不滅少女旅譚~Revenant's Journey 作:鯖味噌煮込みうどん
いやぁ、良かったです。
外はいつの間にか暗くなっていた。街長に宿の場所を聞いてその場所へ向かった。
「あんらぁ、旅人さんねぇ…ゆっくりしていきなさいなぁ…」
宿を経営している老婆が話しかけてきた。私たちはにっこりと会釈をし、部屋まで案内された。私はフューシャと同じ部屋だ。フューシャに誘われ、お風呂に入ることになった。
「さて、もうずっと風呂にも入ってないでしょうし私が洗ってあげるわよ。」
「あ、ありがとうございます…」
フューシャは小さな胸に小さな手を当て、私に任せなさいといった感じで胸を張る。私は今日買ってもらった服を脱ぎ、風呂場の扉を開ける。白い湯気が視界を覆った。湯気が晴れると浴槽が見えた。どうやらこの街には湯船につかる習慣があるらしい。久々のお風呂である私にとっては嬉しかった。
「げぇ、湯船かぁ…」
フューシャがそう言う。
「湯船嫌いなんですか?」
そう問いかける。
「足が届かないのよ…」
私は納得してしまった。するとフューシャはそれに勘づいたようで、
「何よ、ドワーフだから仕方ないでしょ。」
そう言って頬を膨らませて大股で風呂場へと足を進めた。
私は汚れた髪や身体をフューシャに手伝ってもらいながら一時間以上かけて洗った。
「背中のこれ…凄いわね…レブナントの紋章ってこうなってるんだ…」
フューシャが私の背中をなぞりながらそう言う。
「まあ背中ですから私は見たことありませんけどね。怖かったりはしないんですか?」
「もうリーヴのことは信じてるしそういうのはないわよ。でも…そうね、この紋章なら怖がられるのも頷けるわ。」
信じてる。さらっと言われたその言葉に嬉しくなって、私は今日三度目の涙を流しそうになった。
私はその後フューシャを膝の上に乗せて湯船に浸かった。足が届かないと言ってたフューシャもこれなら…と湯船に浸かることを了承してくれた。五分ほど浸かってるとそろそろ上がってくれとヴェルダとビルネが言ってきたので、もっと浸かりたかったのだがしょうがなく上がった。
「髪長いと旅で邪魔になるから私みたいに結うか切るかしたら?結うなら紐貸すし、切りたいのなら切ってあげるわよ。」
部屋について第一声がそれだった。確かにヴィークルで旅をするのに髪が長いのは向かないかもしれない。車内は蒸し暑いため、窓を開けて風を入れないと辛いのだが、風が入ると髪が靡いて大変だ。実際ビルネの髪がヴェルダの頬を何度もぶっていた。私の髪は汚れてゴワゴワだったこともあってあまり靡かなかったのだが…
「じゃあ切ってください。割とバッサリとお願いします。」
「任せなさい!」
私の髪がどんどん短くなっていく。背中の中ほどまであった髪は肩の辺りまでの短さになり、眉辺りで一文字になった前髪を作ってくれた。
「よし、こんなもんでしょう。」
こういう髪型のことをボブカットというらしい。かなりさっぱりした。
「ありがとうございます。凄くさっぱりしました。」
「似合ってるわよ、リーヴ。」
フューシャが笑顔を見せる。凄く可愛らしく普段のフューシャからは考えられない純真な笑顔だ。
「フューシャさんも可愛いですよ。」
「そ、そんなことないわよ!褒めても何も出ないわよ!」
フューシャはそっぽを向く。それでも耳が赤くなっていることはよく分かった。私はそれを見て顔をほころばせていた。
しばらくすると老婆が夕食ができたと私たちを呼びに来た。廊下でヴェルダとビルネに会うと髪を褒められた。心なしかフューシャが嬉しそうにしていた。
夕食はラム肉のスープとパンだった。私は老婆がいなくなったのを確認して手袋を外して料理を食べた。老婆の愛情がこもった温かい料理だった。私たちはすぐに食べ終え、部屋に戻った。
「リーヴ、この旅はどんな感じ?」
ランプのほのかな灯りの中、ベッドに横になったフューシャが私に問う。
「凄く楽しいです。それとみんなの気持ちが嬉しいです。レブナントである私のことを受け入れてくれますし…」
「もうレブナントだからとか気にしなくていいのよ。今のあなたはどこからどうみてもただのヒューマンよ。」
「それもみんなのおかげです。ほんと、何とお礼をすればいいのか…」
「お礼をするならヴェルダにしなさい。あいつがあなたを助けようとしなかったらここにあなたはいないんだから。」
確かにそうだ。ヴェルダがあのとき私を見捨てていれば私はここにはいなかったのだ。とはいえフューシャやビルネはどうしてヴェルダの提案を飲んだのだろうか。二人とも最初はレブナント助けることに批判的だったのに…それを聞いてみることにした。
「そういえば、どうしてヴェルダさんの言った私を助けることを許したんですか?レブナントなんて入れたくなかったでしょうに…」
「ああ、それはしょうがないのよ。あいつの
「そんな過去が…どういう風に助けられたんですか?」
「まあ、それはそのうち言うわよ。あんまり人に話したい話でもないし。」
「あ、ごめんなさい…でも、いつか聞きたいです。」
「うん、そうね。いつかね…」
ランプの灯りは弱々しく、フューシャの表情が全てわかるほどは照らしてくれなかった。だが、何となくフューシャの表情が暗くなったような気がして、それ以上話をすることをやめた。
日差しが東の窓から差し込む。その光に私は目を覚ました。フューシャはもう起きていた。
「おはよう、リーヴ。よく眠れた?」
「はい、眠れました。」
実際はあの話を聞いてしまったことを少し後悔してあまり眠れなかったのだがそう言った。
「そう、ならいいの。今日は街に出て食べ物を買い込んだりするわよ。」
フューシャがそう言ってその数秒後。
「すいませんねぇ…旅人さんはいらっしゃいますかぇ…?」
老婆が戸を叩き問いかける。
「はーい、いますよー。」
フューシャが答える。
「ちょっと出てきていただけますかねぇ…」
何となく不穏な物言いに怯えつつ私たちは戸を開け廊下に出る。戸を開けた音に気づいたヴェルダとビルネも廊下に出てきた。
「すいませんねぇ…そこのお嬢さん。手袋を外してはいただけませんかぃ…?」
私はその要望に血の気が引いていくのを感じた。
今回は専門用語がないので少し寂しい後書き。
本編では不穏な空気が流れています。
次回どうなってしまうのか…
そして前回の次回予告が嘘になってしまったァ!
ごめんなさい。本当にごめんなさい。
というわけで今回は次回予告しません。