6つ子が吹奏楽部へ   作:ボコ砂糖野郎

7 / 46
色々あって決まりました

3-7のクラリネットの部屋に着くとテンションの高い先輩たちにぞろぞろと迎えられた。

 

「一年生キタ!」

「えっと、今年の一年生は1、2、3、4………………8人なんだね。」

「ちょっと〜あんたたち、本格的に先輩になるじゃない〜」

「キャー」

「この中の担当はなんなのさ?」

「人増えたな」

 

ガヤガヤとうるさくなった中、一人の三年生が前に出てくる。

 

「一年生のみんなクラリネットに来てくれてありがと。私はクラリネットパートリーダーのヤヨイです。ちなみにコンマスもやってます。」

 

ニコッとヤヨイは笑い、他の先輩から歓声の声があがる。一年生たちは先輩たちのテンションについていけなくなり、乾いた愛想笑いをした。

 

 

 

それから僕たちは先輩たちのグダグダした長い割にはどうでもいい話を聞かされたあと、自己紹介をすることとなった。

 

まずは三年生からとなり自己紹介をする。そして二年生に続き、一年生の番となった。

 

男子のクラリネット一年生は2人いる。チョロ松ともう一人。彼は昨日、一年生男子を音楽室に呼び止め、挨拶をした主犯だ。その彼が自己紹介をする。

 

「初めまして、Esクラ担当になりましたセイヤです。中学の頃もEsクラをやってました。よろしくお願いします。」

「Esクラ担当がある中学って珍しくない?」

「そうか?普通にあると思うぞ。」

「中学どこ?」

「○☆中です。」

「ごめん、知らないや。」

「時間ないから次!」

 

「松野チョロ松です。」

「6つ子ちゃんキターー!」

「先輩うるさいですー」

「え、吹奏楽は未経験です。迷惑かけると思いますがよろしくお願いします。」

「はい!質問!今まで6つ子であることで一番困ったことは?」

「困ったこと……?アイデンティティが崩れることぐらいですかね……」

「……なんか、ごめん。」

自分では笑いを取りに行ったつもりだったが滑った。

「はい、次!」

 

 

 

 

自己紹介が終わった頃、一人の二年生の先輩がやって来た。先輩は一年生の係分けが決まったといい、そこで発表した。

チョロ松の係は大道具係だった。

 

「係ごとの集まりなどがあると思うのでそのつもりで。あと、もう自己紹介とか色々終わりましたか?」

「あ!うん終わったよ。」

「一年生、中庭に来て」

「え……あ、はい」

「はい…」

「……」

「返事は大きく歯切れよく!!」

「「はい!!」」

 

 

中庭は音楽室や三年生の教室がある校舎のすぐ目の前にある。

指示された通りその中庭に向かいながらチョロ松はセイヤに話しかける。

 

「セイヤ君、これからよろしくね。」

「え?あ、うんよろしく。」

 

おたおたと受け答えをしたセイヤにチョロ松がずっと気になってた質問をぶつける。

 

「突然なんだけどさ…ベークラリネットってナニ?」

 

セイヤは頭を掻きながら横目でこちらを見る。

 

「ベークラ?あぁ、ドの音がドイツ音名でBになるクラリネットのことだよ。」

「Bって?」

「ピアノでいうとシ♭だよ。」

 

ドの音がシ♭?

自分は一応楽譜が読める人間だとは思っていたが意味が全くわからない。僕、混乱ナウ。

 

「……ドの音がシ♭なら、それはドの音じゃなくてシ♭じゃないの??」

「いや、ドだけど?」

「…………?」

 

やばい、本当に意味不明で理解ができない。セイヤ君めちゃめちゃ真顔だし。

 

「なんで聞いたのかというとさ、僕は紙にはクラリネットとしか書いてないのにベークラリネットをやれって言われたからさ……ベークラったなんなのかなって…」

「あぁ、そういうワケなんだ!」

 

セイヤは手を叩く。

 

「ごめん僕が悪かった。B♭クラリネットはチョロ松君が普通にイメージしてる一般的なクラリネットのことだよ。バスクラみたいに大きなベルもない、ホントに普通のやつ。」

「そうなの!?よかった……」

 

あぁよかったよかった。謎が解けた。僕は100%希望が通ったんだ……。

にしても、彼が先ほどの言っていたBなどのことが気になった。

 

「そのBってのが全く理解できないんだけどさ…馬鹿にわかるように説明してくれないかな、セイヤ君。」

「セイヤでいいよ。音階はド、レ、ミ、ファ、ソ、ラ、シってあるのは知ってるよね?」

 

チョロ松は頷く。

 

「それをドイツ音名で言うとC、D、E、F、G、A、Hってなるんだよ。」

「はぁ」

「ちなみにシャープならCis、Dis、Eis、Fis、Gis、Ais、Hisってなって、フラットならCes

、Des、Ees、Fes、Ges、As、Bなんだ。合奏ではドレミで音を言うことは少なくて、このドイツ音名が使われることが多いから吹奏楽部員としては覚えておいて損はないよ。というか覚えるべき。あと、英語音名ならC、D、E、F、G、A、Bでフラットシャープは後ろにつけるだけ。これはよくドイツ音名と混ざって使われてたりするから注意。」

「そうなんだ…。」

「それで、さっきチョロ松が『ド=B=シ♭』で混乱していたけど、音階は楽器ごとでバラバラの音で始まるんだよ。例えばB♭クラリネットはBの音から、フルートはCの音からって感じに。だからドイツ音名を使って統一しているんだよ。」

「へぇ……」

「とか言う僕もうろ覚えだけどね。」

 

やっぱりバカには理解ができず、中身の無い返事でこの会話は終わった。

 

 

 

中庭に行くと二年生が仁王立ちで待っていた。そしてタラタラやってきた一年生に怒鳴りつける。

 

「遅い!!走ってくるのが常識だろうが!!」

 

一年生は駆け足で二年生のところへ集まる。パートごとに点呼をとって全員いるか報告をしろと言われたのでそれに従った。二年生はどう見てもご立腹だ。

 

「一年生をここに呼んだ理由は一年生の挨拶と返事の声が小さいからです」

 

右足に体重をかけ体を斜めにしながらこちらを威圧するような声を出す。

 

「今から練習します。一列に並んで!」

 

一年生は一列に並ぶ。その間にも先輩から行動が遅い!という声が上がり、一年生の群れはブルリと震える。

 

 

「こんにちは!!ハイッ!」

 

「「「こんにちは!!!」」」

 

「40人の声じゃない!もう一回!!」

 

「「「こんにちはァッ!!!!」」」

 

「もう一回!!」

 

「「「こんにちはアァッ!!!!!」」」

 

「全然ダメ!!」

 

「「「こんにヂハアァッ!!!!!!」」」

 

「口パクとか許されると思ってんの!?」

 

「「「こんニ”ヂハアァッ!!!!!!」」」

 

それから一時間、部活終了までずっとこの練習だった。

 

早く楽器触りたい……。

 

 

 

 

帰り道での6つ子

 

「はぁ。あんな練習するのって運動部だけだと思ってたよ〜。」

 

おそ松は水筒の蓋を閉めながらガラガラの声で言った。隣で十四松が大声で叫んでいる。

 

「十四松兄さんうるさいよ。それと、なかなか声が出ない女子とかいるよねー。そいつらのせいで練習終わりまでやる羽目になったんだよ。まぁ僕もその一人だけどねっ。」

「ふっ……別名、体育会系文化部:吹奏楽部」

「カラ松兄さん、それあんまり痛くないよ。」

 

「ていうかあの鬼先輩ってどこのパートなの?ダブルリードにはいなかったんだけど。」

 

一松が会話に割って入る。なんだかんだで彼はよく声が出ていた方だった。

 

その問いにおそ松が「トランペットじゃないよ」と答え、続いてカラ松が「トロンボーンじゃないぜ」と言い、チョロ松が「クラリネットじゃない」と言い、十四松が「ぱーかっしょんにはいなかったよ!」と言い、トド松が「フルートでもないよ」と言った。

となるとそれ以外だな……と6つ子は考えながら歩きを進める。

 

春の夕焼けは赤紫色のアサガオのようだった。

 

おまけ

 

四人の面接風景

 

 

1組

 

部長「おそ松くんはトランペットで……十四松くんが………ん?ん?全部の楽器が書いてあるよ…」

 

パートリーダーの皆さん「「はぁ?」」

 

十四松「うん!とりあえず全部書いておきマシタ!!」

 

おそ松「マジかよ!」

 

低音パートリーダー「とりあえずその勇気は認めるわ」

 

部長「あと、地味にユーフォが書かれてないし」

 

十四松「あ!忘れてた!」

 

ユーフォ先輩「はぁ!?いい度胸してるね!」

 

副部長「で、結局何がいいの?」

 

十四松「う〜ん悩むな〜」

 

副部長「悩んでる間にもう一人の方のトランペットを選んだ理由を聞いておきましょう」

 

おそ松「先輩にトランペットがいいよ(本当)、トランペットオススメだよ(本当)、トランペット楽しいよ(本当)、トランペットしか道が無いよ(大嘘)って言われたからです。シクシク……。」

 

部長「それなら仕方ない(真顔)はい!決定〜☆」

 

おそ松「やったぜ」

 

トランペットパートリーダー「誰だよ!そんなパワハラみたいなこと言ったやつ!!」

 

おそ松「え?本当にいいんですか?あとでやっぱ無しねっ!とか無いスか?」

 

部長「無い☆」

 

副部長「で、十四松くんの話だけど〜」

 

副部長「そうだったね。で、どうなの?」

 

十四松「う〜ん」

 

フルートパートリーダー「特に無いならパーカッションでいいっか」

 

パーカスパートリーダー「はぁ!?(やだ、こんな面倒くさそうなの相手にしたくないし)」

 

サックスパートリーダー「いいんじゃないかな?十四松くんパーカス合いそうだし(よし、パーカスに押し付けよう)」

 

十四松「パーカスってなんだっけ?」

 

おそ松「打楽器のこと」

 

十四松「打楽器って?」

 

おそ松「太鼓とか」

 

十四松「いいね〜!僕、パーカスにしますっ!」

 

フルートパートリーダー「いいよ〜!期待してるからねっ!(ルンルン!」

 

パーカスパートリーダー「(マジかよ)」

 

サックスパートリーダー「よっ!日本一〜!」

 

部長「じゃあもう終わりましょう。」

 

一同「「は〜い」」

 

 

 

5組

 

部長「カラ松くんはトロンボーンで…トド松くんがフルート希望なんだね。カラ松くんはどっち?」

 

カラ松「はい、俺です。」

 

副部長「全く見分けつかないな……」

 

部長「じゃあカラ松くんの希望理由は?」

 

カラ松「先輩が誰もやってくれないって嘆いていたからです。」

 

トロンボーンパートリーダー「カラ松ありがとなっ!」

 

部長「(あ、これ無理矢理言わされたやつだわ。パワハラ?今度のパートリーダー会議の議題にでも乗せようかしら)」

 

フルートパートリーダー「もう一人の方は?」

 

トド松「僕にはフルートしか似合わないって思うから♡」

 

サックスパートリーダー「……」

 

トロンボーン「男子でその理由はないだろ…」

 

低音パートリーダー「むしろ清々しいわ」

 

部長「素直でよろしい。はい、終わりにしましょう。」

 

 

チョロ松の苦悩は不必要だった。

 

 

 

 

 

6つ子のパートと係

 

おそ松 トランペット 広報係

 

カラ松 トロンボーン 楽器運搬係

 

チョロ松 B♭クラリネット 大道具係

 

一松 ファゴット 生活係

 

十四松 パーカッション 楽器運搬係

 

トド松 フルート 大道具係

 

(男子は男子だからという理由で運搬係や大道具係をやらされるのはよくあること)

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。