不滅少女旅譚~Revenant's Journey 作:鯖味噌煮込みうどん
恐らく不定期更新になります。
生暖かい目で見守ってくれると助かります。
暗い森の中、雨が降っていた。強い雨だ。こんな天気ではネズミ一匹見つけられやしないだろう。
「お腹空いた…」
耐え難い空腹感で私は自然とそう呟いていた。とはいえ、私は何も食べなくても死ぬことはないだろう。そういう種族なのだ。しかし、空腹感というのは辛いもので、今はとにかく何かを食べたいという気持ちでいっぱいだった。まあ、空腹感で身体が動かないから食べられるものを探すこともままならないのだが。
雨はいつになったら止むのだろうか。心の中で呟いて私は目を瞑った。
ブロロロロロ…ガタンッ!
雨上がりの森の小道を一台のヴィークル(※1)が進んでゆく。時おり木の根に乗り上げ、大きな音を立てて揺れている。
「なぁ、もうちょっと何とかならないのか?これ。」
ヒューマン(※2)の青年、ヴェルダがヴィークルを運転しているドワーフ(※3)の少女、フューシャに対して声をかける。
「えぇい!うるさいなぁ、集中出来ないから黙っててよ!」
フューシャはそう言ってヴェルダをきつく叱りつけた。その剣幕にヴェルダは肩を落とし、しょんぼりとした表情で外の景色を眺め始めた。
「まあまあ、フューシャ殿落ち着きなされ。ヴェルダを叱りつけても何にもなりませんよ。この私の美しさで心を鎮めなさい…」
エルフ(※4)の青年、ビルネが長いブロンドの髪をなびかせてなだめようとする。
「黙ってろこのバンブスタング(※4)!」
「ひどい!私にはビルネという立派な名前があるのに…」
フューシャの雷をくらい、ビルネもしょんぼりとしてヴェルダと共に外の景色を眺め始めた。
「ん、あそこに何かいるぞ。人っぽいのが倒れてる。フューシャちょっと近づいてくれ。」
ヴェルダは何かを見つけ
「あ、ホントだ…近づくって、もしかして助ける気じゃないでしょうね。」
「助けるに決まってるだろ。近づいてくれ。」
「ったく…しょうがないわね…でも道がないからヴィークルで近づくのは無理。ヴィークル止めるから助けるなら自分で行っておぶってくるなり何なりしなさい。あ、でも死体とかは持って帰ってこないでよ?レブナント(※5)にでもなられたら困るから。」
「ありがとう。」
フューシャはやれやれといった感じでヴィークルを止め、ヴェルダはヴィークルを降りて走って
雨水を吸ってぬかるんだ地面を何かが走ってくる音がして私は目を覚ました。音からして二足歩行の動物だろう。人間以外なら食ってしまおう、そう思ってそっちの方へ顔を向けた。
「おーい、生きてる?」
人間の男だった。背丈からしておそらくヒューマンだろう。私は言葉を発さずにじっと男を見つめた。
「生きてるよね…?」
私は頷くことができなかった。その代わりに、
「お腹空いた…」
そう言って助けを求めた。無駄だと分かっていたがもしかしたらという気持ちからだった。
「お、生きてるみたいだね。よかったよかった。お腹空いて動けないのか?」
私はこくりと頷いた。正直驚いた。どうやら私が何かが分かってないようだった。
「分かった。おぶるからしっかり捕まってろよ。」
男はそう言って私をおぶり、ヴィークルへと走った。
「お、ヴェルダ殿が帰ってきたようだ。」
「死体ではないようね。…ないよね?」
「二人とも!ご飯の用意をしてくれ!」
これが私の人生(?)を変えることになった彼らとの出逢いである。
(※1)四輪自動車の総称。一般的に3~4人乗り。彼らのヴィークルは4人乗り。
(※2)人間の一種。この世界で最も一般的な種族。
(※3)人間の一種。仲間意識が特に強く、他種族に対して排他的な者が多い。そして口が悪い。また、手先が器用で、工芸を得意としている。
(※4)人間の一種。自尊心が非常に高い。魔術に最も適性がある。バンブスタングはドワーフがエルフに対して使う蔑称で「物干し竿にしか使えないノッポ」という意味である。
(※5)生きているものが死んだ後、適切な処置を施されなかった場合になるアンデッド種族の一種。不老不死である。元が人間の場合こう呼ばれる。その特異な種属性から差別、迫害を受けている。虐げて呼ぶ場合オディアス(穢らわしいもの)と言われる。
作中の人物を強く虐げる表現はアンチ・ヘイトタグでいいのかしら…