UL   作:招代

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次回に続き後編。
若干のチート成分は含まれているかもしれませんが、
気にしないで頂きたいです。

それとやっぱり説明回なので、
都市伝説は非常にアッサリトと。
でも正直どうなんだろうなぁ……って感じです、はい。

いまいち納得いかないながらも後編投稿。


第三十話 『さとるくん』 After1 後編

平成26年4月19日17:35

 『24時間後』まで後25分。

 予定通りの時間に鏡の車が大童の家に着くと、すでに来ていた藤重とそもそも住んでいる大童が車に乗り込む。

「金は持ったか? 取りに戻るなんてことはしないからな」

「問題ないわ」

「ならいい」

 そうして音も無く、車は目的地へと発車した。

 

 

平成26年4月19日17:56

 目的地へと到着し、車から降りた三人は人気が全くない廃工場の敷地内へと入る。

 工場に灯りは無く、空は暗くなり始めてはいるものの、敷地内を見る分には視界に問題無い程度の暗さだ。

「まだ明るさ的に問題ないとは思うが、暗視ゴーグルを持ってきた。暗くなったら付けろ」

「分かったわ」

「あとは通信機だ。これはもう付けとけ」

「了解」

 鏡がそれぞれに必要なものを渡す。二人は通信機を片方の耳へと着けた。

 

「時間まで後少しだな……お前等はあの辺の倉庫の上にでも座って見てろ。地面は危ない可能性が有るからな」

 鏡が指で指し示すその先には、確かに所々錆びついた倉庫がある。

「了解。行こ、藤重さん」

「ええ。頑張ってね、鏡君」

「この程度、頑張ることも無いけどな」

「あ、そう」

 そうして二人は100m程離れた場所にある倉庫の上へと移動を開始した。

 

 

平成26年4月19日17:58

 ここは倉庫の上。大童と藤重は平らな屋根のふちに座り、足を空中に投げ出して鏡のいるほうを見ている二人の表情は対照的で、大童は変わらずリラックスしており、藤重は変わらず心配そうであった。

 そんな時、通信機から鏡の声が聞こえてくる。

『聞こえているな』

「うん。聞こえてるよー」

『なら始まり次第「気」の説明を始める。寝たら落とすからな』

「寝ないし落とさないでよ! 危ないじゃない」

『そうか、まぁそんなことはどうでもいい。それよりもコレを始める前に注意点な』

「どうでもよくは無いわよ……」

「まぁまぁ」

 藤重の呟きを無視して鏡が続ける。

『まずは絶対に自分から後ろを振り向くこと。でなきゃタイミングがつかめないからな』

「『質問を考えていないと』って言うのが、どのくらいまで許されるのか分からないからね」

「それはそうね」

『で、次はコレがSランクたる所以でもあるが、低確率で後ろを振り向いたりした瞬間に問答無用で消されることがある』

「……」

『……』

「……」

 

「……え、ホントに?」

『マジだ』

「つまりそれってー……どうしようもないじゃない!?」

 非常に物騒なことを何でも無い事のように言う鏡に対し藤重は、驚きが隠せず思わず声が大きくなってしまう。

『まぁ普通ならそうだが、ここで大事なのが「気」だ』

「……気でどうにかできる物なの?」

『できる。コレの言霊の力以上の質量の気を全身にくまなく巡らせておくことにより、消滅を避けることが可能だ』

「と言っても僕じゃ全然足りないくらいの量だけどね。それこそSランクくらいは必要だよ」

「何て言うか……Sランクだけあって、やっぱりすごく危険なのね」

「まぁでも、気じゃどうしようもない『くねくね』よりはマシらしいよ?」

「ソレって前に言ってた同じSランクの奴よね」

『その時も言ったが、アレは本当に「気」じゃなくて「気合い」が大事って感じだからな。流石に精神力は気では強化出来ない』

「そういうものなのね」

「そういうものだね」

『そういうものだ……あぁ、そろそろ時間だな』

 言われて藤重が携帯の時計を見ると、すでに59分になっていた。秒針は無いので詳しくは分からない。

 

『と、言う訳で。これから「気」の説明と幾つかの使用例を見せるし、寝るなよ』

 大童達の視線の向こうで鏡が携帯を取り出すのが見える。

「了解」

「分かったわ」

「開始まで5、4、3、2、1、0」

 カウントダウンの終了と共に時間は丁度18時を指し、同時に連絡が来たのか鏡が携帯を耳に当てるのが見えた。

 すると、

「……?」

 鏡の背後に黒い靄のようなものが音も無く現れ始めたと思ったら、それはすぐに人の形のようなものを取り始める。

 それを見て藤重は視線をそらさずに問いかけた。

「アレが『さとるくん』?」

「だね。今回はあんな感じだけど、黒以外にも白だったり、見た目もハッキリと人だったり人ですらなかったりで色々あるよ」

「やっぱり姿形が書かれてないからよね」

「だね」

 そんなことを話している間にも、向こうにいる鏡は行動を開始。後ろを振り向いた瞬間にはその場から消えていた。

「消えたっ!?」

「気で強化して上にジャンプしたんだよ。ほら、あそこ」

「……え?」

 言われたとおりに大童の指さす場所に視線をやると、そこには地上から10m位の空中に鏡が何事も無く浮かんでいた。

 

「は? ……はああぁぁぁぁあ!?」

 そう、紛れも無く浮かんでいたのである。

「ちょっ、何飛んでんのよ?」

『何って、見れば分かる通り地面に居たら消されるからな』

「いやそういう事じゃなくて」

 と言いつつ藤重が下を見ると、そこには今までの地面は無く、ただただ黒い闇とも言えるようなものが『さとるくん』を中心に広く広がっていた。

 さらにそこから黒い靄のようなものが紐のように何本も生えて、鏡へ向かい伸びてくる。

『ああ、体が浮くくらいの質量の気をバランスよく放出し続けることで飛ぶことができる。ジェット噴射の要領だ。ちなみにこの黒いのに触れたら消されるしな』

 話ながらも向かってくる靄を、空中で危なげなく躱していく。

 その光景に、頭の整理が追いつかず取り乱す藤重。冷静に返す鏡。隣の大童はそんな会話を聞いて面白そうである。

『だがコレは考えれば分かる通り燃費が非常に悪い。A程度だと実用的ではないからお勧めはしないな』

「いや、え、ええ?」

『実用的な方法としては人が乗れるくらいに固めた気を空中に出して乗るか、一瞬だけ噴射して空中で向きを変えるとかだな。これならAでもできるだろう』

「できるだろう、じゃなくて……あーもう!」

「大丈夫?」

 流石に、頭を抱え込んで苦悩している様子の藤重を心配して大童が声をかける。すると藤重は頭から手を離して、何処か疲れた様子で返事をする。

「ええ……ええ、大丈夫よ。問題ないわ。落ち着いた」

「そう?」

「ええ」

『なら説明を再開するぞ。時間に余裕があるとはいえ、早めに説明を終わらせた方が集中して見れるだろ』

「……お願いするわ」

 通信機から聞こえてくる声に答えて、再び向こうの方へと目を向ける。

 

『まずは基礎的な身体能力の強化だ。どういうものかは説明しなくていいだろ』

「何となく分かってるわ」

 今までの経験からある程度はどういうものなのか分かっているため頷く。

 と言うか、言葉の通りである。

『それでいい……で、やり方だが、慣れるまでは全身に気を纏う感じだな。体に直接浸透させる感じじゃなく、だぞ』

「何か不味いことがあるの?」

『身体能力が上がるという事は、本来想定されていない力や速度で動くことになる。そうなると最悪の場合、服等が負担に耐えられず破れる可能性が出てくる。だから気を纏うようにすることで、ある程度服も強化して破れないようにするってことだな』

「な、なるほど……確かに破れたらまずいわね」

 口元に手をやって、硬い表情で言う。もしかしたらその場面をイメージしたのかもしれない。

「まぁでも、丈夫な服を着ていればそうそう破けることなんて無いけどね。だから本当に万が一って感じだよ」

「でも気を付けるわ」

 キッパリと言う。

 

『それでいい。後は体の部分的な強化だが、これも慣れるまでは基本的に全身だけにしておけ』

「さっきのと一緒で他の部分への負担が大きいからよね」

『ああ。そしたら次は武器の強化だが、これは特に問題ないな。武器にまとわせるように、染み込ませるように気を込めればいい』

「ようするにさっきのと一緒ってことね」

『そういうことだ。ただ、前にも言ったがお前の弓はとにかく壊れないようにできている。これはどれだけ強く弓を引こうとも、どんな攻撃を防ごうとも、気を纏わせる必要が無いというメリットがある』

「そう言えばそんなことを言っていたような気も……つまり、私の場合は強化する必要が無いのね」

『まぁ、矢は強化しないといけない時もあるだろうけどな』

「なるほどね」

(……それにしても)

 言葉では納得する藤重だが、それよりも視線の先の出来事の方が気になって仕方がない。

 そこには黒い靄がさらに増えて鏡へと襲い掛かっていた……しかし鏡は余裕そのもので、わざと黒い靄の密集地帯を飛んで回っているように見える。

(どう考えても同じ人類とは思えない……なんであんな状況でこうも平然と通信してられるのかしら。見ているこっちの方が冷や冷やするわよ……はぁ。でも考えるだけ無駄なんでしょうね)

 色々と思う所はありながらも無理矢理納得する藤重であった。

 

『次に、これも前に少し言ったが気を放つ使い方だ。基本的に牽制として使う』

 そう言いながら鏡の周りには白い気の塊がいくつも形成されていき、それが襲い掛かる黒い靄を片っ端から迎撃していく。

 しかしいくら迎撃しても、黒い靄は新たに生まれ鏡を狙い続けている。

「思いっきり攻撃に使ってるけど……基本的に攻撃には使わないの?」

『攻撃として使うには、かなりの質量か速度が必要になる。それなら武器や体を強化して攻撃した方が効率的だ。体から離れた気をコントロールするのも難しいしな』

 口ではそう言っているが、鏡は前方に巨大な気の塊を球状に生成。それは黒い靄を消しながら地面へと落下していき、着弾と同時に地面を這うように拡散して辺りの黒い靄をすべて消し去った。

 だがすぐに黒い靄こと『さとるくん』は復活して先ほどと同じ光景になる。

「それにほら、例えばいくら強風で空気が体に当たっても痛くは無いでしょ? 気も同じで、相当な質量が無いとダメージは無いんだよ」

『特に、お前は弓だしな。わざわざ気を飛ばして遠距離攻撃する必要なんてないな』

「なるほどね、分かったわ……ところで、言ってる事とやってる事が違う気がするけど」

 どこか呆れた様子で藤重が言う。

『気にするな』

「あ、そう。でもAランクは最低でも気を飛ばせないといけないのよね?」

「だね。でもアレはダメージが出るほどじゃなくて、最低でも目に見えるならそれで良かったと思うよ」

「なら最低でもそのくらいはできる様にならないとね。Sはともかく、Aは目指したいし……」

「そっか。じゃあ頑張らないとね」

「ええ、もちろんよ」

 グッと拳を握り決意を新たにする。大童はそんな様子の藤重を微笑ましそうに見ていた。

 

『で、後は気の操作。例えばこんなのだな』

 通信機から声が聞こえた後、鏡の周りに形成されたいくつもの気の塊が不規則に動き回り始めた。速度もバラバラで、中には分裂したり合体しているものすらある。

『同様に、武器に気を纏わせてそれを遠隔操作したりな……あぁ、実用的な範囲と言えば攻撃範囲を少し増やすくらいならいけるな』

 鏡はバックからパソコンを取り出すと、それに気を纏わせてサイドスローで回転させながら投擲する。

 するとパソコンは直径5m位の円く平たく形成された気を纏いながら、あり得ない軌道で回転したまま黒い靄を切り裂き進む。

 

 暫くして、手元に戻ってきたそれを鏡は難なくキャッチし、パソコンの纏っていた気が消える。

『ただまぁ、さっきも言ったが体から離した気をコントロールするのは難しい。だから簡易版として糸でも何でもいいから、体と遠隔操作する物体を結んでおくといい。慣れてくれば気を糸の代わりにすることもできるけどな』

「私の場合はそっちを重点的に磨いた方が良いのかしら? ……まぁ、まだまだ先の話なんでしょうけど」

『そうだな。その方が良いだろ。ちなみに、何となくわかると思うが物体が重ければ重いほど気の量が必要だし、速いほどコントロールは難しくなるからな』

「そうなると……矢は軽い方よね? だったらやっぱりコントロールを磨いた方が良さそうね」

「軌道を曲げられたりするだけで、攻撃手段は格段に増えるからね。あそこまで、とは言わないけど」

「流石にアレはちょっと……」

 二人の見ている光景。それは気で形成された全長20m程の西洋剣の様なものの刀身部分、だと思われる場所から放たれる50本近いレーザー状の気。それぞれが軌跡を残しながら出鱈目な軌道を描き、よく分からない光景となっている。

 

 それを見ている藤重はこう呟いた。

「……剣の意味は?」

『何となくだ』

「あ、そう」

 藤重はそれ以上この光景について考えるのを止め――ようとして、ふと気づいた。

「そう言えば鏡君の気って白いけど……」

『今は暗いからな。見やすいように白色にした』

「『にした』ってことは自由に変えられるの?」

『結局は心の持ちようだしな。染まりきってたら無理だが、出来るやつは出来る』

「そうなのね……じゃなくて! さっきから随分派手にやってるけど、流石に誰かに見られない?」

『問題無い。外からは何も見えないようにしているからな』

「それならいいけど……」

 鏡がそう言うのでとりあえず納得する藤重。

 ……本当はどうやってかを聞こうと思ったのだが、これ以上は精神的に疲れそうなのでやめたのだった。

 

『と、気に関する説明はこんなもんか。質問はあるか?』

「今は特に無いわ」

『そうか。まぁ、分からない所があればいつでも康に聞くといい』

「うん。いつでも聞いてね」

「……迷惑じゃない?」

「大丈夫だよー」

 窺うように聞いてきた藤重に、大童は笑顔でそう言った。

「なら、そうさせてもらうわね」

「うん」

『説明ももう無い。後は時間までテキトーに待ってろ』

「分かったわ」

「了解」

 そうして二人は座りながら、鏡は仕事をしながら、雑談をして時間が終わるのを待つのであった。

 

 

 時間は経ち、『さとるくん』が音を立てて消えていく。

『さて、終わったことだし花見に行くか』

 そう言って地面へと下り立つ鏡。

「ええ」

「だね」

「……それにしても、確かに鏡君にとっては余裕だったわね。心配してた自分がバカみたいに思えるわよ」

「あははは、夕夜だからね」

『実際馬鹿だしな』

「違うわよ!」

 そんな話をしながら、藤重と大童は通信機(藤重は暗視ゴーグルも)を外すと倉庫から跳び下り、鏡の元へと向かう。

 

 

 

 その後、三人は花見を楽しんだのであった。

 

 

 

第三十話『さとるくん』After1終了。

 




花見の描写もしようと思ったんですけど、
特に書くようなこともなさそうだし、
これ以上長くなると三編になってしまうのでやめました。

いずれ機会があれば……無い可能性が高いとは思いますが、
書くこともあるかもしれません。

……なんて、
どうでもいいですね。

次回のAfterは何時になるやら……今年中は期待しないでください。
……期待する人がいるのかもわかりませんが。

それでは皆様体調にお気をつけてお過ごし下さい。
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