「紹介するね!フェイトちゃんだよ!」
「……」
既に八神家に居候を始めてから3週間が経過しようとしている。守護騎士を含め八神はやて一派は最初こそ警戒していたものの、少しずつその警戒を解いていき、今ではほぼ無警戒でいる。私の配下としては些か問題ではあるものの、特に問題らしい問題も発生していないので私としては言う必要はない。
寧ろ、問題なのは、学校で毎日のように違うクラスにいる私の元へ突撃してくる高町なのはと人外少女二人だ。何故来るのかがわからない。もしや私の悪事に警戒して監視でもしているのだろうか?……真意がつかめぬ。それに、今日に限っては金髪少女Bまで連れてくる始末。何故海鳴にいるのかは理解できぬが、もしかすればあの時の黒幕の正体が私だと気づき、接近してきたのかもしれない。それならそれでこちらとしても喜ばしいのだが……何故か気まずそうにこちらを見ている様子からして気付いているわけではないようだ。
もし、気付いているのであれば、憎悪なり嫌悪なりの感情を向けてくるだろうからな。
「えっと……」
「…………おい、金髪少女B。貴様、あの犬はどうした?」
「え?アルフは家にいるけど……」
「私の躾は必要か?」
「い、いや。大丈夫だよ」
そうか。流石は飼い主といった所か。己のペットに対する責任というかプライドが存在しているようだ。プライドのある人間は好ましいぞ?
「総司君、フェイトちゃんの事知ってるの?」
「無論。以前こうえ…」
「す、ストップ!!」
突然金髪少女Bが私の話を遮り、手を掴まれた。そのまま少女は教室の外へと向かっていく。
「こ、公園での事は内緒にしておいて」
「何故だ?」
「そ、それはね……えっと……」
ふむ、何故黙っていなければいけないのだろうか………もしや、この後高町なのはに何かしらの悪戯でも行うつもりか?
ふっ、小娘が遊びで悪事をするなど片腹痛いが、見た感じ酷く天然ボケが入った少女だ。子供相手にムキになる私ではない。今回は聞いておいてやろう。
「よかろう。しっかりと励むのだぞ?」
「え……えっと……ありがとう?」
さて、こちらへと突撃を始めた高町なのはから逃げるため、階段を降りていく。屋上から私の匂いがすると思わせておけばそちらに行くだろう。
最近は平和な昼飯が食べれていなかったからな。今日こそはゆっくりと食べさせてもらおう。
あの金髪少女Bがいるため、あまり無茶な突撃は出来ないだろうし、昼休みの間くらいは時間を稼げる筈だ……
「………」
上の階から高町なのはの走る音が聞こえるが、それを無視し、私は校庭の片隅に生えてある木へと向かう。
備え付けのベンチへと腰掛け、八神はやてが作った弁当を開き、食べ始める。
ふむ、冷めていてもここまでの味を出せるのはある種の才能と言うべきだろうな。流石はこの歳で一人で生きていただけはある……まあ、些か造形がおかしい気もするが許容範囲だろう。
ここで、ふとポケットに入った携帯が震えている事に気付いた。
私は周囲の人間から私自身の認識をずらし、携帯を開く。画面には懐かしい名前が表示されており、私は通話拒否ボタンを押した。
再度震える携帯。一つため息を吐き、私は通話ボタンを押し、携帯を耳に当てる。
「何のようだ?」
『全く、何でいきなり切るのよ』
「無論、面倒だからに決まっているだろう?」
『貴方のそう言う所、私は好かないわ』
「別に貴様に好かれようとは思っておらぬ」
『悲しいことを言うのね。折角お茶会のお誘いをとでも思ったのに』
「以前言ったであろう?貴様と馴れ合う気はないとな」
『私は貴方と仲良くしたいと思ってるわよ』
「貴様は敵に回るほうが面白い」
『変わらないのね。で、日時の方だけど……』
「待て、人の話を聞いていたか?」
『今週末、土曜日の昼13:00に園前で良いわよね?』
「人の話を聞け。馬鹿者」
『ふふ、貴方くらいよ。私に馬鹿なんて言うの』
「馬鹿者に馬鹿者と言って何が悪い?」
『いいえ。でもいい?私の貴重な週末の時間を潰すことが出来るのよ?よっぽど悪いことだと思うわ』
「ふむ…………一理あるな」
『というわけで、約束よ?』
「了解した。ではな」
『せっかちね。もう少し話を……』
通話停止ボタンを押し、携帯の電源を切る。
やれやれ、少し面倒だが悪事のためならば仕方あるまい。最近は連絡していなかったものの、向こうからも連絡がなく、ようやく私の事は諦めたと思っていたが……
流石は天才と言った所か。こちらの心理を尽くついてくる。あやつであれば私の配下となり、参謀は務まるだろうが……あれは敵のほうがよい。でなければ張り合いが無いからな。
認識を元に戻し、食事を再開する。そう言えば今日は幼女にシュークリームを作ってやるという話だったな。帰りに材料買っておくか。
「お。珍しいじゃん。ここで食べてるなんてさ」
「何だクラスメイトA。貴様こそここで何をしている?」
「だから俺は暮住……ってもういいや。俺は今からサッカーすんだよ。お前もどうだ?」
「ふん、面倒だな」
「何だよ、一緒に上級生の鼻っ柱折ってやろうぜ」
「成る程な……よかろう。先に行って待っているが良い」
「お。助かるぜ!今日の勝ちは貰ったな」
私は箸の進みを早めた。
◇
【フェイト・テスタロッサ】
「うぅ、いない……」
高町総司を追いかけ、走りだしたなのはにやっと追いついた。何故か迷いなく走っていったなのはとすずかは屋上に出て、隈なく物陰の裏などを探しまわった後、高町総司がいない事が分かり、落ち込んでいた。何が彼女達をそこまで駆り立てているのかは解らないけど、取り敢えず慰めておいたほうが良いのかな。
「アンタ達、何やってんのよ……」
「あ、アリサちゃん。ごめんね?御飯食べるの遅れて。今からここで食べよ?」
「そんなことだろうと思ってちゃんと弁当持ってきているわよ。ほら、フェイトのも持ってきたわよ」
「あ、ありがとう」
よく見ればなのはやすずかは弁当を持っているみたい。違うクラスまで弁当を持って行くなんて計画的なんだなぁ……
「うーん……どうして今日は総司君に逃げられたのかなぁ……ここで匂いはしてるのに……」
「なのは、アンタ人間辞める前に戻って来なさい」
なのはは鼻がいいのかな。人の匂いを辿れるなんて凄いや。
「なのはちゃん。あれ、総司君じゃない?」
「え?あ、ホントだ!!」
すずかが何かに気付き、指を指したので視線を向けると、そこにはボールを蹴っている男の子達に混じって立っている高町総司の姿があった。
彼はレアスキルを持っているんだ。あんな遊びじゃあ満足できないだろう。でも、レアスキルを使う素振りは見えない。どうやらそんなものには頼らずに遊んでいるみたいだ。隠してるってのもあるだろうけど、真面目なんだな……
でも、動き自体は信じられない。魔力を纏っていないのに動き出した時の速度はビックリする。目では追えるけど、他の男の子たちは為す術は無いみたい。
「総司君格好いいなぁ」
「うん。でも珍しいね。サッカーしてる所なんてあんまり見ないよ」
「私も前に見た翠屋JFCの練習試合の時しかないわよ」
「凄いね。一人だけ動きが違うよ」
あれならアルフと模擬戦しても張り合えそう。あの体捌きは素人の動きじゃない。
「ねえ、フェイトちゃん。今日の放課後私の家に遊びにおいでよ」
「え?いいの?」
「うん。ちょっと総司君の事について聞きたいから」
「う、うん。じゃあ遊びに行くね?」
やった。なのはと遊べるんだ。何して遊ぶんだろう?模擬戦かな?
>造形のおかしい弁当
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