突然言い知れぬ大きな力を感じた。発生源は海、高町なのはの気配は地球外にしか感じない。恐らくはこの前翠屋に来ていたであろう女のいる場所にでもいるのだろうな。
あれは何らかの組織の一員である可能性は高い。詳細は不明だが、間違いなく高町なのはの行使する力、魔法とやらに関係しているのだろう。
あの組織に任せておけば高町なのはは成長できるとは思える。だが、それを抜いてもだ、今感じるこの力、これは容易くこの街を破壊する力を感じる。
「……少し、調子に乗り過ぎのようだな」
腰を上げて、首を鳴らす。ある程度の所業は目を瞑り、高町なのはの成長に繋がると見逃してきたが、流石にやりすぎだ。
愚かな悪よ、この街を破壊するというならば許しておけぬな。私の生まれた国へと目をつけ、害を及ぼした時点で貴様の運命は決まっていたが、よもや自身から滅びの時を早めようとするとはな。
覚悟しておけ。
自室から海へと移動する。一面穏やかな海、だが、間違いなく力の奔流は感じる。恐らくは隠しておるのだろうな。ならばその隠しているものを壊すまで。
力の境界線付近に手をかけ、破壊する。目の前の空間に穴が生じ、穏やかな海が荒れ果てた海へと変貌する。力が供給され続けているせいか直ぐに修復が始まる。修復される前に入り込み、力の奔流の中心へと視線を向ける。
感じる気配は二つ、金髪少女のものに犬女のものだけ。成る程、この力はジュエルシードのものだったか……仮面をつけて姿をぼやけさせる。嵐のように荒れる海は水しぶきが降りかかってくる。己に振りかかる海水を跳ね返すようにし、目標地点を見つめた。
飛ぶ手段はないわけではない。だが、如何せん目立ちすぎる。
できるだけ目立たずに動いたほうが愚かな悪が動くかもしれん。迂闊に目立った行動はできないな……
仕方ない。落ちる前に移動すればいい話か。
力の奔流の前に移動する。立ち昇るような水流が眼前に現れるが、この中に本体、ジュエルシードがあるのだろう。水流に手を突っ込みジュエルシードを右手で掴む。
それにより水流は力を失い消滅する。周囲を見ると残り5本の水流が立ち上っている。ただの石となったジュエルシードをポケットに入れ、落ちる前に次の水流の前に移動する。
そして右手で掴み取る。
またポケットに入れた所で金髪少女が斬りかかってきた。気配を感じていたので落ち着いて刃を砕く。
それにより金髪少女は距離を取って此方を睨んだ。
「くっ!……」
「ふん。邪魔をするな」
そう告げ、3本目の水流からジュエルシードを掴みとる。
犬が迫ってきたが、背後に移動し金髪少女の方へと蹴り飛ばし、4本目の水流から掴みとる。
5、6と続けて水流から掴みとった所で高町なのはの気配が一瞬でこちらに移動してきた。
既にジュエルシードの影響が消えた海はどんどんと明るくなり……
突然、雷が落ちてきた。
右手で払うように弾いて、発生源を探す。
随分と遠いところだな。だがしかし、見つけたぞ、恐らくは愚かな悪の攻撃なのだろう?先程の雷は。
ならば私のすることは一つ。
「ま、待って!!」
高町なのはが私に気付き声を上げるが、今は構っていられない。
さあ、惨めったらしい最後を貴様にくれてやろう、愚かな悪よ。
私は愚かな悪がいる場所へと移動した。
◇
「一体……どうして……総司君の匂いが……」
少女が呆然と消えた少年のいた場所を見る中、使い魔は自身の主人へと叫ぶ。
「逃げるよ!フェイト!」
「で、でもジュエルシードが……!」
主人である金髪の少女も消えた少年のいた場所へと視線を向けている。
そして、上空から放たれた二撃目の攻撃に気づくことが出来なかった。
「うぁぁぁぁぁぁ!!!!」
雷は金髪少女へと落ち、その少女の意識を飛ばす。
「フェイトちゃん!!」
「フェイト!!」
白い少女は気絶した金髪少女の元へと急ぐ。
使い魔も急いで主人の元へと駆けつけるが、近くに居た少年がそれを良としなかった。
「チェーンバインド!!」
「クッ!こんな物!!」
拘束魔法により動きを止められた使い魔は、魔力を込める。
自身の拘束を解くための力を溜めて一気に放出した。しかし、直ぐ様転移してきた黒衣の少年が拘束魔法をかける。
「ストラグル・バインド!」
ただの拘束魔法ではない、対象の魔法行使を抑制する拘束魔法。
それにより、無力化された使い魔は白い少女に抱きとめられた金髪少女の方を向き、叫んだ。
「フェイト!!!くそ!!離せ!!!」
いくら暴れても拘束が解けることはない。使い魔は無情にも近付いてくる黒衣の魔導師を睨みつけることしか出来なかった。