6つ子が吹奏楽部へ   作:ボコ砂糖野郎

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練習風景 ① 午後練習

そうして授業が終わり吹奏楽の本練が始まる。

とは言っても赤塚高校の吹奏楽部は授業後の練習は4月は基礎練二時間を義務付けているのでやっていることは朝練とはほとんど変わらない。変わったことといえば楽器を吹く前に歯磨きをすることぐらいだった。歯磨きセットを忘れるとその日は楽器は吹かせてもらえない。

先輩たちは練習の合間に初心者の一年生に楽器の手入れの仕方やタブーを教え込む。特にパーカスはそれが激しい。

「ティンパニーのフチは持つなって言ってんだろうがァァッ!」

「遊びに鳴らすなァ!」

「楽器名覚えろッ!」

「メトロノームは友達だァ!」

十四松含むパーカスの一年生は必死にメモを取る。

 

先輩たちは二時間基礎練やればコンクールの曲や野球応援の曲をできるが、一年生はずっと基礎練だ。

チューニング……

ロングトーン、ロングトーン、ロングトーン、ロングトーン、ロングトーン……

スケール、スケール、スケール、スケール、スケール……

タンギング、タンギング、タンギング、タンギング、タンギング……

アルペジオ、アルペジオ、アルペジオ、アルペジオ、アルペジオ……

また戻ってロングトーン、ロングトーン、ロングトーン、ロングトーン、ロングトーン……

ロングトーンとは音をひたすら伸ばす練習である「ドーーーーーーー、ドーーーーーーー」

スケールとは音階練習である「ドーレーミーファーソーラーシードー」

タンギングとは音と音の区切りをつける練習である「ドッドッドッドッ」

アルペジオは分散和音の練習である「ドーソードーミードーソードー」

これらの練習をしていると「一年生は中庭に来い」と呼び出される。

中庭に行くと昨日一年生に挨拶を叩き込んだ先輩が昨日と同じように仁王立ちで待っていた。

「今から挨拶の練習をします。ほんっと一年生声が小さいんだから。」

え?またやるの?とチョロ松は思う。

 

「こんにちは!!」

「「「こんにちは!!!!」」」

「こんにちは!!」

「「「こんにちは!!!!」」」

 

中庭で吹奏楽部がこのような練習をしているのを、何部かは知らないが一年生の生徒が苦笑いしながら「あれ、文化部だよな?」と校舎から見てくる。そうだよ、吹奏楽部だよと視線で返事をしておいた。

 

「じゃあ朝のやつもついでにやります。」

 

朝のやつまたやるの!?てかついでってナニ!?

 

「我々は赤塚高校吹奏楽部員である!!」

「「「我々は赤塚高校吹奏楽部員である!!!!」」」

「誰にでも恥ずかしくない演奏を!!」

「「「誰にでも恥ずかしくない演奏を!!!!」」」

 

中庭を通りかかったチアリーディング部が「ナニアレ?宗教?」とか言っている。僕もそう思ってる。

あとからクラリネットの同級生から聞いたが、あの先輩はホルンの二年生のエチ子という名前で一年生指導係らしい。そんな係あったっけ?てかなんでその係を二年生にやらせるの?エチ子先輩……もう名前は完璧に覚えた。

 

 

終わったらまた基礎練。こうして17:30分の終了時間になった。

 

先輩「え?部活終了?予定にはそう書いてあるけど、実際は18:30だよ。」

 

それじゃあ予定表の意味ないじゃん!!最初から18:30って書いておけよ!!!

一年生はそう思ったが皆口には皆出さなかった。

それから18:30から片付けをして掃除して各パートでミーティングを開いてその日の反省をして解散となった。学校の門を出たのは19:00頃だった。

 

 

帰りの電車の中の僕らの話題は楽器についてだった。

「ねぇ、フルートで酸欠起こしてるのは僕だけなの?」

「そりゃそうだろ。フルート吹いてるの俺らの中でお前だけなんだからな、トド松。」

「違う、酸欠起こしてるのは僕だけかって言いたいの。」

「ちゃんと息吸いなよ。吸ってる量より吐いてる量の方が多いんじゃないの?」

「そうだったら死ぬし!」

「空気の大赤字…」

「ぼくにはかんけいなーい!」

「パーカスってどんなことやってるの?」

 

パーカスは管楽器ではないのでロングトーンなどはしない。吹奏楽部でも少し浮いたパート、それがパーカッション。

 

「バチ持って〜机に練習台とメトロノームを置いて、たったかたーってしてたよ。」

「ぶっちゃけ言っていい?」

「やめろ兄貴。」

 

おそ松の次の言葉が読めたカラ松は制止をかけるが、おそ松は言葉を続ける。

 

「それって簡単じゃ…」

「ああああああ〜!!そういえばさ!十四松兄さんのいる第一音楽室からものすごい大喝声が聞こえたりしたんだけどさ〜あれはなに?」

「あぁ〜あれはね〜。」

 

よし話そらせた。誰だって自分のやってることを簡単とか言われたら怒るでしょ。おそ松兄さん無神経過ぎ。

 

「楽器の運び方を間違えたり、落としたりしたときに怒られるんだよ」

「へぇ…そうなんだ……。」

「だからこうやってメモを取るの」

 

十四松はノートを出して5人に見せる。そのノートには書き殴られた文字の楽器の説明が4ページにわたっており、十四松の今日が伺えた。

ぶっちゃけた話トド松もパーカスが一番楽と思っていたが、このノートを見てそれが消えた。もしかしてパーカスって先輩、楽器含め一番厳しい部署なのかもしれないなと考えを改めた。

 

「スクラップブックは明日学校に届くんだって。来たらそれに清書するんだ!」

がんばれ。

 

「あ、明日といえば」

一松が思い出し声をあげる。

 

「明日帰りに楽器屋よるから。」

「楽器屋?」

「あぁ、僕もそのつもりかな。ほら赤塚駅前の楽器屋だよ。」

 

赤塚駅は赤塚高校の最寄駅である。チョロ松がその詳しい位置を口で説明する。それを聞いたあとおそ松が「何買うの?」と質問してきた。

 

「色々。」

「あぁ〜俺もなんか油買えって言われたらわー」

「油じゃなくてオイルね。」

「一緒じゃん。」

「腹減ったー」

 

彼らは電車から降り、家へと歩き始めた。

家についたのは20:00前だった。

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