【プレシア・テスタロッサ】
ふぅ、やっと終わったというべきか。これでやっと本格的に調べることが出来る……
面倒な裁判も終わり、私への処罰は1年間管理局での無償奉仕。まあ端的に言えば研究で成果を出せと言ってるのでしょうね。どうせ、上層部にはあの男がついているのだし、私の出番は無いと思うのだけれど……むしろだからこそ1年間ですむのかもしれない……
取りあえず暫くは準備期間という事である程度自由がきく。その間に何としてもあの突然現れた男の子について調べないといけない。いきなり現われ、私の体を治し、アリシアを蘇らせた人物。映像を見た限り年齢は10才程度。仮面を途中でつけ、髪の毛が黒くなったところを見て何かしらの方法で姿を変えていたと考えるのが妥当。つまり、元々は黒髪であるのだと思われる。
黒髪というのは少ない。地球では多いけれど、他の世界ではあまり見ないのだ。であれば地球出身の可能性が高いだろう。今回の事件は地球で起こったのだし、黒髪であることを考慮すればという理由からだけど……
問題は動機が分からないという事。なぜ私達を助けたのかがわからない。自身を黒幕と言う事で管理局からの目を私たちから逸らした理由もわからない。
だからこそ……
「見つけなければならない」
ソファで横になって眠るアリシアの頭を撫でる。フェイトとはあまり上手く話せていないながらも以前のようにアリシアの代わりとして見る事はなくなった。私は本当に都合のいい人間なのだろう。本物のアリシアが存在することでフェイトを受け入れる余裕ができて今では娘としても受け入れられている。アルフには警戒されているけど、クローンといえど私が生み出した存在なのだ。愛着が無いわけではなかった。取りあえずアリシアもだがこれまで母親としての愛情をあまり向けられていなかったのだ。これからは向けていきたいとは思っている。
老い先短いかもしれないが精一杯生きなければならない。だからこそ今のうちに懸念材料は取り除かなければならない。もしかすればあの男の子は私への脅迫材料としてあのような行動に移ったのかもしれない。どちらにせよもう一度会って話さなければいけない。しかし、手がかりがない……
いや、一人だけ心当たりはある。一度だけバルディッシュの映像に残っていた男の子の姿。支離滅裂な事を言いながら魔力を感じない瞬間移動でアルフとフェイトを無力化したとんでもない存在。名前は高町総司。フェイトの親友である高町なのはと同じ年の兄。あまりにも似ていないため、誕生日をそれとなくフェイトに聞かせた所、双子でも年子でもありえなかった。つまりはどちらかが高町夫妻の本当の子供でないという事。一度高町家に赴いた時に会った高町桃子の面影がなのはちゃんに有った事から、なのはちゃんは実の娘だと思われる。それに同じ年という事は離婚からの再婚の可能性は薄い。というよりも上に兄と姉がいるのだからその可能性は限りなく薄いと言える。つまり、高町総司という少年は養子であると結論付けた……
さて、まだまだあの男の子と高町総司を結びつけることは出来ない。だがこちらに対して何かしらの接触があったのだろう。であればこちらへのアクション。それも私だけにここまで思案される方法で行えるとは思えない……
謎は深まるばかりだ……
「なあプレシア。飯どうするよ」
「あら、もうそんな時間なのね。今日のご飯は何かしら?」
「フェイトがいないから出来ていないよ。あんた何か作れないの?」
「作れるわ。取りあえず冷蔵庫見てきて頂戴。あるもので何か作るわ」
「ったく、自分で確認しろっての」
ぶつぶつと言いながらも台所へと向かうアルフ。自分では作れないから私の言う事を聞くしかないから言われたことはちゃんと実行する。そこらへんがリニスと違っているところ。流石は犬をベースにしているだけはあるわ。
それにしてもフェイトがいない……確かなのはちゃんの家に遊びに行ってるんだっけ?模擬戦で遊んでるって言ってたけど、なのはちゃんって案外好戦的なのね。
「だめだプレシア。こんにゃくしかないよ」
「…………なぜこんにゃくがあるのよ」
「前にフェイトが不思議そうな顔して買ってたよ。ってか今日の飯はフェイトになんとかするって言ってしまったしなぁ」
いまいち意味が解らないけど、フェイトが買ったということは何か意味があるのだろう。
でもまあ、とりあえず今は……
「外に食べにいくわよ」
「了解」
「ほら、アリシア、起きなさい」
◇
「にしても人が多いねぇ」
「多いね―」
「まあ駅の近くだから仕方ないわよ」
地球というところは不思議なところだ。コンクリートのビル群が立ちそびえており、車の通りが多い。ミッドチルダよりも車の通行量でいえば多いだろう。移動手段としての技術力はミッドチルダのようだ。いや、酷似している。その割には魔法というものがない。質量兵器の危険性は理解しているだろうに未だにそれ自体が禁止にされているわけではない。犯罪者などが出た時の無力化方法が思いつかない。下手をすれば殺してしまうのに、大丈夫なのだろうか。
「む……このにおいは……」
「どうしたのよ、どこか美味しそうな匂いでもしてるの?」
「してるのー?」
アルフは腐っても犬だ。普段は腹を出して寝てるけど犬なのだ。人間の食べ物を食べているけど犬なのだ。その鼻は信用できるだろう。
「いや、以前嗅いだ事のある匂いがしてね」
「そうなの。いったいどんなのにおいよ」
「においよー」
「いや、なんか癪に障るというかとんでもないガキのにおいだよ」
「………………そこに案内しなさい」
もしかすればだけど、その癪に障るという人物は高町総司かもしれない。以前アルフが色々と言われたとフェイトが言っていたし、その可能性は高い。さすがにアルフが頭が弱いと言えど不用意に地球で他人と接触するとは思えないし。
「見つけた。あそこの喫茶店のテラス席に座ってるやつだよ」
「…………」
予感は的中。笑みを浮かべずにただ、コーヒーカップを手に持って飲んでいる高町総司の姿がある。向かいには一人の少女がいる。確か、フェイトが何度も見ていたビデオレターに映っていたなのはちゃんの友達の一人だったはず。彼女が高町総司へと語りかけているのが遠目にでもわかる。まあ、高町総司は無反応なのだけれど……
声をちゃんと聴いておきたいけれど……あまり不用意に接触するのは軽率というもの。ここは引いておくにしよう。アリシアがお腹をすかせているだろうし……
「で、どうしたんだよ。プレシア」
「………何でもないわ。ほら、行くわよ」
「いくわよー」
「あ、待てよ二人とも!!」
帰ってから今までの情報を纏めないといけないわね……
フェイト(……ほんやくこんにゃくに似てる……)
アルフ(フェイト、蒟蒻持って何してるんだ?)