偽悪になった少年 R   作:茶ゴス

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7th

【フェイト・テスタロッサ】

 

 

 少しヒビの入ったバルディッシュを眺め、昨夜の戦いを思い浮かべる。

 ジュエルシードを封印する際にあの子のデバイスと衝突してしまい、私の魔力とあの子の魔力、そしてジュエルシードに内包していた魔力によって私達のデバイスは少し破損した。

 

 もし、衝突寸前にジュエルシードの魔力が放出されていなければ破損は酷いことになっていただろう。

 その点は不幸中の幸いだけど……

 

 

「新しい敵」

 

 

 新たに出てきた2つの不確定要素。一人は間違いなくあの子の仲間だろう。温泉宿での戦いの際にいきなり現れて、一瞬でアルフを無力化。不意をついた私の攻撃も防がれ、やられてしまった。

 魔力を一切感じなかった。それにも関わらず私が全く見えないというのはいくらなんでも信じられない。恐らくはレアスキルの一種でも持っているのだろう。

 だけど、あの時のあの子の様子から察するに巻き込まれた一般人に近い存在かもしれない。

 

 戦えば間違いなく障害になるだろう。だけど負ける訳にはいかない。楽観的に考え、あの男の子が一般人であればもう戦うこともないと思う。だけど、もしジュエルシードの収集を目的としているのなら?

 正直勝てるかどうかがわからない。目にも止まらない速度で動いている相手にどうすればいいのか……いや、速度だけではない。あの男の子はバルディッシュの魔力刃を両手で挟む力で壊したのだ。

 素手で魔力刃に触って無事に済むだろうか……済まないだろう。

 

 あの男の子は今の私では到底倒すことなどは出来ないのかもしれない。初めて私の前に立ちふさがった壁。なんとしても超えなくてはいけない。

 

 

 まあその男の子のことは置いておいてだ。

 問題は昨日の影。靄のように存在し、白い仮面だけがある不気味な存在。バルディッシュの破損が軽度に済んだ原因、ジュエルシードの魔力放出……それを引き起こしたのだと思う。

 あの時ジュエルシードの側にいたのは影だけだ。不自然なまでに圧縮された魔力が空へと放出されたのは自然現象では無いだろう。

 

 だけど、わからない。あの影は何故あんな事をしたのだ?しかも放出を終えてからは忽然と姿を消した……

 

 もしかしたら魔力暴走による被害から街を守るためだったのかもしれない。となればあの影は魔法の存在を知らないことになるだろう。封時結界が貼られていたあの場所ならば街の破壊は起こりえない。

 もしくはあの子を守るため?いや、それならばあの時あの子はジュエルシードに突撃していないだろう。私も魔力刃を砕かれる寸前までその存在を認識できていなかったが、仲間であればあの子が驚いた素振りを見せるのはおかしい。

 

 おそらくは第3勢力。唯でさえ大変だというのに余計に大変になった。幸いなのはあの影やあの子は管理局と無関係であることか。もし関係しているのならば今頃この次元世界に数人の魔導師が来ているはずだ。

 

 

「ジュエルシード……集めきれるだろうか……」

 

 

 いや、集めるんだ。どんな障害があっても私が集めきる。それが母さんの望みなのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【アリサ・バニングス】

 

 温泉旅行から帰ってきてからなのはの様子がおかしい。何か考えこんでいる様子でため息ばっかり吐く。

 総司から奪ってきたハンカチを目の前に出せば瞬時に手に取るのはいつもどおりだけど、ため息を吐いているのはやっぱり変。

 

 総司に聞いてみてもなのはが変になっている理由は知らないようだし、寧ろなのはが総司のシャツを盗んでいるのを知ってしまったくらいだけど。

 すずかはなのはから話すのを待つと言っていた。総司と話した内容をすずかに話した時はすずかの瞳が濁ったのは私は見ないふりをした。

 

 

 

 

 

 

 総司のことでおかしくなるすずかを見ていて思い出すのはすずかと初めて出会った時の事……即ち誘拐された時のことだ。

 3年前、まだ私が小学校にも通っていなかった頃、すずかが誘拐された。その時に私も近くにいて一緒に連れてかれたのだ。木に登っている男の子が変で付き人に飲み物を買いに行かせている間、見ていたのが問題だったのだろう。

 

 車でよくわからない廃墟まで連れて行かれた時は泣きたくなっていた。

 そして隣に座っていたすずかが化け物と言われて、私はすずかよりも誘拐した奴らのほうが化け物に見え、恐怖でどうかしていた私はそう叫んだ。それに激昂した大人に銃を向けられて、私はもう終わりだと思った。

 

 

 だけど、その銃が溶けた。

 まるで泥のように男が持っていた銃が溶けたのだ。

 

 

 それから、大きな音がして総司が壁を壊して現れた。まあ、私が誘拐された原因である木に登っていた男の子というのが総司だったわけなのだが。木に登っていたから誘拐犯にばれなかった総司は、誘拐された私達を見て助けに来てくれたのだろう。

 

 

 あまり覚えてないけれど、総司が何かを呟くと犯人たちは皆縄で縛られて倒れていた。総司が言うには魔術というものらしく、詳しくは教えてくれなかった。

 

 それから男達の裏にいた人を総司が犯人たちから聞き出し、助けに来たすずかのお姉さんである忍さんが裏にいた人をどうにかしたらしいのだが詳しいことは知らない。

 その時に月村忍さんに記憶を消すか親交を結ぶかを聞かれた。当時の私は総司のことを忘れたくなかったのもあって、親交を結ぶことを決めた。

 

 まあ、総司が正体は内密にと言い放ち姿をくらましたので私とすずかは忍さんには総司の事を話さなかった。

 

 

 私が誰が来たのかは見なかったと告げると。それを聞いた男達の記憶を読み取った忍さんは男の子という情報を得て探そうとした。まあ、結局わからなかったらしいのだけれど。

 すずかのおかげで記憶を見られることも無かった為、総司の事は私から洩れることもなかった。

 思えばすずかはその時に総司を一目惚れしたのだと思う。見た目は悪くないし自分の危機に颯爽と現れた人を意識しないはずはない。私はそんなこと無いけど……

 

 

 で、小学校に入ってなのはと出会った時に総司と再会したわけだ。初対面のような身振りだったから私達も正体がバレたくないのだと思い、それに合わせて接したのだけど……

 

 昨日の話から察するに総司は私達の事を覚えていないようだ。正直腹がたったが、今はそれよりもなのはのことが大事なのだと自分に言い聞かせ我慢した。

 

 

 総司が協力してくれればなんとかなるとは思うけど、あの素直になれないというかならない困った奴を手伝わせるのは骨が折れる。

 なのはが話してくれるのを待つとは言ったけどやきもきはする。

 

 どうしようもない事にイライラするけど、今の私には何も出来ない。精々暴走しがちなすずかを止める事くらいだ。

 

 

 日に日にストレスが溜まっている気がする。あまり溜まるようだったら総司に手伝ってもらって発散しよう。

 

 

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