6つ子が吹奏楽部へ   作:ボコ砂糖野郎

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夏の終わり

屋根瓦に当たった太陽光線は溶けて家の中に侵入してくる。扇風機がカラカラと回ってそれをかき消そうとしていた。

 

『信じられないわ!なんで私があいつのために!!私はあなたにどれほど…』

『すまない。だけどこれは僕らの問題なんだ。』

『私はあなたのためにあのこともそのことも我慢して頑張ってきたのに!』

『俺がいつそんなことを頼んだ!?』

 

テレビから映されるドロッドロの昼ドラを見ながら煎餅を食べる6つ子の母、松野松代。ちゃぶ台に置かれたぬるいお茶が友達だ。

 

『おい!お前ら!何をやっている!?』

『……○○!』

『○○さん!』

 

この人、二年前に出てたドラマからだいぶ老けたわね……。

 

お茶を飲むとやっぱりぬるかった。

 

エンディングが始まったのでテレビを切った。黒い画面に自分の顔が映る。

 

「さてと……」

 

掃除機を取りに出た廊下はむせ返るほど湿度が高い。だがそれ以上に静かだった。蝉の声と廊下が軋む音意外は聞こえない。

 

当たり前だ。今、松野家には母さんしかいないのだ。

去年までの夏休みは誰かしらが家にいて、こうやって掃除をしようとしたときもゴロッと寝っ転がって邪魔をしてきたというのに。

 

この夏に蝉の声と息子たちの声を聞いていた時間、どっちが長かったかというと間違いなく前者だ。

 

しかし母さんは特にそれをなんとも思わず、思いっきり昼ドラを見まくっている。

 

二学期が来てもそれは変わりはしないだろう。

 

 

*****

 

 

気がついたら8月30日。つまり夏休みが終わろうとしていた。つまりつまり吹奏楽コンクール支部大会がやってきたということだ。

 

夏らしいことは特になかったな、というか夏休み自体無かったなとトド松はコンクールの座席から思う。

おかげでサザエさん症候群は無かった。しかしやっぱり夏の終わりは寂しかった。

 

 

支部大会というだけあって非常にレベルが高かった。

というか、僕らがこんな上から目線で言えるような立場ではない。うますぎて一校一校が演奏していくたびに先輩たちのテンションがだだ下がりしているのがよく分かる。

 

「あぁ…ここもすごくうまかったね……。」

 

「そうだね……多分金じゃない……?もう金何校目だろ……。」

 

 

死んだ魚の目をしながら待った。

「17番、赤塚高校……」

 

コンクールメンバーは来たこともない初の舞台に非常に緊張していることだろう。

 

 

指揮棒を振ったとき、それはわかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あっこれ銀賞だと。

 

 

 

 

 

 

 

 

先輩たちが苦い顔で「これ、金は確実にない」と口々に呟く。

 

何か特別ななミスがあったわけではない。しっかり今までの練習の成果を出したと思う。

 

でも到達点がまだまだ低かった。

 

 

重く息のしにくい雰囲気のまま結果発表を待った。

 

 

やっぱり銀賞だった。僕らの夏は完全に終わった。

 

 

 

学校に帰ってから反省会は行われた。

反省会とは言っても、もっとあそこをああすればよかったなんていう感想はなかった。もうただ単に実力不足だったんだなという満場一致の感想だった。

 

「ここから一年間、全国大会に行ける練習をきちんとしていけば次はそう難しくはないと思う……けど……。」

 

「まぁ、去年は地区銀だったからね…」

 

「大飛躍ですよね……」

 

口では自分らというか、これから引退する三年生たちのために褒めたり慰めたりしていたが、目からは涙が止まらなかった。

 

「1人がなんか言うと誰かがなんか言って収集がつかないね……」

 

ボソッと小声でセイヤはチョロ松に言った。

 

「だね。でも君はなんともないの?」

 

「まぁ切り替えしていかなくちゃね……。ていうかこの引きずるノリがそろそろイライラしてきた。」

 

「まぁ我慢してあげよう…。」

 

イライラするのはよく分かる。だって話が前に進んでいないんだもの。

 

「なんかさぁ…中学の頃の合唱コンクールを思い出してきた。『男子がちゃんと歌ってくれない!』って女子軍団がキレるやつ……」

 

あぁ…そんな中学時代もあったなぁ……。

 

「『男子、ちゃんと歌ってよ……』って終わってから泣かれたなぁ……」

 

それ、すごく思い当たりある。確か……

ちょっと断片が見えたところで思い出すのをやめた。思い出したくなかった。

 

「アレに比べれば今なんて全然マシなんだけど…。」

 

気がつくと反省会はやめになって、今度はお別れ会ムードになっていた。

 

「ううぅ……先輩〜!!」

 

「短かったですね……」

 

「卒業しても絶対差し入れ持ってきてくださいね!」

 

ダラダラと時は過ぎた。

 

「では最後に私部長の私が!とにかく一年生と二年生には伝統が云々よりもお客さんに恥ずかしくないようにしてほしい。演奏だけでなくてそれ以外の部分でも。というか、新しいことにはどんどん挑戦していってほしいです!」

 

拍手で終わった。最近は本当に拍手が多いな。

 

感謝を込めて拍手。礼儀を込めて拍手。期待を込めて拍手。喜びを込めて拍手。

 

色々な拍手が飛び交った。その拍手が溶けるように夏休みも終わった。




おまけ

私の6つ子の担当楽器のチョイスの理由

【チョロ松 クラリネット】
チョロ松は絶対クラリネット。もう最初から決まってました。誰がなんと言おうと私の中ではクラリネットです。十歩譲ってオーボエですが、そもそもこの話を書いてる理由の一つに「チョロ松にクラリネットを吹かせたい」があるからチョロ松にクラリネット以外を担当させるということは本末転倒になりマッスル。


【おそ松 トランペット】
チョロ松がクラリネットになったら自動的におそ松はトランペットになりました。だってトランペットってクラリネットの対みたいなイメージあるじゃないですか(私だけ?)あともう一つ理由を挙げると1stを狙うおそ松兄さんを書きたかったからです。


【十四松 パーカッション】
最初の段階で私には管楽器を担当する十四松は書けないなと思いました。だから自然とパーカッションになりました。6つ子の中にパーカス枠欲しかったですし。


奇数松はかなりすんなりと決まりましたが、偶数松が悩みました。


【カラ松 候補:フルート サックス族 トロンボーン チューバ】
カラ松ってユーフォとホルン以外なら何やっても合いそうですよね。だから選択肢が多くて色々悩んだ結果「カラ松って見た目のかっこよさでサックス族を選びそうだけど、厨二度Max高校生カラ松は一周回って第一希望はフルートにしそう。」と思いましたが、中音を担当するカラ松も美味しそうだな…と悩んだ結果トロンボーンになりました。


【一松 候補:サックス族 バスクラ トロンボーンン パーカス ファゴット】
バスクラにしてチョロ松と一緒にやるのもいいし、パーカスにして十四松と一緒にやってるのもいいなと思いましたが、結局6つ子は全員違うパートの方がいいという結論に至り、この二つの候補は消滅。
で、色々考えた結果彼はダブルリードという部内で一番人数が少ないパート所属ポジションが一番合うなと思いファゴットにしました。
あとファゴットって派手なのやりたがる中高生には人気の無い楽器にじゃないですか(全国のファゴット吹きに喧嘩を売っているつもりないよ)実際作中でもファゴットを希望した人がおらず、なんでもいいと書いた一松に部長が提案してやらせてましたからね。そこの部分もかなりポイントです。


【トド松 候補:サックス族 フルート ホルン トロンボーン ユーフォ パーカス】
先ほど書いた理由で6つ子内でのパート被りは無しということでフルートとパーカスの選択肢は自動消滅。
残った楽器であれこれ考えていましたが、彼は別に音楽がやりたいから入部したのではなく女の子の友達に合わせて入部した感じだから楽器自体は彼にとってはあまり重要ではないなと思い、だったら読者の意表を突く楽器の方が印象に残りやすいなと考え、そしてこの中でいちばんトド松らしくない楽器はトロンボーンだなという結論に至りトロンボーンになりました。が、やっぱ意表をつくよりもツイッターとかでメジャーになってるフルートやらせた方がよくね、という結論に至り、フルートへ。
というか、トッティって何やらせてもそれなりに形になると思うんですよね。
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