6つ子が吹奏楽部へ   作:ボコ砂糖野郎

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木管 vs 金管 〜熱戦〜 ①

テストが終わり部活が再開した。チョロ松はあの部活の雰囲気がテスト期間を挟んだことによりどのように変化するのかが気になっていた。

もしかしたら熱りが冷めて前の状態になっているかと期待していたが、そのささやかな期待は見事に裏切られた。

 

(何これ…前と雰囲気が変わりゃあしないじゃないか。)

 

部活の様子はまるでテスト期間がなかったかのようにギスギスとしたものだった。鉛のように重く、ジャングルのようにジメジメとした空気はまだ音楽室に居座っていた。

一年生の自分にはどうしようもないと言い聞かせながら、彼はいつもの通り楽器庫からクラリネットを取り出して練習場所に向かった。

 

楽器庫の棚に置いてある誰のか分からない、いつから置いてあったかもわからないリードにはカビが生えていた。

 

 

 

 

「十四松くんっていつかシンバルを叩き割りそうだよね。」

「え?なんか言いました?」

 

パーカッションの二年生はガッシャンガッシャンシンバルを鳴らしている十四松に言った。

十四松は先輩が言った言葉がシンバルの音で聞き取れなかった。

 

「いや、なんでもないわ。楽器は大切にしてね。」

「はい!分かりました!」

 

ジャアアアアァァン!!!

 

(楽器って鳴らしてる本人にはあまりうるさくは聞こえないものよね……)

 

二年生は十四松に丁寧に指摘する。

 

「あのさ、十四松くん。小さく叩くことも覚えようか。シンバルは大きく叩くこともあるけど、小さく叩くことの方が回数的には多いからさ。」

「あい!」

 

シャアアァン!!

 

「もっと小さく!あと小さく叩くときは歯切れがいい音が要求されることが多いからからそこもチェックね。」

「あい!」

 

二人がやりとりしている最中にパートリーダーが部屋に入ってきた。

 

「ちょっとパーカス集合。」

 

パーカスの13人は手を止める。パーリーの面倒くさそうな声で彼らは察した。多分これからされる話はこの部費問題についてのことだということを。そしてその問題何か重要なことを部長たちから伝えられて、そして私たちに伝えるということを。

 

「えっとー、部費問題についてなんだけど。やっぱりこのままじゃマズいということで明日第二音楽室で部員全員で話し合うことにしたらしいの。」

 

「え?話し合うだけならパーリーたちだけでよくない?」

 

「そう、私もそう思ったんだけどさ……。なんかこれは部活大事な話し合いだから部員全員で話そうって低音が……。で、パートリーダーが中心になって話すんだけど、パートの考えをまとめて来いって言われたの。」

 

「「へぇ……」」

 

「はい!じゃあ一人ずつ意見言ってって。打開案もあればよろしく。」

 

パーリーは紙とシャーペンを構える。

 

「あたしは別にリードを買わなくてもいいと思う。」

「というかこの時間が無駄だろ。」

「私も買わなくていいと思うけど、木管の人が聞かないよね……」

「いっそのこと部費自体を値上げしたらどうです?それでリード以外にも色々買う。」

「メンドイなぁ」

「あっじゃあ……」

 

先輩の1人が何か言おうとしたときに備品係の一年生が入ってきた。彼女はダンボールを抱え「Tシャツ届きましたよ」と言い、それを一年生に配り始めた。

部活Tシャツがある部活は珍しくない。それはここの吹奏楽部でも同じだった。

袋に入ったTシャツは真っ赤で、背中に白い文字で赤塚高校吹奏楽部と書いてあった。ここの学校のイメージカラーは赤という伝統があるためTシャツも赤なんだとか。

一年生の1人が「今頃届くなんて遅くない?」と言い「一年で一番忙しい時期だからかな?」と十四松は返した。

 

 

*****

 

 

そして迎えたその翌日。今日は一日練習だったが話し合いは午後から行われる。午前中は近所の小学校の運動会でファンファーレをトランペット3人トロンボーン2人チューバ1人で吹きに行っていたからだ。地域密着型吹奏楽部であった。

 

 

午後一時、部員が第二音楽室に集まる。

チョロ松が音楽室に入ったときにはすでにそこの空気は殺気に満ちていた。

 

部員は129人。音楽室は普通の教室の1.5倍〜1.8倍ほど大きさがあるがこんなに人が集まると狭かった。まぁこれは毎回毎回ミーティングがあるたびに経験しているので慣れていた。

いつものミーティングと違うところは音楽室の真ん中に机が固められ、そこにパートリーダーたちが座っていること。部員全員が上はTシャツ、下は体操服の黒いハーフパンツを着ていること。そして部員が床に体操座りになっていることだった。

多分これは長期戦になるのだろうとチョロ松は推測する。そんな彼の横で同級生が「赤ばっかで帝国重工みたい…」と言ったがそれは聞かなかったことにした。

 

 

部長「今から特別ミーティングをします。司会は部長兼ダブルリードパートのパートリーダーの私。書記はホルンとフルートの二年生二人。主に話すのはそれぞれのパートのパートリーダー。その他の人は必要時以外喋らないように。」

 

部長は黒板の前に立ち、チョークを摘む。

 

部長「今回の議題は『部費でリードを買うか買わないか』です。とりあえずパートごとの意見を行ってもらいましょう。」

 

サックスパーリー「買うべきだと思います。理由は部活は皆んなで作るものだから皆で負担すべき。吹奏楽部ならなおさらじゃない?自分らだけが使うものだからって理由で突き放さないでほしい。」

 

クラリネットパーリー「同上です。」

 

フルートパーリー「私たちもリードを買うことに賛成。理由はサックスと同じで。」

 

チョロ松(あれ?もっと殺伐とした感じになるかなって想像してたんだけど……。意外に穏やかな滑り出しじゃん……。)

 

滑らかに潤滑に進んでいく話し合いを黙って聞く外野の人たち。特に荒れる様子は今の所はない。

そして金管のターンがやってくる。

 

トランペットパーリー「私たちは買わなくていいと思ってます。リードを部費で買うとサックスとクラリネット以外の人に不公平になるから。」

 

チョロ松(ここで忘れられたダブルリードッッッ!!!!)

 

ホルンパーリー「つまり、リードを買うなら金管のマッピも買ってっていう話。学校にどれだけ変形したマッピがあると思ってるの。」

 

サックスパーリー「何言ってんの!?金管のマッピは落として変形とかさせない限りずっと使い続けられるじゃん!変形しているのはあなたたちの扱いが悪いからでしょ!?」

 

トロンボーンパーリー「形あるものはどう扱ってもいつか壊れるだろ!それにリードを買うってことは部費が上がるってことになって来年の一年生が来にくくなるんじゃないか?」

 

パーカスパーリー「もしリードを買うってことになったらパーカスのスティックも買って。」

 

低音パーリー「いや、パーカスのスティックまでを買うようになったらさ……それでこそ不公平じゃない?初期費用が管楽器と比べものにならないくらいに安いのにさ。」

 

だんだん雲行きが怪しくなっていく音楽室。

 

外野「何よ!初期費用が一番高いものが偉いみたいな言い草!!」

 

低音パーリー「そんなこと言ってないし!」

 

クラリネットパーリー「ちょっとそっちは黙ってて。で、どうやって決めるのさ?」

 

トロンボーンパーリー「大正義の多数決。」

 

サックスパーリー「そんなことしたら少数派の私らが負けるに決まってんじゃん!」

 

外野「アホか!」「話し合いの意味無いじゃん!」「多数決反対!」

 

トランペットパーリー「は?何自分で木管以外に味方がいないって決めにかかってんの?木管以外にもリードを買うべきだって考えてる人いるかもしれないのに。」

 

サックスパーリー「へぇ…で、票を入れてくれる人はどのくらいいるとあんたは踏んでるの?何か……」

 

クラリネットパーリー「ちょっとそこの副部長二人、やめなよ。」

 

部長「まぁ、多数決すると決めてるならこんな話し合いなんかしないわね。」

 

トロンボーンパーリー「そもそもこんな話し合いの時間がもったいないんだよ。この時間を練習に充てた方がよっぽど有意義さ。」

 

外野「そうそう!練習してたほうがマシだよ!」

外野「は?今の話し合いが無駄だっていうの!?だったら出てってよ!」

 

チョロ松(あぁやっぱりこうなるのか……)

 

 

さっきの雰囲気と打って変わった音楽室。外野の声は主に二、三年生のものだが、それもどんどん大きくなり聞き取るのが難しくなってきた。

 

 

外野「ていうかさ、なんでフルートは賛成派なの?自分らに利益あるわけでもないのに。」

 

フルートパーリー「利益とかそういう問題じゃなくて、普通に買うべきだってパートでまとまったからだよ。」

 

外野「へぇ……」

 

フルートパーリー「(本当は反対派だなんて言えるわけないじゃん。あとでサックスとクラリネットの人になんて言われるか……。本当は私だってこんな話し合いなんかしたくないよ!)」

 

外野「木管のよしみだろ(ボソッ」

 

フルートパーリー「今よしみとか言ったの誰!?」

クラリネットパーリー「(はぁ…面倒くさいわ……。買うとか買わないとかもうどうでもいいわ。)」

 

トロンボーンパーリー「もうさっさと決めようぜ。このことがOB会に知られたら……」

 

ホルンパーリー「もうとっくに知られてるから。いつ学校に突撃してきてもおかしくないよ。」

 

低音パーリー「ええ!?」

 

パーカスパーリー「マジで今週中にコンクールメンバー決めないとまずいことになるから、この話し合いも今日中に終わらせないと。」

 

外野「ていうかオーディションを生徒でやっちゃダメなの?」

 

クラリネットパーリー「別にやってもいいと思うけど、それって要するに武水先生を敵に回すってことになると思う。つまりコンクールの指導や指揮は期待できないって言っても過言ではないわね。」

 

サックスパーリー「吹奏楽コンクールの規定だと生徒が指揮してもいいってことにはなってるけどさ……。多分あの人無しだと地区大会突破ができないと思う。」

 

外野「無しでも行けると思う」

外野「流石に無しだとキツイなぁ……」

外野「ていうか去年先生いたけど地区大会突破できなかったじゃん。」

 

トランペットパーリー「ていうか木管の人たちってコンクール出る気もないよね。」

 

フルートパーリー「はぁ!?」

 

トランペットパーリー「だって合奏ボイコットするくらいだもんね。」

 

サックスパーリー「だってああいう行動起こさないとあんたたちは真面目にこの問題に取り合ってくれなかったじゃん!!」

 

トランペットパーリー「別に今じゃなくたってよかったじゃん。」

 

サックスパーリー「ほんっっと金管の人たちのそういうところ大嫌い!」

 

カラ松(落ち着け…ハニーたち……。)

 

フルートパーリー「そうよ、あんまり真面目に練習してないのにさ。」

 

トロンボーンパーリー「何を見て真面目に練習してないって言ってるんだよ!」

 

トランペットパーリー「あのさ、こんなこと言いたくなかったんだけどさ、トランペットパートってどこで練習してるか知ってる?廊下だよ。」

 

サックスパーリー「だからなんなのさ。使える教室は限られてるんだから、陽に晒しても大丈夫で持ち運びが楽で軽い楽器ってことでトランペットが選ばれたんじゃん。」

 

トランペットパーリー「あっそう。ふーん。」

 

ホルンパーリー「ていうかさ、木管の人たちは音楽室の机の片づけに来るのが遅すぎ。来てもペチャクチャペチャクチャ喋ってさぁ…何もしないじゃん。何様のつもり?」

 

フルートパーリー「それは仕方ないじゃん!スワブ通して分解してタンポを色々やって……、ケースに入れておしまいの金管とは違うの!」

 

トロンボーンパーリー「はい今、全国のトロンボーン吹きを敵に回しましたっ!」

 

パーカスパーリー「じゃあついでに言わせてもらうと、パート日誌に『今日わ〜♪○○ちゃんと○○ちゃんがすごく上達しました☆頑張れファイトォ*・゜゚・*:.。..。.:*・'(*゚▽゚*)'・*:.。. .。.:*・゜゚・*』とか書いてる人、ふざけてるの?」

 

パート日誌とはパートごとで毎日交代して書く日誌である。書く時以外は誰でも見れるように音楽室の教卓の上に置いてある。

 

パーカスパーリー「あれ見るとほんと腹が立つんだけど。」

 

チョロ松(分かる。)

 

外野「見なけりゃいいじゃん。」

 

低音パーリー「そんなことにいちいち目くじら立ててちゃだめだよ。」

 

外野「この際言わせてもらうけどさ、パーカスの人たちってさ一番真面目じゃない空気出してるよね。せっかく部が上位目指して頑張ろうとしてるのにさ、なんか違う空気だしてるよね。」

外野「確かに。パーとカスしかいないのかなって時々思う。……あ。」

 

パーカスパーリー「……………………………は?」

 

その声は真っ黒だった。

部員から「それ言っちゃいけないだろ。」という雰囲気が出る。しかし彼女はそれに気づかない。

 

パーカスパーリー「今、パーとカスが云々って言ったの誰?悪いけど私、キレたから。」

 

誰も手を挙げない。というか挙げれない。今の一言でパーカスの人は間違いなく怒った。

一年生たちの中には一気に黒くなった雰囲気に震える者もいた。

 

パーカスパーリー「あのさぁ。じゃもう無礼講で行くけどさぁ。木管の人、合奏ボイコットするってマジで非常識だと思うわ。ほんと自己中で周りのこと考えないんだね。今のこともそうだけどさぁ。ねぇサックスさん?」

 

サックスパーリー「さっきも言ったけど、そうでもしないとあんたたちは真面目に取り合ってくれなかったでしょ?」

 

パーカスパーリー「へぇ……でもそのの割にはコンクールで金目指そうって人一倍言ってたよね。矛盾してない?あぁ、そこまで頭が回らないのね。」

 

サックスパーリー「そうだよ?だから?馬鹿でごめんなさいね。」

 

チョロ松(スゲェ開き直ったああぁ!!)

 

サックスパーリー「でもさ、結局のところ身をなやる気ないよね。はなから……」

 

トロンボーンパーリー「じゃあもうやめるか。」

 

サックスパーリー「なんでそういう結論になるの!!」

 

バンっと机を叩く彼女の声はすでに涙声だった。

その大きな音はで一年生はびくりと肩を震わせる。

 

チョロ松は今まで客観的に脳内実況をしてきたがそれも段々辛くなってきた。

今の雰囲気だとその内殴り合いが始まりそうだったがパーリーたちに挟まれている机がそれをギリギリ阻止していた。

女子の殴り合いは「先に手を出したほうが負け」という明確で分かりやすく合理的で平和なルールがあるのでそれはないだろうとチョロ松は思っていたがそれも怪しくなってきた。

彼は「女子が表立って喧嘩してるときはまだ平和。水面下に入ってからが本番。」という言葉を思い出しながらしっかりその話し合いの行く末を見守る。

 

 

そして数十分経過した。

話し合いは未だ平行線を辿っていた。というか最初のリード問題がどこかに行ってしまい、皆たがが外れてしまい普段の時になら言わない、言えないことを言い、場の秩序はないに等しかった。その中で部長が口を開いた。

 

部長「あのさぁ、とりあえずリードの話に戻ろうよ。今話してる内容も重要だよ?重要だけどそれはまた別の機会に回して、今はリードのことを片付けようよ。」

 

フルートパーリー「あのさぁ〜」

 

フルートのパーリーは細い息を吐きながら部長に向き直った。

 

フルートパーリー「部長、あなた最初っから全然喋ってないじゃん。」

 

彼女は眉を吊り上げて「そうだけど?」と返した。

 

フルートパーリー「いや、『そうだけど?』じゃないよ。なんで喋んないの。あんたダブルリードっていう吹奏楽の中で一番リード代が高いパートのパートリーダーで、しかも部長だよね?意見言いなよ。」

 

部長「マジなこと言っていい?」

 

トランペットパーリー「どうぞ。」

 

部長「心底この話し合いのこと、面倒くさくて知るかって思ってる。」

 

チョロ松(言いやがった……!みんな思ってるけど言わなかったことを堂々と言いやがった……!)

 

部長「だから意見無いです。だからどうぞ話し合いを続けて。」

 

トロンボーンパーリー「今日は珍しく喋らないなと思ってたら突然何言ってんだよ!知るかって……」

 

低音パーリー「やめときなよ。部長さんがいざって時にポンコツになるのは今に始まったことじゃないよ。」

 

外野「知るかってどういうことですか!今回のどうでもいいってことですか!?」

 

二年生の一人が立ち上がり部長に詰め寄る。部長は表情崩さずに「だからマジなこと言ってもいい?って前置きしたよね?」とほんの少しだけイラついた声を放った。

皆ショックだった。あの部長がこの話し合いについて面倒くさいとか時間の無駄とかではなく、この問題そのものをどうでもいいと言ったことに。

 

部長「ていうか声に出してないだけでどうでもいいって考えてる人は私以外にもいると思うよ。」

 

おそ松(はい、俺です。)

 

部長「だからこの話し合いはどうでもいいだなんて考えていない人たちが中心になるべきだから私は何も言わなかったし、言いたくなかったの。確かにオーボエはリードめっちゃ高いよ?だけど私はそのリードを部費使って買おうが買わまいがどうでもいいの。だって、たかが木の板に部活の雰囲気を左右されたくないんだもの!」

 

トド松(ごめん、ちょっと僕にはよく分からないかな……。)

 

二年生「でも貴方、部長ですよね!?部長なら形だけでもこの問題に真剣に考えているふりしてくれたっていいじゃないですか!」

 

部長「ーー好きで部長やってるわけじゃないんだけど?」

 

チョロ松(部長もついに壊れたっ!!吹部の最後の良心が崩れたっ!!!)

 

部長「まさか好きでやってると思ってた?こんなことを?」

 

低音パーリー「ッッ!!!!!」

 

低音のパートリーダーは机を思いっきり平手で叩いた。そのバイイィィィンという音が騒がしかった音楽室を静かにする。

 

低音パーリー「じゃあ%*☆&々〜〜〜!!!!!!!!」

 

怒りや悲しみ、呆れ、どうしようもなさ、投げやり感、もどかしさ、今まで溜まっていたストレス、不甲斐なさなどが一気に爆発してその場で泣き崩れる低音の三年生。

それを見て部長の目からも一筋の波が出る。

 

部長「……もういいや。」

 

そう言ったあと、彼女は音楽室から出て行ってしまった。

それをすぐ追いかける者はいなかった。

 

あ。

 

音楽室の空中にはそれだけが残り、静かになった音楽室には低音パートリーダーのすすり泣きの音しかしない。

 

時間が止まったかのように思われるその数十秒間の間に一松は腕を引っ張られた。その方向を見ると自分以外にファゴットを吹いている唯一の二年生の先輩のマトイが彼の腕を引っ張っていた。そして「行くよ」とだけ行った。

思考が追いつかない一松はとりあえず立ち上がる。見ると同じくダブルリードパートの残りの二人も立っていた。

そして四人は音楽室から走って出ていって部長の背中を追いかけ始めた。

 

 

残された音楽室の面々は疲労に満ちた空気で静止していた。コンマスがはぁ……と長い溜息を吐いたあと「話し合いの続きをしようか……」と言った。

チョロ松はその後ろ姿から彼女の不甲斐なさを感じ取った。

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