レンジ達との共闘から5日が過ぎようとしていた。
俺はこの五日間ギルドに通い詰め、いくつかのスキルを習得した。
今まで回避は己の身体能力のみで行っていたので回避系のスキルを一つ、そして、これからマナト達と行動することを考えて攻撃魔法を二つ習得した。最初から覚えていた攻撃魔法『フレア・ボール』にあわせて他の二つも炎系統にした。他のエレメンタルの熟練値がゼロなので覚えたところで使いものになるかが不安だったからだ。
しかし、やはりというべきか。結局、魔法の方は敵を足止めするなり、目くらましするぐらいの威力しかなく、決定打と言える物は手に入れれなかった。
「刀の筋は新人義勇兵にしてはかなりのものだけど、魔法に関しては並み程度ね」
師匠からも中々に辛辣なコメントをいただいた……どうやら魔戦士の中でも魔法の扱いはそこまでうまくないらしい。ただでさえ本職の魔法使いよりも劣るというのに魔戦士の中ですら劣ってたら話にならない……
それでも、パーティーで行動するのだ。敵を仕留める必要はないと俺は割り切ることにした。
技のバリエーションが増えることにより、よりうまく立ち回れるだろう。マナト達と再び狩りに行くのが楽しみだ……と思っていたのだが。
その日の夜、俺はシェリーの酒場でいつもの席で飲んでいると、意外な相手に会った。
「やぁ、フミヤ。ここで会うのは初めてだね」
「マナト……お前がこんなとこに来るなんてな」
相手はマナトだった。正直マナト達のパーティーで酒場に来るやつなんかいないと思っていたんだが……
「これでも結構飲むのが好きでね。ときどき来てるんだ。情報収拾に最適でもあるしね」
確かに、酒場には義勇兵が集まりやすいので情報収集にはもってこいだろう。
「仲直りはできたか?」
俺の質問にマナトは少し困った表情を浮かべる。まだできてないのか……
「ユメはまだマシなんだけど、やっぱりシホルがね。それとあの後からずっと稼ぎがないんだ。不安が伝播して余計にパーティーの空気が悪くなっちゃっててね」
なるほど、マナトはよくパーティーの事が見れているようだ。すでに稼ぎがなくなって5日、財政的にも厳しくなって来てるか。
「マナト、狩り場はまだ変えてないのか?」
「うん、相変わらず森にいってるよ」
さすがにこのまま放置というのは問題だろう。少し不安もあるが……
「ダムローってところ知ってるか?」
「うん、確か昔は大きな街だったけど今はゴブリンの住処になってるんだよね?」
「そうだ、新市街は強力なやつが多いから無理だが、旧市街ならただのゴブリンがほとんどだ。建物があるからそこを根城にして寝ている奴らもいる。遭遇率はかなり上がると思うから、注意は必要だが狩り場としては最適だと思う」
実際不意打ちできるゴブリンは森よりも多い印象があった。特に寝ているやつなら前回みたいにランタがバカをやらなければ問題ないだろう。
「……わかった。ダムローの話は何度か他の義勇兵からも聞いてたから行ってみるよ」
まだパーティーが仲直りできてないようだが、これ以上収穫ゼロだと色々とお問題になるだろう。それにマナト達にとっては初めての場所だ。ついていった方がいいだろう。
「俺も案内役として――」
「待って。それよりも僕から聞きたいことがあるんだけどいいかな?」
俺の言葉を遮り、マナトが話してきたことに少し驚いてしまうが……
「なんだ?」
マナトの表情が少し険しくなったので、俺も言葉をやめ聞くことにする。
「どうして、嘘をついてまで僕たちについてきてるんだい?」
その言葉に俺は目を見開いてしまう。一体どこで気付かれた?それともただのブラフか?
「魔戦士、って職業なんだろ?フミヤは」
「どうしてわかった?」
そこまでばれているなら隠す必要もないだろ、諦めて話すとしよう。
「いくらなんでもあの魔法だけで団章を手に入れられるなら僕らも苦労しないよ。それに聞いた話だと変わったギルドはいくつもあるって聞いてたしね。少し話を聞いたら大体わかったよ」
聞いた感じ、俺がフリーの義勇兵として活動しているという嘘はばれてないらしい。普通に考えてソロで活動してるなんて発想にまではさすがに至らないか。
しかし、思っていたよりも魔戦士ギルドってのは有名だったらしい。マナト情報収集能力が高いだけなのか?
「手厳しいな。これでもうまく魔法を使えるように努力してるんだけど」
「話を戻すよ。どうして僕たちに協力してくれるんだい?」
……どうして?と聞かれても俺自身答えはよくわかっていない。強いて言うなら。
「お前らを見過ごせるほど俺は悪人じゃなかったってところだと思う」
「……最初からわかってたけど優しいんだねフミヤは」
「そういうお前はどうなんだ?正直、あのパーティーで見るならお前は頭一つ抜けてる。他のパーティーでもやっていけるだろ?」
その質問にマナトは少し悲しそうな顔をする。なぜだろうか?
「なんていうかさ。俺、好きじゃないんだよ人に頭を下げるの。上下関係も苦手なんじゃないかな」
世渡り上手そうなマナトから出た言葉とは思えなかった。いや、記憶をなくす前のマナトがそうだったのだろうか?
時折自分も無意識に仲間を作ろうとしないことがある。それと同じと考えれば納得もできる。
「そうか。今のパーティーならどうなんだ?」
「楽しいよ。みんなが俺の仲間でいてくれる。でもたまに自分にそんな資格はないんじゃないかなって思う時はあるけどね」
マナトの何とも言えない表情に俺は何を言っていいか困ってしまう。
「……ダムローの件さ。明日みんなに提案してみるよ。でも、フミヤの手伝いは受けない。フミヤが前言った通り、仲直りしてから手伝ってほしいんだ。今みたいな状態で頼るのはよくない」
話題を逸らされたが、マナトのいうことはもっともだ。俺もマナト達を甘やかすために手伝うわけじゃない。
そう、こいつらがやっていけるまでにするのが俺のやりたいことだ。
「なら、任せる。くれぐれも油断するなよ。後、俺が手を抜いて手伝っていることは他言無用な。ランタ辺りに知られたら面倒でしかない。その代わりと言ったらなんだけど俺が手伝ってる時はガンガン頼ってくれ。期待に応えてみせる」
「わかったよ。それじゃあ、俺もう行くね」
「ああ、うまくいくことを願ってる」
「ありがと」
マナトはそう言うと、酒場を出ていった。まだまだ不安はあるがマナトがいればあいつらもうまくやれるだろう、そういう期待が持てるだけマシというものだろう。
俺はマナト達がうまくやれることを願いながらその日を終えた。
次の日の夜、俺は気になってしまいマナト達の宿舎まで来ていた。
昼はいつも通り、一人で活動したがダムローに行くのはまずいと思ったので気分を変えるためにオークを狩っていた。もちろん、細心の注意を払いながらの活動で、二匹以下ならやっていたのでそこまで効率は良くないが、結構稼げた。
「勝手に入っていいのか?まぁ、いいか」
少し悩んだが俺は宿舎の中に入る。誰かに今日の成果を聞ければそれでいいのだが、さてどこを探したものか。
俺はこの宿舎の構造を全く理解してない。わかる場所といえば中央の広場と玄関、そして風呂の場所だけだ……
「さて、どうしたものか……」
勝手に部屋をノックして別のやつらだったら大問題だし、明りのある方に人がいるか。
そう思い、明りのついている部屋を覗き込むと、そこにはちょうどシホルとユメがいた。
「よ――っ!?」
話しかけようと声を出しかけたところで、俺はすぐに壁に隠れた。理由はその場所が洗濯場で、現在進行形でシホルが自分の服などを洗っていたからだ。いや、服というか真っ白な下着だった。
今声をかけるのだけはまずい、マナト達の二の前になりかねない。
「ん?シホル。今だれかの声聞こえんかった?」
「えっ?私は……聞こえなかったかな」
ヤバイ、ユメは聞こえてたらしい。さすがに隠れてしまった以上言い訳は難しい。
俺は今まで培った技術でその場で息を殺す。
「気のせいやったか」
その声に俺は安堵して、その場を少し離れた。しかし、今日の成果を聞きたいのでシホル達の洗濯が終わるのを待つことにした。
離れた所に来たが、結局シホル達の楽しそうな話声が聞こえてくる。
そんな中で、聞いてはならないワードが聞こえてきてしまう。
「んー。この服ももうだめかもなぁ~」
「私も……」
「服に余裕ないと、寝る時着るものがなぁ~」
なるほど、稼ぎがあるから考えてなかったが、シホル達にとって服は貴重品になるのか。しかも、服は中々な値段がする。買う余裕なんて微塵もないだろう。
男どもはそれでもいいかもしれないが、女の子がそれはまずい、というか一瞬しか見てないが今はどんな格好してたっけ?
記憶を引き出そうとするが、どうしてもシホルが持っていた下着が頭をよぎる。最悪だこれではランタ以下の人間になってしまう……
「ダメだ、何も思いだせない」
結局思いだせず、ものすごい自己暗示に襲われていると……
「あれ、フミ君。どしたの?」
「うわぁ!?」
いきなりユメに声をかけられてしまい、俺はその場に飛び上がる。正直ゴブリンに不意打ちされた時よりも驚いた。
そちらの方を見ると、ユメがいてその後ろにシホルもいる。服装を見る限り前見た時よりも軽装である。というかシホルに至ってはワンピースみたいなのを着てるのだがその下はちゃんと穿いてるのかすらさっきの会話で不安になる。
「フミ君?」
「あ、ああ。ちょっと今日の成果聞いておきたくてな。ダムローに行ったんだろ?」
「行ったよー!それでな、ゴブちん倒せて、その子4シルバーも持ってたんよ!」
どうやら今までで最高の成果だったようで、ユメのテンションもかなり上がっているようだ。うまくいったらしい、それは喜ばしい限りだ。
ただ、軽装なせいで目のやり場にほんとに困る、特にシホルに対して……
しかも、シホルが俺に一切話しかけてこないのも気になる。
「シホル、男どもとは仲直りできそうか?」
「……まだちょっと」
シホルの性格から考えて難しいか。しかし、ユメがこんだけ喜ぶことがあっても仲直りできないとなると難しいか?
「でもな、パーティーの雰囲気元に戻ったてゆうかな。明るくなったんよ」
「……やっと稼げたからだと思います」
なるほど、不安は解消されたらしい、これならいいかもしれないな。
「ありがとう、話を聞けてよかった、ダムロー勧めたの俺だったから気になってたんだ」
「そうなんや、ありがとな。ユメたちのこと気にかけてくれてな」
俺が聞きたいことは聞けた、しかし俺の頭から服の問題が離れない。というか今の格好ですらランタ辺りにはあまり見せたくないものなのだが……
「気にするな。それとシホル、一つ聞きたいんだが男子どもの前でもその格好なのか?」
俺の言葉にシホルは自分の今の服装を確認すると、一気に顔を赤くした。
「えっ?……ち、違います!こんな格好……特にランタになんか見せたくない」
最後の方の言葉は聞かなかったことにしよう、もしかしたらシホルは少し黒いところがあるのかもしれない、というか性格上色々貯め込みそうだしな……
「たぶんこれから稼げるようになると思うから、まず服でも買ってくれ。さすがにその服装は扇情的すぎる……」
俺は目を逸らしたまま、話を進めているのでユメ達の事がよく見えないのだが
「なんやぁ、フミ君も男の子なんやなぁ~。確かにユメも服に困って今下着――」
「ま、待って!?それ以上ダメ!」
シホルが驚いた声を出しながら、ユメの口をふさいだ。一瞬視線がユメの短パンの方に行くがすぐに逸らす。
……聞かなかったことにしよう。そうしよう。シホルが止めにかかったということはそういうことなんだろうけど俺は知らない。
「ユメ、絶対に服買え、わかったな」
「了解したよ~」
相変わらずユメの声は軽い。ユメさん、もうちょっとあなたは女の子としての自覚を持った方がいいと思いますよ……
「フミヤくんも女の子をそのそういう目で……」
シホルも不安そうに尋ねてくる。あんまりこういうことを正直に言うのはよくないかもしれないが……
「ランタ程じゃないが、これでも一応男だからな……多少そういう目になる許してくれ」
「そ、そうですか……」
これ以上ここにいたら何を言われるかわかったものじゃない。去るべきだ色んな意味で
「じゃあ、今日は帰る。明日は手伝うつもりだから朝にでも話を通しといてくれ」
「うにゃー、わかったにゃー」
「……わかりました」
二人とも返事をしてくれる、というかユメさんやなんだいその可愛い返事は……
これからシホルにどんな反応をされるのかどうか不安でしかないが、ランタにあの恰好を見られるよりはマシか……
そう思いながらも嫌われた可能性を考えてしまい俺は肩を落とすのであった。
女の子が服が買えなくて少ないって大問題ですよね。
男はどうにでもなりますけど笑
というわけでマナトには少しばれました。まぁ、情報収集能力高そうですしね。
魔法についてですがテイルズの『ファイヤー・ボール』のものを使ってたのですがすでに原作でファイアーボールがあるらしいので勝手に名前をつけました笑
感想などあったらよろしくお願いします!