蒼の彼方のフォーリズム ~dream fly~   作:ブーミリオン

1 / 7
FC

キンコーンカンコーン

 

俺は日直のため今日は早めに学校に来ている。

普段なら遅刻ぎりぎりのタイミングで来るのだからこの時間に来るのは少々つらい。

とは言っても日直を忘れて担任の罰を受ける方がもっとつらいので我慢する。

 

「失礼しまーす」

 

ノックと共に俺は職員室へと入る。

 

「おぉ潤、おはよう」

 

「おはようございます、各務先生」

 

挨拶をかわしあう俺たち。

各務葵、俺の担任であまり敵にしたくない人である。

 

「にしてもお前がこんなに早く来るなんてびっくりしたよ」

 

そう笑いながら告げる担任に俺は苦笑いを浮かべながら、

 

「来なかったら罰が怖いですからね」

 

と告げた。

そんな俺に先生はフッと笑う。

何を考えているのかよくわからない人だ。

 

「それはそうと今日から転校生が来るんだ」

 

「へぇ、転校生ですか。女の子ですか?」

 

男子高校生としてはごくごく普通の質問。

そんな質問に今度は先生が苦笑いして、

 

「あぁそうだ。かなり可愛いと思うぞ」

 

そう告げた。

まぁ可愛いと言っても色々な可愛いがあるから難しい。

顔なのか性格なのかはたまた両方か…

色々な考えが頭を駆け巡る。

 

「まぁその話は今は置いておこう。…それで今日はお前に頼みがあってな」

 

俺にとっては結構重要な話なんだけど…と言いたくなる衝動を抑えて俺は先生の顔を見る。

俺に頼み?

まぁた面倒くさいことか…?なんて思いながら先生の言葉を待つ。

 

「実はな今日来る転校生は飛び方を知らないんだ。だから指導員として彼女に指導してほしい」

 

「………嫌です」

 

俺は少し間を空けた後そう告げた。

 

「俺が飛ぶことを好んでないことは知ってるでしょ?なのに何で俺にそんなこと頼むんです?新手の嫌がらせですか?」

 

俺の言葉に先生は少し考える素振りを見せる。

そして30秒くらい考えた後、

 

「…わかった。すまないな。では違う人を探すことにするよ」

 

と告げた。

そんな先生に俺は非常に申し訳ない気持ちになる。

しかし嫌なものは嫌なのだ。

 

「すみません。でも今の俺では無理ですから」

 

俺はそう告げると職員室を後にした。

 

「今は……か」

 

という各務先生の言葉を聞くことをなく……

 

 

 

***

 

 

「よろしくおねがいしまーす」

 

先生の軽いホームルームの後、転校生が自己紹介を始めた。

名前は倉科明日香。

確かに先生の言うように可愛い。

が、どこか天然気味の可愛さだと俺は勝手に思ってしまった。

彼女の一つ一つの動作が俺をそうさせる。

 

「じゃあ席は…鳶沢の前な」

 

先生がそう告げると転校生…もとい倉科さんは席を探し首をかしげる。

まぁいきなり鳶沢の前と言われても分からないよな…

なんてことを思っていると、俺の前に座っている晶也が彼女に声をかける。

 

「倉科さん、そこそこ」

 

「あぁー!あなたは日向晶也さん!同じクラスなんですね」

 

「う、うん」

 

晶也は彼女の勢いに呑まれてそんな受け答えをしてしまう。

…って晶也は何で彼女のこと知っているんだ?

そう思った俺は前にいる晶也の背中を突き話しかける。

 

「晶也、あの子と知り合いなのか?…もう手を出すなんてさすがは晶也だ」

 

日向晶也。

去年もクラスメイトで俺の最も仲良くしている男子生徒。

…って言っても俺そんな友達多いわけじゃないから数少ない友達の1人って感じだ。

何かと気が合う。

考え方や感じ方が似ているんだと思うんだけど、どうしてだかよくわからない。

 

「そ、そんなんじゃないって。彼女…倉科さんとは朝ばったり会ったんだ。鍵を無くして困っててそれを俺が探すのを手伝って知り合っただけだよ」

 

「ふーん。なんか漫画の主人公みたいだな。…フラグはたったのか?」

 

「…怒るぞ?」

 

「はいはい、悪かったよ。…っと」

 

まだまだ話を続けたいところではあるが、晶也が各務先生に呼ばれたため晶也との会話を打ち切る。

…にしてもよく漫画でみかける展開だよなぁ。

 

 

 

***

 

 

 

「2人とも~、もう放課後なんだよ~。やっと今日が始まるんだ~。何しようか、何食べようか、無限の可能性が私を襲うよ~」

 

「はいはい、そうですね」

 

と、いつものやり取りをする俺。

そんな俺たちに首をかしげながら転校生の倉科さんが近づいてくる。

 

「何だか鳶沢さん朝とテンション違いすぎます」

 

まぁ無理もない。

俺だって最初見たときはびっくりしたんだから。

このテンションの違いはどう考えてもおかしいと思うんだけど…

 

「みさきは低血圧で朝は半分寝てるから。午前中と午後じゃ別人みたいなの」

 

「私は自分に正直に生きてるだけだよ~」

 

と説明した窓果がハッとなって倉科さんへと向き替える。

 

「あっ、私、青柳窓果」

 

「よろしくお願いします。…えーっとあなたは?」

 

と言って倉科さんが俺の方を向いてきた。

そういえばまだ自己紹介すんでなかったな、と思い俺は自己紹介を始める。

 

「俺は藤宮潤。学級委員を務めてるから、分からないことがあれば何でも聞いてくれ」

 

「あっ、私も学級委員だから分からないことあれば言ってね」

 

俺の自己紹介の後に窓果が付け足してそう加える。

 

「窓果さんに潤さんですね。よろしくお願いします!」

 

「こちらこそ」

 

と俺たちの自己紹介が終わると、

 

「倉科さん、この後時間があったらグラシュの練習をしようか」

 

晶也が倉科さんに話しかけた。

その言葉に俺は罰の悪い顔を浮かべる。

…そうか、各務先生は晶也に頼んだのか。

まぁ晶也は頼まれたら断れない性格だし仕方がないか。

 

「みさき先輩!」

 

と話を進めようとしていたところに声が響いた。

 

「真白?」

 

みさきがそう告げると、真白と呼ばれた少女はみさきに抱き着く。

有坂真白。

俺の隣の家に住む一つ下の女の子だ。

 

「今日は日直で朝一緒に登校できませんでしたから、帰りはたっぷりみさき先輩成分補給させてくださいね~」

 

「きょ、今日はちょっと…」

 

そう言い淀んでみさきは倉科さんを指さす。

 

「この子のグラシュの練習に付き合おうと思って」

 

「…わかりました。私も付き合います」

 

一度考える仕草をして有坂はすぐにそう答えた。

っとこのままだと俺も巻き込まれそうな雰囲気だな…

 

「じゃ、頑張ってくれ。初心者なら今日いきなりは無理かもしれないけど、何日か練習すれば飛べるようになるはずだから」

 

俺は倉科さんにそう告げ席を立つ。

 

「あっ、藤宮先輩…」

 

有坂が何かを言いたそうに俺を見る。

…何だ?

俺が有坂にどうした?と聞こうとするが、その前に晶也から声がかかる。

 

「潤、お前は手伝ってくれないのか?」

 

「悪いな。今日はちょっと用事があるんだ。それに…晶也なら何となくわかってくれるんじゃないか?」

 

「………」

 

俺の言葉に晶也は何も答えなかった。

つまりはそういうことだ。

なら話は早い。

それに用事があるっていうのは本当のことだし。

 

「じゃあな」

 

「藤宮先輩…」

 

心配そうに俺を見る有坂に答えず、俺は教室を後にした。

 

 

 

 

***

 

 

 

「あら、潤ちゃん」

 

「元気にしてる、ばあちゃん?」

 

そう俺の用事とは施設で暮らしてるばあちゃんに会いに来ることだ。

俺のばあちゃんは俺が1年前この地に引っ越してきた時からずっとここで生活をしている。

何でも足が悪くて一人では生活できないんだそうだ。

俺が1年前にここに引っ越してくるまでばあちゃんは1人で暮らしていたためこういう施設に入るしかなかったのだ。

俺が来たとき家に戻ってくると思っていたのだが、「潤ちゃんに迷惑はかけられない」と一緒に暮らすことを拒否されてしまったためこのような状態になっている。

俺はばあちゃんの世話を迷惑だなんて思わないのに…と思うが、ばあちゃんの行動は俺を思っての事なので文句を言うことはできない。

 

「足が悪い以外は元気かしらね。潤ちゃんはどう?学校は楽しい?」

 

「可もなく不可もないって感じかな。退屈ではないけど、特別楽しいってわけでもない…かな」

 

そう笑って答える俺にばあちゃんは顔をちょっと暗くする。

 

「あの娘が情けないばかりに…ごめんね」

 

「そんなことないよ。母さんは俺の誇りだ。確かに母さんがいなくて寂しい気持ちはあるけど、俺は母さんから大切なものをたくさんもらってるから」

 

「そうかい?私が自分で歩くことが出来れば潤ちゃんと一緒に暮らせて寂しい気持ちをさせずに済むんだけどねぇ…ごめんね」

 

「何言ってんだよ、ばあちゃん。俺はその気持ちだけでうれしいよ」

 

「そう言ってくれると助かるよ」

 

その後も色々な会話を俺たちは時間の許す限り話した。

 

「っとそろそろ時間か。俺はそろそろ帰るよ」

 

「寂しいけど仕方ないねぇ。有坂さんにはよくしてもらってるのかい?」

 

「うん。晩御飯はたいてい厄介になってるかな。俺は自分で作るって言ってるんだけど牡丹さんが一緒に食べたほうが楽しいからって」

 

「そうかいそうかい。あの子は昔からそういう少し強引なところがあるからねぇ。しっかりとお礼は言わないとだめだよ」

 

「分かってるって、それじゃあまた今度」

 

俺はばあちゃんにそう告げ部屋を後にした。

 

 

***

 

 

ピンポーン

施設から自宅へ帰り時間をつぶしているとチャイムが鳴る。

一体誰だろう?と思い玄関へ行くとそこには、

 

「先輩、お父さんが試作の感想聞きたいらしいです」

 

有坂がいた。

 

「試作!?それは行くしかないな。今すぐか?」

 

「はい。そのまま来てもらって大丈夫ですよ」

 

有坂の家ではうどん屋を営んでいる。

近所なんかでも割と有名な店だ。

俺はその店の新作担当になっているらしい。

なんでも俺がおすすめした商品の売り上げがいいことからそうなってしまったらしい。

ここでは一カ月に一回親父さんの考えた新作を試食することになっている。

俺の中で一カ月に一回のこの機会はとても楽しみにしている行事である。

そんなことを考えながら店へと入る。

どうやら今日は定休日だったらしく、掃除が丁寧にされていた。

 

「来たわね潤君。今日の試作品は過去最高に素晴らしいものを用意しているわ」

 

そう俺に話しかけてきたのは有坂牡丹さん。

彼女は有坂真白のお母さんで、俺の母さんの親友だったらしい。

…いつも思うけど母親には見えないんだよな。

どうみても20代…

 

「そうですか。それは楽しみです」

 

俺は考えていたことを頭の隅においやりそう答えた。

俺の選んだものが新作になるので俺も少しは真剣にならないといけない。

そういう意味もあってそう答えると親父さんが緊張した顔で試作品を持ってきた。

今回の試作品は3品か…

さて、どれどれ…

「…ごちそうさまでした。どれもおいしかったです」

 

「よかったわ。それで審査のほどはいかがかしら?」

 

牡丹さんも緊張しているのか、顔には緊張が見て取れる。

俺はふぅっと一つ息をつき、話し始める。

 

「先ほども言ったようにどれもおいしかったです。でも店で出すとしたら1品…それも改良したほうがいいと思います。まず――――」

 

俺はそれぞれの品に意見した。

若者が知ったような口をと言われるかもしれないが、これまでこれを続けてやってきているのだ。

今更どうこう言われるものではないため、俺の素直な気持ちをそのまま話した。

 

「――――とまぁ以上です。色々言いましたけど俺はどれもおいしくて好きです。それに親父さんが試行錯誤しているのをとても感じました。これからも新作楽しみにしてます」

 

俺がそう告げると親父さんはサムズアップして厨房へと入っていった。

きっと俺の言った意見をもとに改良を続けるのだろう。

がんばれ親父さん!と俺が心の中でエールを送っていると牡丹さんに話しかけられる。

 

「潤君はホント手厳しいわね~。今回は私も一緒に考えたんだけど…。でも潤君の意見はすごく参考になるから助かるわ」

 

牡丹さんは手を頬にあて、笑いながらそう告げた。

こんな仕草をされるとすこしドキッとしてしまう。

そんな気持ちを悟られないように俺は答える。

 

「いえいえ、牡丹さんたちにはお世話になってますから」

 

「それはお互いさまよ。…それに潤君さえ良ければうちに来てくれてもいいのよ?真白をもらってくれるとなおいいんだけど」

 

「ちょ、ちょっとお母さん!?」

 

牡丹さんのセリフに有坂が慌てふためく。

まぁいきなりそんなこと言われれば慌てるのも無理はない。

 

「それは嬉しいお誘いですけど、有坂に悪いです。彼女にはきっと俺以上に素晴らしい男性がいますよ」

 

「ッ……」

 

俺はそう告げ席を立つ。

有坂が少し落ち込んでいたような気がするが気のせいだろう。

 

「今日はありがとうございました。来月も楽しみにしてますね」

 

「えぇ。来月は潤君をグフッと言わせてあげるわ」

 

「そこはぎゃふんとじゃ…」

 

有坂のツッコミには誰も反応しなかった。

俺もそうツッコミたかったところだけど。

 

「それじゃあ俺は帰ります。おやすみなさい」

 

そう告げ俺は自宅へと帰った。

何か言いたそうに俺を見る有坂に気づくことなく…

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。