そしてまたランキングに入ってました。平均評価結構下がってたけどどういう基準で選ばれてるのだろうか?
それでは続きをどうぞ!
「――君、しっ――、お願――」
真っ暗な世界の中で、少しだけ声が聞こえた。
俺は何をしてたんだっけ?
そんな疑問が一瞬よぎるがすぐに消えてしまう。
何でかわからないけどすごくだるい、こんな状態で目を覚ます気になんて――
そう考えて再び意識を手放そうとした俺の頭に……
「しっかりしてや、フミ君!」
「――っ!」
ユメの声が響き、俺の意識がクリアになっていく。
体全身が痛いが目は開けれた。
しかし、俺は今ユメに支えられて移動しているようで、動きはとてもゆっくりだ。それに下を向いているので地面しか見えない。
俺は懸命に顔を上げ、辺りの状況を把握しようとすると、
「シホルはそのまま下がって!モグゾーあと少し、ホブゴブリンを引きつけて、ランタもう一匹来てる!できるだけ下がりながら戦うんだ!」
ハルヒロの受けた傷を治療しているマナトが目に入った。ハルヒロの傷はさっきとは違う右腕だった。
ということは俺が気絶してから少し経っている。戦っているのか?
しかし、マナトの表情を見るに戦局が悪いのは目に見えていた。だとすればこんな風にくたばっているわけにはいかない。
「ユメ……離してくれ」
「フミ君!よかったぁ、はやくマナト君に治して――」
俺はその言葉を聞きながらも、無理やりユメから離れた。おかげでようやく自分の状態が理解できる。
まず、左腕に全く力が入らない。見ると折れてはいないようだがこん棒の直撃をもらったのだ。まず使いものにならない。
それと、左半身が総じて痛い。下手すれば骨どころか内臓もやられてるかもしれない。
だが、左足は動く右半身は普通に機能できる。これなら……
そう思い視線をマナトの方ではなく、戦場に戻すと、状況は最悪だった。
まず、ホブゴブリンはなんとかモグゾーが引きつけてるようだ。しかし、ギリギリといったところだ。ランタは上級ゴブリン相手になんとか身を守っているが奥からもう一匹ゴブリンが来ている。
このままじゃまずい。まず勝つのは不可能だ。なら逃げるしかない。
地図があるから良い逃げ道はわかっているがそれでも少しは時間を稼がなきゃだめだ。
「フミ君、はよ、こっちに……」
「マナト、全員で逃げろ!時間を稼ぐ!他のやつらがいても邪魔だ!」
ユメの声を無視して、俺は叫んだ。やるしかない。足が生きてるなら、殺せはしないだろうけど足止めと離脱ぐらいならこの体でもできる。
「フミ君その体じゃ!」
「俺なら問題ない、走れ!」
「みんな逃げるぞ!こっちだ!」
マナトの決断は早かった。俺の力量を信じてくれての対応か。それともそれ以外の手はないと判断したのかはわからないがどちらにしろありがたかった。
マナトはハルヒロを担ぎながら動き始めるが、
「いやや!フミ君置いてなんて!」
ユメは納得言ってないようで、俺の手を掴み動こうとしない、
確かに普通に見れば俺が命をかけてみんなを逃がすように見えるだろう。
しかし、俺は構わずユメの手を払い、刀を抜き構える。
「ユメ、何度も言わせるな。邪魔だ!」
次はできるだけ追い払う気持ちを込めて、怒鳴りつけると、ユメは何も言わなくなってしまう。
「ユメ!行こう。フミヤ、本当に大丈夫なんだよな?」
「フミ君、絶対死んだりしちゃいややよ!」
「当たり前だ」
ハルヒロの声により、ようやくユメも逃げるために動き始める。
モグゾー、ランタとシホルは戦闘をやめて、すぐに逃げ出す。モグゾーとシホルは俺の方を心配そうに見るが気にすることなく、俺はゴブリン達を睨みつける。
みんなが少し離れたところで、ホブゴブリンが攻撃してくるが、俺は普通にそれを回避する。
もちろん力が強いだけあり地面が砕け、土煙が舞うが俺は気にせずその場から少し下がる。
「悪いな、俺に少しだけ付き合ってもらうぞ」
刀を向けながら強気に発言するが、状況はあんまりよろしくない。
左腕が使えなくなったことにより、近接スキルは大半使えなくなった。
それにこの状態で刀を振ってもいつもの半分の力も出てないだろう。
しかし、上級ゴブリンが何かしらの声を上げた後なぜか俺のことを無視して、後退していった。その方向はマナト達の逃げた方向とは逆である。
この状況でどうして後退を?そんな疑問が俺の中に過ぎるが、再びホブゴブリンの攻撃が襲ってきて俺は思考を切り替え、回避する。
「煌めく焔、猛追!」
そしてすぐにホブゴブリンの顔面に刀の先を向け、火の玉をを叩き込む。
「ギャア!」
しかし、そこを狙いすましたように普通のゴブリンが突っ込んで、持っている剣を振るうが何とか刀でいなす。
「しつこい!」
俺は痛む体を無視して、ゴブリンを蹴飛ばし距離を取りつつ
「真紅は落ちて、爆ぜては真紅に!」
手早く魔法を詠唱する。すると俺の周りには三つの炎弾が浮かぶ。
俺のもう一つ取得した新しい魔法『バーンストライク』である。熟練度が高ければ高いほど生成できる炎弾の数は増えるのだが今の俺には三つが限度だ。
さらに三つの炎弾をうまく扱える技量もない。だが、今は敵を倒すのが目的じゃない時間稼ぎができればいいのだ。
「行けっ!」
俺の指示で炎弾は飛んで行くが、狙いはゴブリン達じゃない。炎弾はゴブリン達の手前で着弾して爆発する。
辺りが土煙につつまれ、ゴブリンが一瞬見えなくなる。
俺はすぐさまその場から離脱して、視界の通る場所まで退却する。
これで少しは動きが鈍るだろうと考えたが、息つく暇もなく、ゴブリンが突っ込んでくる。この状況で突っ込んでくるのか!?
「ちっ!」
舌打ちしつつも俺は何度かゴブリンと斬り合い、何とかいなしつつ距離をとる。
「グオオオォォォ」
そして、ようやく視界が開けたのかホブゴブリンも大声を上げつつ突っ込んでくる。それに巻き込まれないためかゴブリンも俺から距離を取る。
それと同時に俺の視界にはさっきまでボウガンを使っていたゴブリンが剣を持ってこっちに走ってきているのが映った。
上級ゴブリンの事は気になるが、時間稼ぎはできたし、今こいつらは完全に俺のことを標的としている。これ以上は俺の身も危ない。
「ここまでだな」
俺は逃げる覚悟を決めて、ホブゴブリンの攻撃を刀で受けた。
もちろん俺にホブゴブリンの攻撃を受けるだけの力なんてない。でも、その力を利用することはいくらでもできる。むしろそれが魔戦士としての戦い方だ。
刀で攻撃を受けつつ、その衝撃をいなしつつ利用して大きく後ろに距離を取る回避スキル『
打水で大きく距離を取った俺はそのまま転進、ホブゴブリン達から逃げ出した。
さすがに日頃一人で活動しているのでこの怪我でもゴブリンどもに追いつかれることはない。
「はぁ……はぁ……」
かなりの距離を俺は走り続けた。まだダムローの中だがそれでも出口まであと少しだ。
そして、息を整えつつ振り向くと、そこにはもうゴブリンどもの姿はなかった。うまく撒けたようだ。
「ぐっ……」
そこで今までは集中して誤魔化していた体の痛みが襲ってくる。
俺はすぐに身を隠せそうな場所を見つけそこに腰を下ろす。
「光よ、ルミアリスの加護のもとに――
魔戦士が最初に覚える回復魔法で治療を試みる。しかし、回復力が少なく、あまり痛みは引かない。
「やっぱり駄目か。今までここまでの怪我負ったこともなかったしな。マナトに治してもらうしかない……」
多少楽になったがこのままここで悠々と治療を続けていてゴブリンに見つかっては元も子もない。
痛む体に俺は鞭を打ち、立ち上がりダムローから出る道へ歩き出した。
幸い、マナトの地図作りを見ていたので場所は把握できている。俺はそのまま問題なくダムロー旧市街から出れた。
しかし、マナト達がどこに行ったのかわからない。マナトがいれば俺を助けに行こうなんてバカなことは考えないと思うが、どこら辺にいるのやら……
「そんな状況じゃねぇぞ!」
ランタのうるさい声が聞こえた。まさかあいつの声の大きさがこんな形で役に立つとは……
俺はその方向に向けて、ゆっくり歩き出す。しかし、さっきのランタの声はいかにも焦っているようだった。何かあったのだろうか?いや、俺があの場に残った時点で普通の状況ではないか。本当に俺を助けにでも行こうとしているなら止めなければ――
そこまで考えたところで見えたのは俺が考えていたどの状態でもなかった。
マナトが倒れており、ハルヒロ達が何か揉めている。そのマナトの背中にはボウガンの矢が深々と刺さっており、神官服を血に染めていた……
「マナト!」
俺は自分の体のことなど忘れて走り出した。
「フミ君!どうしたら……」
「フミヤ!マナトが……マナトがぁ……」
ユメとハルヒロの言葉を聞きながらも俺はマナトに駆け寄る。なぜだ、どうしてこうなった!?
「回復魔法は!?」
「……もう使えないって」
シホルの言葉で俺は気が遠くなりそうになった。確かにマナトは完璧主義でよく魔法を使っていた。俺が気を失っていた時に何回も使っていたのだろう。
「……フミヤ、ごめんな。怪我してるのに治してやれなくて」
頭が真っ白になりかけたところで、横になっているマナトが俺を見ていた。
「バカが!こんなの治すぐらいなら自分の傷を治せ!」
必死な俺とは逆に、マナトはすごく穏やかな笑顔を浮かべていた。
やめろ、そんな顔しないでくれ。まだだ、まだどうにかなるはずだ……
「悪い……もうちょっとだけみんなのこと手伝ってやって」
その言葉に俺は驚いてしまう。マナトは予感していたのだろう。自分達のパーティーが安定して来てることで俺がもうこのパーティーの手伝いをやめようとしている事に、
「ふざけるな!俺なんかに頼むぐらいなら自分でどうにかしろ!」
しかし、その後のマナトの返事は聞けなかった。マナトの目はそのままゆっくりと閉じてしまう。
まずい!このままだとマナトが本当に死んでしまう。俺はすぐに解決策を考えるが――
応急処置をしようにも矢は深々と刺さっている。これを抜いてしまえば出血で死んでしまう。俺の魔法では自分しか治せない。今現状傷を塞ぐすべなはない、なら――
「モグゾー!今すぐマナトを担げ、オルタナの街に戻る!神官ギルドの人間ならまだ治せる!」
あくまで師匠から聞いた話だが上級の神官なら致命傷でも治せる魔法があると聞いたことがある俺はすぐに指示を飛ばした。
「う、うん!」
「全員急いでオルタナの街に――っ!」
そこまでいったところで俺は何か込み上げるものを感じて口を塞いだ。そこから何度かせき込んだところで手を見るとそこには真っ赤な血があった。
「フミヤ君それ……」
「気にするな!俺は大丈夫だそれよりも早くしろ!マナトを殺したいのか!」
シホルが心配してくれるが俺はそれを一喝でなかったことにして、みんなを急かせる。
――それからのことはあまり覚えていない。
時より血を吐きながらもボロボロの体で俺はハルヒロ達と走り続けた。距離は4キロ。普通に行けば一時間ぐらいで行き来できる距離だがどれほどの時間だったかはわからない。
その間俺達はマナトに声をかけ続けた。『しっかりしろ』『あと少しだ』などという言葉をかけ続け、マナトがまだ生きていることを願い続けていた。
オルタナの街に着いたころには俺はすでに走る力すら失っていた。それでも俺達は神官ギルドようやくたどり着く。
そこにいたのはいかにも厳格そうな年をとった神官であった。あの人ならそう思い声を出そうと思ったが声が出ない。それどころか立っているのもしんどい。俺は何も言えず、近くにある壁に体を預けるようにして立つ。
「お願いします!何でもします!マナトを俺たちの仲間をどうか!」
代わりにハルヒロが神官に頭を下げお願いした。神官はすぐにモグゾーを背負っているマナトに近づき、少しみたところで矢を抜き取った。
「寝かせてやれ」
「は、はい!」
言われるがままにモグゾーは近くにある台座にマナトを下ろす。そして、ゆっくりと少しだけ開いていたマナトの目を手を使って閉じさせた……
「マナトよ、なんたる愚か者ぞ。前途有為の若者があたら若い命を散らすとは何事ぞ!」
そう……言ったのだ。その事実に俺はその場に立ちつくした。
「なんで!どうして!」
ハルヒロはその言葉を信じられず激昂するが――
「……いくら神官といえども死した者を蘇らすことはできん」
「お前それでも――」
ランタも文句を言おうとしたができなかった。理由は神官がマナトの死を前に涙を流していたからだ。マナトの名前を知っていたということは以前からつながりがある人物だったのだろう。
「これは何かの間違いなんだ。確かに俺たちは油断していたかもしれない。今の俺たちなら何とかできるって思って戦ってダメで、でも何とか逃げ切れて今日も何とか凌げて、マナトが危なかったねって、反省してそれで……俺たちは前に進めるんだ!」
ハルヒロは神官の服にしがみつくが、モグゾーが掴んで神官から引き離す。
「丁重に葬ってやることだ。不死の王の呪いにより、この辺境では適切に埋葬されなければ数日で生きた屍に変わってしまう」
それは師匠から聞かされたことのある話だった。俺をギルドに入れたのは師匠の独断によるものだったので、もしそんなことがあれば責任を持って殺しに行ってやるとそう言われていた。
「そ、それってマナト君を燃やせってこと……?」
言われたことが信じられず、モグゾーが小さな声で尋ねると神官は頷いた。
「然様」
その言葉に耐えきれず、シホルはその場に崩れ落ちてしまう。
それに対して、ハルヒロはモグゾーの腕を払い、神官に近づき。
「それってお金かかるんですか?」
「……持ち合わせがなければわしが――」
「いいよ!……いいです。マナトは……俺たちの仲間だから」
神官を怒鳴りつけつつも、ハルヒロはそのままマナトの近くで膝を崩した。
そして、一瞬の静寂の後、シホルが大声で泣いた、そのシホルをユメが優しく抱きしめる。それがもう意識すら遠くなりつつある俺に止めを刺した。
――マナトが死んだ――
俺はその現実を受け止められないまま、頑張ってここまで繋ぎとめていた意識を手放すのであった……
前回と同じ終わり方ですいません……
色々いいたいことはありますがそれは次回に
感想などよろしくお願いします!