前にあっちに投稿するものをこっちに投稿してしまいすいません。
いやーすごく慌てましたね。
今後は気を付けたいです。
さて本題。
本来は最終話のその後の話を先に投稿する予定だったのですが、
頭の中でこの話を考えていたら「あれ、これ書けるんじゃね?」と思いまして、
書いてみたらスラスラ書けてしまいましたので投稿させていただいた次第です。
それと今回のは番外話ですので都市伝説要素はありません。
では久しぶりの投稿ですがどうぞ。
※2014.11.9 特に意味の無いタイトル変更。
土砂降りの雨が降っている。
(どうしてだろう……)
雨の音しか聞こえない中に傘も差さない子供が2人。
(どうして……俺は……)
一人は魂が抜けたように座っている。
(どうして……俺はここにいるんだろう)
もう一人は眠るかのように倒れている。
(どうして……弟が倒れているんだろう)
倒れた子供の首は赤く染まり赤が流れ続けている。
(どうして……弟の首が赤いんだろう)
座る子供のそばには赤く濡れた刃物が落ちている。
(どうして……俺の手は赤いんだろう)
赤が雨に混じり肌から地面へと流れる。
(どうして……弟は動かないんだろう)
地面に流れた赤は次第に薄まりその色を失う。
(どうして……どうして……)
子供は動かない。
(どう……して……)
雨がただただ降り続けていた。
平成16年6月25日7:00
株式会社UL。言わずと知れた世界有数の大企業である。その仕事は表から裏へと幅広く、特に裏の仕事である都市伝説への対処は最も大切な仕事である。これが無ければ世界には実現し、切り離された都市伝説由来のナニカが増えていく一方だろう。
その中には大災厄を招くモノもあるかもしれない。全くの無害であるモノもあるかもしれない。しかし都市伝説は変化する。だからこそ、そう言った可能性が有るモノも無いモノも含め、なるべく切り離される前の言霊の状態の時に消すことが大事なのである。
ここはその株式会社ULの本部長室。つまりは株式会社UL本部の社長室である。
その本部長室の扉を、
「来てやったぞー」
ノックもせずに開けて遠慮なく入っていく男。見た目は若く、10代後半~20代前半と言ったところだろう。
「おお、来てくれたか」
そしてその男の態度を気にすることも無く、椅子から立ち上がり快く迎え入れたのは本部長室にいた初老の男性。要するに株式会社ULの本部長(社長)である。
二人は移動して向かい合うようにソファに座ると、若い男が後ろに寄りかかりながら話を切り出す。
その態度は本部長を目の前にしても変わることなく、少し偉そうである。
「で、大方予想はついてるが話って何だ?」
「それならば話は早い。ある子供を預かってほしいのだ」
それに対し本部長は神妙な面持ちで提案を持ちかけた。
その姿勢は若い男とは違い、初老とは思えないほどにしっかりとしたものである。これではどちらが立場的に上なのかが分からない。
「『ある子供』って言うのは、静岡で都市伝説に憑かれて連続殺人を犯した奴だろ? さっきチラッと見てきたが、あれは『死ぬ気がある』ってよりは『生きる気がない』って感じだな」
「その通りだ。食事にも手をつけなければ、喋る事もしない。このままでは数日のうちに死んでしまうだろう」
言いながら片手で顔の反面を覆い溜息をつく。
「だろうな」
「だから、預かってほしいのだ」
その男は「ふむ」と考えるそぶりをしたがすぐに軽い口調で答えた。
「ま、いいだろう。実は前に弱りきった座敷童を保護したんだがな、丁度いいことに最近学園に住み着かせたところだ。今は家に他のはいないしな」
「そうか……ありがとう」
「ただまぁ……」
若い男は寄りかかるのをやめて真面目な顔になる。
「過度な期待はするなよ。確かに連れて帰りはするが、とりあえずやる事は飯とかの提供と事実を話してやるだけだ。その後あいつが生きるか死ぬかは本人次第。別に生かしてくれと頼まれたわけでもないければ、仕事でもないしな」
「ああ、それでいい」
若い男の話したことは冷たく感じるはずのものであったが、本部長は安心したようにそう言った。
「話はこれだけだな。じゃ、あいつを連れて帰らせてもらう」
「頼んだぞ」
「頼まれた。なにより友人の頼みだしな」
若い男は立ち上がり扉の方まで歩くと、立ち止まって本部長の方に振り返る。
「他人の心配も結構だが、自分の心配もしろよ。お前ももう若くは無い。体は丈夫でも気を付けるに越したことは無いぞ。特に病気とかな」
「大丈夫。これでも人の上に立つ身として、健康には十分に気を使っているつもりだ。それでも病気になったなら、その時はその時だろう」
「それもそうか。だが最低限、遺書くらい書いておくようにな」
「はっはっは、確かにそうかもしれないな。今度書いておくことにしよう」
縁起でもないことを言われたはずであるが、元気に笑って答える本部長。その姿はまだまだ病気にかかりそうもない。
「それがいい。じゃぁな」
「ああ、また会おう」
そうして、若い男は今度こそ部屋を出て行った。
平成16年6月25日7:18
「よう」
「……」
先程の男が、部屋の隅で髪の隙間から死んだ魚のような目を覗かせている男の子に近づく。
「今日からお前を預かることになったし、連れて行かせてもらう」
「……」
男の子は視線も口も動かさない。
若い男はそんなものお構いなしにと、子供を俵担ぎにしてその部屋を出て行った。
その際にも子供は何も抵抗することは無かった。ただただ……無表情で無口で無感情だった。
平成16年6月25日7:29
東京から新潟までを恐らく車で移動し辿り着いた一軒の家。外見は普通の二階建て一軒家である。
「今日から暫く、ここがお前の家だ」
「……」
相変わらず無言のまま、男の子は若い男に俵担ぎされている。
若い男はそれを気にすることも無く、そのまま家の中へと入っていった。
平成16年6月25日7:31
「ここがお前の部屋な」
「……」
そう言われて男の子が降ろされた部屋は、棚などはあるが中には何も入ってい無いスッキリしすぎで汚れやゴミすらも無い部屋だった。
「腹が減ったら下に来い。飯くらい準備してやる。トイレは来た道たどればあるから問題ないだろ。じゃぁな」
男の子の返答も待たずに若い男は部屋を出て行く。
その日、男の子が部屋から出ることは無かった。
翌日、若い男は男の子のいる部屋にいきなり入ってくると、男の子を見て手を口元へ持っていき感心したようにこう言った。
「うむ、全く動いてないな」
「……」
その言葉の通り、男の子は昨日降ろされた位置から全く動かずに座っている。
男の子の目は何処も見ておらず、虚ろだった。
「まぁいい。お前が生きようと生きなかろうと知ったことではないしな。それはお前の自由だ」
そんなことはお構いなしにと、ベットの上に腰を下ろした若い男は語り始めた。
「それと……お前が弟の死を無駄なものにするか、意味のある物にするかもお前の自由だだ」
「……!」
「弟」と言う単語に、男の子は初めて僅かながらの反応を見せた。反射と言っても良いかもしれない。
「お前の弟はお前を止めようとしたんだろ? そうしてお前は都市伝説から解放されて、こうして生きている。あのまま暴走してたらお前は確実に殺されてたしな」
「……」
重い空気の中、坦々と語る若い男。
「もちろんお前の弟に『兄を都市伝説から解放する』だの、『兄が殺されないようにする』だのと言う意図は無かっただろう。自分が死ぬつもりも無かっただろう。だが、それでも結果的に弟は死に、お前は弟の行為によって生きている。それは事実だ」
「……」
その口調は他人事のようで、いや……若い男にとっては本当に他人事なのだろう。
「つまりどういう事かと言えば……お前がこのまま生きる気がなく死んだなら、弟の死は意味のない、ただ自分勝手に死んだ非常に無駄な犬死行為へと成り下がるわけだ」
「……っ」
無機質な声が男の子へと刺さる。
しかし、
「……お前は兄としてそれでいいのか? お前が弟にとってどんな兄だったかは知らんが、少なくとも危険を冒してでも止めに来てくれるくらいには慕われていたのだろう?」
「……」
男の子に訊ねたその口調は今までとは打って変わっていた。
「まぁいい。色々言ったがどうあろうと結局はお前の命だ。捨てるか使うかは自分で決めるといい。それじゃーな」
言いたいことを言って、若い男はそのまま部屋を出て行く。
残された男の子は動かなかった。
ただ――
(俺は……)
――動かなかった心は確かに動き始めていた。
平成16年6月26日20:11
時間は経ち、若い男が1階リビングでノートパソコンを弄っていると階段を下りる音が聞こえてくる。
それはリビングの扉の前で止まると、ゆっくりとノブが回し中を覗いた。
「……」
「どうした」
「……」
視線を向けもせずに声だけをかけてパソコンを弄り続ける。男の子は下を向いていて何も喋らない。
「……ぁ」
少しして、男の子は顔を上げたがすぐに下を向いてしまう。
「……」
「……」
「……」
しばしの沈黙の後、男の子が再び顔を上げるとその目には決意のようなものが見て取れた。
「……あの」
「ん?」
「その……お、俺に……」
「……」
「俺に……戦い方を、教えてくれ――ください……」
「……いきなりどうしたんだ?」
若い男はパソコンを閉じて、男の子の方を向く。
「弟、のためにも……生きようと思って……」
「で?」
「それで……弟、みたいな人を出さないように、強く、なりたいと……思って」
男の子はそこで一呼吸置いて、
「だから、か、変わりたいんだ――です。お願い、します」
ぎこちなく、しかししっかりと頭を下げた。
「……」
「……」
「……」
数秒間の静寂が流れ、
「……ふむ」
男の口から言葉が発せられた。
「まぁいいか。覚悟もあるだろうし、お前自身の決断だ。断る気はない。それに保護者としてもそれは尊重すべきなのだろう」
「あ、ありがとう。ございます」
勢いよく頭を上げて男の子は若い男を見ようとした。が、今まで下げていた頭を勢いよく上げすぎたために、食事をしていなかった体はその場で立ちくらみを起こし座り込んでしまう。
それを見て若い男は溜息をついた。
「……とりあえずは飯だな。作ってやるから御粥でも食べてろ。話はそれからだ」
「……はい」
その日食べた御粥は、今まで食べたどの食べ物よりもおいしかったという。
食後、ソファに座る若い男と、床に座る男の子が向き合っている。その光景は見ようによっては男の子が説教されているようだ。
……もちろんそんなことはないのだが。
「で、強くなりたい、変わりたいってことだが……まずは簡単なところから変えていくか。強くなるのはもう少し体調が戻ってから地道にやってくしかないしな」
「はい」
先程よりも僅かに顔色の良くなった男の子が頷く。
「とりあえず伸びた髪を切るぞ。あと口調も変えるといい。例えば『俺』をやめて『僕』とかな。本当に変わりたいなら、小さい事でも変えていく事には意味がある」
「はい」
「後は……そうだな、色々とありすぎるがそれは徐々に変えていくことにしよう。今は人に慣れるついでに散髪に行くぞ」
「……はい」
躊躇いを見せたものの素直に返事をして、若い男に続き立ち上がる。
そのままリビングを出るかに思えたが、若い男が立ち止って振り返り、男の子を見下ろして言った。
「あぁ、そうだ。小学校にはいかなくていいから、中学生になったらに都学園中等部に通え。それまでに勉強も教えてやるから理解しておくように」
「はい」
こうして男の子の鍛錬と勉強と変化の日々が続いていく。
この先、男の子は様々な出会いや経験をし、幽霊や妖怪や超常現象や気など数々の知らなかった事を驚きとともに知っていく事になる。
それらは糧となり男の子の狭かった世界を広げ、明るく照らすことだろう。
生きることを決断した男の子の物語は今ここから、始まるのであった。
……ちなみに様々な経験の中で男の子が最も驚いたのは、若い男が一緒に中等部に通うことになったことだという。
番外話『出会いと始まり』終了。
……相変わらずこういった話を書くのは精神的に苦手です。
やっぱり暗い話よりは明るい方が書いてて精神が安定しますよね。
もちろん見るのは別ですが。
次回は最終回のその後の話を投稿したいですね。
とは言え何時になるのかさっぱりわかりませんが、
思いついたときに本当に少しずつ書いています。
本当に少しずつなので年内にはできないと思います。
期待しないで待っていただけるとありがたいです。
……それにしても、
久しぶりにこっちを書きましたがあっちより書きやすいような……気のせいかな。
それではまた会いましょう。