休日、真っ青な空に燦々と照りつける太陽。何故か私はゼッケンを付けて準備運動をしている。
私は自身の名誉のためサッカーの試合の観戦に来ていたのだが……メンバーが足りなくなり臨時で試合をすることとなった。これが公式戦ならば私に出場資格は与えられずに参加する必要もなかったのだが、生憎この試合は練習試合。多少の融通がきいてしまった。しかし、退場したメンバーも何をしているのやら。前半も残り僅かの所で、あるメンバーが観戦していた私達の方へ気を取られ、ボールが顔に直撃し鼻血を出したので休んでいるとのことだ。
10人でやればいいものを、何故私まで参加しなければいけないのだ……
「そろそろ始まるけど、行けるかい?総司」
「無論。だがその前に一つ伝えておくことがある」
ため息を吐きながらベンチに集まるチームメンバーへと目を向ける。
「どうしても勝ちたいのならば私にボールを回せ」
その言葉に数人のチームメンバーが顔を顰める。高町士郎は苦笑するだけだが……子供相手には中々の反応。更にそのプライドを煽ってやろう。
「お前達の力だけで勝ちたいのならば私にボールを回すな」
よし、これで更にプライドが刺激され……ていないだと?何故真剣な目で此方を見ている?
「つまり総司は自分たちの力を証明しろって言ってるんだよ。皆がしっかり練習してるのを理解しているのさ」
「ち、違うぞ!」
何をとち狂ったことを吐かすのだ!
ええぃ!そんな目で見るな!!
「ここまで言われちゃったら負けられないね。じゃあ頑張っておいで!」
「「「はい!!」」」
「ひ、人の話を聞けぇぇぇ!!」
◇
「す、すごかったよ!総司君!」
「まさかあんたがあんなのを隠し持っているとは思わなかったわ」
五月蠅い。話しかけるな、今私はすこしばかりナイーブなのだ。
唐揚げを箸で掴み、食べる。
先の試合は3-0で勝利した。チームメンバーは私の言葉を実行し、私にボールを回さずに試合をしていた。私はその間、近付いてくる敵チームのメンバーへ威圧をかけているだけだった。
しかし、後半も終わる間際、一人の男が私にパスをよこした。恐らくはどちらにしろ勝負が決まっている為私の力量を計ろうとしたのだろう。
まあ、勝ちたいのならば寄越せと宣言した手前私の力量が低いとみられるのは癪だ。私はしっかりとコースを決めるためとボールが壊れないように計算し踏み込んだ。
ボールの丁度中心を足の甲で打撃する。放たれたボールは地面から約1mの高さを保ち進んだ。
私が立っていた場所、丁度センターラインと自陣ゴールとの中央付近から放ったシュートはそのまま少しずつ高度を上げ、最後には相手ゴールの右上隅のネットに突き刺さった。
誰も止められなかった事に少し落胆した私が一つ息を吐くと同時に終了の笛が鳴り響いた。
私のシュート後、唖然とした様子だった両チームのメンバーは一斉に私へと詰めかけてきた。
そのまま私は両チームの監督が止めに来るまでもみくちゃにされていたのだった。
「それにしても元気だね、みんな」
私の隣で弁当を食べている月村すずかは試合を続けている者達を見て呟く。
既に鼻血を流していた者も復帰し、私の出番は終わっているため観戦に戻っているが、言うほど元気なのか?何人かは既にバテているぞ。
それにしても高町士郎にはしてやられた。まさか私の悪言を善言へとねじ曲げて伝えるとは……許すまじ。明日の朝食、高町士郎の味噌汁だけ豆腐を多めに入れてやる。
もし次も同じようなことをすればわかっているだろうな?増えるのがわかめになるぞ。
◇
弁当を食べ終わり、少しして練習試合は終わった。高町なのは達は翠屋でお茶をすると言っていたが私は断った。そこまで付き合う義理などはないからな。
今日の分の悪行をまだ実行できていない私は自転車に奇抜な改造を施そうとし、チェーンを弄っている少女の自転車を従来の形に戻してやった。己が折角苦労してチェーンを外しただろうに、私の悪行のおかげで全てが水の泡となったのだ。少女が涙を浮かべるのかと思い、視線を向けると何故か礼を言われた。高町家以外にもおかしな奴はいるものなのだな……
些か今日行った悪行への反応が物足りずそのまま街を徘徊していたのだが、あの破壊の力を秘めた石が発動したのを感じ、そこへ向かった。
そこにいたのはやはりというべきか、高町なのはだった。対する愚か者の今度の刺客は巨大な植物。幾つもの構造物を飲み込み存在していた。
さて、お手並み拝見と行こうか。他の悪は滅ぼすといえど英雄(仮)が育つのは私としても喜ばしいことだ。今は特にジャマをするつもりはないが、裏にいるものが現れたら即粛清してやろう。
それにしても、あの棒状のものが変形してから感じる力が幾分かはマシになったな。そうは言ってもまだ弱々しい力ではあるが……
む?植物の蔓に襲われているのは……一般人か。
蔓が当たる直前に2m程横へ移動させる。
にしても流石は愚かなる悪だ。一般人までも巻き込もうとは、三流がすることだ。これは更に粛清する理由ができたな。
見るに耐えん悪など存在する価値など無いわ。
その後数回ほど一般人を移動させていると高町なのはがピンク色の光を放出して植物を消し去った。見かけほど耐久力があるわけではないのだな。今回の刺客は……