雷を放ってきた相手を目印に移動する。
高町なのは然り雷を放ってきた相手然りユーノ然り、この妙な力、ジュエルシードからも感じていた力、魔法の力を目印にそれぞれの居場所を確認する。
移動して着いた場所はジメジメとした建物の中だった。雷を放ってきた相手はこの先にいる。他の確認した力を持った者達は地球にはいずに、他の場所に固まって存在している。
さて、状況は把握した。愚者を力を持って叩き潰すのは容易ではあるが、それでは収まりがつかぬ。
愚者にとっての望みを潰していくとしよう。
姿を消し、愚者の近くに移動する。そこにいたのは一人の人間とカプセルに浮かんだ少女だった。
愚者は気付いては居ないようだな。雷を放ってきたのはあの女か。随分と顔色が良くないな、もしや無理をする自分に酔いしれている狂人なのか?
つまりそれは疲労感が達成感へと繋がっている。なれば健康体にしてやればその望みは潰える。更に体力も増やしておいてやろう。簡単に疲労感を味わうことが出来ぬぞ?
「……?」
む、急に周囲を見渡しだした。
流石に体調が急激に変化してしまえばおかしいとは思うか。
まあよい、愚者の考えは……娘の蘇生?成る程、随分と長い間娘、カプセルに浮かぶ少女を蘇生するために行動していたようだな。その努力、潰してやるとしよう。
貴様が長年かけた時間が無駄になる。努力をしていて一番屈辱に感じるのは自身の努力の目的を他人に容易く達成されることだ。
娘を蘇生させる。
突然咳き込み、動き出した娘に愚者は驚愕の表情を浮かべ、娘の近くに駆け寄る。
『よく聞け』
「だれ!?」
姿を消したまま愚者の頭へと語りかける。今の愚者ではあまり望みを読み取ることは出来ぬ。思考が驚愕に埋め尽くされてしまっている。
『お前の娘が生き返り貴様はこれからどうしたいのだ?』
「な、なにを……」
人間とは面白い生き物でな。言葉にして投げかけられるとその言葉に対して思考する。
それを読み取ればよい。
ふむ、管理局から逃亡し娘と暮らしたいか……
では潰すとしよう。管理局からの逃亡を出来なくすれば取り敢えずは良さそうだな。
何?
……成る程、この愚者、愚かであれ悪ではなく、またこやつも愚かな悪に踊らされた者にすぎなかったのか……
いいだろう、とことん愚かな悪を追い詰めてやるとしよう。
管理局、それが全ての元凶というわけか。皮肉なものだな、英雄が育つであろう環境に愚かな悪が存在しているなど……
本当に……つまらぬな。
息を吐き思考する。どうすれば管理局に近付ける?簡単だ。管理局の者に接触すれば良い。生憎と接触したのは2人だけ……一個団体に接触するだけならば容易だが、其れ以上は厳しい。
保険としてもう少し接触しておきたいが……
◇
決定した。
愚者を眠らせ、娘ともども移動させておく。
さて、では始めるとしよう。このままの姿で相対しても構わぬが……ここは正体を隠しておくとしようか。いざとなった時に悪である存在が己の身近にいた知れば、高町なのはは絶望の表情を浮かべるであろう。
変身魔術により己の外見を変貌させていく。そうだな、模する全能の神で良いか。本来であれば皮膚が必要ではある変身魔術であるが、その過程は無視させてもらおう。
自身の手が色白く変貌したのが解った。どうやら成功しているようだな……声帯には変化はないが。問題はあるまい。後残るべき処理は……体臭を消すことか。高町なのははああ見えて鼻が利く。もしかすれば折角隠した正体を見破られるやも知れん……
「匂いは一時的に消える」
効果はこの変身魔術が継続している間。本来の私の匂いまで消してしまえば高町なのはに何かを気取られるやも知れん……
後は、右手を使うことが出来ないと頭に入れておかねばな……
準備はできた……私は高町なのはの気配の近くに移動する。
随分と頑丈そうな通路だな。
近くを通りがかった男を操る。成る程、ここは船なのか、随分と大きいな。
さて、なにか使えるような魔法は……ふむ、サーチャーというものが良さそうだな。
男に指示を出しておきサーチャー諸共移動する。
玉座を出現させそこに座りサーチャーの映像を船全体に表示させる。
む……こちらからは見えぬのか…不便だな。だが、気配の動き的に…
「見えておるようだな」
『ええ……』
む、声は聞こえるのか。其れは上々
さて、私の目的は二つ。愚者の望みを潰すことと管理局への接触。その二つを行うには簡単な事がある。
「ならよい。恐らくは気になっているであろう、この現状についてだが…」
『母さんをどうした!!』
気配の感じ方からして金髪少女の声か。なれば母さんというのは愚者のこと……利用させてもらう他無いな。
「ああ、あの女か、愚問だな。処分したに決まっておろう」
『しょ、処分?』
「ああ。少女よ、何故あの女がジュエルシードなる物を集めていたか知っているか?」
『し、知らない……』
「実の娘を生き返らせるためだ。私には蘇生の手段があってな。ジュエルシードを献上する代わりに娘を生きかえらせるよう私に頼んできたのだ」
全くの虚言。だがこれにより奴らにとっての私の立ち位置が定まっていく。
「まあ、このような下らぬ物を寄越してきたからどちらも処分したがな。とまあ、このへんで私の素性を話してもよいが、簡単に言えば黒幕というわけだ」
ポケットからジュエルシードだったもの、既になんの力も持っていない物を取り出し、砕く。
そう、私の目的を達成するには黒幕となるのが手っ取り早い。愚かな悪、管理局は今回のことは干渉はしていない。故に簡単に信じるだろう。
『お、お前ぇぇっっ!!!』
金髪少女が吠えたか。よい。もっと怒るがよい。それにより私を悪とみなすがよい。
それが次に繋がる。
後は……
「一体、貴方は……」
「私が何者であろうと関係あるまい。管理局の魔導師達よ、私はこの時の庭園にて待ち構える。もし来なければ……」
「………来なければ」
「幾つかの次元世界は滅びることに成るであろう」
サーチャーを壊し息を吐く。
さて、布石は敷き終えた。後はあやつが来るのを待つばかり。高町なのはの可能性、十二分に見させてもらおう……
そして、これで愚者の望みであった"逃亡生活"を行う事は無くなったであろう。罪に問われても私が存在することで愚者よりも私を捕縛しようと動くはず。
それにより管理局が向こうから私に接触してくるだろう。さらに高町なのはの実力を測れる。
まさに一石三鳥、一つの悪事で私の目的を3つも達成できるとなるな。これも私が成長している証拠か。
「クハハ」
疾く来るがよい。まあ、来ないのであれば移動させるだけだがな。