艦CORE「青い空母と蒼木蓮」   作:タニシ・トニオ
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第二十二話「MISSION04_黒い鳥-05」

「提督、あのACの解析が済んだわ。ビンゴよ、やっぱり統轄機構の位置データが残ってた。これがそれよ」

 

 私は提督にそう伝えると、彼の目の前に統轄機構のデータの入ったCDを置いた。

 

「ああ、ご苦労だったなマギー……」

 

 差し出したデータは一応最重要機密クラスのものであり、大本営を動かすほどの影響力があるものなのだが……提督の反応はイマイチだ。

 

「はぁ……、あとこれ、明石から預かってきた吹雪の診断書」

 

「おお……ちょっと見せてくれ」

 

 平静を装っているが明らかに先程と違う反応を提督は見せる。軍からしたら一尖兵の診断書などゴミも同然だが、今の彼にしてみればそのペラ紙一枚の情報が何よりも重要なようだ。

 提督は艦娘を部下というよりは自らの娘のように見ている節がある。無論それは時たま垣間見える程度であり、普段は提督としての線引きはしっかりしているのだが……。それでも、一番付き合いの長い吹雪は実の子同然なのだろう。診断書を見ている姿はもはや提督ではなく、一人の父親だった。彼は娘の診断書を読み上げる。

 

「全身打撲に軽度の裂傷……後は『AMSの過負荷による過労』……なんだこりゃ?」

 

「それが吹雪が寝込んでる原因。といっても、あくまで過労だから命に別状は無いし直に目を覚ますでしょう、って明石が言ってたわ」

 

「それはわかるが……アイツの艦には『粗製』用のリミッターを設けてたはずだ。AMSの過負荷ってのは一体……?」

 

「それについては、そうね……。『こっちの情報』にも少し関係があるから私から話すわ」

 

 こっちも忘れるなよ、と言わんばかりに『統轄機構の情報の入ったCD』を再び見せつけながら、私は説明を始めた。

 

「まず結論から言うと、吹雪のAMSコネクタに負荷をかけたのはあのACよ」

 

「ちょっと待て、ACはAMSを使用しないんじゃなかったか?」

 

「本来はね。でもあのACに深海棲艦が妙なプログラムを仕組んでいた。戦闘オペレーション『ダークレイヴン』……。恐らく深海棲艦がACを操る為に組んだプログラム。吹雪の過負荷はこれがインストールされたせいよ。どうやらAMSに反応するみたいでね、倉井元帥はパイロットデータを削除してたけどこれに気づく事はなかった。おかげで統轄機構の情報も知ることができたわ」

 

「……おい、マギー。そのプログラム、大丈夫なのか?」

 

 「深海棲艦が作ったもの」と聞いて提督は顔のシワを寄せる。そんな訳のわからないものが愛娘に流れ込んでいたのだ。"父親"としては心配で堪らないのだろう。

 

「直接人格に影響を与えたりするものではないわ。あくまでこれは『ACの戦闘記録の集積情報』、艦娘の『前世』と同じ様なものよ。ただ情報量が莫大だったから負担がかかっただけ」

 

「……そうか、ならいい」

 

 吹雪が大丈夫なことが分かった筈なのに提督の顔はどこか浮かないままだ。そしてその表情のまま私に質問を投げ掛けた。

 

「……なあ、マギー。そのプログラムがあれば誰でも乗れるのか?」

 

「…………吹雪を乗せたくないの?」

 

 

――無言だった。

 

 きっと葛藤があるのだろう。提督としての自分と父親としての自分の……。実は、吹雪は今回の件で艦体を喪失している。帰投するために龍驤に衝突していた吹雪の艦を天龍と龍田で泣く泣く雷撃処分したとの報告があった。だから吹雪にとって今がターニングポイントなのだ。退役し普通の女の子となるか、AC乗りに転属し戦場を駆けるかの……。そして決定権を持つ提督の中では、どちらにするかの天秤が今はまだ釣り合っている。

 

(私に重りを置け、ということか……)

 

 提督はきっと、"提督"としてどうするべきか分かっている。ただ踏ん切りがつかないから私に"傾けて"欲しいのだろう。だから私は彼の望む回答をした。

 

「……さっきの質問の回答だけど、他の艦娘でも可能よ。吹雪のパイロットデータを削除して同じ手順を踏めばいい、でも……あのACに吹雪以外を乗せるのは私が許さない」

 

「なぜだ、マギー?」

 

「吹雪に流れ込んだプログラムは所詮マニュアルの様なもの。それを"読んだだけ"でUNACを撃破するなんて、普通できるものじゃない。自分で気づいてるか知らないけど……彼女、『一種の天才』ってやつよ」

 

 これは世辞でもなく本当の事だ。私の『前世』の時には何年もACに乗っているにも関わらずUNAC以下の雑魚なんかゴロゴロいた。それどころか五対一の状況を覆すとなると熟練者でも厳しい。それを初めて乗ったACで実現した吹雪は、はっきり言って異常だ。いくら戦闘オペレーションが流れ込んからといって誰でもできる芸当ではない。

 

「私が会ったことのあるAC乗りで、その手の『例外』だったのは一人しかいない」

 

「一人……」

 

「あのACの前のパイロット、『黒い鳥』と呼ばれた傭兵……そいつだけ」

 

「……まるで吹雪が乗るのは『運命』だと言いたいみたいだな?お前がそんなロマンチストだとは知らなかったぜ」

 

「勝手なこと言わないでくれる?それに『運命』なんかじゃない、これは『必然』よ。彼女の素養と意思が手繰り寄せた『必然』……」

 

 そうだ。確かにACがそこにあったのは偶然だったのかもしれない。それでもACに乗ったのは吹雪の意思によるものだ。彼女は自分で『戦う選択』をしたのだ。

 戦場に焦がれ続けた者として、同じ様に『戦う選択』をした者として、私は吹雪の選択を尊重してあげたかった。

 

「それは私よりも一番付き合いの長い貴方の方が理解してるんじゃない?……とにかくあのACに吹雪以外を乗せるのはあり得ない。それが個人として、秘書艦補佐としての私の意見よ」

 

「……」

 

 再び執務室に沈黙が訪れる。しかし、それはドアをノックする音により破られた。秘書艦である加賀が入室してくる。

 

「失礼します。提督、吹雪が目を覚ましたわ。あと明石から追加報告が。検査と休養を取らせるため二日入院させるそうよ」

 

「……そうか、了解した」

 

 そこまで伝えると加賀は自分の机に座りテキパキと仕事の準備を始める。なので私も私の仕事の始める事にした。必要な書類を片手に執務室のドアへと向かう。

 

「じゃあ提督、私はあのACの整備に移るわ」

 

「最終的に決めるのは吹雪だぞ」

 

「じゃあやっぱり必要でしょ?……ああ、あと……"今の(父親の)貴方"も嫌いじゃないけど、『そのCD』を扱うときは"提督"に戻ってからにして」

 

 そう忠告を残し、私は執務室を後にした。

 

◇ ◇ ◇

 

 マギーが執務室を出てから暫くして……。加賀は書類を整理する手を止め俺に尋ねてきた。

 

「……提督。吹雪の件、どうなさるおつもりで?」

 

「どうもこうも、さっき言った通りだ。あいつの答えが最優先さ。例えそれがどんな答えでもな……」

 

 その回答に満足したのかしてないのか、加賀は「そう」とだけ返事をすると、先程まで手に持っていた書類を俺の前に差し出した。

 

「では『これ』の追加申請を出しておきますね」

 

それは『艦娘の制服』に関する書類だ。

 

「……おまえもそっち側の考えか?」

 

「あの子の気持ちを考えればそうかと……。きっと喜びますよ」

 

「そうか……そう…だな」

 

 俺はその書類に了承の印を押した。

 

◇ ◇ ◇

 

「う~ん、やっと退院だ~」

 

 ベットの上で私は上半身を伸ばす。思っていた以上に私の体は疲弊していたようで、入院前と今では明らかに調子が違うのが分かる。その疲労が取れた今、元気が有り余って仕方ない。

 

「……早く乗りたいな」

 

 時間が経てば経つほど『あの時の感覚』を忘れてしまわないか不安になる。

 

(本当に私があれを動かせてたんだ……)

 

 本当は夢なんじゃないか?そんな考えが頭を過り、それを振り払うようにACのコックピットの感覚を思い出す。操縦桿の形、フットペダルの固さ、ブーストを吹かした時にかかる衝撃……。

 

(うん、そうだ……夢なんかじゃない)

 

 一つ一つの感覚を丁寧に確認し、全て現実のことだと再確認する。

 

「吹雪、起きてるか?」

 

「わひゃッ!!」

 

 急に声を掛けられつい変な声が出てしまった。どうやら夢中になり過ぎて人が近づいていることに気づかなかったらしい。声がする方を見ると、ベットを囲うカーテン越しに見慣れた人影が立っていた。

 

「あ、はいッ、大丈夫です!司令官」

 

「おう、邪魔するぜ」

 

 「どっこいしょ」と言いながら司令官は近くにあったパイプ椅子へ腰を掛けた。同時に持っていた紙袋を横に置く。何が入っているのだろう……?

 

「今日退院予定だが、体調はどうだ?」

 

「…あ、はいッ!ゆっくり休ませてもらいましたから、もうバッチリです!」

 

「そうか、そいつは良かった。……そういえば、お前とこうやって話をするのなんざ久々だな」

 

「え?あー、確かに……」

 

 確かに司令官とこうやって話すのは久々だ。別に普段会話が無い訳じゃない。何かの報告ついでに雑談したり、食堂で見かけた時は相席して一緒に食事を取ったりもする。でも何かのついででなく、こうして面と向かって話すのは本当に久々だ。

 いつからこうなったんだっけ……。

 

「私が天龍さんたちと遠征によく出るようになって、加賀さんが秘書艦を引き受けてくださるようになって……こうして司令官と二人きりでお話しするのなんて一年ぶりぐらいじゃないですか?」

 

 前の鎮守府の時は私が秘書艦をやっていたので、二人きりになったりすることは特に珍しい事ではなかった。よく二人して書類とにらめっこをしていたものだ。

 だから今の鎮守府になって司令官と少々距離が空いてしまったことに、ちょっぴり寂しさを感じているところもある。なので今の状況に少しばかり嬉しさを感じてしまうのは仕方ないことだと思う。

 だけどそんな私とは反対に司令官は浮かない顔をしていた。この人がこんな顔をするときは、決まって大切な話をするときだ。

 

「一年か……。ここを再建してからもうそんなに経つのか。前の鎮守府の時からそうだが……、お前にゃ苦労をかけっぱなしだったな」

 

「どちらかと言えば私が苦労をかけさせてしまっていたような……その……『粗製』でしたし……」

 

「そんなことないさ。お前たちが正式配備されて、右も左もわからねーまま深海棲艦と戦争を始めて……それでもやってこれたのはお前が側で頑張ってくれてたからだ。本当に……頑張り過ぎなぐらいさ、だから……ここで下がったって誰も文句は言わねえよ……」

 

「司令官……」

 

 どうやらそういう話らしい。確かに私は艦を失っている。それはお見舞いに来てくれた天龍さんと龍田さんから聞いていた。司令官は笑顔を作り、無理して明るく振舞い始めた。

 

「な~に、退役後のことは気にしなくていい。今はどこもかしこも人手不足だからな、なんにでもなれるぞ、はっはっは」

 

「……司令官……」

 

「なんだったら俺の息子を紹介してやろうか!?士官学校に通っていてな、今はまだ鼻垂れのクソガキだが当時の俺よか優秀だぞ。自分で言うのもなんだが、将来有望の優良物件だ」

 

「司令官…」

 

「お嫁さんなんか女の子の夢だろう。お前が実の娘になるのも悪くな…」

 

「司令官!!」

 

 私は話を遮った。司令官は本当に私のことを大切にしてくれている。それは良く分かっている。今の話も私を思ってくれてのことだ。正直それもありかな、なんて思ってしまうほど魅力的な話だったし……。

 でも、それでも、私の答えはもう決まっている。「好きなように生きろ」とアレに言われたときから……。

 

「私はACに乗りたいです」

 

 司令官は先程までの作り笑いをやめ、どこか物悲しそうな顔を浮かべた。

 

「……やはりか。俺は、本当は……最初から知ってたよ。お前の中にある、その想いをさ、吹雪。俺はずっと、戦いの中で生きてきた。お前みたいな奴が……赤城たちや同期のアホどもが……死んでいくのを見ながらさ。だから吹雪、お前だけでも解放してやりたかった。でもそれは、やはり俺の思い上がりだったんだな……」

 

「……司令官はお優しいですね、いつも。そんな司令官が、私は大好きです。加賀さんのことも、叢雲や綾波ちゃん、夕立ちゃんのことも……天龍さんや、龍田さん、マギーさんや瑞鶴さん、金剛型の皆さん、妙高型の方々も……。前の鎮守府の人達と同じぐらい今の鎮守府の皆さんが、私は大好きです。ここが、"私の魂の場所"なんですよ、司令官。だから……だから皆を守りたいんです、今度こそ……」

 

「……それがお前の答えか、吹雪」

 

 司令官は横に置いていた紙袋を手に取り、私に差し出した。

 

「結局これは無駄にならんかったか、ははっ……。これに着替えて工廠まで行ってこい。俺はこれから赤羽のアホウと『面倒事』の処理があるんで一緒には行けんが……お前が『この道』を選んだ場合の指示はしてある。マギーの奴がほくそ笑んでたからな、気を付けろよ、はっはっはっは……」

 

 司令官は笑いながらも、少し寂しげな背中を見せ病室を去っていった。

 

(私のワガママを聞いてくれて、ありがとうございます……"お父さん")

 

 私は感謝しながら、早速プレゼントの紙袋を開ける。

 

(着替えろってことは、多分制服かな?)

 

 先の戦闘時にゴロゴロと転がり回ったため、前の制服はボロボロに破れてしまっていた。だからきっと、その予備の制服が入っているのだろうと思い中身を出す。

 

(これは……)

 

 確かに予測通り、それは制服だった。しかしいつものと違いスカートと襟の色が黒く、入っているラインも白ではなく赤だ。一見綾波ちゃんのと同じ物だが、胸のリボンが青色になっている。紛れもない、それは『吹雪改二』の制服だった。『粗製』の自分には一生縁の無い物だと思っていた物が目の前にあった。私は急いでそれを身に纏い、窓ガラスを鏡代わりにする。

 

「うわぁ」

 

 叢雲と綾波ちゃんの新しい制服を見たとき、正直置いてきぼりをくらったような気分だった。でも、これで二人と同じだ。変に気を使われることも無く、あの二人と並び立てることが出来る。それが嬉しくてついその場で一回転してしまう。そして後ろにあった時計が目に入り、それなりの時間が経っていることに気がついた。

 

「あッ、こんなことしてる場合じゃない!工廠に行かないと!!」

 

 新しい制服の喜びも束の間、今度はマギーさんを待たせている事への焦りが出てくる。あの人は普段からちょっと怖めなのに、それが怒った時のことなど考えたくない。私は早足で工廠へと向かった。

 

◇ ◇ ◇

 

「遅い!待ちくたびれたしゃない」

 

 工廠の前にまで着くと、突如として声を掛けられた。その声の主はマギーさんではなく、なぜか叢雲だった。その隣で綾波ちゃんがヒラヒラと手を振っている。

 

「あれ、二人ともどうしたの?」

 

「吹雪ちゃんに見せたい物があって、ここで待っていたんですよ~」

 

「なのにアンタ全然来ないんだから……。この私を待たせるなんていい度胸してるわね」

 

「叢雲ちゃん、早く吹雪ちゃんに見せたくてずっとソワソワしてましたもんね」

 

「な!?そ、そんなことないわよ!?い、いいから!早く中に来なさい!!」

 

 遅れたことを謝罪する暇もなく二人は会話劇を繰り広げ、そして私を工廠の奥へと引っ張っていった。

 

 工廠の奥にまで来るとマギーさんの『ブルーマグノリア』と、そしてその横に『あのAC』の姿がある。――だがその姿は私の記憶とは違っていた。

 まるで燻製でもされたようにくすんだ機体色だったはずの『あのAC』は、白をメインカラーに綺麗に塗り直されていた。一部の黒く塗られている部分には私の新しい制服と同じ様に赤いラインが入っており……というか、機体の首元なんかは制服のデザインまんまだ。襟を再現したように赤いラインの入った黒い逆三角形の外側に、私のリボンと同じ色の青いラインが入っている。左胸の胸部装甲には錨のマークが刻まれていた。

 

「どうですか?吹雪ちゃん。吹雪ちゃんの制服をモチーフに私たちでデザインしたんですよ」

 

「どーよ!なかなかのもんでしょ!我ながら良くできたと思うわ!これがあんたの新しい力、『吹雪弐式』よ!!」

 

【挿絵表示】

 

 

「『吹雪弐式』……」

 

 確かに胸部装甲に白文字で『弐式』と書かれている。

 

「ちなみに命名は天龍さんです。『二』じゃなくて『弐』なのは、そっちの方がカッコイイからって。龍田さんと、あと第六駆の子達を連れて塗装まで手伝ってくれたんですよ。遠征部隊卒業祝い……だそうです」

 

 綾波ちゃんからその事実を聞いて、感謝で胸が熱くなる。

 

「何か感想はないの?それとも良すぎて声も出ないかしら!?」

 

 叢雲の言う通りだった。純粋に格好いいカラーリングというのもあるが、何よりも『仲間が私のためにしてくれたデザイン』が嬉しかった。私にとってこれ以上のものは無い。感動で胸が一杯になり、声が出せなかったのだ。それでも何か言わないと失礼だなと思い、なんとか言葉をひねり出す。

 

「……ありがとう、二人とも。私、頑張るよ、この『吹雪弐式』で……」

 

 すごく少ない言葉だが、精一杯の感謝を込めたつもりだ。二人もそれを感じ取ってくれたのかニッコリと微笑み返してくれた。

 

「じゃあ、早速張り切ってもらうわよ」

 

 突如として上方から声が降りかかる。声のした方へ顔を向けると、『ブルーマグノリア』のコックピットからマギーさんが顔を出していた。

 

「シュミレーターの準備はできてるわ。提督に、あなたが"こっち"に来た場合は私が師事をするよう頼まれてる。さあ、早く準備して。……あなたの力を見せて頂戴」

 

 マギーさんは期待を込めた眼差しと共に、UNACとは比べもにならないほどの圧力を私にぶつけてきている。なぜだか分からないがそれに懐かしさのようなものを感じ、同時に気分が高揚してくる。

 

「はい!すぐ行きます!!」

 

 私は『吹雪弐式』へと駆け出した。

 コックピット昇降用のワイヤーに掴り昇っている途中、エンブレムが目に入る。ACの左肩に雪の結晶を背負った三本脚の鴉が描かれていた。三本脚の鴉……『八咫烏』はこの国では太陽の化身とされているため、雪を背負っているのはなんだかおかしい気もするが……。しかし『艦娘』でもあり、そして『レイヴン』でもある自分を表しているいいエンブレムだと思った。そうだ、もはやこのACは私の分身なのだ。

 コックピットまでたどり着くと、すぐさま中に入りメインシステムを起動する。するとシュミレーターモードのため周囲とは違う空間が映し出された。いくつもの塔が立ち並んだ、荒廃した建物……その中央に『ブルーマグノリア』が鎮座している。まるで「ここは私の縄張りだ」とでも言っているかのように。

 ならば同じ"鴉"としてやることは一つだ。

 

《『吹雪弐式』、行きます!》

 

 仮想空間ではあるが、私は全力で『ブルーマグノリア』へ襲い掛かった。






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