偽悪になった少年 R   作:茶ゴス

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A's 2nd

 秋も終わり、肌寒く感じる空気の中に私は佇む。寒さのせいだろうか、公園には誰もいない。冬になってからというもの、外を出歩く人は少なく、私は悪行の頻度が少なくなってしまっている。

 良くない傾向だと感じるがこればっかりはどうしようもない。能力を使えば人を操ることなど容易いが悪事を行うために能力を使うというのは些か間違っていると思う。悪事自体で使うのは問題ない。きっかけを作ってはいけないのだ。そんな一人芝居は御免なのだから。

 

 取り敢えず、木に登って遊んでいる子猫の邪魔でもするとしよう。最近動物を対象にすることが多くて張り合いがないのが不満だが、悪行をしないという選択肢は存在しないのでな。恨むならば私の目の前に存在していたことを恨むが良い。

 

 子猫のいる枝に跳び乗り首根っこを掴む。ふ、恐怖心を感じているのだろう。身体を動かさずにこちらをみて鳴き声を上げているわ。地面に降り、子猫を離した。ふ、流石は猫というべきか。私の手から落ちても無事に着地するとはな。だが邪魔されて憤慨したのだろう。子猫は一目散に逃げていった。

 

 さて、取り敢えずは悪行を行うことは出来たのだが……

 

 

「いつまで私を見ているつもりだ?」

 

 

 公園の入口付近で隠れている者へと告げる。

 何やら私に視線を向けてきているのはわかっていた。真意は理解できぬが、私の悪行に正義感が働いたのかも知れんな。向かってくるならば喜ばしいものだ。叩き潰してくれる。

 

 

「いやあ、やっぱりいい奴やなぁって思ってただけよ」

 

 

 そして現れたのは車椅子に乗った少女。ふむ……後方57mにこの少女を見守っている存在が1人いるといったところか。

 さて、一体目の前の少女は何のために私に接近してきたのか。何かしらの思惑はあるのだろう。一人でいると見せかけて私を油断させた所で攻撃するとか……

 

 望むところだ。どんな行動も私を害するというのであれば尽くを持って粉砕してやろう。

 

 

「自己紹介はまだやったよね?私は八神はやてって言います」

 

「ふん。初対面の人間にいきなり名を名乗るとは、些か不用心だな」

 

 

 そう告げると少女の顔がピキリと固まった。

 ふむ、図星をつかれて少し苛ついたといったところか。いいぞ、怒れ怒れ。冷静でない相手ほど御しやすいのだ。貴様は既に私の術中に嵌っているのだよ。

 

 

 

「ま、前に助けてくれたことあるやろ?」

 

「人違いだな。何故私が他人など助ける必要がある?」

 

 

 

 何故かは知らんがこの少女は私を誰かと勘違いしていたようだ。私が人助けをするなど到底あり得ぬのだ。しかし、見間違えたということは何かしらの共通点が存在していたのだと言えるだろう。それは些か気になるが……

 

 

 

「な、何言ってんの?えっと、高町総司君なんやろ?」

 

 

 

 何故この少女は私の名前を知っているのだ?仕方あるまい。視るとしよう……

 

 ふむふむ、図書館にて人外少女から名前を聞いたというわけか……まあよい、それならば気にする必要もない些事だということ。今回は特に何もする必要はないだろう。

 

 

 何?闇の書?守護騎士とは一体何のことだ?明らかに異質な者。しかし車椅子の少女の記憶から見て一般人であることは明白……一体何故そのような物と関わっているのだ?

 

 

 また何者かの企みによるものか……この少女の記憶だけでは判断がつかないな。

 一般人を巻き込むなど悪としても3流なのだろう。愚かな悪として潰してやってもよいが……まずは目の前の少女をどうにかすることが最優先か。

 

 見た所何かの力に下半身が蝕まれているようだ。私の予想では闇の書とやらが関わっていると思うが……いまいち原因がはっきりしない。

 

 

 仕方あるまい。

 

 

 

「少女よ、背後の者を呼べ」

 

「え?いきなり何?って気づいてたんですか?」

 

「早くしろ。些か気になることがあるのだ」

 

 

 私の表情から内心を察し、呼び出したのであろう、少女の背後に男が現れた。銀色の髪に褐色肌の体格のいい男。

 

 

「そこの、守護騎士とやら、一つ聞きたいのだが」

 

「っ!!」

 

 

 む?何故殺気を向けてくる?

 ふむ、何故正体を知っているのかを疑問に思っているのか。まあ仕方あるまい。突然見覚えのない者に己を語られるなど疑わしいのだからな。

 

 

「そう身構えるな。私はその管理局には所属している人間ではない」

 

 

 こやつが管理局の者と怪しんでいるから先に言っておく。何よりも私が魔法を使う器官を持っていない事に気づいたのか、先程よりも微小ではあるが警戒心が和らいでいる。

 

 

「貴様ら闇の書の守護騎士とやらは何故この少女の元に現れた?」

 

 

 これが私の知りたいこと。回答によっては目の前の男……ザフィーラという守護獣を消さねばならん。

 

 

「……」

 

 

 だんまりか。だが無駄だ。

 私の言葉に思い浮かべた物。理由を知らないと言う事は私に読まれているのだから。

 

 となれば現れたのは何者かによる手引きか、将又ただの偶然か……

 判断をつけられないところではあるが、守護騎士とやらは直接的には関わってはいないということが分かった。

 

 

「私の知るべきことは理解した」

 

「い、一体何を言ってるんですか?」

 

 

 ふむ、全く話についていけていないようだな。一般人といえど当人の問題だ。放っておいても良いが、この力、放っておくには些か大きすぎる。

 

 

「貴様の足のことだ。闇の書とやらが蝕んでいるのだ」

 

「な、何を……」

 

「………」

 

「いずれその命までも侵食されるだろうな」

 

 

 偶発的なものであれば闇の書を消せばそれで終わる。だがそれでは何者かの陰謀だった場合、向こうの思う壺になってしまうだろう。私とこの少女を引き合わせた事は偶然とは思えない。人外少女にはそのような素振りも無かった。もしかすれば直接接触しなくとも他者を操る能力を持っているのかも知れん。

 

 故に安易に行動するのは悪手といえる。

 

 向こうから出てくるように仕向けなくては行けない。

 

 

「ほんとなんですか?それって」

 

「ああ、事実だ」

 

 

 ふむ……少女の感情が揺らいでいるな。守護騎士を家族と呼ぶとはな。使い魔のような存在だと思われるものにそのような感情を抱くのは理解に苦しむが、そんな存在の元となるものが自身を蝕んでいるという事の板挟み。

 

 

 何?こやつ……守護騎士ともっと生きれないことが悲しいだと?

 

 変わっているな。だが何故もっと生きれないことになっているのだ?ただ現在蝕んでいるだけなのに……

 

 

「何か変なことを考えているようだが……」

 

 

 私は右手に力を纏わせ少女に近づく。

 男が直ぐ様割り込み、邪魔をしてくるが面倒なので、少し離した所に移動させた。

 

 

「な、何するんですか?」

 

 

 少女の質問に応えずに足に手をあてる。何かを打ち壊す感触がし、少女を蝕んでいるものが消えたのが解った。

 

 

「え?え?あ、足に感覚が……」

 

 

 いきなり戻った感覚に戸惑っているのだろう、少女の感情が困惑に塗りつぶされる。そして、守護騎士である男は物凄い形相で此方へと迫ってきている。

 面倒くさいので再度移動させておいた。

 

 右手で触れるだけで蝕んでいるものは消すことが出来る。しかし……

 

 

「これは一時的なものだ」

 

「え?」

 

 

 私が右手を離すと侵食が再度始まる。少女は気づいていないが、時が経てばまた足の感覚は無くなるだろう。

 

 

「貴様の下半身を蝕む大元をどうにかせねばまた動かなくなり、いずれその身を滅ぼすだろう」

 

「………」

 

 

 凄い形相で寄ってくる男を移動させる。

 もういっそ少しの間身動きを捉えたほうがいいか……

 

 

「あの、どうにかするって……」

 

「一番手っ取り早いのが闇の書を消すことだ」

 

「それをしたら」

 

 

 少女の思考に浮かぶその仮定論は事実それを行うことで発生するであろう未来を言い当てている。

 

 

「ああ、守護騎士は消えるだろうな」

 

 

 少女の根幹にある者は守護騎士との生活。つまりは闇の書の消去は少女にとって真に望んでいないことだ。

 

 

「ほ、他にどうにもできないんですか?」

 

 

 だからこそ、縋る。男を移動させつつも私は息を吐き、少女視る。

 私の目的は少女の裏に潜んでいるかもしれないものを引きずり出すことだ。確証はないが私の悪としての勘が囁いているのだ。何者かの陰謀が働いていると。私は悪として完成されつつあるのだ。間違いはないだろう。

 

 であれば、直ぐ様闇の書を消すことは出来ない。隠れられてしまっては面倒だからな。

 

 

 しかし、引きずり出せさえすれば後はどうでもよい。闇の書を消すだろうな。

 と言っても……

 

 

「思いつきはしているが私はしないぞ?」

 

「ど、どうして!!」

 

 

 面倒になり男を移動させた後に動けなくしておく。

 

 

「何故私がそこまでしてやらねばならん」

 

 

 一般人を巻き込んだことは許されざるも、最低限まで戻せばよいのだ。そこまで望むのであれば対価が必要となろう。

 

 

「じゃ、じゃあ教えてください!!」

 

「一つ言っておくが、私の考えは私に出来ることを前提としたものだ。故に私以外に出来るとは思えん」

 

「そ、そんな……」

 

 

 少女の思考に諦めが過っている。だが、諦めきれないようだな。己が守護騎士達と生涯暮らすことの出来る可能性が目の前にあるのだ。仕方ないといえるのだろう。

 

 

「ど、どうかお願いします!私に出来ることなら何でもします!」

 

「なんでも……か」

 

「え、エッチなことはだめやで!?」

 

 

 ふむ……少女の思考を見る限り何でもするということに関して嘘はついていないようだな……

 そう言えば昨夜、悪者には部下がいるとテレビで言っていた……よし。

 

 

「貴様が私の配下となるのであればどうにかしてやらんでもない」

 

「は……いか?」

 

 

 ふむ、今の言葉に私の正体を疑問視しているようだな。話しても構わないだろう。配下とならぬのであれば記憶を消し、それ以降関り合いを持たなければよいのだ。

 

 

「私は誇り高き悪を志す者だ。貴様はその見てくれに反し、中々に腹黒い素質が見える」

 

「は、はぁ……」

 

「故に貴様を私の配下に迎え入れようと言うわけだ」

 

「そ、それで配下になったら何をすればええんですか?」

 

 

 …………考えてなかった。

 

 

「それくらい自分で模索するが良い。だがまあそうだな。配下となるのであればある程度の力を与えようぞ」

 

「な、成る程」

 

「私は寛大だ。配下の者にはそれなりの配慮をしてやろう。無論、それ以外のものへの慈悲などは無いがな」

 

「……うーん……それで私の足を治してくれるんですか?」

 

「私にはそれが出来る」

 

「闇の書は消さなくても済むんですか?」

 

「ああ。元々直ぐ消すわけにもいかなかったのだ。暫くは貴様の足を本格的に治せは出来ないが……約束しよう。貴様の使い魔も、貴様の命もどうにかしてやるとな」

 

「………わかった。配下になります」

 

 

 よし。これで悪に一歩近づいたな。守護騎士の男の拘束を外しておく。すぐにでも駆けてくるだろう。

 

 

「では、明日この時間にもう一度この公園に来い。それまでに守護騎士達へ話を通しておけ。それが貴様の初仕事だ」

 

「わ、わかりました」

 

 

 

 

 

 

 公園から出て周囲に意識を向ける。

 ふむ……不自然な動きをした猫が2匹……ただじっと此方へと意識を向けている……か。

 

 怪しいが………

 

 

 む?消えた……逃げたか。捕獲は出来なかったが……これで何者かが少女の背後にいる事は確定した。後はそれを排除するだけ。

 

 

 悪行に関しては不満が残るものとなったが、配下を得ることが出来たのは大きい。

 気分が良いな。未来の英雄への餞別として今日の夕飯は高町なのはと高町恭也二名の肉を少し増やしておいてやろう。

 

 ああ、そう言えば……

 

 

 

 

 

 

「名前、なんと言ったか…」




八神はやて「公園で見かけて話しかけたら大変なことになったでござる」
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