ラブフォーゼ!サンシャイン!!   作:ゆーふぉにあ

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お久しぶりです。
お待たせの第2話です
アニメが始まりましたね。
ですがこの作品はアニメと同じストーリーは(おそらく)辿りません。
曲名や設定の一部流用はするかもしれませんが



星・座・正・体

「ありがとうございました」

 

梨子はようやく家に送り届けられ、弦護に向かい深々とお辞儀する。

 

「いえ、むしろ余計に時間をとらせてしまって申し訳ありません」

 

弦護は苦笑しながら梨子に顔を上げるよう促す。

 

「そんなことないです!本当に助かりました。これで明日からはバッチリ学校生活を送れそうです」

 

梨子は両手を激しく振って弦護の言葉を否定して、今度は笑顔でガッツポーズをしてみせる。

 

「それは何よりです。もし、またお困りでしたらぜひ私にお声掛けください。私は基本的に、ダイヤお嬢様が学校にいらっしゃる間は校舎の中にいますので」

 

「は、はい、ありがとうございます!」

 

そして弦護は念の為、と一枚の名刺を差し出す。

 

「急いで連絡が取りたいときはこちらの番号にお願いします。もちろんいつでも、というわけにはいきませんが」

 

そう言うと弦護は再び微笑み、一歩下がる。

 

「それでは、失礼します」

 

「は、はい!」

 

そう言うと弦護はヘルメットを被りバイクを発進させる。

 

「弦護さん、いい人だったな」

 

梨子は弦護の名刺を片手にそう呟くのだった。

 

 

 

 

 

〜〜〜

黒澤ダイヤ自室

 

 

「おじいさま!?何ですの、あのベルトは!というかあの怪物は!」

 

『ハッハッハ!驚いたかの?ありゃゾディアーツっちゅう怪物じゃ!』

 

「驚いたかの?じゃありません!弦護がいなければどうなっていたのか……知っていて隠していたのですか?」

 

『教えたところでお前じゃ信じなかったじゃろ?だったら直接見てもらったほうが早いわい。まぁ、こんなに早く動き始めるのはちと想定外じゃったがな』

 

 

虹夏も家に送り届けて帰ってきたダイヤはPCでのテレビ電話で怒鳴りつける。

その画面の向こうにいるのは、おじいさま、と呼ばれるには少し若く見える男。

しかし彼こそがダイヤの祖父

 

「響輝(ひびき)様、お久しぶりです」

 

『おぉ弦護か!どうじゃ?フォーゼは!?』

 

弦護はダイヤと祖父、黒澤響輝の会話に混じるため、ダイヤの横から顔をのぞかせる。

 

「身体にすごく馴染む感じがします。アレ、高速移動とかできませんか?」

 

『こ、高速移動かの?うむ、モジュールではない機能としてならつけられるかの……』

 

「弦護、その話は後です。とにかくおじいさま、全部説明していただきますからね」

 

『おーおー、わかっておるわい。週末にそっちへ行く。弦護、とにかくダイヤとルビィのこと、頼んだぞ!』

 

「かしこまりました」

 

「ちゃんと説明してもらいます。いつものように雲隠れはさせませんからね!」

 

 

『わかってるわい。わけわからんまま弦護に戦わせるわけにもいかんからの。それじゃあワシはルビィちゃんへのプレゼントを準備せねば』

 

そう言ってテレビ通話は消える。

 

「本当にわけが分からない人……弦護、お迎えのためにおじいさまの部屋の掃除を念入りにしておきなさい」

 

「はい、かしこまりました」

 

そう言って弦護は部屋を後にしようとドアノブに手をかけ、ダイヤの方を振り返る。

 

「そうでした、お嬢様。あの怪物は【黒澤】に拘っていた、とおっしゃっていましたね?ルビィ様にこのことは」

 

「言わないで。それに確か、ルビィの護衛には【彼】が付いているのでしょう?」

 

ダイヤはそう言って腕を組み弦護の方を見やる。

 

「はい、確かに彼が付いていれば身の危険はないとは思います。少々安全以外の面で不安が残りますが」

 

弦護もダイヤも【彼】と呼ばれた存在に信頼を寄せているような口調だ。

 

「なら余計に話を広げない方がいいわ。ただ彼はあなたと違って校舎内は自由に動き回れないから学校内ではルビィのことも気にしておいて」

 

「かしこまりました……お優しいのですね」

 

「何を言っているの。もしルビィがさらわれて理不尽な要求をされたらたまらないからよ」

 

「では、そういうことにしておきましょう」

 

「相変わらず一言多いのよ、全く……」

 

 

 

 

 

〜〜〜

翌朝

 

「えっと、昨日乗ったのってこのバス停であってるよね……?バッチリとか言ったけどやっぱり慣れてないと不安だなぁ」

 

ちょうどバスが出た直後で周りに浦の星の制服は一つも見えない。

そんな中、梨子は昨日のように何か間違えていないか微かな不安を覚えながらもバス停の時刻表を確認している。

 

「どうかしたか?」

 

梨子に話しかけたのは、長身にスーツの若い男性。

年齢は20代半ばほどに見える。

 

「えっ!?あ、あの、えっと私浦の星学院に行きたいんですけどこのバス停であってますか!?」

 

「あぁ、間違いない。といっても、ここのバスは一路線だけで循環してるからこの周辺どのバス停から乗っても浦の星学院の近くにはたどり着けるそうだ。俺も最近越してきたばかりだから詳しくはないが」

 

そう言ってスーツの男は梨子と同じように覗き込んで時刻表を確認する。

 

「ご親切にありがとうございます」

 

そう言って梨子はお辞儀をすると、男は小さく頷く。

 

「生徒が困っていれば助けるのが教師の仕事だからな」

 

「え、教師、ですか?」

 

「自己紹介が遅れたな。俺は今年から浦の星女学院の2年生の、君の所属するクラスの教師を勤める水羽秋人(みずはあきと)だ。君と同じでここでの生活はまだ短い。だからこそ相談に乗れることもあると思う。よろしく頼む、桜内梨子さん」

 

「えぇぇ!担任の先生だったんですか!?桜内梨子です!よろしくお願いします!」

 

「あぁ、よろしく」

 

そう言って2人は右手を伸ばし握手をかわそうとする。しかし

 

《♪〜》

 

若い少女のたちの歌が着信音で流れる。

梨子も知っている。この曲はスクールアイドルμ'sの曲だ。

既に解散したグループだが、人気は根強く、ラブライブ運営から配信される曲を着信音にしたり、音楽プレイヤーで聞いている人は未だに多い。

 

「おっと、すまない。もしもし」

 

『もしもーし、愛しの…ちゃんですよ〜』

 

梨子にも微かに聞こえた電話向こうの声。

静かなこの町だからこそ聞こえたのだろう。

ただ、その全てが聞こえるわけではない。

 

「朝からバカなことを言ってるんじゃない。何か用か?」

 

秋人は大きくため息をついて電話の相手にそう尋ねる。

 

『んー、用ってほどのことでとないんだけどね?そっちの生活は大丈夫かなーって。最近忙しくてこっちから連絡できてなかったから』

 

「なんだそんなことか。安心しろ。これでも高校生の頃は一人暮らししてたんだ。それより、そっちのみんなは元気か?」

 

『うん、みんな秋人くんに会いたがってるんよ?ウチはそっちに行くけど他の子たちと会えるのはもう少し先になりそうやから』

 

「そうだな。教師をする以上簡単に東京まで行くことはなかなか難しいだろうな。それでも、時間を見つけてみんなには会いに行くさ。さて、そろそろバスが来るから。また連絡する」

 

そう秋人が言うとちょうどよく遠くにバスの影が見えた。

 

『うん、それじゃあいってらっしゃい』

 

「あぁ、いってきます」

 

電話を切った秋人が梨子の方を見ると梨子は興味深そうに秋人の方を見ている。

 

「彼女さんですか?」

 

「そんなところだ。東京に住んでる。近々こっちに越して来る予定だがな」

 

「へぇ〜。あ、私も東京から来たんです!」

 

親近感が沸いたのか梨子は声のトーンが一段上がる。

 

「知っているさ。君の資料に書いてあったからな。それでなくても、俺は君のその制服を知ってる。さ、バスがきた」

 

そう言って秋人は笑みを見せ、到着したバスに乗り込むのだった。

 

 

 

 

 

 

〜〜〜

2年生教室

 

黒板の前に秋人がたち、自己紹介を行っている。

 

「改めて、僕は今年一年、2年生の担任を勤める水羽秋人。この辺りに最近越してきたばかりでわからないことも多いからぜひいろいろ教えてほしい。よろしく」

 

「先生!ここに最近越してきたってことは元々どこに住んでたんですか?」

 

生徒のうち1人から声があがる。

 

「うむ、高校生の頃から東京に住んでいた。その前は親戚の家を転々としていたから色々なところに住んだことがある」

 

「はーい!彼女はいますかー!?」

 

またもや別の生徒から声が上がる。

 

「そういう質問は後でいくらでも受け付けてやる。それよりもう一つ紹介することがある。入れ」

 

そう言って秋人は扉の影から教室を覗く梨子に目配せをする。

 

「は、はい!」

 

緊張で声を上ずらせた返事とともに梨子が教室へと入ってくる。

 

「さ、桜内梨子と言います。東京から来ました。よ、よろしくお願いしましゅ!」

 

噛みながらもなんとか自己紹介をした梨子は深々とお辞儀する。

 

「東京だって〜」

 

「かわいいねぇ」

 

ザワザワと教室が騒がしくなる。

珍しい転校生に誰も彼も興味津々だ。

 

「へー、可愛い子だね。ねえ、そう思わない?千歌」

 

そう言って灰色の髪をした元気そうな生徒、渡辺曜は一つ前の席の生徒の背をつつく。

 

「……ん?」

 

そんな中、眠そうに目をこする少女が一人いた。

彼女は背後を突かれゆっくりと梨子の方を見る。

 

「ぁ……あああぁぁぁ!!!」

 

「うわっ!何々!?」

 

突如目を見開いて立ち上がる彼女にクラス中の視線が集まる。

曜は叫びの驚きで大きく仰け反りイスごと倒れかけるほどだ。

 

 

「その制服!」

 

「ヒィッ!」

 

少女は梨子の元へ早足で近づき梨子の手を取る。

 

「音ノ木坂の制服だよね!!」

 

「は、はい、そう、ですけど……」

 

「私、μ'sの大ッッッッファンなの!ねぇ、スクールアイドル興味ない!?」

 

目を輝かせて千歌は梨子に尋ねる。

しかし、梨子は困惑して言葉も出てこない。

 

「えっ、え、えぇ!?」

 

「高海、今はまだホームルーム中だ、そういうのは後にしろ」

 

秋人は興奮気味の千歌に抑えるよう言いながら見やる。

 

「は、はーい……あ、梨子ちゃん、よろしくね!」

 

「う、うん、よろしくね」

 

梨子は未だ戸惑いの表情を見せているが、千歌は屈託のない笑顔で梨子を見るのだった。

 

 

 

 

 

〜〜〜

一年生教室

「国木田花丸です。実家はこの近くにあるお寺で読書が好きです。鈍くさくてまみんなに迷惑かけるかもしれないけど、3年間、よろしくお願いします」

 

眼鏡をかけた少女、国木田花丸が自己紹介をしてお辞儀する。

 

「よし、じゃあ次は、黒澤」

 

「は、はい!」

 

続いて花丸の背後の席の赤い髪の少女は驚いたような声をあげ立ち上がる。

 

「く、くくく、黒澤、ルビィです!」

 

「黒澤……?」

 

 

 

 

 

〜〜〜

〜昼休み〜

 

授業が終わるとすぐに花丸がルビィの元へお弁当を持って歩いてくる。

 

「ルビィちゃん、お弁当一緒に食べるずら」

 

「うん!じゃあ机くっつけて…」

 

「ねぇ」

 

2人の近くで呼ぶような声が聞こえ、2人が振り返ると1人の少女がそこに立っている。

 

「アタシも一緒に食べてもいいかな?」

 

少女は腰まである長い髪を揺らして2人の方を見ている。

 

「えーっと、確か…霧島さん?」

 

「うん、霧島マヤ。よろしくね!」

 

「こちらこそ、よろしくお願いします。マルの名前は国木田花丸ずら。それでこっちが」

 

「……黒澤ルビィさん」

 

「え、う、うん、黒澤、ルビィです。よろしくね」

 

ルビィはマヤに対してどことなく苦手な印象を持っていた。

目は笑っているのに、まるで自分を睨んでいる、そんな錯覚に陥る。

 

「黒澤さんって、もしかして生徒会長さんの黒澤ダイヤさんの妹?」

 

「うん、お姉ちゃんだよ」

 

「そっかー、どことなく雰囲気が似てると思ったんだ。でさ、お弁当一緒に食べてもいい?」

 

「いいかな、マルちゃん?」

 

「もちろん!友達は多い方が楽しいずら」

 

花丸は特に断る理由もないと快諾し、もうひとつ机をつけられるようにと机をズラす。

 

「フフッ、ありがとう。これからよろしくね」

 

 

 

そんな3人のやり取りを遠くから一つの影が見つめていた。

 

「…………アレ、ですね」

 

〜〜〜〜

放課後

 

「いいですわね?」

 

生徒会室

ダイヤは虹夏と昨日のゾディアーツの襲撃についての口止めを行っている。

 

「わかったわかった。つまり私は目眩で倒れた。それ以外には何もなかった。そういうことにしておけと」

 

「えぇ、お願いしますわ」

 

幸いゾディアーツの姿は見ていないようだったが、何かに襲われた、ということは虹夏も理解していた。

けれどそれがダイヤにとって隠しておきたいこと。

それを理解した虹夏はただ頷き、

 

「じゃあ、口止料!アイスおごってよ♪」

 

「……まったくもう、しかたありませんわね」

 

そう言いながらもダイヤの口元の緩みを虹夏は見逃さない。

 

「じゃあ早速今日にでも!」

 

「そうですわね、弦護に今日の予定を確認しますわ」

 

そう言いダイヤはスマホを取り出す。

 

「……もしもし弦護?今日は……」

 

そこまで言ってダイヤの表情が険しくなる。

 

「……本当に?」

 

「どーしたの?用事ある?」

 

「えぇ、大切な用事が一つ。今日はもう行きますわ。お詫びはまた後日に」

 

そう言うとダイヤはそそくさと荷物をまとめて生徒会室を後にする。

 

「ほーんと、忙しいんだから」

 

 

〜〜〜

同時刻、昇降口

 

「じゃあマヤちゃんは一人暮らしを?」

 

マヤとルビィは並んで歩く。

花丸は忘れ物をしたと言って一度教室に戻っている。

 

「うん、両親と離れるのは寂しかったけど、この町は好きだし、それにやりたいこともあるからね」

 

マヤはそう言って空を仰ぐ。

雲ひとつ見てない青い空。

9月とはいえまだまだ暑い日差しが照りつけている。

 

「やりたいこと?」

 

ルビィが尋ねるとマヤは嬉しそうに頷く。

 

「うん、そのために、この学校に来た」

 

「そっか、叶うといいね」

 

ルビィがそう言ってマヤの方を向くと

 

「えぇ、たった今叶うところよ」

 

左手に黒いスイッチを持ったマヤが舌なめずりをしながらルビィに向け右手を伸ばしていた。

 

「うぐぅ……!ま、マヤちゃん……!?」

 

「アタシの願い、叶えさせてもらうわよ!」

 

マヤはルビィを近くの木に押さえつけると徐々に力を強めていき、ルビィも必死に抵抗するも、抗えずに徐々に息苦しさを感じてくる。

 

「だ、れか……」

 

「そこまでです!」

 

鋭い声が響く。

それと同時にマヤに向けて蹴りが放たれる。

 

「チッ!」

 

蹴りを放ったのは弦護。

マヤはルビィを手放し後ろに跳躍し、弦護は2人の間に立ち塞がる。

 

「ルビィ様、お怪我はありませんか?」

 

「けほっ、けほっ……う、うん、ありがとう天海さん……」

 

ルビィは喉を抑えながら咳き込むが、ケガはしてない。

 

「昨日の執事くん。また邪魔しに来たの?」

 

「えぇ、今度は逃がしませんよ。キリシマ鉄工社長の霧島光男さんの1人娘、霧島マヤさん」

 

「ッ!?そこまで調べたのね……だったらアタシの行動の理由もわかるわよね!」

 

マヤは苦々しげな表情で不快感を露わにし、声を荒げ弦護にそう尋ねる。

 

「キリシマ鉄工、黒澤家の関連会社の下請を主にしていた企業、つい最近運転を停止。それが昨日ダイヤ様をあなたが連れて行ったあの廃工場。そして」

 

「キリシマ鉄工の運転停止は黒澤家から入っていた以来の全てを打ち切られたこと、ですわね」

 

弦護の背後からダイヤが現れ、マヤを睨みつける。

 

「お、お姉ちゃん……?」

 

「ルビィ、今すぐに立ち去りなさい。今ならまだ巻き込まれずに済む」

 

「……う、うん」

 

言われた通りにルビィはすぐに駆け出しその場を離れる。

 

「相変わらずお優しいのですね」

 

「相変わらず一言余計よ。それで霧島さん、霧島鉄工とウチの話は円満に進んだ聞いていますわよ。ウチからの下請業務の大半を占めている以上、ウチからの仕事がなくなれば倒産は免れられない。ゆえに話し合いや損失補償を」

 

「ウソよ!あの人は言っていたわ。黒澤家に逆らえば倒産だけじゃ済まされない。だから父さんはどんな理不尽な要求でも呑まざるを得なかった!」

 

「……そうですか。そういうことをする人物なら何人か確かに思い当たりますわね」

 

ダイヤは悩ましげに頭を抱える。

 

「わかってるじゃない!」

 

「ですが、その件には私もルビィも関係ありませんわ。私たちに危害を及ばすのはお門違いでは?」

 

「うるさい!会社の倒産で父さんたちは家も売り払い東京のおばあちゃんの家に戻った。進学が決まっていたアタシは1人ここに残った。離れ離れにされた恨みは家族で償ってもらう!」

 

「もう何を言っても無駄ですわね……弦護」

 

「はい。しかし、本当によろしいのですか?」

 

「後でなんとでもするわ。あなたは目の前の仕事に集中して」

 

「かしこまりました」

 

弦護はダイヤを庇うように立ち、フォーゼドライバーを取り出す。

 

「また邪魔をする気!?いいわ、アタシの邪魔をするならアンタもまとめてやってやるわよ!」

 

《ラストワン》

 

その音声と共にマヤの持ったスイッチの形が禍々しいものに変わる。

 

「黒澤あああ!」

 

マヤは叫びとともにスイッチを強く押し込む。

マヤを中心に宇宙空間のような闇が広がり、そこにいくつかの光が形を成す。

 

「カメレオン座のゾディアーツ、ですね」

 

光が消えるとそこに立っていたのは昨日ダイヤを襲撃したカメレオンゾディアーツ。

そしてその身体から飛び出したものが一つ。

 

「霧島マヤ!?どういうことですの?」

 

スイッチを押してカメレオンゾディアーツへと変身したはずのマヤが繭に包まれ、ゾディアーツの身体から排出されていた。

しかしゾディアーツは動きを止める様子はない。

 

「完全体のゾディアーツに人間の肉体は不要、ということでしょうか」

 

そう言うと弦護はフォーゼドライバーを装着し、4つの赤いトランスイッチを押す。

 

《-3-2-1-》

 

「変身!」

 

弦護はもう手馴れたものだとレバーを引き手を振り上げそして

 

「宇宙キター!」

 

フォーゼへと変身を果たした。

 

「さて、もう一度あげていこうか!」

 

またも別人のようなテンションへと様変わりする。

 

「相変わらずそのテンションは慣れませんわね……」

 

ダイヤは頭を抱えため息をつく。

何年も前から弦護のことは知っているがそんな豹変する素振りなど一度たりとも見せたことはない。

からかったり楽しんだりすることが好きなのはわかっていたが、これは予想外すぎる、と。

 

「まぁまぁ、気にしないでよ、さて、それじゃあいくよ!」

 

《ロケット・オン》

 

「まずは人目のつかないとこにいかないとね!」

 

「ちょっと弦護!?」

 

まずは一発とロケットモジュールをつけたフォーゼの右手がカメレオンゾディアーツの腹部に命中し、そのままカメレオンゾディアーツを遠くへと連れ去る。

ダイヤの制止も全く意に介さない。

 

「全く……」

 

向かうのは、学校の裏手にあるみかん山。

 

「ここなら思いっきり戦える、はぁっ!」

 

そのままフォーゼはロケットモジュールのエンジンだけを切り何度も腹部にパンチを叩き込む。

普通の拳に比べ尖っているロケットモジュールで殴られたカメレオンゾディアーツは

 

「何度もボンボン痛いのよ!」

 

そう言って大きく後ろに跳躍すると勢いよく舌を伸ばす。

 

「当たらないって!」

 

フォーゼは当然のごとくゾディアーツの舌による攻撃をかわす。しかし

 

「そんなの予想済みに決まってるでしょ!」

 

カメレオンゾディアーツは当然にその動きを予想しており舌でフォーゼの背後にある木を掴む。

 

「はあああっ!」

 

そのまま舌を戻す勢いでフォーゼに向けて飛び蹴りを繰り出す。

 

「うぉっ!?」

 

さすがにそれは予想できなかったのかフォーゼは顔面にもろに飛び蹴りを食らってしまう。

はなんとか受身を取って起き上がるも頭を抑えクラクラとした様子。

 

「いたた……」

 

「もう一度!」

 

カメレオンゾディアーツは振り返りフォーゼの方を向くと同じようにまた舌を伸ばす。

 

「チィッ!」

 

なんとかそれを避けることに成功したが

 

「こっちももう一度なのよ!」

 

再びカメレオンゾディアーツは飛び蹴りを繰り出す態勢に入る。

 

「何同じ手に引っかからないって昨日も言ったでしょ?」

 

《チェーンソー》

 

フォーゼはランチャースイッチをチェーンソースイッチへと入れ替えるとそのまま背中からゾディアーツの舌の真下に入り込む。

 

「フォーゼのスイッチは4つだけじゃないだからね!」

 

《チェーンソー・オン》

 

コバルトブルーのチェーンソーがフォーゼの右足に装着され、フォーゼはそのまま右足を振り上げる。

 

「なっ、ちょぉっ!?」

 

高速で回転するチェーンソーにカメレオンゾディアーツは危険を察知するがすでに手遅れ、勢いは失われないまま自らチェーンソーモジュールへと飛び込んでいく。

 

「ぐあああっ!」

 

カメレオンゾディアーツは苦しみながらのたうちまわる。

 

「さぁ、これで終わりかい?」

 

「ナメるな!」

 

カメレオンゾディアーツは態勢を整えると木の幹へと飛び移る。

 

「アタシの本当の力を見せてやる!」

 

「なっ、姿を!?」

 

カメレオンゾディアーツはその姿を消す。

かすかに葉の揺れる音は聞こえるが、それだけではどこにいるかまでは把握できない。

 

「はっ!」

 

「しまった!」

 

フォーゼの背後からカメレオンゾディアーツが爪で切り裂く。

 

「クッ……また消えた…」

 

フォーゼは痛みを堪えながら背後を振り向くも既にゾディアーツは再び姿を消した後。

左手のレーダーモジュールを使えば位置を把握することは可能だが、探している時間を与えてくれるような敵ではない。

 

「なら合わせ技だ!」

 

《ビート》

《レーダー・ビート・オン》

 

フォーゼはチェーンソースイッチを外すとそこにビートスイッチをはめ込み発動する。

 

左手には黒を基調としたレーダーモジュール、右足にはスカーレットカラーのスピーカーが現れる。

 

「せーのっ!」

 

フォーゼが力強く右足を踏み込むと爆音が周囲に響き渡る。

 

「くぅーっ!自分にも効くぅー!」

 

そんなことを言いながらもレーダーモジュールでゾディアーツを探し当てる。

カメレオンゾディアーツは木の上で耳を塞ぎ固まっていた。

仕方がないとはいえ、先ほどまでの動きと比べると間抜けに見えてしまう。

 

「見つけた!」

 

《チェーンアレイ》

《チェーンアレイ・オン》

 

フォーゼの右手に装着されたのは鎖とそれにつながれたトゲ付きの鉄球。

 

 

「そこっ!」

 

「うぐぁっ!?」

 

まっすぐ放たれたチェーンアレイはゾディアーツの頭部を捉え、木から叩き落す。

 

「さぁて!」

 

フォーゼはチェーンアレイスイッチを取り外すとロケットスイッチを再びセットする。

 

《ロケット・ドリル・オン》

 

「とどめはやっぱこれでしょ!」

 

《ロケット・ドリル・リミットブレイク》

 

「いくぜ!ロケットドリルキィーック!」

 

「しまっ、ぐっ……ぐああああ!」

 

フォーゼのロケットドリルキック(命名者:ダイヤ)は見事カメレオンゾディアーツを捉え、ゾディアーツは爆散する。

 

 

「ふぅ……っと」

 

フォーゼは爆風で彼の元まで飛ばされてきたゾディアーツスイッチをキャッチする。

 

「これは怪人に変身するスイッチ?」

 

スイッチをグルグルと回しながら見ているとレーダースイッチが点滅し黒電話のような音が辺りに響く。

 

「通信?」

 

《レーダー・オン》

 

『おぉ弦護!ゾディアーツを撃破したようじゃな!』

 

「響輝様?どうかされましたか?」

 

弦護はいつもの執事口調に戻りモニターの向こうの響輝に応答する。

なぜそれを知っているのか、と疑問に思うが響輝がダイヤや弦護の行動をまるで見ているかのように知っていることは昔からある。

そう言う不思議な人物が黒澤響輝である。

 

『ゾディアーツのスイッチが手に入ったか?』

 

「はい、どうすればいいんですか?」

 

『もう一度スイッチを押せばスイッチが消えて精神がスイッチャーに戻る。それで退治完了じゃ』

 

その言葉に、なるほどと頷くと弦護はスイッチを押し込む。

するとスイッチを中心に小さな闇が発生しスイッチを飲み込むように消えていく。

 

「これで完了ですか。なんだかあっけないですね」

 

『何を言っておる。今回は相手がただの一般人だからこの程度で済んだのじゃ。精進せい』

 

「はい、わかりました。ところで響輝様、少し調べていただきたいことがあるのですが……」

 

 

 

 

 

〜〜〜

「というわけで今回の件はつい最近昇進した重役、『阿久津了』による独断専行。黒澤家の人物は関わっていないということです。残念ながら今更契約打ち切りをなかったことにはできないそうですが」

 

家に帰った弦護は響輝にキリシマ鉄工との契約のことを調べてもらいダイヤへと報告していた。

マヤは病院へと運ばれたが未だに目を覚まさない。

 

「そうですか……でもだとしたらなぜ彼女はあのような恨み言を?アレは明確に黒澤家を悪としている発言でした」

 

「恐らくですが、阿久津自身が彼女の言っていた『あの人』だったのではないでしょうか。問いたださないことにはなんとも言えませんが」

 

「なぜそう考えるの?」

 

「阿久津と同期の社員何人かに話を聞いたところ彼は虚言癖がある。ビッグマウスだ。見栄っ張りだ。そんな意見をよく聞き、さらに彼が黒澤家に対し恨みを持っているような旨の発言を聞いた、と言うものもいます。もちろんこれも伝聞ですので確かな情報はありません。しかし最大の証拠は……」

 

弦護は響輝の報告を思い出す。

 

〜〜

 

「阿久津は行方不明?」

 

『昨日の夜からな。飲みの誘いを断り早くに退勤してその後姿を誰にも見せていないらしい』

 

「会社付近の監視カメラを調べればどの方面に向かったくらいはわかるのでは?」

 

『それが会社の出入り口、そして出入りができそうな窓がある部屋、どこの監視カメラを調べても姿が映っていない。まさに神隠しのように消えてしまっている』

 

「そんな……だとしたら、まさか会社の中に」

 

『それもない。深夜帯は警備員が巡回しているしそれに見つからないようにするなら監視カメラをかいくぐることは難しい』

 

「なら、一体どこに……」

 

〜〜

「なるほど、それで、捜索願はでているの?」

 

「いえ、結婚もしておらず一人暮らしをしていたのでそもそも出す人間がいなかったと。一応会社側からは出す予定ではありますが……」

 

「そう……何か、大きなことが動こうとしているのかしら」

 

ダイヤはそう言って大きくため息をつく。

 

「なんで私ばかりこんなことに……」

 

廃校だけではなく、怪物騒ぎまで

胃が痛くなりそうなのを堪えながらダイヤは弦護の作った阿久津に関する資料を眺める。

 

「何があっても私がお守りします。たとえ、この命に代えても」

 

後ろの半分はダイヤに聞こえないように、しかし確かに弦護はそう呟くのだった。

 

 

 

 

 

〜〜〜

「な、なぁおい、出してくれよ!お前がスイッチを配れって言ったから俺は!」

 

暗いどこかの部屋。小さな檻のようなものに閉じ込められた男。

彼こそが阿久津了。

 

「うるさい男だ……」

 

そこに近づいてきたのは渦上になったピンクの髪が特徴的な怪人、ヴァルゴゾディアーツ。

 

「そこまで言うならば出してやろう」

 

そう言ってヴァルゴは手に持った杖を檻の中の阿久津に近づける。

 

「この世界からダークネビュラへとな」

 

次の瞬間、杖から真っ暗な空間が出現する。

それはまさにブラックホールというに相応しく阿久津を吸い込もうとする。

 

「ぐっ、う、おおおおお!」

 

最初は阿久津も檻につかまり必死に抵抗するが

 

「うわああああ!」

 

ついには耐えきれず暗闇の中に吸い込まれて消えていく。

 

「……さて、フォーゼが出てきた以上今までのようにのんびりと進めるわけにもいかないな」

 

「なら、次からスイッチは私が配りましょう」

 

「……ジェミニか」

 

ヴァルゴは背後に現れたゾディアーツに振り返らずに答える。

ピエロのような姿をしたジェミニは見えていないにも関わらず正解と言わんばかりに指で丸を作ってみせる。

 

「好きにしろ。だがもしお前の正体がフォーゼに知られるようなことがあれば、わかっているな?」

 

「もちろん、それじゃ結果を楽しみにしててね〜」

 

そう軽いノリで言うとジェミニは楽しそうに去っていくのだった。

 

 

 




ネビュラれた人カウント1
さっそく被害者が出ました
ちなみにこの作品ではダイヤの父親が響輝の息子(長男)でそれ以外にも兄弟がおりそれぞれ会社を経営していたりする設定になっています。
なのでダイヤさんの叔父や叔母もでてくるかもしれませんね
出てくるといえば鞠莉果南善子は次回に出せたらいいなと思っています

それと一応補足
アストロスイッチの番号はフォーゼ本編と同じですが、登場はナンバーごととは限りません(既に今回エレキを飛ばしてチェーンアレイやビートがでてますし)
それと宇宙にいくには現状ダイザーがないので不可能です(ちょっとだけ重要)
ではまた次回
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