それではどうぞ
ルビィがマヤに襲われたのと同時刻。
「あったずら」
花丸は教室に忘れたペンケースを机の中から取り出そうとする。
「あれ?」
その時小指に何か固いものがぶつかった。
他には何も入れていないはずと不審に思い机の中をがさごそと探し、ソレを取り出した。
「……スイッチ?」
花丸の手に収まったのはマヤが手にしていたのと同じ、ゾディアーツスイッチだった。
「そこで何をしている!」
「ずらぁっ!?」
背後から怒鳴られ花丸は思わずスイッチを後ろの方へ投げ飛ばしてしまう。
「アッハッハ!驚き過ぎだ。僕だよ」
「その声……」
花丸が振り返るとそこには風に髪をなびかせる少女が1人。
「芽依先輩!」
「久しぶりだね、マル」
花丸のことをマルと呼んだ少女は花丸に笑いかける。
天王寺芽依、それが彼女の名前。
「久しぶりずら!元気でしたか?」
「あぁ、もちろんだ。花丸も元気そうだね?」
芽依はそう言うと花丸の元に歩み寄りぐるりと見回す。
2人は中学時代の知り合いだった。そのつながりは
「はい!先輩は今も図書委員なんですか?」
図書委員、たったこれだけだったが、本が好きな2人は学年を超えてすぐに仲良くなった。
「もちろん、図書委員長だよ。ま、と言っても最近はもう一つの方が忙しくてなかなか手が回ってないけどね」
「もう一つの方?」
花丸の言葉に芽依はよくぞ聞いてくれましたと言わんばかりにフン、と鼻を鳴らす。
「僕はこの学院の図書委員長であり演劇部部長でもあるのさ!」
そう言って芽依は両手を腰に当て偉ぶったポーズをとってみせる。
「演劇部……」
小説が好きで自信家な面がある芽依にはピッタリだと花丸は納得しかけるが
「でも中学の時は読書の邪魔になるから部活はしないって」
「うむ、よく覚えていたね。確かにその通りだ。けれどそれは中学時代の私に読書以上の行動理由がなかったからだ。読書と同等、あるいはそれ以上に心惹かれるものがあれば当然僕はそれに向かう」
「ずらぁ〜……」
「まぁ簡単に言えば、演劇がやりたくなった。それだけだ。3年間かない高校生活、自分に嘘をつくのはもったいない」
そう言って芽依は花丸の目の前に指を突きつける。
「キミはどうだい?マル。キミの進む未来がどんな色なのか、僕は非常に興味がある」
「マルの未来ずら?うーん……」
頭にいくつかの光景が浮かんでは消える。
今まで読んだ本の登場人物たちは様々な場所で様々な生活をしていた。
そんな生活に憧れたりもしたが
「今は、ちょっと思いつかないずら……」
花丸は少し寂しげにそう呟く。
その目を、芽依は見逃さない。
「……そうか、なら今度演劇部に見学に来るといい。部活紹介で小さな劇を行う日が何日かある。友達も誘って来なさい。1年生の頃から将来について悩むのもいいが、まずは高校生になったことを楽しむのが大切さ」
「……はい!」
明るく返事をする花丸に、芽依は優しく微笑むのだった。
〜〜〜〜
「それで?阿久津は結局見つかっていないのね」
翌日、ダイヤは部活関係の書類に目を通しながら弦護に尋ねる。
「えぇ、警察の手伝いがあっても見つからない以上、恐らく見つけることは不可能に近いかと」
「捕まらないとなると、いつまたあのような事件がおこってもおかしくない。というわけね」
ダイヤは手を止め頭をおさえる。
そんな中、生徒会室の扉が叩かれる。
「どうぞ」
「失礼します!」
「ちょ、ちょっと高海さん、私まだやるなんて一言も……あ、弦護さん!」
入って来た2人の少女、うち1人は弦護を知る人物、桜内梨子、もう1人は高海千歌。
「おや、梨子さん。それにそちらは高海千歌さんでしたか。何かご用ですか?」
「はい!部活の申請書を提出に来ました!」
「スクールアイドル部、ですか」
千歌は弦護の目の前に、部活の申請書を見せ、弦護はゆっくりとそれに目を通す。
「……これは、受理できませんね」
弦護は目を閉じ、冷たい顔でその申請書をダイヤに尋ねることもなく一蹴する。
「え、なんでですか?」
「まず、浦の星女学院では部活の申請についていくつか条件があります。例えば、部活の申請には最低3人の部員が必要なこと、そしてどう活動するかを具体的に申請書の欄に書き記すこと」
そして弦護は鋭い視線を千歌に向ける。
「それに高海さん、あなたは部員欄に梨子さんの名前を記していますが、入室時の梨子さんの発言からして、無理にここに連れて来たのでありませんか?」
「そ、それは……」
「部活とは、あくまで自主的に加入するべきものです。それを他人に強要したりするような部活を認めるわけにはいきません」
「弦護さん、断れなかった私も悪かったんです。高海さんを責めないであげてください」
「とにかく、今のままではスクールアイドル部の申請を認めるわけにはいきません」
そこまで言うと弦護はその表情を和らげる。
「ですが、やる気があること、新しいことを始めることはとても良いことです。修正された新しい申請書を提出していただけることを楽しみにしています」
「わかりました。梨子ちゃん、ゴメンね」
「ううん、わかってくれればいいの。私はスクールアイドルにはなれないけど、できることがあれば手伝うか、ら……うぅっ……」
「「梨子さん!(ちゃん!?)」」
梨子が入学式の日に倒れたように、頭を抑えてその場に手をつき、苦しみだす。
「だい、じょうぶです。いつものこと、ですから」
梨子は弦護に支えられながらゆっくりとその身体をおこす。
「私、昔から身体が弱くて、こっちに越して来たのも療養のためなんです。だから、スクールアイドルにはなれないの。ごめんね、高海さん」
「梨子ちゃん……私こそ、そんなこと何も知らなくて……ごめん!」
「弦護、とにかく桜内さんを保健室へ。高海さんは部活の申請について知りたければ私が話を聞きます」
「かしこまりました。それでは梨子さん、失礼しますね」
「ひゃっ!」
そう言うと弦護は軽々と梨子の身体を抱き上げる。いわゆるお姫様抱っこの形だ。
「げ、弦護さん、この格好は、は、恥ずかしいです!」
「お気になさらず、入学式の日もこのようにして保健室まで運びましたから」
「え、ちょ、ちょっと待ってええええ!」
梨子の言葉を気に止めることもなく弦護は梨子を抱えたまま保健室へ向かう。
「あれだけ元気なら、大丈夫そうですわね。それで高海さん、と言いましたね?まずはスクールアイドル部設立の意義から聞かせていただけるかしら」
「い、意義、ですか……?」
ダイヤの質問に千歌は苦笑いしながらゆっくりと後ずさりする。
「えぇ、運動部にせよ、文化部にせよ、その部活が存在するのには意義があります。ただ自分たちがやりたいから、だけで部活の申請は通りませんから」
「意義……」
〜〜〜
「失礼します」
弦護が保健室の扉を開け、梨子をベッドに降ろす。
「お、執事くんじゃん」
「……留美さん、またですか」
梨子の後ろのカーテンが開き、奥のベッドから短髪の少女が顔を出す。
少女は頭や頰にガーゼを止めている。
「アハハ、沼津の学校のやつに絡まれちゃってさ。安心しなよ、手は出してないから」
「そういう問題ではありませんよ。女の子なんですから、傷が残ったら大変でしょう?」
「バーカ、アタシみたいなガサツな女、傷なんて残っててもカンケーないって」
「えっと、弦護さん、この人は?」
「ん?アンタ2年の転校生か。アタシは3年の柏木留美。鬼も恐れる喧嘩番長だ。近づくと火傷するぜ?」
そう言うと留美はドヤ顔で握りこぶしを梨子に見せつける。
「なんてことを言ってますが、今は卒業まで喧嘩しないと私と約束をしているので名ばかり番長です」
「しゃーねーだろ。ナヨナヨ執事に負けるなんて思わねーだろ普通」
「そう言って相手を見た目で判断するのはよくないと思いますよ?」
2人のやり取りを見て梨子は頰を緩ませる。
「仲がいいんですね、お二人は」
「へっ、誰がこんな野郎と仲良しだ。仲良くなるなら仮面ライダーみたいな熱い男がいいね」
「「仮面ライダー?」」
2人は同時に頭に疑問符を浮かべる。
「はぁ!?アンタたち知らないのか!?ってか転校生、アンタ東京から来たんだろ!?知らないとは言わせないぜ、6年前の怪物騒ぎ!」
「6年前、覚えてます!けど、仮面ライダーなんて初めて聞きました。確かその時に戦った人たちは、ぜ、ゼ、なんとかって」
「うろ覚えすぎだろ……と言っても、アタシも詳しくはないけどさ。6年前、東京で戦ってたやつらのことを仮面ライダーって言うらしい。探せば写真くらいネットにいくらでもあるぜ。ま、話の方はどこまで本当かわからないけどな」
「なかなか興味深いお話ですね。その後の消息は?」
「わかんないんだ。誰が変身していたのか、何人いたのか、その後どこへ行ったのか、何1つな。国が情報を隠してるなんて話まであるくらいだ」
「確かに怪物騒ぎを鎮静させるほどの兵力を所持しているものが国内にいるなんてただ事ではありませんね。秘匿されていてもおかしくありませんが……」
「どうしたんですか?弦護さん」
「仮面ライダー、ですか」
〜〜〜
「疲れたぁ〜……」
千歌はグッタリと机に突っ伏す。
弦護と梨子が去ったあと、ダイヤに部活の意義とはなんぞや、をダイヤにたっぷりと叩き込まれたので無理もない。
「お疲れ様、で、結果はどうだったの?」
曜によって千歌の頭の上に冷えたペットボトルが2つ乗せられる。
「部員が3人は必要なんだって、それも自分からやる気のある人が」
「梨子ちゃんは?」
「弦護さんに送ってもらって帰るって。梨子ちゃん、身体が弱いからスクールアイドルは一緒にできないって、悪いことしちゃった……」
「あらら、それじゃあ1から集め直しか。私も手伝ってあげたいけど、水泳もあるし、両立は難しいかなぁ」
曜はあっけらかんとそう言うと頭の後ろで手を組む。
「ま、当たれる所から当たってみようよ」
曜はそういうと白い歯を見せて笑顔を千歌に向けた。
〜〜〜
「やぁ、マル。それにそっちはルビィちゃんだったかな?」
「は、はい!黒澤ルビィです。お久しぶりです」
「そうかしこまらなくてもいいさ。適当に座ってくれ。もうすぐ始まるところだ」
花丸とルビィの2人は体育館で行われる演劇部のミニ公演を訪れていた。
満席とはいかないが、多くの生徒が見学に来ている。中には2年生3年生の姿も見える。
「ん?アレは……じゃあ2人とも、また後でね」
芽依は知り合いを見つけたのか2人に別れを告げると早足でその知り合いの元へと向かう。
そしてそれとは逆に2人に向け歩いて来る影が1つ。
「おや、ルビィ様、花丸さん」
「あ、弦護さん、お久しぶりです」
「こ、こここんにちは」
弦護の挨拶にルビィは硬直したようになり、花丸の後ろに隠れてしまう。
「ルビィちゃんが男の人が苦手なのも相変わらずずら」
「ご、ごめんなさい」
「お気になさらないでください。むしろ急に声をかけた私にも非がありますから。お2人も演劇部の公演を?」
「はい、部長の芽依先輩が中学時代の知り合いで」
「あぁ、そういえば天王寺さんも同じ中学校でしたね……私は彼女はどうも苦手ですが」
「お、言ったね執事くん!」
ボソッと呟いた弦護の背中をバシン、と強烈に芽依が叩いた。
「うわっ!?天王寺さん、脅かさないでください……」
「ハッハッハ!まさか君が僕のことを苦手だとはね、意外だね。君に苦手なタイプなんてないかと思っていたよ」
「いえ、失言でした。申し訳ありません」
「君もそんなにかしこまらなくていいさ。それで、演劇部の査定はどうだい?」
「今回は査定というほど大げさなものではありませんよ。ただ、強いていうなら客席誘導もスムーズですし、今のところは何も問題はないかと」
「そっか、なら部費のアップ期待しておくよ。それじゃ、ゆっくりしていってくれたまえ」
そう言って芽依は舞台袖へと戻っていく。
「ふぅ、心臓に悪いですね。あの人は」
「なんで苦手なんですか?」
「なんででしょう。掴み所がないというか、どこからが現実でどこからが『演劇』なのかがわからないところですかね」
「ずらぁ〜……ルビィちゃんはなんで男の人が苦手なんずら?」
「えっと……なんでだったっけ……」
ルビィは頭を押さえて考えるがなかなか答えが見つからずにいるらしい。
「苦手に理由がないことなんて多々ありますよ。例えば私は虫が苦手です。意外だとよく言われますが」
「そうなんですか?全然見えないずら」
「そんなものなんですよ、人間なんていうのは。さぁ、劇が始まります」
3人は席に着くとほぼ同時に体育館の電気が消え、ブザーが鳴る。
「ただいまより、第一回演劇部、部活見学演劇を開始します。演目は、マクベス」
アナウンスが終わるとともに開演する。
芽依が演じるのは、主役であるマクベス。
それ以外のキャストは短い役所の人間は1人2役になり少人数であることをカバーしていく。
そうして何事もなく劇は終盤まで進んでいく。
場面は5幕、マクベスの城へイングランド軍が攻め入るシーンだ。
「バーナムの森が動かなければ私は決して敗北しない、私の王位は揺るがない!」
狂ったようにそう叫ぶマクベス、しかしそこへ木の枝を隠れ蓑にしたイングランド軍が迫る、のだが
「ん?……なんだ」
芽依の眉が歪む。しかし彼女はそのまま演技を続ける。
「バーナムの森が、動いているだと!?」
マクベスは城を飛び出し、剣を構える。
「やっぱりだ……みんな目がおかしい。どういうことだ……?」
芽依は誰にも気づかれないようにそう小さく呟き、イングランド軍役の部員たちへと向かっていくが
「様子がおかしいですね……」
弦護が小さく呟く。
演劇の終了予定時間を考えれば、このシーンはバッタバッタとマクベスが兵士をなぎ倒し、マクダフと対峙するはず。しかし、兵士は倒れない、それどころか、本気でマクベスを、芽依を倒そうと剣を振りかざしているように見える。
「すまない、みんな」
小さく呟いたかと思うと芽依は次々に兵士役の生徒の剣を跳ね飛ばし、剣の腹で首の後ろや頭を叩き、気絶させる。一歩間違えば大変危険な行為だが、ためらっている暇はないと舞台の下手側へと向かう。
「そこにいるのは誰だ!」
そして彼女は剣を投げつける。
しかしその剣は何者かに弾かれる。
「さすがは『部長』だなぁ、簡単に見破られるとは」
「キャアアアア!」
客席から悲鳴が上がる。
下手側からゆっくりと現れたのは、演劇の舞台には似つかわしくない怪物、まるでのっぺらぼうのように何もない顔面と巨大なツインテールのような髪が特徴のゾディアーツだった。
「ゾディアーツ……!花丸さん、ルビィ様を連れて外へ!」
弦護は慌てて自らも舞台へと登り、芽依の横に立つ。
「弦護くん、きみはこの怪物を知っているのかい?」
「えぇ、ですが説明している暇はありません。とにかくこいつを外へ!」
弦護は落ちていた剣を2本拾い、1本を芽依へ手渡す。
「うちのカワイイ部員に手を出した罪は重いよ」
「フン、たかが人間に何ができる!」
そう言うとゾディアーツは髪をしならせ、鞭のように2人に向け振るう。
「なるほど、髪の毛座の(コーマ)ゾディアーツですか」
「ハァッ!」
2人は剣を髪に向け振るうとバサリと髪の毛が斬り落とされ地面に落ちる。
「真剣!?何故こんなものが」
「大方コイツに大道具を入れ替えられたんだろう。だが好都合だ、押し出そう!」
芽依はそう言うと身体を捻り、勢いをつけコーマゾディアーツを斬りはらう。
大したダメージにはなっていないが、コーマゾディアーツは舞台上から吹き飛ばされ、客席のパイプ椅子を吹き飛ばす。
「もう1つ!」
舞台から跳躍した弦護は唐竹割りの要領で剣を振り下ろす。
こちらも大きなダメージにはならずとも、頭を抑えたコーマゾディアーツはフラフラと後ずさる。
「今だよ!」
芽依はその間にコーマゾディアーツの背後に回り込み、体育館から裏庭へと続く扉を開く。
真っ暗闇だった体育館に突如光が差し、弦護は目を細めながらもコーマゾディアーツの懐に飛び込む。
「とぁっ!」
弦護の鋭いミドルキックはコーマゾディアーツを体育館の外へと追いやる。
「天王寺さんは部員の皆さんを!」
既に観客も逃げ去った体育館に残された部員たち、気絶させたのは芽依なので心配はいらないが、放置はできないそして何より、芽依に変身するところを見られてはいけない。
「勝算はあるのかい?」
「はい!」
弦護の言葉を聞いて芽依はステージ場へと戻っていく。
「弦護!」
裏庭には既にダイヤがやってきており、コーマゾディアーツを見つめている。
「お嬢様、離れていてください。このゾディアーツ、恐らく人をコントロールできます!」
演劇部全員がゾディアーツに従って芽依を襲ったとは考えにくい。
ならば何かしらの方法を使って襲わせたと考えるのが妥当だ。
「なら私を操られる前に倒して見せなさい。」
「また無茶なご注文を……仕方ありませんね!」
弦護はドライバーを装着する。
《-3-2-1-》
「変身!」
弦護はもう慣れたと言った手つきでフォーゼへと変身する。
「宇宙……キター!」
「な……お前もゾディアーツか!」
「違うな、俺はゾディアーツから学園を守る正義の戦士……仮面ライダーフォーゼだ!」
「かめん」
「らいだー?」
ダイヤとコーマゾディアーツは素っ頓狂な声をあげる。
「なんでもいい、邪魔をするなら消させてもらう!」
「そう、なら開演だ!」
《チェーンソー・オン》
コーマゾディアーツは何度も何度も髪の毛を振り回し攻撃する。
フォーゼが何度斬り落とそうとすぐに再生し、戦いは硬直状態かと思われたが
「ッ!?しまった!」
フォーゼは慌てた様子でコーマゾディアーツの攻撃を避け始める。
「髪の毛が絡まった!」
「かかったな!」
よく見るとチェーンソーモジュールの至る所にコーマゾディアーツから斬り落とされた髪が絡まりその動きを封じている。
「髪の毛座だけあって斬り落とされた後の髪まで使えるってわけか。厄介だな」
チェーンソーモジュールを解除しながらフォーゼはなんとか素手で髪を弾いていく。
少し効率は落ちたものの、コーマゾディアーツの髪の毛はフォーゼにダメージを与えるまでには至っていない。
「チッ、さっさと諦めたらどうだ!」
「そっちこそ、おとなしく姿を見せなよ!」
《ドリル・オン》
フォーゼはドリルモジュールをセットすると左足を正面に突き出す。
「巻き取らせてもらうよ!」
ドリルモジュールはコーマゾディアーツの髪の毛を絡ませながらも勢いよく巻き込んでいく。
チェーンソーモジュールで切り落としていた時とは違い、髪の毛を伸ばす限界が来たのか、コーマゾディアーツはじりじりとフォーゼに引き寄せられていく。
「さぁ、正体を見せてもらおうか」
《ドリル・リミットブレイク》
フォーゼはエンターレバーを引き、リミットブレイクを発動させるとドリルの回転速度が跳ね上がる。
「なっ、うぐぐぐ……うわあああっ!」
数秒は耐えていたものの、ついに耐え切れずコーマゾディアーツは自らドリルモジュールに飛び込んでいく。
「ハーイ、そこまで」
風を切る音と共にコーマゾディアーツの髪が切り落とされる。
切り落としたのは、2枚のトランプだった。
「新手か!」
フォーゼがトランプの飛んで来た方を見るとそこには金色の刺繍入りのクロークを羽織り、ピエロのような姿の怪人、ジェミニゾディアーツが立っていた。
「ジェミニゾディアーツ、よろしくね、フォーゼくん。コーマちゃん、ここは一度撤退なさい」
「クッ……仕方ない」
そう言ってコーマゾディアーツは退散しようと髪を伸ばし遠くの木に巻き付け、ターザンの要領ので飛んでいく。
「待て!」
「待つのはフォーゼくんの方だよっ」
コーマゾディアーツを追いかけようとするフォーゼの首を、ジェミニが掴み、壁に叩きつける。
「ガハッ!速い……!」
「今回は挨拶に来ただけだからいいけど〜、あんまり邪魔をするなら……消す」
それまでの軽いノリからはかけ離れたドスの効いた声でフォーゼにそう告げるジェミニ。
「弦護!」
「おっと、お嬢様も動かれちゃ困るな〜、じゃないと、体育館にこの爆弾、投げ込んじゃうかもなー?」
そう言ってジェミニが見せたのは爆弾の絵柄が描かれたトランプ。
「そんなハッタリ!」
「だと思う?」
ジェミニはトランプを近くの木へと投げつける。
するとトランプが木に刺さると同時に爆発し、ダイヤとジェミニの間に倒れる。
「わかってもらえたかな?……さて、コーマちゃんももう逃げたし、そろそろいいかな、チャオッ」
そう言うとジェミニはフォーゼを投げ飛ばし、自身は小さな爆発を発生させると煙に包まれ、煙が消え去る頃にはその姿は既に消えていた。
「クッ……遅れをとりました。申し訳ありません、ダイヤ様」
弦護は変身を解くと首元をさすりながらダイヤへと歩み寄る。
「いいえ、幹部クラスがいることがわかっただけ収穫としましょう。ですがあの力……ただものではありませんね」
「えぇ、力も、気迫も、カメレオンやコーマの比ではありませんね。ですがまずはコーマです。なんとか正体と目的を明かさなければ」
「そっちに関してはすぐにわかると思うよ」
「天王寺さん?」
部員の介抱を終えたのか、体育館から芽依が顔を出す。
「僕を襲ったあの怪物の正体は、演劇部の部員だ」
芽依はそう言うと数本の髪の毛を弦護に見せるのだった。
ゾディアーツの出る順番も原作とはだいぶ異なります。
オリキャラやたら多くなるので出番が多いキャラの紹介はそのうちしていけたらと思います。
ではまた次回