6つ子が吹奏楽部へ   作:ボコ砂糖野郎

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木管 vs 金管 〜冷戦〜

突然、オーディションを間近にして赤塚高校吹奏楽部は真っ二つに割れた。

 

本当に突然木管楽器と金管楽器に分かれて対立した。

 

先輩たちにとってはそれは突然ではないらしく、因縁絡みらしい。それにチョロ松たち一年生も巻き込まれた。

 

 

 

 

 

吹奏楽部での愚痴をぶちまけるスレ 2本目

 

132 : 名無しさん *

初の書き込みです。

最近うちの吹奏楽部で木管と金管で対立しているんです。オーディションやコンクールが近いのにこんなことしてていいのかなって。

 

133 : 名無しさん

金管と木管吹いてる奴はそれぞれ全く別の人間

はっきり分かんだね

 

134 : 名無しさん

どの程度かにもよるがな

 

135 : 名無しさん *

>>134

無視、悪口のダブルパンチです。

 

136 : 名無しさん

そんなのどこの吹部でも起こるわボケカス

ここで書き込むまでもないわ

 

137 : 名無しさん

金管と木管は男と女並みに分かり合えない存在だって前スレで結論で出たばっかじゃん

ましてや女子ばっかの学生の部活ではさぁ

 

138 : 名無しさん *

132、135ですが僕の部活では男子が四人に一人という高い割合でいます。

ちなみに僕は一年の男子高校生で、クラリネット吹いてます。

そしてただ単に対立しているわけでなくちゃんとした理由があるんです。

 

139 : 名無しさん

へぇ

 

140 : 名無しさん *

その対立の原因は部費の使い道についてなんです。

木管は「リード代が高い!音楽はみんなで作るものだから部費からみんなでリード代を払おうよ」と言って、金管は「それを分かってて木管選んだんだろ。なんで自分らは全く使わないリードのために金を出さなくちゃいけないの?」

という感じです。

141 : 名無しさん

木管と金管の対立ってパーカスと低音が取り残されるよね

でも>>140のとこはフルートも取り残されてるの?

 

142 : 名無しさん *

>>141

パーカスと低音は金管側です。

フルートはよくわからないけど木管側です。

金管側に行けばいいのに。

 

143 : 名無しさん

うちのところはリードは部費からだしてるよ

ていうか今の時期にこんな事やってていいの?

 

144 : 名無しさん *

正直ヤバいと思ってます。今週にオーディションあるし、来週からテスト期間に入ります。

うちは部員が約130人のかなり多い方なのでそのギスギス感も半端ないです。先輩から金管の人とは絡むなと言われるけど、金管に兄弟がいるからどうしようもないし……

 

145 : 名無しさん

リード代は部費から出す必要はないだろ。そんなこと言い出したら金管もマッピ買えってことになるし

そもそも>>144はどう思ってるさ

 

146 : 名無しさん *

僕はとりあえずその問題は置いておいて練習しようよ……と思ってます。

でも去年も一昨年もこのリード問題を木管チームは唱えてきたけどそのたびに金管側からなぁなぁにされてきたらしく先輩たちの怒りようがヤバいです。

ちなみに火種はサックス一年です。

 

147 : 名無しさん

お前は正しいよ。今持ち上げる問題じゃない。

だけど先輩たちの中じゃ今やらなくていつやるの?って感じなんだろうな。

 

148 : 名無しさん

どうせそういう学校はまともな演奏できやしない。人数が多いことだけが取り柄で「こんなところにいる私ってすごい」ってだけだろ。

 

149 : 名無しさん *

ちなみに一昨年は県大会銀賞らしいです。去年は地区大会銀賞。

 

150 : 名無しさん

県大会で調子こくなよ

反論したつもり?

 

151 : 名無しさん *

なんかコンマス(クラリネットパーリー)も僕と同じ考えで「練習しようよ……」という感じなんですが、パートの人たちの声がデカイのでそれに仕方なくつきあって金管の人たちに意見しているんです。

自分はそう考えていないのにさも自分がそう考えているように意見しているのを見ているのが辛くて……。

 

152 : 名無しさん

ほっとけ

お前は上手くなることだけ考えろや

どうせ先輩なんかすぐにいなくなるし

 

153 : 名無しさん

>>151

学校特定した

 

154 : 名無しさん *

>>153

やめて

 

155 : 名無しさん

そしてリード楽器なのに話題にすらならないオーボエ

 

156 : 名無しさん

そしてさらに忘れられるファゴット

 

 

 

 

 

深いため息をついてチョロ松はクラリネットケースと譜面台と楽譜と小物を入れた袋を持って廊下を歩く。

 

状況は先ほどの通りだ。部費の使い道で意見がはっきり割れた。おかげで今部活は空中分解しているといってもさしつかえなかった。不穏で粘着な空気はリードをさらに痛めるようだった。

 

僕はその問題を取り上げなくてもいいと思ってる。少なくとも今は。確かにリード代は高いから部費からだしてもらいたいけどさ……。

ただ単に不仲になったのなら時間が解決するし、なぁなぁになって終わることがほとんどだ。しかし今回はちゃんとした問題の争点があるので時間が解決することはまず無いと言ってもよい。それにコンクールの人たちには時間が解決するのを待っている暇はなかった。

 

「おはようございます。」

「おはよー」

 

練習するところに着き、先輩に挨拶する。先輩はクラリネットを組み立てながらしていた会話を一瞬断ち切りチョロ松に挨拶を返した。そしてまた会話を再開する。

 

「それでさ、なんで金管の人ってあんなに練習しないの?遊んでばっかでさ、腹が立ってくるよ。」

「ほんとほんと。でもその割には色々なこと全部上から目線で言ってくるし。あ、この前譜面台を手元から落としてたよ。ガシャンって。」

「え〜!学校の備品なのになにやってるのよ!」

 

ここのところのクラリネットパートでの雑談はずっとこんな内容だ。ずっと悪口だ。

一度火がつくといつもは我慢していた不満が間欠泉のようにあふれだし、相手の些細なミスもよく見て非難するようになる。きっと金管の方でも木管の悪口言ってるんだろうな。

 

ちなみにクラリネットの悪口大会参加していない先輩や同級生もいるが、その人たちはきゅっと口をつぐんで無言のまま。

みんなそれぞれ考えがあるが一つの集団に属してしまった以上その集団の意向には逆らえない。それはパートリーダーでさえも。

じゃあ集団の意向ってなんなんだろう。みんなが空気を読みあってなんとなく固まった方向なのだろうかと思う。

 

 

 

生徒のみの合奏を予定していたある日。サックスの人がクラリネットのところへやってきた。

「今日、コンクールの生徒合奏があるけど私たちそれには参加しないから。」

とだけ言ってまた去ってしまった。要するにストライキだ。あ、ボイコットともいうのかな?

ともかくクラリネットのみんなは「そうだよね!自分らの意見をしっかり主張することは大事だよ!」「『部費からリードを買ってくれないのなら、私たちとちゃんと話し合う気がないのなら、私たちは合奏には参加しません!』ってちゃんと行動で伝えるべきだよね!じゃなきゃまたなぁなぁで済まされちゃうもん!」とノリノリだった。

パーリーのヤヨイがそれを聞いて複雑そうな顔をしたのを僕は見逃さなかった。

 

 

 

 

コンクールの生徒合奏が終わったあとトランペットの練習場所にパーリーが戻ってきた。おそ松たち一年生は「お疲れ様でした」と明るい声で言ったが、トランペットのパーリーには届いてなかった。彼女は大きな声で怒りを叫んだ。

 

「なによ!アイツら!!合奏をボイコットするなんて!!」

 

それを聞いておそ松たちの笑顔がしぼんだ。

パーリーは拳を震わせ下を向く。一年生たちは彼女のほぼ正面にいるはずなのに、彼女の前髪でどんな顔をしているのかがわからなかった。

 

「みんなで上を目指そうって言ってきたのに……!なんで……?なんで……?」

 

声はどんどん小さくなりやがて泣き始めた。

先輩が「大丈夫だよ」「今日の合奏をまとめてくれてありがとね」「木管の人たちどうかしてるよね」と彼女を慰める。

おそ松たち一年生はそれを固まって見ていることしかできなかった。

 

おそ松自身はこの部費とリードの問題に関しては特になにも考えていなかった。考えて何か意見を持ったところで一年生の自分には何もできないからだ。だから思考を停止させていた。

だが今思った。いつまで思考を停止させていていいのだろうかと。

 

 

 

 

 

なんか木管組が合奏をボイコットしたらしい。

十四松はそれをパーカスの先輩から聞いた。

 

「リード代出せっていうならパーカスのスティック代も出せよって話だよね。」

「そうだよね。」

「なんかこの部活嫌になってきた。」

 

パーカス一年生たちは先輩がいないところで口々に感想を言う。

 

「でもさ、いつまでもこんな雰囲気、嫌だよね。」

 

十四松は低いトーンで言った。一年生は頷きながら「もうすぐテスト期間で休みになっちゃうし。」と賛同した。

 

「テスト期間でみんな綺麗さっぱり解決してくれればいいのに。」

「そうだよな。」

 

でもそうはいかないのだ。そして自分ら一年生には何もできないとパーカスの五人の一年生たちははっきりとわかっていた。

 

 

 

 

木管の担当の人でも合奏をボイコットしたくない人は何人もいた。しかし皆、その後のことが怖くて参加したくないボイコットに参加した。

それでも合奏をボイコットしなかった木管楽器がいた。

ダブルリードパートだった。

 

最初にサックスの人が合奏に参加しないと伝えに来たとき一松は「あっそう」としか思わなかった。コンクールの曲の合奏なので自分はその合奏には参加しないし、正直今の「問題もなるようになれば?」というのが本音だった。金管と木管が不仲で部活の雰囲気がどうなろうと自分には関係ない。でもパーリーのミサキはどうするかが気になったのでそちらをチラリと見た。

 

 

「マトイちゃん、オエリちゃん……」

 

彼女は二年生の後輩の名前を呼んだ。そしてオーボエを持ったまま立ち上がった。

 

「あんたたちがどう思ってるかはよく知らないけど、合奏だけは絶対に参加してもらうからね。」

 

「も、もちろんですよ!」

「ミサキ先輩がそう言うのであれば!」

 

二人は全力でミサキに賛同し、できるだけ場の雰囲気を明るくしようとしたがミサキの曇った顔は変わらなかった。

 

(私は部長だもんね。あぁ、めんどくさっ。)

 

そう思いながら彼女は合奏に参加した。

 

 

 

 

 

 

「そう、それで昨日予定していた合奏は分奏という形になったんですね。」

「はい……。」

 

吹奏楽部の幹部四人(部長、副部長、副部長、コンマス)は状況を顧問の武水先生に報告する。コーヒーの匂いでいっぱいの職員室で四人は黙った。

 

「リードを部費から出すか出さないかの話だけど……問題は全部あなたたちで解決してください。」

 

「合奏がまともにできないなら今週予定していたオーディションはやりません。」

 

「「……!?」」

 

「全員が気持ちよく合奏ができるようになったらオーディションをします。」

 

「…ッ!でも先生……!」

 

「それがいつになるかは知らないけどとにかく……」

 

先生に異議を唱えようとした副部長を制して先生は突き放すように言った。

 

「私は別にコンクールが全てじゃないって思ってるから、コンクールに参加できなくなっても構わないです。それはよく話し合ってください。以上。」

 

「「はい……」」

 

 

彼女たちは死にそうな目をして皆が練習しているところへ戻った。そのときに四人の間での会話は無かった。

そして静かに今週はオーディションをしないということを部員に伝えてまわった。

 

 

 

 

オーマイガー!オーディションやらないだって?

 

伝えを聞いて驚くトロンボーンパート。カラ松もその一人であった。

気がついたら皆で円になって座ってミーティング状態になった。

 

「本当にやらないんですか!?」

「らしいな…幹部さんたちによると……。」

 

皆で「えぇ……」と脱力したそこには不満だけが残った。

 

「もう!全てはボイコットを起こした木管が悪いのに!私は吹奏楽がやりたくて部活に入ったのであって、こんな茶番に付き合う為じゃないよ!」

 

トロンボーンの不満大会には一年生も混じっていたがカラ松は何も言わなかった。何も言わず、この吹奏楽部の行く末を深く心配した。

 

先輩たちが話す。

「はいみんな。静粛に。で、これから俺たちはどうするのかというと……」

「どうするもこうするもないでしょ。成り行きに任せるままでしょ。」

「まぁそうなんだが……。」

 

パーリーは押し黙ってしまった。

 

「なんか武水先生ってあんまりとっつきにくい感じですよね。」

 

カラ松の隣に座っている一年生が言った。

 

「とっつきにくいどころじゃないよ。ドライモンスター過ぎて怖いよ、あの人。」

「いっつも合奏以外のことは放っておかれるし……」

「そうなんですか……。」

「うんそうだよ。部員集めも、楽器運送のトラックの手配も、部員の出席状況の管理も、依頼演奏の出張も、部費の管理も、全部生徒に任せてるよ。だから私らにとっては顧問というより講師の人って印象かな。」

 

そうなのか。部活の運営など俺はは気にしたことがなかったが、実態はこうなっているのか。

 

「ほんとあの先生なんもしないですよね。まぁ所詮部活の顧問なんてボランティアなんですけど。」

「でもちょっと放置しすぎじゃないの?構われすぎてもうざいけど。」

 

皆のやるせなさがため息に変換されてその場に長くとどまる。

 

そのため息の余韻が消えるほど時間が経ったあとにパーリーが「練習するか。」と空気を切り替えた。三年生の一人が「問題解決の案はないんだね。」と言い、彼は「多分それは幹部さんたちが考えるんじゃないか。」ととぼけた顔で言った。

 

カラ松の持つトロンボーンは今日も長い光沢を被っている。それを見て彼は「楽器は変わらない。変わるのはいつも自分だ……」という有名な名言を改変したものを思い浮かんだ。

……メモしておこう。




松ちゃんねるが嫌いな人にはすみません。
どうすれば今の現状が分かりやすく伝わるか考えた結果です。
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