ーーー四年半前、突然三門市に
恐怖する人間達の前に謎の集団が忽然と現れ、たちまちのうちに怪物たちを撃退するとこう言った。
「こいつらのことは任せてほしい」
「我々はこの日のためにずっと備えてきた」
その集団は自らを界境防衛組織「ボーダー」と名のった。
たちまちのうちに防衛設備を整えた彼らの働きによって、依然として門から近界民が出現するにも関わらず、三門市の人々は普通の生活を続けているーーー。
パシンっと割と大きめな衝撃を頭に受けて、アタシは目を覚ました。机に伏せていた顔を上げると、血管を浮き立たせたゴツいゴリラ顔の男が見下ろしていた。
「いってー……暴力反対」
頭を押さえながらぶーたれると、センコーはため息を一つ吐いて口を開いた。
「こうでもせんとお前は起きんだろ」
「先生、コイツならグーでやっても構いませんよ」
隣の席から余計な口を挟んでくるのは、デキる男こと
……まぁ当たり前のことだけど。
「アタシのことよりさ、後ろにいるバカはどうなのよ?」
親指で後ろの席にいるヤツを指しながらアタシは物言いたげな眼差しでセンコーを睨んだ。すると、まるでお手上げだとでも言わんばかりに肩をすくめ、お前に任せたとジェスチャー。っておい、アンタ教師だろ。
アタシだけ起こされて後ろのバカが呑気に寝続けるのも癪だから、仕方なくブレザーの制服の袖をまくり拳を握る。
そして席に座ったまま後ろを向いてそのまま目の前にうつ伏せて寝ているやつの頭に拳骨を振り下ろす。
「ごふっ!? いってェな何すんだ!」
「起きろバカ、いい夢見れたかよ」
ボサボサの髪に野獣のような鋭い眼光、今はマスクで隠れているけど、ギザギザの歯という迫力満点な見た目にも動じることなくアタシはそいつを半目で睨む。
周りのクラスメートたちは怯えた様子でこっちを見てるけどなんてことはない。コイツとはガキの頃から一緒にいるからなんの恐怖も感じない。
コウとカゲ、そしてアタシの3人は同じ学校に通う同級生であり、いつも学校でつるんでる親友でもあり、そして同じ職場で働く同僚でもあった。
人口・28万人の都市、三門市では門が開き近界との特異点と化して以来、日常的に近界民からの侵略の脅威に晒されている。かつての大規模侵攻で壊滅的な被害を受けたものの、その後ボーダーの城下町として復興してきて、市民も比較的平穏に暮らしている。
ちなみにボーダーとは近界民の技術を独自に研究し、「こちら側」の世界を守るために設立された民間組織のことで、侵攻してくる近界民と戦うことを仕事とする。
その際、トリガーだとかトリオンだとか呼ばれるエネルギーを利用するんだけど、簡単に言うとトリガーの動力源である生体エネルギー。トリオン器官と呼ばれる見えない内臓で生成されている。
人は誰しも心臓の横に持っているけど、性能は人によって優劣があり、性能の優劣はトリガーの出力に直結する。
トリガーっていうのはまぁ武器みたいなものかな。
ある程度の確率で遺伝するけど、必ずしも親の能力が子供に引き継がれるわけではないらしい。
近界技術を支える重要なエネルギーでもあるため、トリオン兵(トリオンで作った兵器)を用いて奪い合っている。
そんな軍隊のような組織でも、構成員は意外と大人よりも中学生や高校生のような少年少女の方が割合的に多い。
なんでもトリオンの量が大人になるにつれて減って行くらしく、トリオン量の多い子供の方が戦う時に有利なんだって。はたから見れば子供を未知の敵と戦わせて大人は何やってんだって思うだろうけど、そんなことはない。
昔の時代の戦争みたく強制的に戦わせてるんじゃなくて、自ら志願して戦地に立ってる。正気じゃないよね(笑)。
でもその頃の年代になった人は分かると思うけど、割と誇りに思える仕事だと思う。だって、地球の平和を守る仕事だよ? 中高生ならきっとワクワクさせる要素満載じゃないかな。
もちろん命の危険だってある。敵は未知数だし、戦いなんて初めてだって子も当たり前にいる。だからこそ安全面はしっかりカバーされているんだけどね。
戦闘時にはトリオン体と呼ばれる仮想の肉体に変化して戦うんだけど、トリオン体だとまずダメージを受けても死なない。痛みも感じないし、腕がもげてもなんら変わらず動ける。けど傷口からは血の代わりにトリオンが漏れて、大きなダメージを受けて体内のトリオンが少なくなったり、頭にある「伝達系」や胸にある「トリオン供給器官」に攻撃を受けると、トリオン体も壊れて元の肉体に戻る。
とまぁボーダーの宣伝はここまでにしといて、兎にも角にもこんなアタシでもいちおーボーダーやってます。以後お見知り置きを。