時に行う」

「もっと簡単な方法があるの?」

「ある。と、言う訳で、大童」

「了解」

 アイコンタクトで理解したのか、視線で促された大童は立ち上がって藤重の隣に来ると、その場に座った。

 

「な、何?」

 動揺を見せる藤重に構うことなく、鏡が言う。

「これからお前の体に康の気を流す。動いている方が分かり易いし、密度も高い方が感じ取り易いからな」

「まぁ……何となくそんな感じはするわね。それで、私はどうすればいいの?」

「うん。とりあえず手を出して。気を流すから」

「分かったわ」

 大童は、差し出された右手を何の躊躇いも無く両手で包む。その行為に藤重は、

「――!」

 顔を赤くしながらも出そうになった声を堪え、しかし明らかに狼狽している。そんなおかしな藤重を見て首を傾げる大童。

「どうかしたの?」

「い、いえ、何でも無いわ」

「そう? それじゃあ、流すね」

「ええ」

(そ、そうよ。これは必要な事なのであって大童君に他意はないと言うか何と言うか……とにかく! 今は落ち着かないと……)

 取り繕うように姿勢を正し、呼吸を急いで整え緊張気味に目を瞑る藤重。その様子に大童は頭に疑問符を浮かべながらも、体内に気を流し始めるのであった。

 ……ちなみに、鏡は「後は康に任せた」とでも言うかのように二人から視線を外して本を読み始めた。

 

 気を流し始めて数十秒後。

「……少し、暖かい気がするわね」

「エネルギーのようなものだからね。だから少し寒いくらいの時は便利だよ」

「確かに便利だけどその使い方はどうなのよ?」

 呆れている藤重の問いかけに、大童が苦笑して答える。

「あははは……まぁあまり使い過ぎると体が怠くなるけど、休めば回復するからね。良いんじゃないかな」

「なら良いけど。でも使い過ぎると怠くなるの?」

「だね」

「ふーん……なら使い過ぎには気を付けないといけないのね」

「その辺は気を感じ取れるようになってから、徐々に怠くならない程度の気の量を掴んでいけばいいと思うよ」

「そう? 分かったわ」

 

 少し間が開いて、

「……あ、それで気の感じ取り方なんだけど」

「あ、うん」

 今まで忘れていたのか、ようやく話が進む。

「少し暖かいのを感じたなら、次はその流れを感じ取って欲しいんだ」

「流れ?」

「うん。今は藤重さんの手から体にかけて気を循環させてるから、その流れに意識を向けて見て。感じとしてはー……んーっと、血液の流れをイメージするとやり易いかな」

「血液の流れ、ね。とりあえずやってみるわ」

 藤重はゆっくりと息を吐き、静かに吸う。

(……血が巡るイメージ……体の中から先まで神経を張り巡らせるように……流れる血を感じ取るように……静かに……深く……広く……)

 藤重はイメージを明確にしながら心を静めていく。

 精神統一は得意と言っていただけあって、その姿は先ほどの慌てぶりが嘘かのように誰が見ても集中しているというのが分かる程で、声どころか僅かな音でさえも出すのが躊躇われるような、辺りの空気が静まり澄んでいくような、そんな雰囲気を醸し出していた。

 

 

「……ふぅ」

 時間にして十数分。

 藤重の溜息と共に部屋の中に音が戻る。それを確認して大童も気を流すのを止め、手を離した。

「どうかな、何となく感じ取れた?」

「そうね……何となくだけど、これが『気』かなっていうのが分かった気がするわ」

 大童の問いに少し疲れた様子の藤重が答えた。

「それなら後はその感じを忘れないように、自分の中の気をしっかりと感じ取れるまで続けるだけだね」

「分かったわ。でも今の感じで問題ないの?」

「大丈夫。むしろ充分すぎるくらいだよ」

「そう? なら良かった……」

 ホッと胸をなでおろす。

「この調子ならしっかりと感じ取れるようになるのにも時間はかからないと思うし、そしたら後は気を扱えるようになるだけだね」

「それが一番難しそうよね」

「いゃ、実は気をしっかりと感じ取れるようになったなら、これが一番簡単だよ」

「本当に?」

「うん。上手く説明できないけど、気を体の一部として扱う感じと言えばいいのかな? 気にも自分の体と同じように神経を通すような感覚でさ」

「うーん……とりあえずしっかりと感じ取れるようになったら試してみるわ」

 藤重はピンときていないようだが、きっと理論的なものではなく感覚的なものなんだろうと思い納得することにした。

 

「話は終わったか」

 と、それまで本を読んでいた鏡だが、いつの間にかパソコンを開いて二人を見ていた。

「終わったよー」

「ええ」

「なら仕事だ。つっても、お前等には関係のない話だが」

「?」

「お前等のランクじゃ足りないという事だ」

「つまりAランク以上ってことだね」

「ああ、そういう事……ってことはもしかしなくても鏡君がやるの?」

「そうなるな。お前等のランクが低い以上仕方がない」

 やれやれと言う風に両手のひらを上に向けて肩をすくめる。

「……でもどんな内容なの?」

「これだ」

 そう言って鏡が紙をそれぞれに一枚ずつ渡す。二人はそれを読み始めた。

 

 

「『さとるくん』、ねぇ」

 読み終えた藤重が呟く。

「これってつまり1時間逃げ切ればいいのよね?」

「正確には後ろを振り向いたうえで、1時間逃げ切るって感じだね」

「他には関係ない人間を放りこむとかな。もちろんやらないが」

「駄目に決まってるでしょ……でも、確かに危険ではありそうなんだけど本当にA以上なの?」

「どうして?」

 難しそうな顔で鏡に確認を取る藤重に、不思議そうに首を傾げる大童。

「だって1時間でしょ? それならもっと時間の長いのもあったし、場所も選べるのよね」

「まぁそうだね」

「ならBランクではないの?」

 そういう藤重の頭には『ごみこさん』の時の事が浮かんでいた。

 確かに時間と地形、共に見ても遥かに『ごみこさん』の方が大変そうではある。しかし大童がそれを否定した。

「いや、確かに時間や地形を考えればそうなんだけど、一番の問題は『さとるくん』の姿形が書かれていないことなんだよ」

「どういうこと?」

「つまりは例え実現した後でも、明確な形が無いという事は自身の形を自由自在に変えられるという事だ。だから行動の妨害はほとんど意味がないし、動き自体も読み辛い」

「それにどうやって『あの世』に連れて行くのかも分からないしね。後ろを向いた瞬間に距離を取ってもそれすら意味が無い可能性すらあるんだよ」

「な、なるほど……」

 二人の説明により危険性を理解した藤重の表情が硬くなる。

 

「あぁ、ちなみこれも『くねくね』と同じでSランクだ。基本的にはAランクの奴らでもできないことも無いが、念には念を入れないと不味い時もあるしな」

「……大丈夫なの?」

「問題ない、どころか余裕だ」

「夕夜だしね」

 心配そうに聞いてきた藤重とは対照的に、鏡と大童は全く心配する様子も無くいつも通りである。

「ま、第一お前が心配したところで何ができるわけでもないしな。大人しく康と一緒に見学してろ」

「でも危なくない?」

「標的は一人だし、近づきすぎなければ危険性は無いよ」

「それならいいけど」

 まだ少し心配は残るものの、大童と鏡の言葉を信じて藤重は頷いた。

 

「時間は……そうだな、明日の午後7時頃に終わる様にするか。どうせ予定なんて無いだろ」

 鏡は少し考えるようなそぶりを見せてそう言う。

「若干引っかかる言い方だけど、特に無いわ」

「問題ないよ」

「そうしたら仕事終わりに公園の夜桜でも見に行くか。時期的に丁度良いだろ」

「いいね! そうしよっか」

 この「公園」とは都学園に隣接している公園の事だ。時期によっては蓮なども咲くその公園の夜桜は、日本三大夜桜に数えられることもある程には有名で、毎年毎年観光客も大勢来る。

 そして今の期間は丁度満開で見ごろなのである。

 

「あー……そう言えば今年はまだ公園の桜、と言うより桜自体を見てないわね。去年まではいくらでも見れたんだけど」

「学園にもいっぱい咲いてたしね」

「そうねー……懐かしいわねー」

「だねー」

 たいして古くも無い過去を懐かしむ二人。それを見て、了承と受け取ったらしい鏡が仕事の時間など告げていく。

「なら決まりだな。明日は午後5時35分にここに集合。仕事が終わり次第、公園で花見だから服は私服で構わない。お前等は何もしないしな」

「了解」

「分かったわ。何か持ち物はいる?」

「その辺に座って飲み食いしないなら、金だけあれば良いだろ」

「んー……僕は座らなくても良いけど、どうする? 藤重さん」

「そうねー……良い場所は行った頃には空いてないでしょうし、ならお金だけ持って行く事にするわ」

「そうか。ならそういうことで」

「ええ」

「了解」

 こうして翌日の予定を決めた三人は、特にすることも無いのでダラダラと仕事時間の終わりまで過ごしたのであった。

 

 ちなみに『さとるくん』の実現と電話は鏡が予定通りに行った。

 これで後は『24時間後』を待つだけである。

 




一応言っておきますが、
現時点ですでに藤重は鏡の家に行ったことがあります。
弓の練習もそこでちょくちょくやっている設定です。

それはさておき、
次回はまぁ……少し予想できると思いますが、
「気の説明」と「若干のチート」になってしまいます。

……言えることがあるとすれば、
あまり気にしないで頂けると幸いです。
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