偽悪になった少年 R   作:茶ゴス

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A's 17th

 木漏れ日が微かに洩れる森……神社の裏手にあるそれは林と森の間といった環境か……

 いや、そんな事は些細なこと。幾分気にする必要はない。重要なのは人目につかないことだ。

 

 今回の戦い、あのザフィーラがいる以上、ある程度の規模になることは予想できる。戦闘の能力で言えばシグナム達とそこまで遜色はないだろうが、戦いに関する経験は私すらも凌駕する。

 力で圧倒すれば容易く勝利できるだろうが………

 

 

「それでは面白くない」

 

 

 此度の戦いは戦争をするわけではない。唯の意地と意地のぶつかり合いといった所。故にあちらにも勝ち目を与えるのが筋という物……多少のハンデをつけるのが良いだろうな。

 

 にしても、戦いが終わった後のはやての反応が楽しみだ。勝っても負けてもその真実に悶える姿が目に浮かぶ。

 

 

 あやつは私があの管理局の世界を滅ぼした際に人間を皆殺しにしたと勘違いしているが、私がそのようなことをする筈もない。場合にもよるが、破滅した世界に絶望する人間の姿を見せる方があの脳達には効くと解っていたのだ。ならば生かしておいた方が脅迫(話し合い)が円滑に進むというもの。無駄なことをする必要もない。

 

 恐らく、あの反応から見て、ザフィーラ辺りは気づいているだろうが……あやつの場合、口下手だからはやてに伝わることもないな。

 

 

 さて、はやて達が来るのもそろそろといった所か。取り敢えず、膝の上で丸くなっている狐を起こし、立ち上がる。

 にしても、おかしな狐も居たものだ。油揚げをちらつかせ、渡す時にマシュマロにすり替えることで悔しがらせるはずが、普通に食べていたぞ、こやつ。

 

 仕方無く油揚げは醤油をかけ、火を入れて私が食したが、こちらには気にせずにマシュマロばかりに注意が行っていたな……

 

 

「いや、今はどうでも良い。狐よ、早く離れろ、今からここは戦場になるぞ?流石の私と言えど、無力な存在から命を奪うような真似はせん。奪うなら貴様がいずれ食べるであろう油揚げだ」

 

 

 狐は一つ鳴き声を上げると去っていった。ある程度の意思疎通が出来る……今更ながらに思うが、この街は随分と異端な者が多い気がするな。

 

 

 それはさておき、木々の隙間を歩いてくる足音が聞こえる。

 私に魔力は存在していないが、ある程度私の場所が分かる程度に目印を置いておいた。これならば迷わなかっただろう。

 

 

 

「さて、時間通りに来たようだな」

 

「もっと早く着たかったわ!!」

 

 

 む?何故怒っておる?コヤツのことだからどうせ約束の時間の20分前にはつくようにくると考えて、丁度ここへ来れる程度に時間を潰させた筈だが……

 

 

「なんなん?何で御札集めせなあかんかったんよ!」

 

「良い暇つぶしになっただろう?」

 

「これあれか?全部集めたら総司に有効な攻撃手段が見つかるとかって奴か?」

 

「貴様は阿呆か?そんな物、唯の紙切れにすぎんぞ」

 

「知っとったわ!!」

 

 

 何故か気分を害したようだが別に問題はなかろう。集めさせた札など、アリシア・テスタロッサが私に渡してきた金髪少女Bの似顔絵を複製したものだ。あれに何かしらの効力を考える者などいるわけがなかろう……

 

 

「では始めるとしようか」

 

「………ホンマに考えを変える気はない?」

 

「ああ、私の意思は私だけのものだ。誰にも変えることなどは出来ない」

 

「わかった。なら、力づくで行かせてもらう。私が勝ったらその考え、改めて貰うで!」

 

「好きにするが良い。にしても、お前達が束になってかかってこようと私に勝てる筈が無いことは解っているだろう?」

 

「それは………」

 

「故にハンデをやろう。私の力で重要としている二つの力、超能力と魔術を使用しない事にする。これならば幾分かはお前達にも勝機はあるだろう?」

 

「……その余裕後悔させたるわ」

 

 

 さて、まずはあちらの戦力の確認からしていこうか。

 まず夜天の主である八神はやて。どうやらリインフォースと既にユニゾンしているようだが……あまり脅威とはいえない。使う魔法はある程度威力はあれど、当たらなければ良い。私が使えるようにした魔術もリインフォースはまだ使いこなせていないだろう。

 次に夜天の騎士だが……シグナムとヴィータも脅威ではない。こちらの動きを鈍らせる役目に徹されれば面倒ではあるが、どちらか片方でも落ちれば問題はあるまい。

 そして、ザフィーラは、攻撃に対するより動きに注意した方が良いだろう。こやつは注意すべきだといえる。

 最後にシャマルだが……補助と回復要員のため、早々に潰さないといけない。いくら撃墜しようとも回復されて復帰されれば面倒なことこの上ないからな。

 

 

 結論として見れば……

 はやてとシグナム、ヴィータの3人は無視。ザフィーラに気を配りつつシャマルを撃破することが第一目標だろう。

 

 しかし、いずれにせよ。

 

 

「私の力を再び思い知るのだな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

【八神はやて】

 正直総司が提示したハンデは嬉しい誤算であった。

 シグナム達と話してみても総司の本来の力ではどうあがいても勝つ可能性がなかったのだ。

 

 渡りに船とはこのことだろう。私は総司の魔術や超能力がどんなものか知らんけど、これで私らにも勝ち目は出たに違いない。

 

 あの態度はいちいち癪に障るけど、贅沢は言ってられへん。ここでどうにか総司に物申さんとあかんのや。

 

 

 確かに助けてくれたのはありがたいけど、私としてはみんなと一緒に罪を償うことくらい受け入れることは出来る。

 まあ、あの管理局の人らの話はちょっとイライラしとったけど、それでも物理的に何も言わせなくされ、全部力技で解決されたんはどうも納得できやん。

 

 いや、違う。いくら力技でもいいんよ。

 でも、直接関係のない人らまで殺すのはあかんのや。総司は何でもできるやろけど、それだけはしたらあかん。簡単に人を殺して生き返らせるってのはあかんのや。

 命ってのはそんな簡単に扱っていいものやない。自分が

死ぬのは怖いし、誰かが死ぬのも怖い。でも、それでも、簡単に生死を扱うのは命を蔑ろにしてるのと一緒なんよ。

 

 その考えは正さないといけない。配下としてじゃない。家族として、大事な人やからこそ、総司に気付いてもらわなあかんのや。

 話しても聞いてくれへんやろ?総司は頑固者やからね。せやから、私は戦うで。総司が命を大切にするまで、何回でも戦ったるわ。

 

 

 あ、でも、意味もなく御札探しさせられたのは腹立ったから、これ終わったら文句いっぱい言わせてもらうで?

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