シャガルマガラを討伐して3日後、バルバレに泊まっているキャラバン『我らの団』。そこで派遣キルド受付嬢のソフィアはせっかくの休暇だというのに、浮かない顔をしていた。
「ハンターさんが爆睡中です」
私は趣味の一つである人形作りをしながらため息をついた。
団長のアイテムの謎が解け、新たな旅のスタートを切る前に故郷に帰ったりするのも必要だろうと5日間の休暇をとって、キャラバンの皆はいったんばらばらです。
キャラバンにいるのは私とハンターさんのみ。ハンターさんはポッケ村には帰るのが面倒くさいと言ってキャラバンに残りました。私はギルドの仕事や本とか読みたいので残りました。本当はハンターさんから色々とモンスターのこととかお話したかったのに、とほほ、残念です。
休暇2日目。ハンターさんは一日中寝ています。未知の古龍と言うこともあって、キャラバンに入って用意した防具じゃなくてポッケ村から取り寄せた武器防具でシャガルマガラと戦いました。本で読んだことのある金獅子の防具と、ハンターさんとずっと共に戦ってきた太刀の究極系。名前は、えっと……「天上天下天地無双刀」でしたっけ?そんな感じの名前でした。ハンターさんは『三天』って言ってました。加工屋のお兄さんも娘ちゃんも見たこと無い素材で出来ている刀だと言ってました。ますますハンターさんの謎が深まるばかりです。
そんなハンターさんの生態ですが、分かっている事があります。食べる事が大好きだということです。
ハンターさんにケチャワチャの狩猟クエストを紹介した際、モンスターの特長よりも『味』を聞かれました。食べたことも無いし、食べることすら考えていなかったので分からないと素直に言ったら『そうかぁ』と物凄く落ち込んでいました。
ハンターさんにとって味は一番の特徴らしく、モンスターの事を私が聞くとまず第一にウマいかマズいか教えてくれます。ポッケ村から一緒のオトモアイルーのジャックとキッチンアイルーのリュートがその度毎回鋭いツッコミを入れています。
「ポッケ村に行ってみたいなぁ」
ポツリと気がついたらそんなことを言ってました。ハンターさんの故郷ででっかいマカライト鉱石の原石があって、温泉もあります。ハンターさんの家ではキッチンアイルーたちがレストランをやっているようですし、加工屋は独自の製法でG級武器を一発生産できるようです。
……あれ?よく考えたら次の冒険場所はポッケ村が1番良いのではないでしょうか?
ハンターさんは故郷に帰れるし、加工屋のお兄さんはG級装備一発生産の技術を知ることができるかもしれません。ハンターさんのG級武器防具があるから加工屋の娘ちゃんも喜ぶこと間違いなし。
団長さんは……トレジャーハンターでもやってれば良いんですよ!
そうと決まればポッケ村に詳しい我らの
ハンターさんは頼もしい姿は地平線の彼方へと飛ばして、今はベットで捕獲されたババコンガみたいに寝ています。お腹丸出しでいびきをかきながら起きてません。ぽっこりのお腹じゃなくてバッキバキに腹筋割れていて少しセクシーなのがむかつきます。
ハンターさんは寝ると緊急時以外はちょっとやそっとじゃ起きません。以前音爆弾で起こしてみたらドスガレオスのように跳ね起きました。そしてナルガクルガのように怒り、クエストではイビルジョーの如く暴れたそうです。……おかげでゴア・マガラのクエスト失敗して行方不明になってた筆頭ランサーとルーキーさんが助かったのでよしとしましょう。「前門のゴア・マガラ後門の激昂ハンターだったっス」とルーキーさんが青ざめた顔で言ってました。
話が逸れました。それでハンターさんを起こす方法はご飯の匂いで起こすのが良いとアイルーたちから聞いています。それを実行しようと思います。
しかし私は料理は軽いランチくらいな物しか作れません。それでもアイルーのリュートがハンターさんの好きな焼肉のタレを教えてくれたので大丈夫です!これがあれば私にも勝機があります!
そんな風に思ってた時がありました。
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目が覚めると私は煙の中にいた。何を言っているが分からねぇと思うが私も何を言っているのか分からない。
おっと、名を名乗って無かったな。私は『我らの団』のハンターをやっているシュウだ。よろしく頼む。さて、『モンスターハンター』と呼ばれる私だか、今まで奇妙な体験をしたり、御伽噺に出てくるようなモンスターと出会ったりしたが、今現在起きていることは過去に経験したことの無い出来事だ。
シャガルマガラを討伐して団長殿が我々に休暇を与えて早2日。久々に死ぬ気の本気を出したので疲れて寝たいたのだが、何か焦げ臭いと思い起きたら、部屋が灰色の煙に包まれていた。
キッチンアイルーの失敗か?と思ったが、ユクモ村にいる馬鹿弟子のところに温泉旅行に行っているからそれは無い、それじぁあ犯人は。そこまで考えると聞き慣れた声がした。
「えっ、あれっ、どうしてこうなるの!?」
ソフィアか。
「やれやれだぜ」
「おい、人の部屋で何やってんだ」
「あっ、ハンターさんおはようごさいます!」
「のんきに挨拶してんじゃあねぇぜ。これじゃ軽く小火騒動だ」
「ええとッ、本日はお日柄も良く!!」
「落ち着け、いったい何をしたんだ」
わたわたとあわてるソフィアの手元を見ると暗黒物質と化したフライパンがあった。
ふむ、料理と言うより調合だな。しかも失敗して燃えないゴミとなっている。例えるならトラップツールとネットを失敗したあの残念な感じ。
「何やってんだ?」
本日二回目の問いにソフィアは恥ずかしそうに言った。
「リュートがハンターさんは美味しい匂いで起きるって言ってましたから」
うん、そうだ。それは認めよう。だかしかし。
「そう……。いのちの危機を感じで起きたんだけどな。まあ良い、ヤケドしてないだろうな。水で冷やしてウチケシ食えよ、それで治るから」
とりあえずうちわを両手持って鬼神化。乱舞をやって煙を一気に吐き出す。おおーじゃねえよ、てめえのせいだろう。はぁ、疲れた。私は太刀使いなんでね、双剣は妹の専門だ。それにハラヘッタモードに入ってしまった。さて、飯にしますか。
「飯は私がやるから、君はコーヒーを用意してくれ」
「はい!」
うれしそうに言いやがって、飯が食いたくて勝手に来たのかよ。飯と言っても軽いサンドイッチだがな。あと、フライパン弁償な。
氷結晶を敷き詰めた冷蔵庫からシナトマトとモスハム。それと大砲レタスを取り出し、ココットパンにマスタードとマヨネーズを塗って挟んでいく。一口サイズに包丁でカットして皿に盛り付ける。今日はデスクワークになるからガッツリ食わなくても大丈夫だろう。女の子のソフィアでも食べられる量だ。
「ほら、できたぜ。コーヒーはまだか」
「うええっ、なんで!?速くないですか?」
「調理場を制する者は狩り場を制すってな」
「なに格好つけてるですか?さっきまでぐーすか寝てたくせに」
「不法侵入した奴には飯はなくていいな」
「あっ、すいません本当に。だからご飯!!」
ったく、調子の良い奴。
「頂きます」
「……頂きます」
私はコーヒーを1口飲んでサンドイッチを口に入れる。大砲レタスのシャキシャキとした食感がたまらなく美味しい。たまには自分で作るのもいいな。
ソフィアはニコニコとサンドイッチを頬張っている。適当に作った奴だが、美味そうでなにより。悪い気はしないな。
さて、今日の予定はと考え始めたところで1匹の鷹が入ってきた。
「んぐ?何でしょう」
「むう、この鳥は」
右足には紙が巻いてある。解いてみると短く文章が書いていて、ギルドナイトの印が押してあった。
『巨大龍の進撃あり』
「なるほどね」
紙をくしゃくしゃに丸めてお湯を沸かしている囲炉裏に投げ込んだ。これで誰も見ることはできなくなった。
「どうかしたんですか?」
「ん、村からの安否確認」
鷹にモスハムを与えて放しながら言った。
「へぇ~、って、それです!」
コーヒーカップに手を伸ばした時に、突然ソフィアがバンッ!テーブルを叩いたもんだからコーヒーがはねて手の甲に当たった。
「熱ッ!!」
「それです!ポッケ村です!」
「はぁ?んだよもう」
「我らの団みんなでポッケ村行きましょう!」
「何でだよ、ドンドルマならわかるけど」
「これです!」
ソフィアが私に見せたのは『月刊・狩りに生きる』。それにポッケ村が載っていた。
ふむふむ、なになに?あれ、何で私の家が載ってるんだ?『モンスターハンターの料理番』?うわめんどくさい。
「え~……」
「いいですか、ハンターさん。村からの安否確認が来たと言うことは、1回帰ってこいと言っているようなものです!それにポッケ村に行くことは我らの団にとって得になります!」
「そうか?」
「加工屋のお兄さんにG級装備の技術を勉強するいい機会だし、加工屋の娘ちゃんはハンターさんの防具を見れるじゃ無いですか」
「まあ、そうだな。行商の爺さんには俺の素材を売って貰えばいいし、団長殿はトレジャーがある」
「さっすがハンターさん!その通りです!」
「ならば団長殿に聞いてみなければな、許可してくれるだろうか?」
「大丈夫ですって。さて、交渉交渉~」
「んじゃ頼んだ」
「エッ、私がですか?!」
当たり前だろ、武闘派なんだよ私は。