UL   作:招代

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言ったことを何一つ守れてない自分が嫌になる……。

……ま、
それは置いておいて。

およそ一年ぶりの投稿ですね。
次回は内容も思いついてないですし、
そもそも最終話書いたわけですし。
優先したいものがまだまだあるので基本的にないものと思っていてください。

……優先したいものがあるのに何でこっちを書いたのか、
自分自身に呆れながら投稿完了。


第三十一話 『一寸ババア』 After2 前編

ある日の事。

閑静な温泉宿の女性用トイレの個室で惨劇が起きた。

宿泊客の女性が体中を鋭利な小さい刃物でめった刺しにされ、

さらに一部をえぐり取られるという凄惨な状態で見つかったのだ。

 

そしてこの事件を聞いて震えあがる男が一人。

彼は事件のあった現場に小型のビデオカメラを設置しており、

女性が用を足すのを隠し撮りしようとしていたのである。

 

だがこのまま捜査が始まれば設置したビデオカメラは確実に発見されてしまうだろう。

それならばと彼はすぐに警察へ自首をして全てを話した。

 

男の話の通りに盗撮に使われたビデオカメラはすぐに発見され、

さっそく捜査員の手により検証が行われた。

ビデオテープには被害者女性と犯人の両人が、

そして殺害方法などが映っているはずである。

しかし、

そこに移っていたのは捜査員の想像を超えるものであった……。

 

ビデオには思ったとおり、

被害者女性が映っていた。

便座に座る様子も映っていた。

問題はここからである。

女性が座って暫くするとなんと、

トイレの窓から小さな老婆が入ってきたのだ。

そして手に持った小さな針で女性の体を猛スピードでめった刺しにし、

肉を抉り取っていった。

 

被害者女性の断末魔が聞こえる中、

捜査員はあまりの状況に呆然とビデオを見ていた。

 

そして息絶えて動かなくなった女性の上。

老婆は鬼のような形相でこちらを睨み、

「次はおまえの番だよ!」

と言った。

 

……そして、

捜査員のいる部屋の天井がゴトリと音を立てた。

 

 

 

平成26年10月17日16:11

「――――っと、言う訳で。後の事は頼んだぞ」

「了解。後の事は任せてよ」

 いつもの大童の部屋。仕事を終えた3人はいつも通りダラダラと過ごしていたが、どうやら鏡が何かを話し終えたようで、それに対して大童は頷く。

 

 ……しかし、藤重は首を傾げた。

「……何が?」

「話を聞いてなかったのか? 社会人にもなって重要な話を聞き逃すとか……人間失格だぞ?」

「何でそこまで言われなくちゃいけないのよ! ……って言うか『と、言う訳』も何も、なにも言ってないじゃない」

 やれやれと、小馬鹿にしたような言葉に藤重が怒る。が、鏡はどこ吹く風で、藤重にとっては驚きの発言をした。

「何を言っているんだ? ちゃんと言っただろ。康を見習え」

「え……大童君は分かるの?」

 藤重は鏡の言葉に大童を見るが……

「え?」

「え?」

「……」

「……」

 

 しばしの空白。

 その後に迷った様子の大童がどこか歯切れ悪く言葉を紡いだ。

「……あーうん。『今度支部長クラスの人たちで5泊の旅行があるから、その間の仕事を任せた』ってことだよね」

「あぁそうだな。見ろ、康はちゃんと聞いてたというのにお前は……」

 まるで心底残念な人間を見るような眼差しを向ける。そのことに藤重は少し焦った様子で大童に訊ねた。

「えっ! そんな話……いつしてたの!?」

 すると大童は頭を掻きながら極まりが悪そうに、

「あー……まぁ、藤重さんのいない時に」

 と言った。

 ……どうやら鏡は何も話し終えていなかったらしい。

「……」

「……」

「……」

 

 数秒の沈黙。

 そして藤重の首がぎこちなく動き、鏡の方へと向く。何故か目のあたりには黒く影が差しているように見えた。

「……ねぇ」

 ボソリ、と。静かながらも圧力のある声が発せられる。

「どうかしたか?」

 対して鏡は世間話をするかのようなトーンで、まるで本当にそう思っているかのように聞き返した。

 すると藤重がプルプルと震えはじめる。そして――――

 

「どうかしたかって…………話されても無いことが分かるわけないでしょぉおがあああぁぁぁ!!」

 

 ――――藤重の咆哮が部屋に響き渡った。

 しかしその方向の矛先である当の本人は、

「何当たり前なこと言ってるんだ? アホかお前は。まさか分かるとでも思っていたのか……やれやれまったく」

 全く以て悪びれる素振りも無く、それどころかさらに馬鹿にするという暴挙。芝居がかったような言い方で言っているのがさらにたちが悪い。

 拳を握る藤重は当たり前のように怒っているようだ。

「あ、あのねぇ……!」

「まぁまぁ、落ち着いて。今は話しを進めないと」

「でも――」

 大童が宥めて少しは冷静さを取り戻したものの、まだまだ怒りが収まらない様子。

 そしてそれを眺めていた鏡は手を2回叩き、言った。

「そうだな。いつまでも無駄話してないで話を進めるぞ」

 ……騒動の元凶はいたって他人事である。

「……」

「……」

 

「…………はぁぁ。もう、何か、どうでもよくなってきた」

 もう何度目なのかも分からないが、これ以上は無意味と判断したのだろう。

 藤重は盛大に溜息を付き、机に突っ伏す。

「いや、どうでもよくないだろ。話は聞けよ」

「はいはい、分かってるわよ……」

 投げやりにに返事をするが、槍どころか全てを投げ出したい気分の藤重であった。

 

 

 

「それで、どういうことなの?」

 1分後、復活した藤重が話を切り出す。

 飲み物が増えているのを見るに、飲みきった後に補充したようだ。

「あぁ、明日から5泊6日で毎年恒例の支部長の集まりがあってな。だから5日間の仕事は任せた、という事だ」

「支部長の集まりって……会議? それにしては5泊6日って長いわね」

「まぁそれもあるが、どっちかって言えば慰安旅行だな。日々忙しい支部長を労わろうってことだ」

「慰安旅行って……必要なの? むしろ副支部長さん達の方が必要なんじゃ……」

(鏡君を見てると、どうしても忙しいようには見えないのよねー……それだけ凄いってことなんだろうけど)

 前に会った新潟県支部の副支部長(かけや)を思い浮かべ、目の前の支部長(かがみ)を見て言う。

「まぁ、他の支部長たちが夕夜みたいに仕事をこなしているわけじゃないからね」

「……それもそうね」

 もし全ての支部長が鏡のようであったら、本当に慰安旅行など必要なくなるのだろう。

 そう思ったのか、藤重も納得したようだ。

 

「それに副支部長は副支部長で旅行があるぞ」

「あと、社員旅行もあるらしいよ。僕は行ったことが無いんだけど」

「そうなの?」

「社員旅行自体は希望制だけどな。大抵人が集まらないから行われないが」

「何かもったいないわね。そういうのってやってるところも多いし集まりそうなものだけど……」

 藤重の言葉に鏡は「ふむ」と、考えるそぶりを見せて答えた。

「まぁ、世の中は旅行に行きたいやつばかりではないしな。行きたくない人間だって多いだろ」

「それにULならお金は十分にもらえるし、旅行に行きたい人はプライベートで人を誘って好きなところに行けばいいしね。わざわざ社員旅行で行く必要も無いんじゃないかな?」

「なるほど……確かに言われて見ればそうね。行こうと思えば有給とかとって行ってもいいし」

「そうじゃなくても人によっては都市伝説関係で遠出する機会もあるからねー」

「つまり全体的に社員旅行の価値は薄いってことね」

「そうなるな」

「だね」

 実際にUL新潟県支部での社員旅行は12年前に行われたのを最後に行われていない。しかし社員には結構旅行に行っている人もいるようで、やはり価値が薄い――と言うより無いのだろうか。

 

「ちなみに、鏡君達はどこに行くの?」

「海外だな。いくつかの場所を周ることになってる」

「豪勢ねー……それなら5泊6日も頷けるわ」

「ってか、全県の支部長が集まるからな。国内だと何処行っても誰かしらが微妙だろ」

「あぁ、なるほどね」

 確かに自分の所属する都道府県に旅行すると言うのも微妙な話だろう。そうなれば海外が最も適していると言える。

「でも流石に毎年毎年海外行ってれば行く場所も無くなりそうだけど。しかも5泊6日」

「旅行ではあるがツアーではないからな。行く国は決まってても行く場所は決まってないし、基本自由行動だから問題ない。人によっては仕事したり鍛えたりと色々だ」

「自由ねー……」

 お茶を飲んで一息つき、呟く。

 この様子からするに、どうやら本題についてはすっかり忘れているようである。

 

「そこまでいくと慰安旅行かどうかも怪しいけどね」

「確かに仕事なんてしてたら労わるどころか普段通りね」

「ま、本人たちが良ければいいだろ。一応仕事からは解放してるわけだし、世の中には仕事大好きな変わり者もいるってことだ」

「ワーカーホリック、ってやつかな」

「だな。まぁこちらとしてはどうでもいいんだが」

 どうでもいいと言っているが、支部長といえば実力者が揃っているわけで。そうそうなことでは体を壊す心配はないと言える。そこを分かったうえでの「どうでもいい」なのだろう。

 

「――で、いない間の仕事についてだが」

 と、ここまで話して区切りがついたと判断したのか、鏡が姿勢を直して本題へと内容を戻す。

「いつも通りに仕事をしてればいいんじゃないの?」

「それもだが、丁度実現しそうなのが来てる。それをやっとけ」

「あぁそういうこと……それで、内容は?」

「これだ。康にはすでに渡してある」

「そーゆうのは私のいる時にしなさいよ……二度手間じゃない」

「手間よりも優先すべきことがあるからな。しょうがない」

「あ、そう……」

 溜息をつきながら鏡から紙を受け取り読み始める。

 疲れているのもあるだろうが、どうやら先程の事をぶり返すつもりはないらしい……今日は。

 

 

「内容は分かったけどこれって……」

 読み終えた藤重が大童を見る。

 その意味を大童も分かっているようで、頭を掻きながら何とも言えない曖昧な表情で頷いた。

「あー……うん。そうだね。この『ビデオカメラ』を仕掛ける役は僕だから、つまり女子トイレに入らないといけないんだよね……」

「…………そうね」

(仕事だから仕方ないとは言え……何か複雑)

 大童が女子トイレに入る事への微妙な乙女心? のようなものを感じつつも、口には出さない。

 言ったところで大童が何に気付くわけでもないであろうが、藤重的には気がかりなようだ……しかし結局、こういう所が微動だに進展しない大きな要因の1つだという事を、藤重は知っていながらも直さない。

 ……大童の気持ちが分からないのも原因なのだろうが、それにしてもまったくもってヘタレである。

 

 ……それはさておき話は続く。

「でもこれ、内容的に難しそうに見えて凄く簡単な部類のやつよね。だってようするに『カメラの破壊』もしくは、『個室から無事に出る』ってことでしょ?」

「正確には『カメラの範囲外に生きて出る』だけど、確かに簡単な部類だね」

「問題があるとすれば『猛スピード』ってところだけど……どのくらいのスピードかしら?」

 悩みながら尋ねる藤重に対し、こちらも悩みながら答える大童。

「うーん……たぶん大丈夫なぐらいだと思うよ? 少なくとも光速とかそういうことは無いと思う」

「仮に音速でも十分に遠慮したいわね……」

 どうやらまだ藤重に音速戦闘、340m/秒の世界は厳しいようだ。

 だがそれでも元から動体視力も含めた目が良いのに加え、あの時から行っている「気」の練習の成果もあり、

「まぁ、おおよそ一般人が目で視認できる程度の速さだ。今のお前なら問題ないだろ」

 という具合には成長しているのであった。

「それなら気を付けてさえいれば大丈夫そうね」

「あぁ。それに描写的に壁とかを蹴って跳んでくるだろうし、行動も直線的で対処しやすいことこの上ないな。まさか体中を走り回って『めった刺す』ことはしないだろ」

「そもそも窓から移動するのに跳ぶ必要があるしねー。そこを狙うのが一番簡単かな」

「なるほど……それもそうね」

 納得して頷く。

 それを見て鏡が軽い口調でこう言う。

「まぁ、別にわざと狙わないで難易度上げても良いけどな。それでも余裕だが」

「いやしないわよ……」

 そしてすぐに否定する藤重であった。

 

「で、何か他に質問はあるか?」

 内容の確認を終えて、鏡が2人を見る。

「いえ、無いわね」

「うん」

「なら宿はもうとってあるし、後は遅れないように行ってサクッと終わらせてくるだけだな」

 質問が無いことを確認した鏡は先程とは別の紙を取り出して渡す。

「で、これが予約してある宿だ。1泊しか取ってないから荷物は大していらないだろう」

「了解」

 その紙には泊まる予定の宿の情報や外観が写真付きで一般人にも分かり易く載っていた。

「へー……結構良い旅館ね。少し高い気もするけど」

「だねー。でも高い方がセキュリティとかがしっかりしてて大変なんだけどね」

「まぁ超高級旅館ってわけじゃないし、馬鹿みたいな警備は無いから問題ない」

 言いながら、さらに紙を4枚取り出して4枚とも大童に渡す。

 そこには何と、監視カメラの位置や見回りルートなどの警備情報に加え、従業員の勤務・交代時間や旅館内外の見取り図が詳細に書かれていた。

 ……一体どうやって調べたのか。

「そっか。それなら問題なさそうだね」

「あぁ」

「いや、ある意味問題だと思うんだけど……」

 藤重が呟くが、そもそもほとんどの旅館ではこんな能力値の高い侵入者は予定されるはずも無いので仕方がない。それもトイレ付近に、だ。

 ……しかし、もしこの紙が犯罪者に出回れば瞬く間に標的とされることだろう。それぐらいにこの紙は旅館の穴が明示されていた。もちろん、そんな事にはならないので大丈夫ではあるのだが……調べられた旅館側からすればたまったものではない。

 

 だがそれを調べた当の本人はそんなことを気にするはずも無く、本当にそうするわけはないと思うが爆弾発言をする。

「ま、仮に駄目だったとしても、その時はその時だな。トイレでも何でも爆破してしまえばいい。そうすりゃ終わる」

「良くは無いでしょ……と言うか下手したら私たちの人生が終わるじゃない」

「ふむ、確かにそうだな。お前の人生はともかく無駄金は使わないに限る」

 呆れる藤重の言葉に鏡は口元に手をやってワザとらしく一部同調を示したが、もちろんそれは藤重が望んでいたものとはもちろん違うわけで。

 しかし藤重は、

「そういう事じゃぁ……まぁいいわ。兎に角、気をつければいいんでしょ」

「だね。できるだけ被害は出さないようにしないと」

「そういう事だ」

「はぁ……」

 訂正を諦め、深く溜息をついて話を終わらせたのだった。

 

 

 その後、用事があるからと鏡が何処かへと行き、残された2人は夕飯を一緒に食べてから解散となった。

 ちなみに夕飯は大童が藤重を誘い、同じ台所に立って料理を作った。おかげで藤重の気力は回復し、帰る頃には疲れた様子は一切なかったらしい。反面、時々挙動夫人な時があり、その度に大童は首を傾げたという。

 




最近は暖かかったのにまた寒くなるという。
ホント、
早く秋にならないですかねぇ……過ごしやすいし。

あ、
次話も続けて投稿します。
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