少女と少年の出会いは突然であった。
それは偶然なのかもしれない。必然なのかもしれない。
いずれにせよ、出会ったことに変わりはなかったのだ。
最初は図書館だった。足が動かぬ少女へ高い位置に存在している本を渡すという親切な行動を少年が行った。
次は病院へ向かう道だった。車椅子の車輪が溝に嵌ってしまったのを助けてくれた。
故に再度図書館であった時、少女にとって彼は自分が知る存在であり、少年にとっては日課の一つに過ぎなかった行為は忘却の彼方へ忘れ去られた為、彼女は己の知らない存在であった。
そのままではいつまでも繋がることのなかった点と点。それはある少女によって繋がりを持つ。
「これ、ですか?」
きっかけは車椅子に乗った少女がまた高い所にあった本へと手を伸ばしていたことだった。
その日、月村すずかは何かを感じ、図書館へとやってきたのだが、彼女の期待していた人物は現れず、少し落胆していた。そんな折にたまに図書館で見かける車椅子の少女が困っている所に遭遇したことだった。
助けられるならばと少女の手の先にある本を取り、彼女へと渡したすずかに車椅子の少女、八神はやては笑みを浮かべた。
「はい。ありがとうございます」
少し関西の鉛が入った口調。明るい性格の車椅子の少女と月村すずかはそれをきっかけにお互いのことを話し合った。
「そっか、同い年なんだ」
「うん、ここで時々見かけてたんよ。。同い年くらいの子やって」
「実は私も」
海鳴市の図書館を利用する小学生程度の子は少ない。
だからこそお互いに見たことがあると知ると、親近感と少しおかしい感じがし、二人は笑みを零した。
「実を言うと同い年くらいの子はすずかちゃん以外にも見てるんよね」
「そうなんだ。私も同じ学校の子が偶に来ているのを見るよ」
「へー。それって黒い髪で少し灰色っぽい目をした男の子?」
「うん。はやてちゃんも見たことがあるんだね」
二人の認識は交差する。一人の少年、高町総司へと。一人は恋心のような感情から。一人は感謝を感じる心から。
「前に今日のすずかちゃんみたいに高い所の本をとってもろたんよ」
「ふふ、総司君らしいね」
「総司って言うんや」
「そうだよ。それで総司君は黙ってどこか行っちゃったでしょ?」
「そうなんよね」
彼女達にとっての高町総司という少年はある意味で実在する高町総司とずれた存在なのかもしれない。それは彼女達にとっての高町総司が存在しているに他ならないのだ。
彼女達にとって高町総司とは変わっていながらも人を助けてくれる善人なのだ。本人にとっての認識と少しだけずれはあるが、少女たちにとってそれは関係のないことであった。
「総司君って色んな人を助けてるけど、いつも満足していなくなっちゃうんだ」
「不思議な子やね」
「はやてちゃんも総司君に助けられたんだって思うと少し不思議な気分」
「すずかちゃんも助けられたんやね」
「うん」
二人はより親密となり、お互いの話題の共通点である高町総司に話を収束させていく。やれ彼は格好いいだの、やれ彼は聡明なのだと。
本人のあずかり知らぬ所でどんどんと話は飛躍されていった……
◇
何故だ、何故なのだ。
目の前に佇むのは高町なのは。竹刀を構えた彼女を見据え思わずため息を吐いてしまう。
まず構えからしてダメである。隙だらけであり、見よう見まねでしていることは分かるであろう正眼の構え……
話になっていない。感じる力量は高町美由希の方が高く、高町恭也と比べると雲泥の差とも言える。何故高町なのはは剣を習い始めたのだと疑問に思うほどである。
いや、英雄として強くなるのであれば構わないのだが、高町なのはは剣の才能が驚くほどに皆無なのだ。本当に高町士郎の娘であるか疑う程には才能に恵まれていない。まだ義理の息子や娘である高町恭也と高町美由希の方が才能があると言える。
何故こやつは剣を学びだしたのだ……度々高町恭也の神速を見ているが……修行でもしているつもりなのか?
それならば問題はないのだが……釈然とせんな。少しばかりストレスが溜まっていくぞ……
彼女が接近し、振り上げからの振り下ろしでの攻撃を半歩ずれることで躱す。
地面にバシッと音が鳴ったと同時に私の竹刀が彼女の腹部にあたるすれすれの場所に位置しているのだ。
私が何も特別なことをしていなくともこれだ。それだけ彼女に才能がないのがわかる。
となるのであればそれなりに近接戦もこなして欲しいのだがな……張り合いがないと詰まらぬぞ。
と言ってもこやつの場合近接戦よりも魔法による遠距離戦に長けているのだ。ここで嘆いていても仕方あるまい。
と言うよりも寧ろ近接戦は金髪少女Bに任せて遠距離戦闘の練度を向上させる方が成長出来るとおもうのだが……