灰と幻想のグリムガル ―孤独な魔戦士―   作:雨宮海人

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というわけで今回からメリイが本格的に出てきます。

最近色々あって、モチベーションが下がっているので投稿ペースは落ちると思いますが、まだやめる気はないのでゆっくり見てくれたら幸いです。

それではどうぞ


第13話 新しい神官

次の日、俺は気合いを入れてハルヒロ達の宿舎まで来ていた。

 

昨日酒場でもめてたことなどを考えて、今のハルヒロ達はもしかしたら義勇兵をやめようとすら考えてるかもしれない。まずはその問題をどうにかしなければならない。

 

「よし!」

 

意気込んで宿舎に入ったところで、俺は意外な光景を目にした。

 

「あっ、フミヤおはよう。怪我もう大丈夫?」

 

なぜか全員が狩りに行く準備をしていたのだ。あまりに意外過ぎて俺はハルヒロの声に何も答えることができなかった。

 

でも、これは喜ばしいことなのかもしれない。マナトが死んだというのにハルヒロ達はまだ義勇兵であろうとしている。

 

しかし、俺も一応準備はしているのだが、今から狩りに行くのはいくらなんでも無謀である。その理由は神官の存在だ。マナトがいなくなったことにより、パーティーの怪我を治す人がいない。さすがにその状態で狩りに行かせるほど俺もバカではない。

 

「俺は大丈夫だ。それよりも行くのか?ゴブリン狩りに?」

 

「ああ、昨日キッカワにあって、ちょうど俺達のパーティーでも手伝ってくれる神官が見つかったんだ。……一応」

 

あり得ない。確かにキッカワはさりげなく先輩義勇兵のパーティーに入り、ハルヒロ達よりは間違いなく顔が広い、でも、ハルヒロ達のパーティーは間違いなく今いる義勇兵の中では底辺の部類だ。いくらフリーの神官でもわざわざ弱いパーティーの誘いに乗るとは考えにくい。

 

「ハルヒロ、その神官は大丈夫なのか?」

 

「……何とも言えない。でも、あのままじゃダメだって思ってランタやモグゾーと話し合って決めたんだ」

 

「なら、文句は言わない」

 

話し合いに、ユメやシホルが含まれていないのは気になったが今は何も言わないことにした。というよりもシホルは大丈夫なのだろうか?

 

そう思いシホルの方を見ると調子がよさそうにはとても見えない。でも、多少の荒療治をしなければシホルも前を向けないだろう。

 

俺は多少の無理をしてでもこのパーティーを戦えるものにしなければならない。それがマナトとした約束だ。

 

特別な会話は何一つなく、オルタナの街を出る門の所まで来た。どうやら新しい神官とはここで待ち合わせらしい。

 

さて、どんなやつなのだろうか。しかし、ハルヒロ達についてくれる神官なんて貴重だ。何が何でもこのままパーティーに入ってもらいたいものだが……

 

そこでみた人物に俺は言葉をなくした。

 

「ええと、というわけで神官のメリイさんです!」

 

ランタに紹介されていた女性は間違いなく、昨日酒場で俺の隣に座っていた女性だった。昨日と来ている服が違い神官服を着ているがそれでも感想は変わらない人間離れした美しさである。でも、今回は見とれているわけでなくまさかの再開で言葉が出なかった。

 

ついでに、ユメとシホルも呆気にとられているようである。理由はおそらく俺とは違い知らなかったのだろう。

 

そして、メリイに至っては紹介されているのにも関わらず顔色一つ変えず黙っているだけだった。

 

「ど、どうも……」

 

「初めまして……」

 

色々な事がありすぎて混乱している二人は戸惑いながらも挨拶だけはする。しかし、それを一切気にせずメリイは――

 

「これで全員?7人パーティーなんて珍しいわね」

 

話を進めようとする。間違いない、この口調俺に対して話した時と変わらない。そして、あの時はあまり気にしなかったが目つきが怖い。

 

「悪い、俺はこのパーティーを手伝ってるだけで、正式なメンバーじゃないんだ。メリイと同じって思ってもらっていい」

 

「そ、そうなんだ。フミヤはたまに手伝ってくれるヘルプみたいな感じだから、フミヤを抜いたメンバーで行動することもあると思う……」

 

ハルヒロは完全に腰が引けながらも俺のこと説明してくれる。

 

「そう、分け前をもらえれば何も言わないわ。どこに行くの?ダムロー?」

 

「そう……かな?」

 

「かな?はっきりして。というよりもこのパーティーのリーダーは誰なの?」

 

メリイ、その質問はまずい。でも、これはチャンスでもある。マナトを失った以上そういう役をやらなければならないやつがいる。

 

「ダムローの旧市街。ゴブリン狙いだ。ついでにリーダーはハルヒロだ」

 

「ちょっ!?」

 

いきなりの事にハルヒロは驚愕の顔でこちらを向くが俺は無視する。

 

「そう。わかったわ。じゃあ私はついていくから」

 

「あ、あのなぁ!もうちょっと言い方ってもんがあるんじゃねぇか?」

 

さすがにランタが文句を言う、というよりもよくここまで耐えていたなと思う、それともただメリイが怖かっただけか?

 

それに対してもメリイは完全に無視を決め込み、ただランタを睨みつけた。

 

「お、俺は気にしないけどな。あの、その、ごめん、なんでもないです」

 

やっぱり怖がっているだけだった。さすがランタだ。

 

「で、行かないの?なら帰らせてもらうけど」

 

そして、メリイの視線はリーダーになってしまったハルヒロに向く、当然であろう。

 

「い、いや……はははっ」

 

しかし、完全に押されてしまい、ハルヒロは乾いた笑みしか浮かべられない。

 

シホルとユメは違う方を見てため息をついたり、前髪を弄ったりしている。

 

やはり、すぐに元通りというわけにはいかないだろう。ただでさえ新しい神官が来ているのだろう。でもそんな事を気にしている暇はない。

 

先が思いやられるというのはこのことをいうのだろうけどそれでもどうにかしなければならない。

 

「メリイの言うとおりだ。さっさと行くぞ」

 

俺の声にみんながそれぞれ返事をして、ようやく動き出すのであった。

 

 

 

ダムロー旧市街に着いた俺たちは今まで通り、地図を頼りにゴブリンの出やすい場所で探索を行っていた。

 

基本まずはハルヒロのリーダーとして育てなければいけないと思った俺は問題点を洗い出すために、行動は全てハルヒロに一任した。

 

そして、前回のような不意打ちだけは受けないようにと俺は常に周りに気を配ることにした。

 

ハルヒロは現状マナトがいなければ3匹以上は危険と判断して、まず1、2匹で様子を見ようという考えらしい。別に悪い考えではないのだが、こういう時に限って小数のゴブリンは見つからず、時間はどんどん過ぎていき、もう昼近くになっていた。

 

ついでに今まで会話らしい会話は一つもない。七人もいて誰も喋らないのだ。俺も不意打ちの警戒をしているので、わざわざ喋る気にもなれない。

 

しかし、結果的にパーティーの空気はどんどん悪くなっていき、このままではまずいと考えたハルヒロは三匹の集団に仕掛けることにしたらしい。

 

まずはその作戦会議をするのだが……

 

「相手はちょっと大きい槍を持ったゴブリンとその手下と思われる小柄なやつ2匹だ。武装はそれぞれ短剣と斧。まずはユメとシホルで槍持ちに先制攻撃。俺とランタとユメとメリイで小柄な二匹を押さえて、その間にシホルとモグゾーで槍持ちを倒す。フミヤはいつも通りみんなのカバーで、槍ゴブリン倒せば楽勝だと思う」

 

 

ハルヒロが相手の戦力を見て、作戦を考える。悪くはないでも――

 

「待って」

 

「待ってくれ」

 

「えっ!?だ、だめだった?」

 

俺とメリイの声が同時に出て、ハルヒロは少し面をくらった表情になる。

 

「先にいいぞ、メリイ」

 

同時に話すわけにもいかないので、先にメリイに話すようにいうと

 

「……どうして、私がゴブリンと戦うことになってるのわけ?私は前に出ない神官だから当然でしょ?」

 

「おい――」

 

あまりに上からの物言いにランタはキレそうになるが

 

「メリイのいうことがもっともだ。神官は前に出るものじゃない」

 

俺はランタの言葉を遮るようにメリイの意見を尊重した。当たり前だ、むしろ今までがおかしかったのだ。なぜ神官が前衛を努めなければならない。最初から言ってればマナトも無茶をせずに済んだというのに。

 

「なっ、ふざけんじゃねえぞ。お前ら!」

 

「お前?」

 

結果的にキレたランタはメリイに睨みつけられる。

 

「お、お前じゃなくて、君?いやあり得ないだろ!メリイ!」

 

「さん、は?」

 

「メリイ……さん」

 

爆発寸前ながらも完全にメリイに押されてしまい、ランタは一瞬黙るが――

 

「あ、あのな!お前その錫状的なものはなんだ?それは殴るためのものだろ?まさか飾りなんて言うわけじゃないよな?」

 

「そう、これは飾り」

 

ランタの反撃にもメリイは常に冷静だ。そして標的はこちらに変わる。

 

「フミヤと同じかよ。くそっ!」

 

だが、その言葉は俺にとって都合がよかった。

 

「そのことだがな。昨日言いそびれたが俺は魔法使いじゃない。お前らは知らないと思うが魔戦士っていう前衛もこなせる職業だ。今まで隠してたが現状前衛が少なすぎるだから俺も前衛として戦うことにした」

 

「えっ、でも、フミヤは防具なんて付けてないじゃんかそれで、前衛なんて」

 

「魔戦士っていうのはそういうものなんだよ。だから小型のゴブリンのうち剣持ちは俺一人で相手する」

 

俺の突然の告白にみんなは呆然としている当然というえば当然だろうけど、今はそんなことで驚いてる場合じゃない。

 

「で、どうするんだハルヒロ?」

 

「え、えっと。じゃあフミヤにそこは任せて、メリイはシホルを守ってあげてくれないかな。それなら問題ないよね?」

 

相変わらずハルヒロは俺のいうことは信用してくれるようで俺が前衛をやることをすぐに承諾してくれる。

 

「まぁ、妥当なところね」

 

そして、ハルヒロの意見にも冷たい態度でしか答えないメリイ。ハルヒロもこれには大分ストレスがたまっているように見えるが、今は見なかったことにする。

 

メリイには何かしらの事情があるのは酒場の会話でわかっているがまだそこまで親しくもない相手にズカズカと聞くのは良くないだろう。

 

「はぁ、好きにしてくれ!」

 

「言われなくても好きにするわ」

 

「なっんだと!」

 

相変わらずメリイとランタの言い合いは続いたが、ランタが誰かに突っかかるのはいつもの事なので放置である。

 

その後、ゴブリン達がいるところに着いた俺たちはそれぞれの配置につき。

 

「ユメ、シホル、お願い」

 

ハルヒロの言葉に二人は返事もせず、無言でうなづくだけだ。二人からすればマナトがいなくなったのにすぐに新しい神官をハルヒロ達が連れてきたのだ納得などできるわけないだろう。

 

しかし、二人が槍ゴブリンに向かって目標を定めた。戦闘開始である。

 

シホルの影魔法は見事槍ゴブリンに命中して、動きを完璧に封じた。だが、そんな状態でもユメの矢はゴブリンに当たらず、明後日の方向に飛んで行ってしまう。

 

「……外れすぎ」

 

「ユメ!せめて動けない相手には弓を当てれるようにしろ!」

 

このままではユメは弓を持つ意味が本当になくなるので俺は、メリイが呟いたのとともにユメに怒声を浴びせる。

 

「……ごめんな」

 

ユメは悔しそうにぎゅっと弓を握りしめた。

 

「気にするな!」

 

ハルヒロはそう言うと、隠れていた場所から飛び出す。もちろん俺もすでに飛び出している。というよりももう目の前に短剣ゴブリンの目の前まで来ていた。

 

「えっ?」

 

ハルヒロがすっとんきょんな声を上げた時には俺はすでに鞘から刀を抜いていた。

 

――雷閃――

 

その刀は一瞬でゴブリンの首を刎ねた。こうしてゴブリンを殺すのは本当に久しぶりである。しかし、あまりの一瞬の事にゴブリンもハルヒロ達も固まってしまう。

 

「何してんだ!敵は目の前にいるだぞ!」

 

俺に言われてようやく全員が動き出す。モグゾーが槍ゴブリンに突っ込み、ランタとハルヒロが斧ゴブリンに突っ込む。

 

しかし、モグゾーはあまり戦うことのない槍が相手だからか少し苦戦を強いられる。そして問題なのはランタとハルヒロ、そしてそこに剣鉈を持って参戦したユメである。

 

ランタが前衛で立ち回るが、数回打ち合ったところで右足を少し切られてしまい、その場に膝を着いてしまう。

 

もちろんすぐにゴブリンは追撃を仕掛けてくるが、ハルヒロとユメでそれを守る。

 

「メリイ!ランタのこと治療してやって!」

 

すぐにハルヒロがメリイに対して指示を出すが……

 

「いや」

 

「はっ……、えっ!?」

 

メリイはすぐさまそれを拒否した。ハルヒロはそれに驚いてしまい動きを止めてメリイの方を見る。

 

「慌てて治す傷でもないでしょ。それぐらい我慢なさい」

 

「なっ、てめぇ!――いってぇ!」

 

「ランタ、お前は前衛だろ!それぐらいで止まるな!」

 

俺もメリイに合わせて声を荒げる。マナトは細かい傷でも治してたが俺からすれば戦闘終わるまで治療は基本できないものと考えていたのであれぐらいで動きを止められてたら前衛が務まるはずもない。

 

「フミヤ、てめぇも何言ってやがる!?」

 

そんな言い争いをしている間に、モグゾーの方は全然決定打を与えられず、ユメも全く攻撃できていない。シホルにも今までの集中力がなく、どのタイミングで魔法を打つか悩んでいるように見える。

 

ひどい……あまりにもひどすぎる。そんなハルヒロ達から今なら逃げれると判断したのかゴブリン達は離脱を試みる。

 

「……グダグダじゃない」

 

「ちっ!」

 

俺はメリイの言葉に気もかけず、手早く小太刀を抜き、まず斧ゴブリンの頭に投げつつ、逃げる槍ゴブリンを追いかけた。

 

小太刀は兜もつけてない斧ゴブリンの無防備な頭に刺さり、その場に倒れて動かなくなる。それを横目に見ながら俺は槍ゴブリンに急接近、槍ゴブリンもすぐさま反転して攻撃を試みるが、

 

「――鏡花」

 

槍を受け流しつつ、ゴブリンの手首を斬り落とす。それとともにゴブリンは槍を落としてしまう。

 

「ギャアア!」

 

ゴブリンはそれに対して痛みで叫び声を上げるが――

 

「黙ってろ――煌めく焔、猛追!」

 

左手をゴブリンの顔面に突きつけて、フレアボールを放った。威力は低いがゼロ距離で打てば命を奪うくらいの威力はある。そのまま顔面が爆発したゴブリンはその場に倒れる。

 

「な、なんだよこれ……」

 

一瞬でゴブリン二匹を片づけたことにハルヒロは、いや他のみんなも驚きが隠せていない様子だった。当たり前だろう。今までの俺がやっていたのはあくまでサポートのみ、そんなやつがこんなことをすれば誰だってびっくりする。

 

しかし、俺はそんなことよりも今の戦いに憤りを感じていた。

 

「モグゾー!お前はこのパーティーでは最大の攻撃力と防御力、文字通り要になる存在だ。こんなゴブリンにおくれをとるな!」

 

「う、うん。ごめん」

 

「次、シホル。モグゾーが苦戦してたんだ、すぐに援護の魔法を打たないでどうする。お前の役割はサポートだろう!」

 

「……ご、ごめんさい」

 

「最後にハルヒロ、お前は何をしてるんだ。会話するのはいいが、自分の思い通りにならなかっただけで動きを止めるな!結果的にユメ一人にゴブリンを押し付けただけだろ!」

 

「わ、悪い」

 

いきなり俺が怒鳴ったからか、みんなはそのまま沈黙してしまう。だが、こうでもしなければこいつらは変われない。俺は無視してゴブリンどもの戦利品を漁った。

 

やはり、マナトの抜けた穴がでかすぎる。現状、マナトがやっていた司令塔、盾役、回復役の三つをどうにかしなければならない。回復役はメリイだとして、盾役としてやはりランタには成長してもらわなければならない。そして司令塔としてはハルヒロに……

 

それだけじゃない仮にマナトの抜けた部分を埋めたとしてもそれでは足りない。個々のレベルアップも確実に必要になってくる。

 

課題の多さに俺は心の中で頭を抱えるのであった。

 




フミヤはゴブリン相手に普通に戦っちゃうとチートみたいなもんですよね……
フミヤが少し嫌な人間になってますが仕様です。
これから少しの間フミヤはこんな感じになると思いますが温かい目で見守ってやってください。

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