艦CORE「青い空母と蒼木蓮」   作:タニシ・トニオ
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第二十一話「MISSION04_黒い鳥-04」

「吹雪ィ!!」

 

 UNACから蹴りを食らい大きく傾いた駆逐艦『吹雪』は軽空母『龍驤』へと激突した。安否を確認するため慌てて吹雪に通信を繋げようとするが、それが全く繋がらない。

 

「クソッ、龍驤!!お前は無事か!?」

 

「……ウチ自身はな……せやけど……艦体の方は吹雪がつっかかってもうて巡航不能ってとこや。こらあかんわ」

 

「マジか……」

 

 気付くと吹雪を蹴ったUNACは後ろに下がっており、そいつを加えた五機のUNACは動きの止まった俺たちの回りをグルグル回り始めていた。

 

「……まるで『かごめかごめ』ね~」

 

「なあ、龍田……その場合『籠の中の鳥』は俺たちか?笑えねーよ」

 

 『かごめかごめ』、その唄の解釈の中には罪人の事を唄ったものだという説もある。『後ろの正面』にいるのは処刑人ということらしい。今回は『後ろの正面』どころか全方位が処刑人だが……。

 

 

 そして処刑人達による銃殺が執行される。UNAC達はロジックに刻まれている有効射程距離を保ちながらその両手に持っているライフルで天龍達に攻撃を開始した。

 ACのライフルは艦船の主砲に比べ射程が短いものの、軽巡の口径と同じ弾を秒間単位で連射する事が出来る。天龍たちの14cm単装砲の10発/分と比べるとその発射間隔は圧倒的であり、たった五機であるにも関わらずその弾幕はまるで連合艦隊からの砲撃を彷彿とさせる激しさで天龍たちに襲いかかった。その猛攻に天龍、龍田の軽巡は勿論のこと、龍驤の軽空母ですら瞬く間に戦闘力を喪失させられてしまう。反撃の手段すら削がれ、あとはこのままなぶり殺されるだけとなった。

 

 

「クソッ!あいつらバカスカ撃ちやがって!」

 

 正直もう持ちそうになかった。機器からはレッドアラートがけたたましく鳴り、退避勧告まで出てる始末だ。

 

「逃げられるなら逃げてーよ!うわっ!?」

 

 突然被弾とは違う大きな衝撃に見舞われ、バランスを崩してしまう。恐る恐る艦橋の外を見ると、止めを差しに来たのかUNACが俺の艦に取り付いていた。そいつの向ける銃口と目が合う。

 

(あ、死んだな、こりゃ)

 

 次の瞬間、俺の目には敵の砲弾のドアップが写り、それが最後の光景になる……はずだった。だが実際に俺の目に写し出されたのは"黒い羽"であった。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 艦橋越しにも熱を感じる、何もかもを焼き付くすような灼熱の黒い羽……。それに撫でられたUNACは溶断され、ズルリと上半身が崩れ落ちる。そしてそれが"羽"ではなく"剣"だと理解した。俺の艦の上にその黒剣を持った新たなACが直立している。

 

「大丈夫ですか!?天龍さん!!」

 

 そのACのスピーカーから聞きなれた声がした。

 

「おま……まさか吹雪か!!?一体どういうことだ、これはッ」

 

「なんとか無事そうでよかった。……説明は後です。私がみんなやっつけちゃいますから!」

 

「な、なに言って……」

 

 俺の言葉を遮るように、鼓膜が破れるような銃撃音が鳴り響く。吹雪のACが剣から機関砲に装備を切り換え、敵に攻撃を開始していたのだ。摩耶の対空射撃も真っ青な機関砲の弾幕は、UNACの装甲に弾かれているものの「そんなの関係あるか」とでも言わんばかりに浴びせられ続け、UNACの装甲をベコベコに凹ませていく。そして反対側のデカイ銃から目を焼くような閃光と共に光弾が発せれ、それと同時にACの両肩から魚雷の様なものまで発射された。どちらも艦船の砲撃を超える速度で突き刺さり、UNACを粉砕する。

 

「これで二つッ!」

 

 俺の近くにいた二機のUNACの撃破を確認すると、吹雪の駆るACはまるで自らが弾丸の様に急加速して俺の艦より飛び立っていった。

 

「……すげぇ………」

 

 そうとしか言いようがなかった。開いた口が塞がらないとは正にこの事だ。俺たちが必死になっても抗えなかった『理不尽な力』を、『さらに理不尽な力』で捩じ伏せていったのだから。

 

(こういうのなんて言うんだったか……)

 

 俺はしっくりくる表現を思い出す。

 

(ああ、そうだ、『暴力』だ)

 

 あれはまさしく『全てを焼きつくす暴力』だった……。

 

◇ ◇ ◇

 

「これで三つ目ぇぇッ!!」

 

 天龍さんを襲っていたUNACを屠った私は、残りのUNACの元へと急行した。そこで今度は龍田さんに取り付こうとするUNACがいたため、グライドブーストの加速を生かしてそのままブーストチャージを決める。重量級の質量に速度を乗せて繰り出される蹴りは一撃必殺の威力を秘めており、それを食らったUNAC は大きな水柱を作って海中へと没した。

 

「あとは二つ……」

 

 残りのUNACに視線を向けると優先目標が切り替わったのか艦への攻撃を止め、明らかに私を狙って間合いを詰めてきている。このまま正面から撃ち合いをしても負けるつもりは無いが、それをすると龍田さんや龍驤さんに流れ弾が当たる危険があった。もはや二人の艦の耐久力は限界であり、海上での砲撃戦は避けたいところだ。

 

「……よし」

 

 周囲を確認し敵を倒す算段を立てると、それを早速実行に移す。ACをスキャンモードに切り換え、敵を見逃さないようにしながら後ろへグライドブーストを吹かし距離を取る。そしてそのまま駆逐艦『吹雪』の元まで下がると、それを足場にして軽空母『龍驤』の甲板へと駆け上がった。甲板に着地すると同時にドリフトターンして敵が迫ってくる面に機体を向ける。

 

「すみません、龍驤さん」

 

 聞こえてるかわからないが、さっきのターンで甲板を傷つけてしまったことと、これからもう少し傷つけてしまうことを謝った。リコンを飛ばし二機のUNACを確認すると、戦闘力のない艦船を無視して馬鹿正直にこちらの軌跡を辿って追ってきている。

 

「かかった!」

 

 私は武装をガトリング『AM/GGA-206』からブレード『X099 ANOTHER MOON』へ切り換える。そして食い入るようにスキャン越しに敵を捉え、タイミングを計っていた。二機のUNACが艦体に足を掛け一緒に甲板上に飛び出してきた、その刹那――

 

「今だッ!!」

 

 その隙を狙いグライドブーストで一気に距離を詰める。そして戦闘モードへの切り換えと同時に、二機のUNACへ居合いのような『一閃』をまとめて刻む。一機は上半身が綺麗に両断され甲板に上がることなく海へと落ちていき、もう一機は足を切断され着地できずに甲板の上をゴロゴロと転がっていった。膝から下が無くなったUNACはまるでひっくり返った蝉のように体をバタつかせており、その滑稽な姿が「こんなのに私たちは殺されかけたのか……」と怒りを沸かせる。その鬱憤を晴らすようにその頭を思いきり踏み砕き、止めを刺した。

 

「これで五つ目……」

 

 再びACをスキャンモードへ切り換え周囲を見渡す。

 

「敵勢力の全滅、及び護衛対象の残存を確認……」

 

 そして通信のチャンネルを合わせ仲間に呼び掛けた。

 

「みなさん、ご無事ですか!!?」

 

「こちら天龍、何とか生きてるぜ。艦の風通しがだいぶ良くなっちまったがな」

 

「こちら龍田、私も生きてるわ~。吹雪ちゃんのお陰ね、ありがと」

 

「龍驤や!ウチも無事やで!にしてもキミ、いつの間にそれに乗り込んだん?ちゅーか、なんで操縦できて…………ん?」

 

「……よかった、本当に……よかったァ……」

 

 龍驤さんが喋り終わる前に、私は皆が無事だったことへの安堵と、成すべきことを……"自分の答え"を成就できた事への喜びで涙を溢れさせてしまっていた。

 

「皆さんが無事で……ホントによかっ…………」

 

 そして緊張の糸が切れると同時に、人形の糸まで切ってしまったように意識を手放す。

 

「……おい、応答しろ!吹雪、吹雪ィ!!」

 

 まどろみに沈む中、微かに自分の名を呼ぶ声が聞こえるが、それに答えることは叶わなかった……。



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