偽悪になった少年 R   作:茶ゴス

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A's 15th

 その場にいる殆どの者が唖然とした表情を浮かべていた。ミッドチルダに住む者だけでなく、夜天の一派ですらも少年の行動には驚愕しているのだ。

 夜天の騎士の一人、ザフィーラは唯一高町総司の思惑というべきか、立ち位置を把握することができている。

 

 いわば少年は正当防衛として管理局を相手に戦争を行おうとしているのだ。

 普通に考えれば無謀の一言で済んでしまう物。だが、一度少年の力を誰よりも間近に感じたザフィーラには無謀などと言えなかった。

 力の一端にしか触れていないが、それですら世界を支配することの出来る程度だと素直に感じ取れる。いかに強大な組織力を持っていたとしても総司の前には歯がたたない。もし世界を滅ぼそうと総司が思えば物の数秒で消し飛んでしまうだろう……

 

 更に言えば、裁判所の天井が消し飛んだ一撃。いや、3本の矢による攻撃から見て、既に総司は攻撃の準備を終えていると考えられる。

 闇の書の闇、ナハトヴァールの核を消し飛ばした一撃と同様なものを放ったのだ。3本ということはザフィーラの勘ではあったが、総司の性格からして既に装填は終え、いつでも発射できるようにはしているのだろう。

 

 

「皮肉なものだな。正義を掲げた管理局の者共は己の行っていることを理解していない」

 

 

 総司は笑みを浮かべたままゆっくりと裁判官の方へと歩いて行く。

 思わず気圧され、後退る裁判官に目を細めながらも総司は歩を進める速度を落とし、裁判を見ていた管理局員へと視線を向ける。

 

 

「一つ問おう。この世界において勇者と魔王という概念は存在しているのか?」

 

 

 突然総司に質問を投げかけられた管理局員は驚きながらも肯定の意を示し、首を縦に振る。

 

 

「では簡単な話だ。勇者とは一体何だ?」

 

「ま、魔王を討伐する英雄です……」

 

「では、魔王とは何だ?」

 

「た、倒すべき、悪の権化です」

 

 

 裁判官同様気圧されている管理局員の返答に一度息を吐いた総司はニタリとした笑みを浮かべたまま裁判官へと向き直った。

 

 

「今の話では少し違うが……魔王とは人間の世界に侵略してくる者の事なのだ」

 

 

 そこまで言われて総司が何をいいたいのかを理解できない裁判官ではない。

 侵略という行為には様々な物があるが、多くは土地の略奪や支配にあるのだろう。

 

 

「では、貴様等管理局のように我ら地球の者へ法を押し付けるのはある種、侵略となりえるのでは?」

 

「そ、そんなバカな!!」

 

 

 ある意味では暴論とも捉えられるであろう。しかし、そう捉えるのは主観でのみ見ているからに他ならない。客観的に見てみれば総司の言うことも一理あると納得せざる負えないのだ。

 地球に住む一人の少女をただミッドチルダまで連れてき、管理局の法にて裁こうとしている。そう言われれば法を押し付けていると言えるだろう。

 

 そうなのだ。夜天の一派は何も言っていないのだ。ただ、管理局員が連れてくるのを抵抗はしなかったものの、承諾した意思など見せていないのだ。

 であれば、それは拉致と同義にほかならない。他世界の住人を本人の承諾を得ないままミッドチルダに連れてき、あまつさえ管理局の法で裁く。なんと傲慢なことなのか。

 

 

「貴様等魔王は我が地球に法を押し付けるという行為で侵略してきた。であれば、不本意ながらも我が世界のため勇者の真似事として立ち上がるしかあるまい」

 

 

 本来正義とはいくつもあるものだ。善悪はあれど正義と悪で区切ることなどは出来ない。互いに主張する正義が存在し、争いが起こるのだ。

 

 

「私はいわば魔王城に乗り込んだ勇者というわけか。虫酸が走るが、仕方あるまい」

 

 

 どの口が言っているのだと内心で呟くザフィーラは視線を裁判所内に設置されているモニターへと向ける。

 総司の行動は読めている。今のように管理局を倒すべき悪として糾弾しているのは単なる茶番であるのだ。総司が糾弾するのであればもっと早く行動にでていたであろうし、今まで姿を現さなかったのは何かしらの悪巧みを行っていた体なのだろう。

 と言っても、総司の悪巧みなどは大抵本人意思とは正反対の効果を生むのだが……と、考えたザフィーラは正しかった。

 

 

 

『待ちなさい』

 

 

 

 モニターに一人の老人が映しだされる。

 ミゼット提督。管理局の伝説の3提督と称される彼女がそこにはいた。

 

 

『裁判官、只今最高評議会よりこの者達を直ちに地球へと送れと指示を受けました』

 

 

 その言葉に裁判所内にいる者達が騒然となる。これまで過去の一度も裁判に最高評議会が介入することなどは無かったのだ。いや、介入しないように作られた制度が裁判というものだったのだ。

 しかし、今回はそれを覆さねばならない状況になっているのだ。

 ようやっと事の重大さに気付いた裁判官は顔を青くしていく。彼の判決一つで一つの世界との戦争を開始してしまうのだ。たった一言で多くの人が傷つき、死んでしまうことになったかもしれない……

 

 

 

「なんだ、もう少しゆっくりしていても良かったのだぞ?」

 

『……最高評議会があれほどに焦っていたのは初めて見ました。貴方は一体何をしたのですか?』

 

「なに、きょうh……ごほん。ただ交渉しただけに過ぎない」

 

『…………』

 

 

 

 総司が行った事、最高評議会に話をつけること。管理局を纏める存在だからこそ、そこさえ抑えてしまえばどうとでもなるのだと考えた総司はある意味正しかった。

 そして、彼らにいうことを聞かせるための手札はいくつも持っている。

 

 

 

『どちらにせよ我々管理局は現時点を持って地球の者へと干渉し、刺激することを禁止されました』

 

 

 

 無茶苦茶な話だと誰もが思っただろう。だがそれを通さなければ不味い物を総司が秘めていることを理解し、下手に騒ぎ立てないようにしたものはどれだけいるのだろうか……

 夜天の一派は総司の成すことに頭を委託させながら既に思考の大半を放棄し始めていた。

 

 

「安心しろ。貴様等には代償として闇の書をくれてやることになっている」

 

 

 いつの間にかはやての手にあった魔導書、闇の書は総司の手に渡り、何もないように裁判官の方へと放り投げられた。

 

 

『……危険なロストロギアの扱いには注意して下さい』

 

「貴様等こそ、その程度の粗悪品。せいぜい有効に使うのだな」

 

 

 既に総司の昂ぶりは消えてしまっている。やりたいことを邪魔されて起こるわけでもなく、ただ茶番が終わった事へ不満を感じているのだ。

 しかし、ここでごねても仕方のないこと。総司はモニターから視線を外し、裁判官へと向き合う。

 

 

 

「ではな。次相見える時はもう少しマシになっていてくれよ?」

 

 

 

 

 そう言い残すと夜天の主と夜天の騎士。そして高町総司はその姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

「で、一体何をしでかしたんや」

 

「簡単なことだ。管理局の頭に現実を見せただけだ」

 

 

 着いたのは八神家。リビングにてお茶を飲む総司に若干イライラしつつはやては椅子に座った。

 既に足の感覚は普通に歩く程度であれば大丈夫なほどに回復している。リハビリを続けていたのも理由ではあるだろうが、一番は闇の書の呪縛から解き放たれたことにあるだろう。

 

 

「いや、寧ろ何故闇の書を渡しておいて我らはここに存在しているのだ?」

 

 

 シグナムの問いは仕方のない事といえるだろう。本来であれば本が主の元から離れれば存在するのは難しい守護騎士達が何も問題にもならずに存在できている。

 それに疑問を抱くのは当然と言える。

 

 と言ってもザフィーラだけはある程度の検討をつけているのだが……

 

 

「夜天の書……ではなく闇の書を渡したというわけか」

 

「ああ。よくわかってるな」

 

 

 ザフィーラの言葉に得意げに手に持つ小さな物体を総司は見せつける。

 黒いチョーカー。見てくれは唯の装飾品だが感じる魔力からして違う。

 

 

「リインフォースの記憶を頼りに夜天の書を作り、バグ以外の物をこちらに移した」

 

 

 軽く言ってのける総司に唖然とする。

 夜天の書という凄まじい魔導書をこれだけの短期間でつくり上げる事をどういうことなのかを総司は理解しているのだろうか……いや、理解していないだろう。

 ただ、己の出来ることであれば当然のようにこなしてしまう総司はある意味で万能の存在といえるのかもしれない。

 

 

「で、一体その管理局の頭にどうやって交渉したっていうんだよ」

 

 

 ヴィータが総司から受け取ったアイスを舐めながら尋ねる。

 ただ闇の書を渡すと言っても管理局は承諾するとは思えない。闇の書とは主が居て初めて効果を発揮する物。管理局としてはどうしてもはやてを確保したかった筈なのだ。だからこそ、あそこまで簡単に見逃したのは解せなかった。

 

 

 

「簡単な話だ。侵略とは言わば武力を持って行うもの。こちらにあちらよりも力があることを示せばいい」

 

 

 

 理にはかなっている。だが、それを見せつけるタイミングなどは無かったのではとヴィータは考えるが、総司の顔を見て考えを改める。

 目の前の存在はまさしく規格外なのだ。何をしでかしてもあり得ないと思えることが出来ない。

 

 だからこそ、次の言葉にあまり驚愕しなかったのだろう。

 

 

 

 

 

 

「管理局の頭の前で、一度あの世界を滅ぼしたのだ」




これまでのヒロインと総司君の関係
1高町なのは
・幼少期に出会い、士郎の入院の際に心の支えとなっていた。
・家族となり一緒に生活をしていた
・ジュエルシード事件の際に温泉街で一度共闘?
・ジュエルシード事件後、近接戦の稽古を行っている
・学校では度々総司のクラスに突撃する
・闇の書事件で総司と遭遇

2アリサ・バニングス
・幼少期誘拐犯より助けられる
・小学校で再会するものの忘れられていた
・暴走するなのはとすずかを止めつつ総司と交流を深めている
・闇の書事件に巻き込まれ、一瞬総司の姿を見る

3月村すずか
・幼少期誘拐犯より助けられる
・小学校で再開するものの忘れられていた
・なのはとともに総司のクラスへ突撃をする事が日課
・総司の事を話す友人(八神はやて)を得る
・闇の書事件に巻き込まれ、一瞬総司の姿を見る

4フェイト・テスタロッサ
・温泉街にて総司に撃墜される
・公園にてアルフの躾について話す
・なのはの紹介の元総司のクラスへ赴く
・なのはの暴走に巻き込まれ度々昼食をともにする
・闇の書事件で総司と遭遇

5八神はやて
・街で度々悪事によって助けられる
・すずかから色々話を聞く
・公園にて総司に脅迫される
・足を治してもらい、一緒に暮らし始める
・私生活を共に送り、交流を深める
・闇の書に飲み込まれたところを助けられる
・闇の書事件にて総司の力を思い知る
・裁判にて総司が暴走する
・一方的に無罪を勝ち取ってもらえた
・衝撃の事実を聞かされる

6アリシア・テスタロッサ
・幼女

7???
・――――――――
・――――――――
・――――――――
・――――――――
・――――――――
・――――――――
・――――――――
・携帯で総司に連絡を取り喫茶店にて話を聞く
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