「事件はまだ解決できておらず、未だ犯人の犯行声明も届いておりません。繰り返しお伝えします…」
暗闇と言うべきだろうか。そこにあるスキマから光が漏れ、アナウンサーの声が聞こえる。私は何で捕らえられているのだろう。
分からない。
一つも、いや、分からない方がいいかも知れない。
「偽物なんかに捕らえられてしまうなんて…」
「どうだい、外の世界ではこんなことが起きているよ。面白いと思わないかい?」
「どこが面白いのよ。あなたがやっていることは、ただの犯罪よ。つまんないことはやめて、さっさっと私を解放しなさい。」
「悪いけど僕には野望があるのでね。外の世界を支配する野望が」
信じられない。まさか能力が奪われるなんて、こんなことがあるなんて。
「まぁ時間の無駄だから僕は行くよ。八雲紫さん」
そう言われると、スキマが消え外の世界がどうなっているかが分からなくなってしまった。
ブロロロロロ。
ヘリコプターの音が響き、カメラマンが事件現場である銀行を写す。多分どこのテレビ局も同じ番組をやっているのだろう。俺は空を見上げながら思う。
勝永は何が言いたかったんだ?
「おかしいって違和感のことだよな」
「ああそうだ。何故が違和感が体から抜けきれないんだ。」
「どんな?」
「なんと言うか事件は本当は起こっていないんじゃないかと思うんだよ」
勝永の言いたいことが全く分からない。周りを見るとみんな警戒しているし、事件現場であることは間違いない。
なのにどうして。
あーくそ、どうにも分からん。
「こちらパトロール異常なし。警戒を解除せよ。オーバー」
「いやどこの傭兵だよ。戦争じゃねぇよ」
「蛇ーオセロー」
「それはいいわ、事件現場だぞお前」
「事件は会議室で起きてるんじゃない」
「だからなんだよ」
俺は呆れながら聞いてみる。
「会議室で起きているんだ」
「そのままじゃねぇか!さっきからなんだよ。てかなんでそのネタ知ってんの。蛇ーオセローじゃねぇよ。バレるわ。知ってる人はすぐ気づくわ。あと事件は会議室で起きてるとかもいらんわ」
「だって正宗さん全く私に構ってくれないじゃないですか。さっきから考え事ばっかしていますし」
「当たり前だろ。今はこっちに集中したいんだよ」
「むー。それもそうですね邪魔してすみません勝永さん」
そう俺に謝るとしゅんと寂しそうな表情をする。
仕方がない。
「なぁ文。勝永が言ったことがヒントじゃないかと思ってるんだけどやっぱ、違うのかなぁ」
そう質問するとぱあぁっと明るくなる。意外にわかりやすいな。
「まぁあってますよ。勝永さんが言ってたことは正解ですよ。ただこれは、妖怪の仕業ですけどね」
「妖怪?お前がいた世界にたくさんいるやつか」
「ええそうですよ。多分そいつの能力が原因でこんな状況になっているんだと思いますよ」
「根拠は」
「妖気を感じるのと、私がここにいることが答えじゃないですか?正宗さん」
まぁこいつも妖怪だから間違いではないのだろう。だとしたら犯人が妖怪なら。
「そいつを捕まえれば事件は解決するんだな」
「まぁそうなりますね。でも正宗さんは記者。時間の解決より、記事を書きましょう。いい記事を書きたいんですよね」
「書きたいが、困っている人がいるんだ。記事よりも事件を解決したいんだ」
「仕方ないですね。協力しますよ。というよりこうなることは分かっていました」
じゃあという前に文に言葉を遮られる。
「でも本職は忘れないでください。あなたは記事を書かないといけないので。そして危険だと思ったらすぐ逃げて下さい。本当に危険なので」
「分かった。お前の約束を守る。絶対だ」
「じゃあ行きますか」
「行くってどこへ?」
「決まってるじゃないですか。違和感を起こす妖怪はあの子しかいませんのでね、異和しか」
真田武士です。今回はセリフを多くしました。誤字脱字あればよろしくお願いします。